基本情報
- 寿命
- 25〜35年(40年超も珍しくない)
- 体重
- ミニチュア80〜180kg、標準種180〜300kg
- 性格
- 穏やかで慎重、痛みや不調を隠す。仲間への愛着が強い
- 飼育難易度
- 高(土地・削蹄・獣医・30年の覚悟)
- 法規制
- 家畜伝染病予防法の対象(飼養届・衛生管理基準)
- 最重要ポイント
- 絶食は急死につながる。食べない=即受診
生態と特徴
- 体の特徴
- 長い耳で放熱と遠音の聞き取り。蹄は小さく直立し、水分を吸いやすい。被毛に油分がなく雨を通す
- 原産地・分布
- アフリカノロバが起源。北東アフリカの乾燥地帯で家畜化
- 野生での生息環境
- 乾燥した半砂漠・岩場。少ない草を広く歩いて探す暮らし
- 活動時間・睡眠
- 昼行性で早朝と夕方に活発。1日に14〜18時間採食し、立って眠る
- 社会性・人との関係
- ペアや小群で暮らす。単独飼育は強いストレス、必ず2頭以上
特徴的な行動・習性
- 恐怖で逃げず立ち止まって考える。「頑固」は慎重さの表れ
- 痛くても表情に出さず、少し元気がないだけで重症のことがある
- 仲間と離すと鳴き続け食欲が落ち、高脂血症の引き金になる
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
高脂血症
予兆食欲低下・元気消失・ぼんやり立つ。肥満・妊娠・ストレス後に多く、放置で数日で死亡
予防絶食させない。食欲が落ちたら半日以内に受診。急なダイエット・仲間との分離を避ける
蹄葉炎
予兆歩きたがらない・後ろ体重で立つ・蹄が熱い・横になる。春の青草や穀物の後に多い
予防肥満を防ぐ。青々した牧草は時間制限、穀物や甘いおやつを与えない。定期的な削蹄
疝痛(腹痛)
予兆馬と違い転げ回らず、食べない・伏せる・ぼんやり・便が出ないなど静かな変化
予防急な餌の変更をしない。水を切らさない。砂の多い地面で給餌しない。定期駆虫
歯の疾患
予兆食べこぼし(かんだ草を落とす)・片側でかむ・口臭・痩せる・顔の腫れ
予防年1回は獣医師の歯科検診。高齢では年2回。食べ方の変化を毎日観察
蹄膿瘍・白線病
予兆突然の強い跛行・蹄が熱い・蹄の付け根の腫れ。湿った地面で起きやすい
予防6〜10週ごとの削蹄。ぬかるみを避け乾いた床を用意。毎日蹄を裏返して点検
肺虫症
予兆ロバ自身は無症状が多いが、同居する馬が長引く咳をする。幼齢・虚弱個体は咳
予防馬と同居する場合は糞便検査と駆虫を獣医師と計画。放牧地の糞を毎日除去
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
食べない・元気がない
絶食は高脂血症の引き金。好む草や水を目の前に置き、半日以上食べなければ即受診。獣医師に血液検査を依頼
歩かない・蹄が熱い
蹄葉炎を疑い青草・穀物を止め、柔らかい床に移して動かさない。蹄を冷水で冷やし当日中に受診
伏せて食べない疝痛
食べ物を取り上げ水は残す。無理に歩かせず、糞の有無と時刻を記録。人の鎮痛薬は与えず即連絡
咳・鼻水・発熱
他の馬やロバから離し、風雨を避けた馬房で保温。体温37.8℃超や呼吸が速ければ当日受診
起こりやすい怪我と予防・応急処置
有刺鉄線の裂傷
予防有刺鉄線は使わない。木柵や電気柵で囲い、突き出た釘・金具を毎週点検
応急処置清潔な水で洗い、清潔な布で圧迫。深い傷・関節近くは縫合と破傷風予防が必要、当日受診
釘・異物の踏み抜き
予防放牧地の釘・ガラス・針金を拾う。作業後は道具を必ず回収
