クラゲ
Photo by Marat Gilyadzinov on Unsplash

魚類・水生生物

クラゲ

ミズクラゲ・タコクラゲ・サカサクラゲ

最重要:気泡・吸い込み・強い水流が傘を壊す。専用水槽で飼う

基本情報

寿命
成体で数か月〜1年。ポリプは適切に管理すれば数年
体重
傘径ミズクラゲ5〜30cm、タコ・サカサ5〜15cm
性格
無脊椎動物で学習はしない。刺胞を持ち、触れば刺す
飼育難易度
高(専用水槽・毎日の給餌・水質維持が必須)
法規制
動物愛護法の愛護動物外。採集は漁業権・海岸規制に注意
最重要ポイント
気泡・吸い込み・強い水流が傘を壊す。専用水槽で飼う

生態と特徴

体の特徴
体の95%以上が水。脳や心臓はなく神経網と傘縁の平衡胞で姿勢を保つ。触手に刺胞
原産地・分布
ミズクラゲは日本全沿岸、タコ・サカサクラゲは沖縄など熱帯の浅海
野生での生息環境
ミズクラゲは内湾の表層。サカサクラゲはマングローブや砂泥底
活動時間・睡眠
昼夜の区別はなく拍動を続ける。褐虫藻を持つ種は光を要する
社会性・人との関係
群れは作るが社会性はない。人は刺されるので手で触れない

特徴的な行動・習性

かかりやすい病気と予兆の見方・予防

傘の反転(裏返り)

予兆傘が内側に反り返り泳げず底に沈む。比重や水流の急変、温度ショック後に起きやすい

予防換水は比重・水温を合わせ少量ずつ。比重計で毎週確認。水流は傘が緩く回る程度

萎縮(餌不足)

予兆傘が小さく縮み口腕が短くなる、拍動が弱い、透明感が増す。給餌不足や水質悪化で進む

予防孵化直後のブラインシュリンプを毎日1〜2回。胃腔がオレンジに染まる量が目安

アンモニア中毒

予兆拍動が止まりがちで水面や底に漂う、傘縁がほつれる。給餌後の食べ残しや濾過不足が原因

予防アンモニア・亜硝酸は常にゼロ。給餌30分後に残餌を吸い出し、週10〜20%換水

白化(褐虫藻喪失)

