基本情報
- 寿命
- 15〜20年
- 体重
- 150〜350kg(品種・性別で差大)
- 性格
- 穏やかで人に慣れるが力が強い
- 飼育難易度
- 高(土地・法手続き・獣医確保)
- 法規制
- 家畜伝染病予防法で耳標装着・届出義務
- 最重要ポイント
- 反芻が止まったら緊急。腹の張りを毎日確認
生態と特徴
- 体の特徴
- 4つの胃をもつ反芻動物。角は雌雄にある品種も。視野は広いが真後ろは死角
- 原産地・分布
- デクスターはアイルランド、ゼブーはインド原産の小型牛
- 野生での生息環境
- 草原・放牧地。本来は広い草地を群れで移動して採食
- 活動時間・睡眠
- 昼行性。1日8時間採食、8時間反芻。横臥と立位を繰り返す
- 社会性・人との関係
- 群れで暮らす。単独飼育は強いストレス。序列を作る
特徴的な行動・習性
- 食後に横になり長時間反芻する。止まれば異常のサイン
- 尾で虫を払い、頭を低くして威嚇する。角を振る前兆
- 群れから離れて立ち尽くす・歯ぎしりは痛みの表れ
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
鼓脹症
予兆左脇腹が急に膨らみ太鼓のように張る、呼吸が苦しそう、よだれ、立てない
予防マメ科の若草や濡れた草を急に多く食べさせない。穀物を急増しない。放牧前に乾草
第四胃変位
予兆食欲低下、乳量減少、便が少ない、左脇腹を叩くと金属音がする
予防分娩後は穀物を急増せず乾草を十分に与える。分娩前後の体調管理
乳房炎
予兆乳房の一部が熱い・硬い・腫れる、乳が水っぽい・凝固物、発熱、搾乳を嫌がる
予防搾乳前後の乳頭消毒。敷料を乾燥清潔に保つ。乳房の傷を放置しない
蹄病・趾間腐爛
予兆跛行、蹄間が腫れて悪臭、立ち上がりたがらない、蹄が異常に伸びる
予防年2回の削蹄。ぬかるみや泥の放置をなくす。蹄浴槽の設置
創傷性心膜炎
予兆元気消失、背を丸める、前肢を開いて立つ、頸静脈が怒張、反芻停止
予防針金・釘など金属片を飼料や放牧地から徹底除去。マグネット投与を獣医に相談
反芻停止・食滞
予兆反芻の咀嚼が見られない、第一胃の動きが止まる、便が減る、腹が張る
予防飼料の急変を避け、常に良質乾草と清潔な水を自由摂取できるようにする
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
左脇腹が急に膨らむ
すぐ採食を止め、立たせて前肢を高い位置にして歩かせる。横臥させない。即獣医に連絡し指示を仰ぐ
反芻が止まった
穀物をやめ乾草と水のみにし、12時間以内に戻らなければ獣医へ。腹の張り・便の有無を記録
跛行・立てない
蹄間に異物や腫れがないか確認し、乾いた場所で安静に。深い傷や腫れ・悪臭は当日受診
乳房が熱く硬い
患側から頻回に搾って乳を捨て、乳頭を消毒。発熱や食欲低下があれば当日中に獣医へ
起こりやすい怪我と予防・応急処置
角・突きによる外傷
予防角のある個体は除角を獣医に相談。給餌時に個体間の距離を確保する
応急処置出血部を清潔な布で圧迫し、深い傷・大きな裂傷は当日受診。人の負傷も同時に確認
脱柵時の転倒・骨折
予防柵の強度点検。舗装・側溝・坂道で追い回さない。蹄の手入れで滑りにくく
応急処置無理に立たせず移動させない。周囲を静かにし、脚の変形や体重をかけない時は即獣医へ
金属片の誤飲(創傷性)
予防放牧地と飼料から釘・針金を徹底除去。磁石で定期点検。古い柵の修理
応急処置吐かせられない。元気消失・前肢を開く姿勢があれば当日中に獣医へ。マグネット投与も相談
転倒による起立不能
予防ぬかるみ・凍結路面を避ける。分娩前後は栄養管理で代謝病を予防
応急処置胸骨を下にした伏臥姿勢に直し、両側に干し草で支える。横臥のままは危険。即獣医へ
動物由来感染症(人にうつる病気)
牛結核・ブルセラ病
感染経路生乳・流産胎子や悪露との接触
予防法定の定期検査を受ける。生乳を飲まない。分娩介助は手袋を着用
腸管出血性大腸菌
感染経路糞便に触れた手からの経口感染
予防作業後は手を洗う。子どもが触った後も必ず手洗い。糞便処理は手袋
クリプトスポリジウム
感染経路下痢便に汚染された水や手
予防子牛の下痢便は手袋で処理。飲み水を糞便で汚さない
皮膚糸状菌症(白癬)
感染経路皮膚の脱毛部や柵への接触
予防脱毛・円形のかさぶたがあれば触らず獣医へ。柵や器具の消毒
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 良質な乾草を自由採食。体重の約2〜3%を乾物で
- 放牧草・牧草が基本。穀物は少量で急増しない
- 牛用ミネラルブロックと塩を常時置く
水
- 1日30〜60L以上飲む。常に新鮮な水を切らさない
- 冬は凍結防止、夏は水槽の藻を落とし毎日洗う
与えてはいけないもの
