エキゾチック・レアペット
ナマケモノ
フタユビナマケモノ(温度26〜30℃・湿度80%の維持が必要)
最重要:体温調節が苦手。温度26〜30℃・湿度80%を通年維持
基本情報
- 寿命
- 20〜30年(飼育下では40年超も)
- 体重
- 4〜8kg
- 性格
- おとなしいが、驚くと前肢の爪と歯で反撃する
- 飼育難易度
- 極高(温湿度管理・食事・診療先の少なさ)
- 法規制
- CITES付属書Ⅲ(一部)・動物愛護管理法。取扱業は登録要
- 最重要ポイント
- 体温調節が苦手。温度26〜30℃・湿度80%を通年維持
生態と特徴
- 体の特徴
- 体長55〜70cm。体温は30〜34℃で変動しやすい。長い爪で枝にぶら下がり被毛に藻が付く
- 原産地・分布
- 中南米(ニカラグア〜ブラジル・ペルー)の熱帯林
- 野生での生息環境
- 熱帯雨林の樹冠。ほぼ一生を木にぶら下がって過ごす
- 活動時間・睡眠
- 夜行性寄りで1日15〜20時間眠る。動きが極端に遅い
- 社会性・人との関係
- 単独性。飼育下でも接触は最小限で静かな環境を好む
特徴的な行動・習性
- 排泄は週1回ほど、木から降りて地上で行う
- 代謝が極端に低く食物の消化に数日〜数週間かかる
- 驚くと前肢の爪で引っかき、噛みつく
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
低体温症
予兆動きがさらに鈍い、体が冷たい、食べない、ぶら下がれず床に落ちる、震えは少ない
予防室温を24℃以下にしない。冬は保温球・パネルヒーターと温度計を複数設置し夜間も監視
消化不良・鼓腸
予兆腹部の膨満、便が出ない、食欲低下、動かない、腹を触ると嫌がる、口臭
予防発酵に頼る消化のため、低温と食事の急変を避ける。葉物中心で糖分の多い果物は控える
代謝性骨疾患
予兆爪や手足の変形、ぶら下がる力が弱い、骨折しやすい、歯の異常、成長不良
予防カルシウムを含む葉物と獣医師指導のサプリを与え、紫外線灯を設置し半年ごとに交換
呼吸器感染症
予兆鼻水、くしゃみ、口を開けて呼吸、呼吸音がゼーゼーする、鼻の周りが汚れる
予防温度と湿度を一定にし、隙間風と結露を防ぐ。エアコンの風を直接当てない
皮膚炎・真菌症
予兆脱毛、かさぶた、フケ、皮膚の赤み、かゆがる、被毛が湿ってべたつく
予防高湿度でも通気を確保し、水滴や汚れがついた毛は乾いた布で拭く。止まり木を清潔に保つ
肥満・糖尿病
予兆腹部の脂肪、動きの低下、多飲多尿、毛づやの低下、体重が急増
予防果物は全体の1割以下。毎月体重を測り、獣医師と食事量を決める
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
体が冷たく動かない
28〜30℃の部屋へ移し、毛布で包み湯たんぽを毛布越しに当てる。急激な加温は避け、直ちに受診
便秘・腹部膨満
室温を28℃以上に上げ、水分の多い葉物を与える。腹を揉まない。3日以上便が出なければ当日受診
鼻水・呼吸が荒い
湿度80%を保ち、隙間風を止める。鼻を拭き取り、開口呼吸があれば数時間以内に受診
食べない・元気がない
温度・湿度を確認し、好物の葉を手で与える。2日以上食べなければ体重を測り受診
起こりやすい怪我と予防・応急処置
落下による骨折
予防止まり木とロープは体重の3倍に耐える強度で固定。床に厚いマットを敷く。老齢個体は高さを下げる
応急処置動かさず毛布で包み、患部を固定せず箱に入れる。爪で自傷しないよう静かに当日受診
爪の破損・剥離
予防金網の細かい目に爪が挟まらない構造にする。爪の長さと欠けを月1回確認
応急処置出血は清潔なガーゼで圧迫し止血。根元から剥がれた爪は感染しやすいため当日受診
指の絞扼(ひも)
予防ほつれたロープや布の糸を放置しない。ハンモックの網目を大きくし絡まりを防ぐ
応急処置絡んだひもをハサミで切り、締めた部分が紫色なら血流障害のため即受診
熱傷(保温器具)
予防保温球・ヒーターは触れない位置に設置し、カバーを付ける。サーモスタットを必ず使用
応急処置患部を流水で10分冷やし、清潔なガーゼで覆う。水ぶくれ・皮膚のただれは当日受診
動物由来感染症(人にうつる病気)
レプトスピラ症
感染経路尿に触れた手、汚れた床材
予防手袋で清掃し手洗い。傷のある手で世話をしない
サルモネラ症
感染経路便に触れた手、食器の共有
予防世話の後は石けんで手洗い。人の食器と分ける
皮膚糸状菌症
感染経路被毛・皮膚への接触
予防脱毛があれば受診。抱いた後は手洗い、衣服を替える
ダニ・外部寄生虫
感染経路体の接触、寝具の共有
予防被毛を定期的に確認。人に発疹があれば皮膚科へ
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 葉物野菜(小松菜・チンゲン菜・桑の葉など)を主体
- 1日1〜2回、夕方に新鮮な葉を交換して与える
- ゆでたサツマイモ・ニンジン・専用ペレットを補助に
水
