基本情報
- 寿命
- 25〜35年(長寿、終生飼養の覚悟が必要)
- 体重
- ミニチュア70〜120kg、ポニー150〜250kg
- 性格
- 温和で賢いが臆病、驚くと蹴る・走る
- 飼育難易度
- 高(土地・飼料・削蹄・獣医確保が必須)
- 法規制
- 家畜伝染病予防法の飼養衛生管理基準が適用
- 最重要ポイント
- 吐けない動物、疝痛と蹄葉炎は命に関わる
生態と特徴
- 体の特徴
- 体高80〜110cm。視野は約350度だが正面と真後ろは死角。前歯で草を切り臼歯ですり潰す
- 原産地・分布
- 欧州原産。シェトランド諸島・アルゼンチン・米国で改良
- 野生での生息環境
- 寒冷で風の強い島や草原。粗食と寒さに強い
- 活動時間・睡眠
- 昼行性。1日16時間前後を採食に費やし、立って浅く眠る
- 社会性・人との関係
- 群れで暮らす草食動物。単独飼育は強いストレス
特徴的な行動・習性
- 驚くと逃げる、逃げられないと蹴る・噛む
- 横になって転がる、寝転んで腹を見るのは疝痛のサイン
- 食べ物があれば際限なく食べ、肥満になりやすい
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
疝痛(コリック)
予兆腹を見る、前掻き、何度も寝転ぶ、汗、食欲なし、便が出ない、腹が張る
予防急な飼料変更をしない。砂地での給餌を避ける。新鮮な水と粗飼料を常に確保
蹄葉炎
予兆前肢を前に投げ出す姿勢、歩きたがらない、蹄が熱い、指動脈の拍動が強い
予防青草・穀物の食べ過ぎ厳禁。春の放牧は短時間から。体重管理と定期削蹄
肥満・代謝症候群
予兆たてがみの付け根の脂肪の盛り上がり、硬い首、腹が垂れる、蹄葉炎の再発
予防体格スコアを月1回確認。干し草を主食にし、濃厚飼料は原則与えない
歯の異常
予兆食べこぼし、噛んだ草の塊を吐き出す、口臭、片側で噛む、痩せる
予防年1回は獣医師の歯科検診とやすり掛け。高齢では半年に1回
破傷風
予兆口が開かない、全身がこわばる、瞬膜が出る、音や光に過敏、歩様が硬い
予防トキソイドワクチンを定期接種。傷ができたら必ず洗浄し受診
日本脳炎
予兆夏〜秋に発熱、元気消失、ふらつき、旋回、意識低下、けいれん
予防蚊が増える前にワクチン接種。蚊の発生源を減らし夕方は厩舎に入れる
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
疝痛が疑われる
飼料と水を取り上げ、転がって自傷しないよう引き馬で静かに歩かせる。すぐ獣医師に連絡
蹄葉炎が疑われる
青草から離し、柔らかい床の馬房で安静に。蹄を冷水で冷やし、当日中に受診
発熱・元気なし
直腸で体温を測り、38.5℃を超えたら獣医師へ。風を避けて涼しく、水を飲めるか確認
食べこぼし・痩せ
干し草を細かく刻むか浸したペレットに替え、数日以内に歯科検診を受ける
起こりやすい怪我と予防・応急処置
蹴り・突進による怪我
予防真後ろに立たない。声をかけてから触る。複数頭の給餌は間隔を空ける
応急処置人の負傷が最優先。馬は馬房に入れ、出血部を清潔な布で圧迫し受診
脚の裂傷・刺創
予防放牧地の釘・針金・ガラスを定期除去。柵は木や電気柵で有刺鉄線を避ける
応急処置流水で洗い、清潔な布で圧迫。深い傷や関節付近は破傷風の恐れ、当日受診
蹄の異常・釘踏み
予防6〜8週ごとの削蹄。蹄の裏を毎日掃除し異物を確認する
応急処置刺さった物は抜かず位置を記録し、蹄を包帯で保護して獣医師を呼ぶ
柵・溝への転倒
予防放牧地の穴や溝を埋める。濡れたコンクリートは滑り止めを施す
応急処置無理に立たせない。起き上がれない、患肢に体重をかけないなら即獣医師へ
動物由来感染症(人にうつる病気)
皮膚糸状菌症
感染経路皮膚の接触、ブラシや馬具の共用
予防世話の後は手洗い。脱毛・フケがあれば用具を消毒し受診
サルモネラ症
感染経路便に触れた手からの経口感染
予防厩舎作業後の手洗い、作業靴の分離、食事前の手洗い徹底
レプトスピラ症
感染経路尿や汚染水との接触、傷口から侵入
予防ネズミ駆除、手袋着用、水たまりの水を飲ませない
破傷風(土壌由来)
感染経路厩舎の土や糞で汚れた傷から(馬から直接ではない)
予防人も10年ごとに破傷風ワクチン。傷は洗って受診
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 主食は良質な乾草。体重の1.5〜2%を1日数回に分け常に食べられる状態に
- 濃厚飼料は原則不要。与える場合は獣医師の指示で少量
- ミネラル塩(鉱塩)を自由に舐められるように設置
水
- 1日10〜20L以上。常に新鮮な水を自動給水器かバケツで
- 冬は凍結防止、夏は藻やボウフラが湧く前に毎日交換
与えてはいけないもの
- 刈ったばかりの芝、イチイ、ドングリ、カエデの枯葉
- カビた乾草、人の菓子、パン、大量のリンゴやニンジン
- 草に混じるワラビ・トリカブト・キョウチクトウ
おもちゃ・遊び
- 乾草を入れるスローフィーダーで採食時間を延ばす
- 吊るしたボールや舐める岩で退屈を減らす
