基本情報
- 寿命
- クロウミウマ3〜5年。ポットベリー5〜8年
- 体重
- クロウミウマ15〜20cm。ポットベリー最大30cm超
- 性格
- おとなしく動きが遅い。餌の競争に極端に弱い
- 飼育難易度
- 高(生餌・冷凍餌・弱い水流・専用水槽が必須)
- 法規制
- 全種CITES附属書II。輸入は許可制、国内売買は可
- 最重要ポイント
- 1日2〜3回の冷凍ミシス給餌と毎日の観察が命綱
生態と特徴
- 体の特徴
- 骨板の鎧と巻き付く尾、吸い込み式の細い吻を持つ。胃がなく消化が速い。雄が育児嚢で卵を育てる
- 原産地・分布
- クロウミウマはインド太平洋、ポットベリーは豪州南部・NZ
- 野生での生息環境
- 藻場・海草帯・サンゴ礁の縁など流れの弱い浅海。尾で海藻につかまる
- 活動時間・睡眠
- 昼行性で日中に餌を探す。夜は海藻につかまったまま静止して休む
- 社会性・人との関係
- ペアの絆が強く毎朝求愛ダンスをする。他魚に競り負けるため単種飼育が基本
特徴的な行動・習性
- つかまり場所がないと泳ぎ疲れて衰弱する。海藻や枝状の擬岩が必須
- 吻で小エビを吸い込んで食べる。餌は目の前をゆっくり漂う必要がある
- 雄は腹の育児嚢で卵を保護し数週間後に稚魚を産み出す
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
ガスバブル病
予兆尾や体表に気泡状の膨らみ、雄は育児嚢が膨らみ浮いて沈めない、尾先が白く腫れる
予防微細気泡を出すエアストーンを避け、過飽和を防ぐ。水温と水質を安定させ、尾を傷つけない
吻の損傷・吻腐れ
予兆吻の先が白濁・赤く腫れる・欠ける。餌を吸えず口をパクパクするのに痩せる
予防網で掬わず容器で移す。岩や硬い装飾の角を減らし、ポンプの吸水口にスポンジを付ける
給餌困難・痩せ
予兆腹がへこみ骨板が浮き出る、餌に反応しない、冷凍餌を吐き出す、動きが鈍い
予防冷凍ミシスを1日2〜3回与え、食べ残しを回収。給餌容器で餌を集め食べる姿を毎回確認
ビブリオ症
予兆体表に赤い潰瘍や出血斑、鰭が溶ける、急に餌を止め、数日で急死することがある
予防水温上昇と水質悪化が引き金。亜硝酸ゼロ・硝酸塩を低く保ち、弱った個体は早めに隔離
白点病・ウーディニウム
予兆体表に白い点や金粉状の粉、呼吸が速い、岩に体をこする、鰓を激しく動かす
予防新しい魚や餌用の生き物は隔離してから導入。急な水温変化を避け、隔離治療は獣医や店に相談
細菌性皮膚炎・尾腐れ
予兆尾の先が白く濁り崩れる、つかまる力が弱くなる、体表の皮が剥がれ綿状のものが付く
予防尾が巻き付く場所は滑らかな素材にする。水換えを定期的に行い、傷のある個体は隔離して観察
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
尾や体に気泡・浮く
ガスバブル病の疑い。微細気泡のエアを止め、水面を揺らすだけの穏やかな曝気にし、当日中に海水魚に詳しい獣医へ相談
餌を食べない
生きたミシスやブラインを少量ずつ目の前に流す。食べなければ水質を測り、亜硝酸があれば換水。2日続けば受診
吻が白濁・腫れ
触らず、吸水口や装飾を点検。給餌量を細かく分けて確認。悪化や摂餌停止は当日中に受診し、無断投薬はしない
呼吸が速い・白点
水温・比重・アンモニア・亜硝酸を測り、異常があれば同温同比重の海水で三分の一換水。治療薬は獣医か店の指示で
起こりやすい怪我と予防・応急処置
吸水口への吸い込み
予防ポンプ・フィルターの吸水口全てにスポンジを被せる。流量を絞り、水流が直接当たらない配置
応急処置ポンプを止めて静かに外す。尾や皮膚の傷を確認し、隔離水槽で安静。出血や潰瘍があれば当日中に受診