予兆タコ・サカサクラゲの色が抜けて白くなり縮む。高水温・光不足・水質悪化が引き金

予防水温を25〜28℃に保ち、フルスペクトルLEDを1日8〜10時間。急な照明変更をしない

傘縁の溶け・欠け

予兆傘の縁がギザギザに欠けたり白濁して溶け出す。細菌増殖や水質悪化、擦れで起きる

予防底や吸い込み口に当たらない水流にする。水槽内の壁面のぬめりをこまめに除去

ストロビレーション

予兆病気ではないが水槽壁のポリプが幼クラゲを放出し、過密で急に水質が崩れる

予防壁面のポリプを定期的に掃除。増えた幼クラゲは別容器へ移すか飼育数を管理

病気の予兆チェックリスト

毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。

病気の応急処置

傘が裏返った

比重と水温を即測定し、ずれていれば数時間かけて戻す。水流を弱め、強制的に手で戻さない。改善なければ受診

日に日に縮む

給餌を1日2回に増やし、アンモニア・亜硝酸を検査。ゼロでなければ3割換水を2日連続で行い餌の濃度も見直す

拍動が止まる

アンモニア・水温・比重を即測定。異常なら同条件の新しい海水に静かに移す。エアレーションを水槽内に入れない

白化が始まった

水温を測り28℃超なら冷却ファンや保冷剤を水槽外側に当てて下げる。照明時間を確保し、給餌も続ける

起こりやすい怪我と予防・応急処置

気泡による傘の穴

予防エアストーンは水槽内に置かず濾過槽側で。注水時は気泡を立てず静かに。気泡は傘の下に溜まり穴を開ける

応急処置傘の下の気泡は水流を一時止め、ピペットで静かに吸い取る。穴は良い水質なら数日で塞がるので水質維持に集中

吸い込み事故

予防吸水口は細かなメッシュで覆い、流量を傘が吸い付かない強さに。クラゲ専用の水槽構造を使う

応急処置ポンプを即停止し、水を流し込んで自然に剥がす。引っ張らない。傘が裂けても水質を保てば再生することが多い

傘の裂け・ちぎれ

予防網で掬わず、カップやボウルで水ごと移す。装飾やヒーターを水槽内に置かない

応急処置水質を最良に保ち、給餌は続ける。大きく欠けても口と胃腔が残れば回復の余地あり。流れを最弱にして安静

口腕・触手の欠損

予防他種混泳や過密を避ける。水槽内の器具の角を取り、擦れる場所を作らない

応急処置数日〜数週間で再生するので餌を届きやすい位置に流す。食べられていない個体はスポイトで口元へ給餌

動物由来感染症(人にうつる病気)

刺胞皮膚炎

感染経路触手や水槽の水への素手接触。サカサクラゲは粘液だけで刺す

予防手袋で作業し、刺されたら海水で洗い触手を剥がす。真水でこすらない

ビブリオ創傷感染

感染経路傷のある手で海水に触れる。手荒れ・切り傷から侵入

予防傷がある時は手袋。作業後に石けんで洗う。赤く腫れ熱が出たら受診

水槽肉芽腫

感染経路海水中の抗酸菌が皮膚の傷から入り、しこりになる

予防作業は手袋、終了後に手洗い。治らないしこりは皮膚科で水槽飼育を伝える

アレルギー・喘息

感染経路ブラインシュリンプ卵殻の粉塵や刺胞毒への感作

予防孵化容器はマスク着用で扱う。刺されて息苦しさや蕁麻疹が広がれば救急へ

飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材

餌

  • 孵化直後のブラインシュリンプを1日1〜2回、海水で洗ってから
  • 成体にはクラゲ用冷凍・液体フードも可。胃腔が染まる量が適量
  • 褐虫藻種も光だけでは不足。給餌は毎日必要

水

  • 人工海水を比重1.021〜1.024、水温は種に合わせて安定
  • 換水は週10〜20%。新水は水温・比重を合わせてから静かに注ぐ

与えてはいけないもの

  • 海で採った生餌(寄生虫・刺胞動物を持ち込む)
  • 魚用フレーク・顆粒(崩れて水質悪化)
  • 銅を含む薬剤・添加剤(無脊椎動物に致死的)

おもちゃ・遊び

  • 玩具は不要。流れに乗って緩く回ることが唯一の運動
  • サカサクラゲには平らな底面と光が「遊び場」
  • ライトアップは観賞用。明滅する光は避ける

巣・寝床・隠れ家

  • 隠れ家は不要。角のない円形水槽が「巣」そのもの
  • サカサクラゲは底に逆さに座るので砂泥か平らな底を

床材・トイレ

  • ミズ・タコクラゲは底砂なし。砂が傘を傷つける
  • サカサクラゲには細かい砂かベアタンク
  • 装飾・流木・ライブロックは置かない

飼養環境:ケージ・運動・温湿度

ケージ・ハウスの素材

クラゲ専用クライゼル(円形)水槽。角のない透明アクリルかガラス

大きさ・広さ

傘径の3〜4倍の直径。ミズクラゲ3匹なら15〜20L以上

配置・レイアウト

  • 吸水口はメッシュで覆い、水流は傘が中央で緩く回る強さ
  • エアレーション・ヒーターは濾過槽側に置き、本水槽内には置かない
  • 照明は褐虫藻種のみ必要。ミズクラゲは弱光で十分

設置場所の注意

  • 直射日光の当たらない安定した温度の部屋に置く
  • 振動の少ない場所。水槽を叩く・揺らすと傘が傷む

運動・部屋んぽ・散歩

  • 散歩は不要。移動は水ごとカップで掬う
  • 水流を1日数回確認し、全個体が流れに乗っているか見る
  • ポンプ停止は30分以内。長時間止めると底に沈み傷つく

