基本情報
- 寿命
- 数十年以上(群体は条件が合えば半永久的)
- 体重
- 数g〜数kg(群体サイズによる)
- 性格
- 動かないが刺胞で攻撃、隣接個体と化学戦争
- 飼育難易度
- 高(水質・照明・水流の三要素を安定維持)
- 法規制
- イシサンゴ全種がCITES附属書Ⅱ、国内海域での採集禁止
- 最重要ポイント
- 変化を嫌う、水質・水温を一定に保つことが最大の救命
生態と特徴
- 体の特徴
- 刺胞を持つ無脊椎動物、体内の褐虫藻が光合成で栄養の大半を供給
- 原産地・分布
- インド太平洋・紅海・カリブ海の熱帯〜亜熱帯のサンゴ礁
- 野生での生息環境
- 水深0〜30mの透明度が高く栄養塩の少ない浅い礁
- 活動時間・睡眠
- ポリプは昼夜で伸縮、LPSやイソギンチャクは夜に大きく開く
- 社会性・人との関係
- 群体性、触手や粘液で隣の個体を攻撃し縄張りを守る
特徴的な行動・習性
- スイーパー触手を夜に伸ばして隣のサンゴを攻撃する
- イソギンチャクは足盤で移動し、好みの場所を探して歩く
- ストレスで褐虫藻を放出し白くなる(白化)
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
白化
予兆組織が透けて骨格の白が見える、色が抜ける、ポリプが開かない
予防水温を25〜27℃で一定に、照明の急変を避ける、新規導入は光量を段階的に上げる
RTN/STN
予兆SPSの組織が根元や先端から剥がれ骨格が露出、数時間〜数日で進行
予防水温・塩分・KHの急変を避ける、導入時はヨウ素系の薬浴と検疫、水流を確保
ブラウンジェリー
予兆LPSの肉が茶色いゼリー状に溶け悪臭、触れると崩れる
予防物理的損傷と水質悪化を防ぐ、感染個体はすぐ隔離し患部を切除して薬浴
褐虫藻の過剰・褪色
予兆全体が茶色くくすむ、または色が薄くなり成長が止まる
予防硝酸塩2〜10ppm・リン酸0.03〜0.1ppmを維持、照明の強さと時間を一定に
骨格の成長停止
予兆SPSの先端が白く伸びない、LPSの骨格が薄く割れやすい
予防KH7〜9dKH・Ca400〜450・Mg1250〜1350ppmを週1回測定し添加剤で補正
イソギンチャクの衰弱
予兆口が開きっぱなし、体が縮んで膨らまない、触手が短く、足盤が剥がれる
予防強めの照明と中程度の水流、安定した水質を用意、無理に動かさない
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
白化が始まった
水温を25〜27℃に戻し照明を2〜3割落とす、換水10〜20%、硝酸塩・リン酸がゼロなら少量の給餌で回復を促す
RTN/STNの進行
健全部を2cm以上残して折り取り、ヨウ素系薬浴後に別水槽へ。残りは廃棄、本水槽は換水とKH・水温の確認
ブラウンジェリー
直ちに隔離し、患部をスポイトで吸い取り、健全部まで切除して薬浴。器具を分け他のLPSに付けない
イソギンチャク衰弱
口の開放と縮小が続けば水質を全項目測定、硝酸塩が高ければ換水、溶け始めたら他の生体を守るため隔離
起こりやすい怪我と予防・応急処置
ポンプ・吸水口吸込
予防イソギンチャクは必ずポンプ吸込口にスポンジやガードを付け、移動先を毎日確認
応急処置ポンプを即停止、吸い込まれた体を引っ張らずポンプを分解して外す。千切れた部分も回収し換水
フラグ化の裂傷
予防専用ニッパーと清潔な手袋で切る、切断面は乾かさずすぐ水中に戻す
応急処置切断面にヨウ素系薬浴、強めの水流の場所に置き、切断面に砂が当たらないようにする
落下・転倒
予防ライブロックは接着剤やパテで固定、ヤドカリや貝の動きで崩れない組み方にする
応急処置割れた骨格は健全部を残しフラグ化、落ちた個体は砂を払って元の位置に固定、接触した隣個体を離す