- 濡れた若いマメ科草の大量採食(鼓脹症)
- カビた飼料、腐った野菜、穀物の急な大量給与
- ツツジ・シャクナゲ・イチイ・ワラビなど有毒植物
おもちゃ・遊び
- 体をこするブラシ柱や擦り木を設置する
- 放牧地の起伏や木陰など探索できる環境
- 同種の仲間。単独飼育は避ける
巣・寝床・隠れ家
- 雨風を防ぐ三方囲いの牛舎・シェルターを用意
- 乾いた厚い敷料の横臥スペースを確保する
床材・トイレ
- 麦わら・おがくず・もみ殻を厚く敷く
- 糞尿は毎日除去し、敷料を交換して乾燥を保つ
- ぬかるみや泥だまりを作らない排水設計
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
木製または鋼管の柵と牛舎。電気柵は補助
大きさ・広さ
1頭あたり牛舎4㎡以上と放牧地。最低2頭飼育
配置・レイアウト
- 水槽と飼槽は離し、糞で汚れない位置に
- 捕獲・保定用の通路と枠場を設ける
- 日陰・風よけと乾いた休息場所を分ける
設置場所の注意
- 住宅地では悪臭・ハエ・騒音対策と近隣の理解
- 獣医が往診でき、家畜保健所へ届出済みか確認
運動・部屋んぽ・散歩
- 放牧は毎日。日中数時間は自由に歩ける草地を
- 散歩は無口・引き綱で、逃走しない柵内が基本
- 舗装路や人混みは避け、子どもを近づけない
温湿度管理
適温5〜25℃が快適。25℃以上で暑熱ストレス
適湿度乾燥した敷料が重要。多湿で蹄病・乳房炎
夏・冬の対策
- 夏は日陰・送風・水の確保。昼の作業を避ける
- 冬は風よけと乾いた敷料、水の凍結防止
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
削蹄を年2回、削蹄師や獣医に依頼。伸びすぎは跛行の原因
ブラッシング・皮膚被毛ケア
硬めのブラシで毎日。換毛期は念入りに。皮膚の脱毛やかさぶたを確認
その他のケア
耳標の装着と確認、角の手入れ、歯ぎしりの有無、ダニ・シラミの駆除を獣医と計画
外敵からの保護
- 野犬・イノシシ・クマの侵入を柵と牛舎で防ぐ
- アブ・サシバエ対策に防虫ネットや駆虫剤
- カラスが傷や子牛をつつくことがある
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
針金・釘・ビニール・ロープを放牧地から除去。金属誤飲は創傷性心膜炎の原因。胃の磁石は獣医と相談
踏みつけ
人が踏まれると骨折する。足を踏まれても押し返せない。牛の後ろ・足元に立たず、長靴は安全靴型を
挟まれ
柵や枠場で人が壁と牛の間に挟まれる事故が多い。逃げ道を確保し、牛の頭側に壁を背にして立たない
落下・転落
坂道・側溝・舗装路での転倒で骨折する。放牧地の穴や段差を埋める。凍結路面は避ける
逸走・脱走
脱柵は交通事故と人身事故に直結。柵を毎日点検し、脱柵時は追わず餌で誘導、警察と家畜保健所に連絡
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 角や頭突きの際に正面から押し返さない
- 追い詰められた時に走って逃げず背を向けない
安全な引き離しの手順
- 牛の視界に入りながら横に離れ、柵や障害物の裏へ
- 手を広げて落ち着いた低い声で止まるよう促す
- ロープで頭を保定し、第二の人が側面から誘導
- 子どもや他の人を先に柵の外へ出す
引き離した後の処置
人の打撲・骨折はすぐ受診。牛は興奮が収まるまで近づかず、原因(痛み・発情)を確認
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 左脇腹が急激に膨らみ呼吸困難
- 横臥したまま立てない・けいれん
- 大量出血・骨が見える外傷
- 分娩が始まり1時間以上進まない
当日中に受診
- 反芻停止が半日続く・便が出ない
- 跛行が強い・蹄間が腫れて悪臭
- 乳房の熱感腫れ・発熱・食欲不振
受診時に伝えること・持ち物
耳標番号・体重・採食量と反芻の有無・便の状態・発症時刻・与えた飼料の変化を伝える
意識・呼吸・心拍の確認
- 呼びかけと耳の動き、瞬き反射で意識を確認
- 呼吸は脇腹の動きで1分に10〜30回が正常
- 心拍は左肘の内側に手を当て1分に60〜80回
蘇生の手順
- 大型のため胸骨圧迫は実質困難。獣医の指示優先
- 伏臥姿勢に直し気道を確保、口と鼻の異物を除く
- 鼓脹なら獣医の指示で緊急穿刺。素人判断は不可
- 体温低下時は毛布と風よけで保温、横臥を避ける
止血
- 清潔な布を当てて強く5分以上圧迫する
- 脚の出血は包帯で圧迫固定し、縛りすぎない
- 角の折れからの出血は止まりにくく獣医へ
搬送方法
- 家畜運搬車や獣医の往診。無理に歩かせない
- 起立不能は板やスリングで伏臥姿勢のまま運ぶ
ケースメソッドで学ぶ