応急処置刺さった物は抜かず位置を写真に撮り動かさない。抜けていれば蹄を洗い包帯、即受診
角膜の傷(目)
予防馬房の突起物・枝を除く。ハエ除けマスクで目を守り、砂埃の多い日は馬房へ
応急処置目を細める・涙・まぶたの腫れは当日受診。人の目薬はさまず、こすらせないよう注意
転倒・脚の捻挫
予防急斜面・溝・凍った地面を避け、滑りやすい馬房の床にゴムマットを敷く
応急処置歩かせず平らな場所で待機。脚が変形・体重をかけられなければ骨折を疑い往診を依頼
動物由来感染症(人にうつる病気)
皮膚糸状菌症
感染経路脱毛部や使い回した馬具・ブラシとの接触
予防円形脱毛があれば手袋で扱う。ブラシ・馬具は個体ごとに分け消毒
サルモネラ症
感染経路糞便、汚れた手・靴、下痢便との接触
予防世話の後は必ず手洗い。下痢の個体は隔離し、長靴を消毒
レプトスピラ症
感染経路感染動物の尿で汚れた水・泥との接触
予防ネズミ対策。水たまりや尿で汚れた床は手袋で清掃。傷のある手で触らない
クリプトスポリジウム症
感染経路下痢便に含まれる原虫の経口摂取
予防子ロバの下痢便は特に注意。子どもや免疫の弱い人は接触後の手洗い徹底
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 主食は麦わらとチモシー等の低栄養の乾草。1日中少しずつ食べさせる
- 量は乾物で体重の1.3〜1.8%/日。ミニチュア150kgで約2〜2.5kg
- ミネラル塩ブロックを常設。穀物・配合飼料は原則不要
水
- 清潔な水を常時自由に。1日15〜30L飲む、夏は倍
- 冬は氷を割り、冷えすぎない水を。飲水量の低下は疝痛の前兆
与えてはいけないもの
- 穀物・パン・砂糖入りおやつ・果物の大量給与(蹄葉炎)
- 刈ったばかりの草の山・春の青々した牧草の食べ放題
- イチイ・ツツジ・ワラビ・ドングリ・芝刈りの刈り草
おもちゃ・遊び
- 乾草を入れたスローフィーダー・ネットで採食時間を伸ばす
- 丸太・大きなボール・吊るしたブラシで探索欲を満たす
- 砂場や乾いた土の転がり場。砂浴びでストレス解消
巣・寝床・隠れ家
- 3面壁と屋根のあるシェルター。雨風を避け乾いた床が必須
- 2頭が同時に入れる広さ。入口は広く、弱い個体が追い出されない構造
床材・トイレ
- 麦わらまたはおがくず(粉塵の少ないもの)を厚く敷く
- 糞尿は毎日除去し、週1回は全交換して床を乾かす
- 湿った床は蹄膿瘍・皮膚炎の原因。排水のよい場所を選ぶ
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
木柵・電気柵・金網。有刺鉄線は禁止。シェルターは木や金属
大きさ・広さ
馬房は1頭3m×3m以上。放牧地は2頭で0.2ha以上が目安
配置・レイアウト
- 給餌場と水場は離し、泥になりにくい砂利や舗装の上に
- 柵の高さ1.2m以上。ゲートはロバが開けられない二重ロック
- 日陰と風除けを放牧地内に複数設置。毒草を事前に除去
設置場所の注意
- 低地・水はけの悪い場所は避け、冠水する土地に置かない
- 騒音・犬の侵入が少ない場所。近隣への鳴き声配慮も必要
運動・部屋んぽ・散歩
- 広い放牧地で1日中自由に歩けることが基本。常に仲間と一緒
- 肥満予防に引き運動1日30分。坂道や固い地面で蹄を使わせる
- 青草の放牧は春秋は1日1〜2時間に制限。朝の草は糖が多い
温湿度管理
適温乾燥なら−5〜30℃に適応。雨と冷風の組み合わせに弱い
適湿度乾燥を好む。湿った環境は蹄と皮膚の病気を招く
夏・冬の対策
- 夏:日陰・ハエ対策・新鮮な水。涼しい時間に運動