隣接個体の刺胞攻撃
予防種類間に10cm以上の間隔を取る、スイーパー触手の長さを見て配置
応急処置攻撃されている個体を離す、傷んだ部分は薬浴、水流の下流側には置かない
動物由来感染症(人にうつる病気)
パリトキシン中毒
感染経路マメスナ・イワスナ類の煮沸・ブラシ洗浄で発生する蒸気や体液
予防イワスナ類は絶対に煮沸・乾燥させない、手袋と保護メガネ、換気、症状が出たら救急受診
刺胞皮膚炎
感染経路素手での接触、触手に触れた手で目や口をこする
予防手袋を着用、触れたら海水で洗い真水やアルコールは避ける、腫れや呼吸苦は受診
創傷感染(ビブリオ等)
感染経路骨格や岩での切り傷から海水中の細菌が侵入
予防手の傷がある時は水槽に手を入れない、傷は流水と石けんで洗い、赤く腫れたら受診
マイコバクテリア症
感染経路水槽内の細菌が手の傷に入る
予防作業後の手洗い、治りにくいしこりや潰瘍は医師に水槽作業を伝える
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 基本は照明による褐虫藻の光合成、強光の種ほど給餌依存が低い
- LPS・イソギンチャクは週1〜2回、小さく刻んだ魚介やアミノ酸液を触手に
- SPSは微細粒子のサンゴフードを少量、与えすぎは硝酸塩上昇の原因
水
- 人工海水を比重1.023〜1.025、水温25〜27℃、pH8.1〜8.4で維持
- 毎週10〜20%換水、新しい海水は水温と比重を合わせてから入れる
与えてはいけないもの
- 水道水の直接添加(塩素・重金属)、必ずRO/DI水か浄水を使う
- 添加剤の一度の大量投入(KHやCaの急変で組織が剥がれる)
- 銅系の魚病薬(サンゴ・イソギンチャクは即死する)
おもちゃ・遊び
- 遊びは不要、代わりにランダム水流ポンプで触手を揺らす
- ライブロックの隙間やフラグスタンドで固定場所を用意
- イソギンチャク用に岩の窪みや砂地など選べる場所を作る
巣・寝床・隠れ家
- SPSは岩の上部で強光・強水流、LPSは中段で中程度の光
- イソギンチャクは岩の隙間に足盤を固定できる場所を好む
床材・トイレ
- サンゴ砂(アラゴナイト)を2〜5cm、または底砂なしのベアタンク
- サンゴ砂はKHとpHの緩衝に役立つが、掃除で巻き上げない
- 底に沈んだ残餌や汚れは週1回ホースで吸い出す
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
ガラスまたはアクリル水槽、サンプ付きオーバーフローが理想
大きさ・広さ
60cm以上、水量が多いほど水質が安定しトラブルに強い
配置・レイアウト
- 照明は青〜白のフルスペクトルLED、SPSは高光量、LPSは中光量
- 水流ポンプで水槽全体に淀みのないランダムな流れを作る
- プロテインスキマーで有機物を除去し、水温はクーラーとヒーターで制御
設置場所の注意
- 直射日光の当たらない場所、夏の室温上昇に備えクーラー必須
- 電源は漏電ブレーカー経由、停電時用のエアポンプと電源を用意
運動・部屋んぽ・散歩
- 散歩は不要、代わりに毎日ポリプの開き具合と色を観察して記録
- 週1回KH・Ca・Mg・硝酸塩・リン酸・比重を測定し変化を見る
- 新規導入は30分以上の水合わせ、照明は弱い場所から段階的に
温湿度管理
適温水温25〜27℃を一定に、1日の変動は1℃以内
適湿度水槽上部の蒸発で塩分が上がる、RO水で自動補給
夏・冬の対策
- 夏は水槽用クーラーで28℃を超えさせない、照明の発熱にも注意
- 冬はヒーター2本で故障に備え、停電時はカイロと毛布で保温
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