温湿度管理

適温ミズクラゲ15〜25℃、タコ・サカサクラゲ24〜28℃

適湿度湿度は不問。蒸発で比重が上がるので足し水は真水で

夏・冬の対策

  • 夏:水温28℃超で白化・溶け。冷却ファンかクーラーを使う
  • 冬:褐虫藻種はヒーター必須。ミズクラゲも急な低下を避ける

グルーミングと外敵からの保護

爪切り

爪切りはない。代わりに比重・水温・アンモニアの測定を週1回以上行う

ブラッシング・皮膚被毛ケア

ブラッシングはない。代わりに壁面のぬめりとポリプをスクレーパーで除き水流を保つ

その他のケア

給餌後30分で残餌を吸い出す。孵化器やスポイトは毎回真水で洗い乾かす

外敵からの保護

  • イソギンチャク・魚・エビとの混泳は不可。クラゲが食べられる
  • 子どもや猫が水槽に手や前足を入れない配置に
  • 種の違うクラゲ同士も互いに刺し合うので別水槽

飼養上の注意(事故防止)

異物誤飲

クラゲ自身の誤飲はないが、水槽に落ちた砂や異物を胃腔に取り込むことがある。取り除けないなら触らず水質維持で自然排出を待つ

踏みつけ

床に落ちたクラゲは踏まれると潰れて戻らない。掬う時はカップで水ごと、作業は床にトレイを置いて行う

挟まれ

網・スポイト・吸水口のすき間に挟まると傘が裂ける。網は使わず、吸水口の隙間はメッシュで完全に覆う

落下・転落

カップから落ちた個体は真水に触れると数分で崩れる。床に落ちたらすぐ海水の容器に戻し、水道水で洗わない

逸走・脱走

脱走はないが、ポンプ排水で流出する事故がある。オーバーフロー口にメッシュを付け、換水時はホースの先を確認する

噛みついた時の安全な引き離し方

やってはいけないこと

  • 真水でこすり洗いしない(刺胞が一斉に発射する)
  • 素手で触手を払わない。砂でこすらない

安全な引き離しの手順

  1. すぐに水槽から手を抜き、海水か人工海水で患部を流す
  2. 付着した触手はピンセットかカードの縁で剥がす
  3. 飼育3種に酢は無効なことが多い。ハブクラゲ用と考え、迷えば海水
  4. 剥がした後は40〜45℃の湯に20分浸けると痛みが和らぐ

引き離した後の処置

腫れが広がる、息苦しい、蕁麻疹が全身に出たら救急へ。かゆみが続けば皮膚科

救命救急マニュアル

今すぐ夜間救急へ(命に関わる)

  • 飼育者が刺され呼吸困難・全身蕁麻疹
  • 水槽全体でクラゲが一斉に沈み拍動停止
  • アンモニア検出かつ傘が溶け始めている
  • 水温30℃超または10℃以下に急変

当日中に受診

  • 傘が裏返ったまま半日戻らない
  • 傘に大きな裂けや吸い込み痕がある
  • 1週間で傘径が3割以上縮んだ

受診時に伝えること・持ち物

水温・比重・アンモニア値・換水日・給餌内容・水槽の写真と動画。無脊椎動物対応の病院か水族館に相談

意識・呼吸・心拍の確認

  • 拍動の有無:ミズクラゲは1分に30〜60回程度の規則的な拍動
  • 姿勢:傘を上にして流れに乗っていれば正常
  • 刺激反応:水流を軽く当て傘が収縮すれば生きている

蘇生の手順

  1. 心肺蘇生はない。代わりに水温・比重を合わせた新しい海水に移す
  2. エアレーションは別容器で行い、泡をクラゲに触れさせない
  3. 水流を最弱にして傘を上向きに静かに浮かせる
  4. 数時間拍動が戻らず傘が溶け始めたら回復は困難

止血

  • 血液はない。裂け目から胃腔内容が出たら残餌と一緒に吸い出す
  • 裂けた個体は別の清浄な海水容器に隔離し安静
  • 水質を最良に保てば傘の裂けは数日で閉じる

搬送方法

  • ジッパー袋か広口容器に飼育水を7割入れ、空気を残さず密閉
  • 水温を保冷剤かカイロで外側から保ち、振動と光を避けて運ぶ

ケースメソッドで学ぶ

ケースメソッド(状況予測シナリオ 50問)

クラゲに起こりうる病気・怪我・事故を想定した4択問題。解答・解説・課題と改善案付き。

問題を解く
QRコード
エキゾチックアニマルの救命救急法講座 開催地&日程
https://exoticpetsaver.com
実技で学びたい方は講座へ。QRコードをスマホで読み取ってください。