- 冬:雨雪を避けるシェルター。濡れた体は乾かし、防水ラグを検討
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
削蹄は6〜10週ごとに装蹄師へ。毎日蹄を持ち上げ、石・熱・臭いを確認
ブラッシング・皮膚被毛ケア
毎日ブラッシングで皮膚の異常を発見。雨に濡れた被毛は乾かす
その他のケア
歯は年1回獣医師が検査。耳・目のハエ除け。駆虫は糞便検査で計画
外敵からの保護
- 犬・イノシシの侵入を防ぐ柵。ロバは犬を敵とみなし蹴る
- ハエ・アブ・蚊対策にマスクとシェルター。皮膚炎や眼病予防
- ネズミ対策で餌を密閉保管。レプトスピラ・サルモネラ予防
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
ビニール・ひも・ネット・釘を放牧地から除去。食べられる柵用ペンキは不可。ロープは首に絡まない長さに
踏みつけ
人の足を踏むと骨折する重さ。足元に立たず、子どもは大人の付き添いで。作業中は安全靴を履く
挟まれ
ゲートや柵の隙間に頭・脚を挟む事故が多い。隙間は5cm以下か20cm以上に。ハルターは放牧中に外す
落下・転落
溝・急斜面・凍った地面での転倒。トレーラーは滑り止めマットとゆっくりした運転で。斜路は低く
逸走・脱走
ゲートの掛け金を鼻で開ける。二重ロックと見回り。逃げたら警察と家畜保健衛生所へ連絡、仲間の鳴き声で誘導
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 叩く・大声で威嚇する。恐怖で噛みが強くなり蹴りも出る
- 引っ張って離そうとする。皮膚が裂けて傷が深くなる
安全な引き離しの手順
- 落ち着いた声で名前を呼び、力を抜いて動きを止める
- 空いた手で鼻先を軽く押すか、好物の乾草を見せて注意をそらす
- 離れたらすぐ蹴りの届く範囲から外れ、肩の横に立つ
- なぜ噛んだか(痛み・恐怖・餌)を考え、原因を取り除く
引き離した後の処置
流水で洗い圧迫止血。人は破傷風予防と受診。ロバの痛みが原因なら獣医師へ
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 横になって起き上がれない・けいれん
- 激しい腹痛、伏せては立つを繰り返す
- 呼吸が速く苦しそう、歯ぐきが紫や白
- 大量出血・骨の変形・脚に体重をかけない
当日中に受診
- 半日以上食べない・元気がない
- 歩きたがらない・蹄が熱い
- 下痢が続く・糞が1日出ない
受診時に伝えること・持ち物
いつから食べていないか、最後の糞と時刻、体温・心拍、与えた餌の変更、妊娠や肥満の有無
意識・呼吸・心拍の確認
- 正常体温36.5〜37.8℃(直腸)。38℃超は発熱
- 心拍は胸の左肘の後ろで36〜52回/分、呼吸12〜28回/分
- 歯ぐきを押し2秒以内に色が戻るか。紫・白は危険
蘇生の手順
- 体重が重く胸骨圧迫は困難。まず獣医師に往診を要請する
- 横臥なら頭と首を伸ばし、口の中の草や泡を取り除く
- 舌を引き出して気道を確保し、呼吸の有無を数える
- 毛布で保温し、仲間を近くに置いて落ち着かせる
止血
- 清潔なタオルで傷を強く押さえ、5分間離さない
- 脚なら包帯で巻いて圧迫。止血帯は使わない
- 動脈性の噴き出す出血は押さえたまま往診を待つ
搬送方法
- 馬運車やトレーラーに滑り止めを敷き、仲間と一緒に乗せる
- 立てない場合は無理に積まず往診。保温し頭を低くしない
ケースメソッドで学ぶ