爪切りは不要、代わりに伸びすぎたソフトコーラルやSPSのフラグ化(剪定)を行う
ブラッシング・皮膚被毛ケア
ブラッシング不要、代わりに茶ゴケやシアノバクテリアをスポイトやブラシで除去
その他のケア
イワスナ類の清掃は水中のみで行い煮沸・乾燥させない、ガラス面は週1回清掃
外敵からの保護
- サンゴを食べる魚(チョウチョウウオ・大型ヤッコ)を混泳させない
- ヒラムシ・ウミウシ・貝類の食害は導入時に検疫して持ち込まない
- イソギンチャクは大型魚やカニに齧られないよう配置を工夫
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
サンゴが異物を飲むことはないが、イソギンチャクが大きな餌や魚を飲み込んで消化不良で縮む、餌は口に入る大きさで与える
踏みつけ
人が踏むことはないが、ヤドカリ・大型貝がSPSの上を歩いて折る、岩組みを固定し重い生体は入れすぎない
挟まれ
水槽内のポンプやライブロックの隙間にイソギンチャクが挟まり裂ける、ポンプ吸込口にガードを付け、動いた先を毎日確認
落下・転落
岩組みが崩れてサンゴが落ちると折れ、隣の個体と接触して互いに溶ける、接着剤で固定し落ちたらすぐ戻す
逸走・脱走
イソギンチャクは水槽内を歩き回りオーバーフローや配管に入り込む、吸込口を塞ぎ、見失ったら配管内を確認してポンプを止める
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 刺された手を真水やアルコールでこすらない(刺胞が追加発射される)
- 触手を素手で引き剥がさない、イソギンチャクの足盤を無理に剥がさない
安全な引き離しの手順
- 手袋をした手で、触手が巻き付いた部分を海水で流す
- イソギンチャクが腕に吸い付いたら氷を近づけて自然に離すのを待つ
- 皮膚に残った刺胞は海水で洗い、クレジットカードの縁でこそげ落とす
- 体液が付いた手袋や器具は他の生体に触れずに洗浄する
引き離した後の処置
赤み・腫れ・水ぶくれは冷やして皮膚科へ、呼吸苦・めまい・動悸が出たら救急受診
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- イワスナ類の清掃後に咳・発熱・呼吸苦・しびれ(人の救急)
- SPSの組織が数時間で剥がれ全体へ広がっている
- 水温が30℃超または20℃未満、ポンプ全停止
- イソギンチャクが溶けて水が白濁し魚が水面で口パク
当日中に受診
- 白化が2日以上進み複数の個体に広がる
- LPSが茶色く溶け始め悪臭がする
- KH・比重・硝酸塩の数値が基準から大きく外れた
受診時に伝えること・持ち物
水質測定値(水温・比重・KH・Ca・Mg・硝酸塩・リン酸)、照明と水流の変更履歴、患部の写真、導入日
意識・呼吸・心拍の確認
- ポリプが開くか、触手が刺激で縮むかで生死を判断
- 組織の付着と色、骨格露出の範囲を写真で記録
- 水温25〜27℃・比重1.023〜1.025・KH7〜9を即時測定
蘇生の手順
- 心肺蘇生は不可、代わりに水質・水温・照明・水流の正常化が救命
- 異常値があれば換水10〜20%で緩やかに戻し、急激な補正はしない
- 停電時は電池式エアポンプで水流と酸素を確保し、保温する
- 溶けた個体は即隔離し、健全な部分を切り分けて別水槽で回復
止血
- 出血はしないが、組織の剥離はヨウ素系薬浴で感染を防ぐ
- 骨格が折れた部分は乾かさず、切断面を強めの水流に当てる
- イソギンチャクの裂傷は手を加えず、水質を安定させて自己再生を待つ
搬送方法
- 水槽の海水を入れた袋か容器に沈め、空気に触れさせない
- 水温を保冷バッグや発泡箱で維持し、直射日光と振動を避ける
ケースメソッドで学ぶ