- 同種の仲間との放牧が最良の刺激になる
巣・寝床・隠れ家
- 風雨を避けられる屋根付きのシェルターか馬房
- 三方を囲った構造で、常に出入りできる開放型が理想
床材・トイレ
- おが屑・わら・ペレット敷料を10cm以上敷く
- 糞尿は毎日除去し、週1回は全交換する
- 湿った敷料は蹄の病気の原因、常に乾燥を保つ
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
木製かスチールの馬房。角は丸め、釘や突起を出さない
大きさ・広さ
馬房は3m×3m以上。放牧地は1頭あたり500㎡以上
配置・レイアウト
- 水桶と飼槽は離し、蹴り壊されない高さに固定
- 柵は高さ1.2m以上、電気柵や木柵で有刺鉄線は使わない
- 滑りにくく水はけのよい床。糞尿が溜まらない勾配
設置場所の注意
- 近隣の騒音・臭気対策と自治体への事前相談
- 飼養衛生管理基準に沿い、部外者の出入りを管理する
運動・部屋んぽ・散歩
- 毎日2時間以上の放牧か引き運動。狭い馬房だけの飼育は不可
- 引き運動は固い舗装路を避け、車や犬に驚かない経路で
- 春の青草放牧は1日15分から始め、2週間かけて延ばす
温湿度管理
適温5〜25℃が快適。寒さに強く暑さに弱い
適湿度50〜70%。多湿は蹄と皮膚の病気を招く
夏・冬の対策
- 夏は日陰と風通し、扇風機、蚊対策、水の増量
- 冬は風を遮る、冬毛を刈らない、水の凍結防止
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
6〜8週ごとに装蹄師が削蹄。毎日蹄の裏を蹄鉤で掃除し、石や異物を除く
ブラッシング・皮膚被毛ケア
毎日ボディブラシで泥と抜け毛を落とし、皮膚の傷やダニを確認する
その他のケア
年1回の歯科検診。目やにと鼻汁は清潔な布で拭く。たてがみの脂肪蓄積を確認
外敵からの保護
- 野犬や放し飼いの犬が追い回して転倒や流産を招く、柵を強化
- 蚊・アブ・サシバエは日本脳炎や皮膚炎の原因、防虫ネットと忌避
- カラスやネズミの飼料荒らしは病原体の持ち込み源、密閉容器で保管
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
ビニール、ロープ、砂を乾草と一緒に食べると腸閉塞になる。放牧地のゴミを除去し、乾草は地面に直接置かない
踏みつけ
人が蹄で踏まれると骨折する。安全靴を履き、足元に子どもを近づけない。脚を持ち上げる時は体を馬に密着させる
挟まれ
柵や馬房の格子に頭や脚を挟むと骨折する。格子の隙間は7cm以下か25cm以上にし、ロープの輪を放置しない
落下・転落
トラックへの積み降ろしや溝での転倒で骨折する。斜路に滑り止めを付け、積み降ろしは2人以上で行う
逸走・脱走
脱柵して道路に出ると交通事故になる。柵と門を毎日点検し、脱走時は追わず飼料で誘導、警察と自治体に連絡
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 叩く、大声で怒鳴る、引っ張る。恐怖で噛みが強まる
- 噛まれた部位を引き抜こうとして皮膚を裂く
安全な引き離しの手順
- 落ち着いた低い声で話しかけ、体を馬の肩側に寄せる
- 鼻先を上に押し上げるか、頭絡を引いて顔をそらせる
- 飼料や乾草を鼻先に出して注意をそらす
- 離れたらすぐに馬から距離を取り、別の人が馬を馬房へ
引き離した後の処置
傷を流水で5分以上洗い、圧迫止血。腫れ・痛み・皮膚の変色があれば当日受診、破傷風予防も
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 疝痛で転げ回る、腹が張る、歯ぐきが紫
- 立てない、脚に体重をかけられない
- 脈が1分間60回以上、大量の汗と震え
- 深い傷からの大量出血、骨の露出
当日中に受診
- 食欲がなく便が半日以上出ない
- 蹄が熱く、歩きたがらない
- 38.5℃を超える発熱、鼻汁や咳
受診時に伝えること・持ち物
発症時刻、最後の排便と採食、飼料変更の有無、体温・脈・歯ぐきの色、ワクチン歴、保定できる人数
意識・呼吸・心拍の確認
- 正常値は体温37.5〜38.5℃、脈1分間28〜44回、呼吸8〜16回
- 脈は下あごの内側の顔面動脈で。歯ぐきを押して2秒以内に戻るか
- 鼻孔に手をかざし呼吸を確認。目を触って瞬きがなければ意識なし
蘇生の手順
- 体重70kg超の馬に胸骨圧迫は現実的でなく、呼吸確保が中心
- 横臥なら頭と首を伸ばし、鼻孔と口の異物や泡を取り除く
- 気道を確保しながら獣医師に電話、到着まで体を温め安静に
- 鼻から口をふさぎ胸が膨らむまで吹き込む人工呼吸を獣医師の指示で
止血
- 清潔なタオルで強く圧迫、血が染みても重ねて外さない
- 脚は包帯でしっかり巻く。止血帯は獣医師の指示なく使わない
- 動脈出血は圧迫したまま獣医師を呼び、動かさない
搬送方法
- 歩ければ引き馬で。立てない時は獣医師の往診を要請
- トラック搬送は2人以上、床に滑り止め、毛布で保温し狭い仕切りで固定
ケースメソッドで学ぶ