尾の損傷・切れ
予防網で掬わない。鋭いサンゴ骨格や粗い擬岩を避け、滑らかな枝や人工海藻をつかまり場所にする
応急処置隔離水槽に移し水質を清浄に保つ。つかまりやすい細い枝を入れ、尾先の白濁や崩れが出たら受診
他魚・無脊椎の刺傷
予防イソギンチャク・刺胞の強いサンゴ・ヤドカリ・カニと同居させない。餌の競争相手も入れない
応急処置加害生物を分ける。赤い腫れや潰瘍を確認し、餌を食べるか毎回見る。食べなければ当日中に受診
網・器具への絡まり
予防移動は必ず柄付き容器かコップで水ごと掬う。網・ヒーターカバー・給餌器の隙間をなくす
応急処置無理に引かず、器具ごと水中で動かして外す。尾を伸ばして引っ張らない。鰭や皮膚に傷があれば隔離観察
動物由来感染症(人にうつる病気)
非結核性抗酸菌症
感染経路手の傷から水槽水や魚体に触れて感染
予防手に傷がある時は防水手袋。水槽作業後は石けんで手を洗い、治らないしこりは皮膚科へ
ビブリオ感染症
感染経路海水や生エビを扱う際の手の傷から
予防肝臓病や免疫低下のある人は手袋を使う。傷の赤い腫れや発熱はすぐ受診
類丹毒
感染経路生餌のエビや魚体を扱う手の傷から
予防冷凍餌の解凍は専用容器。作業後に手洗い、指が赤く腫れたら受診
連鎖球菌症
感染経路病魚の体液や水槽水が手の傷に触れて
予防病魚の処置時は手袋。水槽水を口で吸わず、サイフォンは手動ポンプを使う
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 冷凍ミシス(栄養強化品)を1日2〜3回。体の大きさ分を数回に分け与える
- 若魚や拒食時は生きたミシスや成体ブラインを栄養強化して
- 給餌皿や弱い水流で餌を目の前に漂わせ、食べる姿を毎回確認
水
- 人工海水を比重1.021〜1.025、アンモニア・亜硝酸ゼロで維持
- 硝酸塩は低く保ち、週1回同温同比重の水で2〜3割換水
与えてはいけないもの
- 乾燥餌やフレークだけの給餌(ほぼ食べず痩せる)
- 栄養強化していないブラインシュリンプだけの長期給餌
- 野外で採った生エビや貝(寄生虫・病原体の持ち込み)
おもちゃ・遊び
- 人工海藻や枝状の擬岩など尾を巻き付ける場所を複数
- ゆっくり動く生きたミシスやブラインは採餌行動を引き出す
- ペアなら求愛ダンスができる高さ(水深)を確保する
巣・寝床・隠れ家
- 海藻の茂みのような隠れ場所を作り、落ち着ける影をつくる
- 水面近くと底近くの両方につかまり場所を用意する
床材・トイレ
- 底砂は細かめを薄く、または底砂なしで餌の残りを掃除しやすく
- 尾を傷つける荒い礫や鋭いサンゴ砂は避ける
- 食べ残しのミシスは毎回スポイトで回収し腐敗を防ぐ
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
ガラスまたはアクリルの海水水槽。高さのある縦長タイプ
大きさ・広さ
ペアで60L以上、高さ45cm以上。ポットベリーは90cm水槽
配置・レイアウト
- 吸水口はすべてスポンジで覆い、水流は弱く拡散させる
- つかまり場所を上層・中層・下層に配置する
- 給餌場所を決めて弱い流れで餌が溜まるようにする
設置場所の注意
- 直射日光と高温になる場所を避け、水温計を常設する
- 蓋をして飛び出しと塩だれを防ぎ、地震で倒れない台に置く
運動・部屋んぽ・散歩
- 運動は水槽内のみ。泳ぎが弱いので水流は弱く、休める場所を多く
- 餌を追う時間が運動になるため給餌を複数回に分ける
- 移動や水槽掃除の際は手で触らず、水ごと容器で移す
温湿度管理
適温クロウミウマ24〜26℃。ポットベリー16〜20℃(冷却必須)