- 浅い容器を止まり木の近くに固定し毎日交換
- 葉から水分を取るが飲水量が減れば脱水を疑う
与えてはいけないもの
- チョコレート・ネギ類・アボカド・柑橘の皮
- 糖分の多い果物の与えすぎ(肥満・下痢)
- 冷蔵庫から出した直後の冷たい食べ物
おもちゃ・遊び
- 太いロープ・丸太を天井近くに張り渡す
- 頑丈なハンモック(網目の細かい布製)
- 葉を枝ごと吊るして採食行動を促す
巣・寝床・隠れ家
- 天井付近に吊り下げ式の大きなハンモック
- 体を包める毛布と、隠れられる布のトンネル
床材・トイレ
- 床に厚いマットとバークチップを敷く
- 排泄は週1回程度で決まった場所にする習性
- 排泄物は当日除去し、床材は月1回全交換
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
太い金属フレームに木製止まり木、断熱と保湿ができる部屋型
大きさ・広さ
幅2m×奥行2m×高さ2.5m以上の専用室が理想
配置・レイアウト
- 天井付近にロープと止まり木を網目状に配置
- 上部に保温球と紫外線灯、床にパネルヒーター
- 食事台は止まり木の高さに設置
設置場所の注意
- 温度計・湿度計を上下2か所に置き、毎日記録
- エアコンの風と直射日光を避け、結露を防ぐ
運動・部屋んぽ・散歩
- 散歩は不要。天井の止まり木を伝う運動が主
- 床に降ろすと歩けないため、床時間は短く
- 人が抱く時は前肢の爪と顔を離して支える
温湿度管理
適温26〜30℃(24℃以下は低体温の危険)
適湿度70〜80%(加湿器・ミストで維持)
夏・冬の対策
- 夏はエアコンで30℃以下にし、湿度を保つ
- 冬は暖房と加湿を24時間、停電時は湯たんぽで対応
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
爪は移動に必須のため切らない。割れ・変形があれば獣医師に相談
ブラッシング・皮膚被毛ケア
被毛は湿りやすく、乾いた布で軽く拭く程度。緑色の藻は正常
その他のケア
歯は削れ続けるため年1回獣医師で確認。目や鼻の汚れは温めた布で拭く
外敵からの保護
- 犬・猫と同室にしない(爪で反撃し双方が負傷)
- 蚊・ダニ対策として網戸と防虫ネットを使用
- カラス・野生動物に備え屋外には出さない
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
ひもや布の糸くず、小さな装飾品を口にすることがある。食欲低下・便が出ない時は誤飲を疑い当日受診
踏みつけ
床にいる時は動きが遅く、暗い部屋で踏む危険がある。床に降りている間は照明をつけ、足元を確認
挟まれ
扉やハンモックの金具に爪や指を挟みやすい。開閉前に位置を確認。指が紫色・腫れていれば当日受診
落下・転落
ロープや止まり木の緩みで落下し骨折する。固定金具を月1回点検し、床に厚いマットを敷く。落下後は動きを観察し受診
逸走・脱走
扉を二重にし、換気口に金網を張る。逃げても遠くへは行かず高い場所を探す。低体温を防ぐため夜間は特に急いで探し、自治体へ連絡
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 前肢を引きはがそうとする(爪で深く裂ける)
- 顔の前で大声を出す・叩く
安全な引き離しの手順
- 動きを止め、抱えていれば体を支えたまま静止
- 厚手のタオルを頭にかぶせ、視界を遮る
- 止まり木や毛布を差し出し、つかみ替えさせる
- 口や爪が緩んだ瞬間に静かに手を引く
引き離した後の処置
傷は流水で5分洗い圧迫止血。爪の裂傷は深く感染しやすいため、当日人の医療機関へ受診
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 体が冷たく反応が乏しい
- 口を開けて呼吸、呼吸音が異常
- 高所から落ちて動かない、出血
- けいれん・意識がない
当日中に受診
- 2日以上食べない
- 便が1週間出ない、腹部が膨らむ
- 握力が弱くぶら下がれない
受診時に伝えること・持ち物
体重・年齢・室温と湿度の記録・食事内容・便の写真を持参。保温したキャリーで搬送し、事前に電話で受診可否を確認
意識・呼吸・心拍の確認
- 呼びかけと爪の付け根への刺激で反応があるか
- 胸の動きで呼吸数を確認(安静時1分に10〜25回)
- 前肢内側で脈を確認(1分に60〜100回)
蘇生の手順
- 右を下に横たえ、口内の葉や異物を除く
- 胸の最も高い所を片手で1分100回圧迫
- 30回圧迫後、口を閉じ鼻から2回息を吹き込む
- 毛布で保温しながら2分ごとに反応を確認
止血
- 清潔なガーゼで5分以上圧迫し続ける
- 爪の出血は根元を圧迫し、剥がれた爪は保管
- 止血しない・裂傷が深い場合は即受診
搬送方法
- 毛布で包み、湯たんぽを毛布越しに入れた箱で搬送
- 車内は28℃前後に保ち、揺れを減らして静かに
ケースメソッドで学ぶ