適湿度水槽の湿度管理は不要。蓋で蒸発と塩だれを抑える
夏・冬の対策
- 夏は冷却ファンやクーラーで高水温とビブリオ症を防ぐ
- 冬はヒーターにカバーを付け、停電時は保温材で水温維持
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
爪切りは不要。代わりに尾先の白濁や傷を毎日確認し、巻き付く場所を滑らかな素材にする
ブラッシング・皮膚被毛ケア
被毛ケアは不要。体表の綿状付着物・白点・赤斑を給餌時に光を当てて観察する
その他のケア
吻の形と吸い込みの力を毎回の給餌で見る。給餌器具は毎回洗い、解凍餌は使い切る
外敵からの保護
- 猫が水槽に手を入れないよう必ず蓋をする
- イソギンチャクやカニ、攻撃的な魚と同居させない
- 停電時のポンプ停止で酸欠にならないよう乾電池式エアを用意
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
吻が細いため大きな餌や砂粒を吸い込むと詰まる。底砂は細かいもの、餌は吻に合うサイズを選ぶ。吐き出せない時は受診
踏みつけ
踏みつけはないが飛び出し個体を素手で掴むと骨板と皮膚を傷める。濡れた容器で水ごと掬い、すぐに水槽へ戻す
挟まれ
尾がヒーターカバーや給餌器の隙間に挟まる。隙間のない器具を選び、引っ張らず器具ごと動かして外す
落下・転落
水槽の転倒・水漏れが最大の落下事故。耐震台と水槽マットを使い、停電時に備え乾電池式エアポンプを常備
逸走・脱走
蓋の隙間からの飛び出しは少ないが、吸水口に吸い込まれる事故が多い。全吸水口をスポンジで覆い、毎日個体数を確認
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 指に巻き付いた尾を無理に引っ張って外す
- 網で掬ったり、乾いた手で体をつかむ
安全な引き離しの手順
- 尾が指に巻き付いたら手を水中に入れたまま動かさない
- 海藻や枝を尾の近くに差し出し、乗り換えるまで待つ
- それでも離れない時は尾の付け根から優しく撫でてほどく
- ネットに絡んだらネットごと水中に沈め、泳ぎ出るのを待つ
引き離した後の処置
個体の尾先・皮膚の傷を確認。人の手に傷があれば流水で洗い、腫れたら受診
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 浮いたまま沈めず体が大きく膨らむ
- 底に横たわり鰓だけ動かしている
- 体表に広がる赤い潰瘍や出血斑
- 複数個体が同時に呼吸が速く弱った
当日中に受診
- 2日以上餌を食べない・吐き出す
- 尾や体表に気泡状の膨らみがある
- 吻が白濁・腫れて餌を吸えない
受診時に伝えること・持ち物
水温・比重・アンモニア・亜硝酸・硝酸塩の数値、給餌内容、同居生物、写真と動画
意識・呼吸・心拍の確認
- 正常は鰓蓋がゆっくり規則的に動き、尾でつかまる
- 弱ると鰓が速く浅くなり、つかまらず横向きに漂う
- 横たわって鰓が止まりかけても数分は諦めず処置
蘇生の手順
- 心肺蘇生は不可。水温・比重・アンモニアを即測定
- 穏やかな曝気で酸素を上げ、水流は最小にする
- 異常値があれば同温同比重の新しい海水に移す
- つかまれる枝を入れ、光を落として安静にする
止血
- 体表の出血は触らず、清浄な海水の隔離水槽へ移す
- 出血元の装飾や加害生物を取り除く
- 出血が続く・潰瘍が広がる時は当日中に受診
搬送方法
- 水槽水を入れた袋か容器に空気を多めに入れ、暗く保温する
- 枝を1本入れてつかまらせ、揺れと温度変化を最小にする
ケースメソッドで学ぶ
