ムササビ ケースメソッド 50問
状況を読み、飼い主として「最初に取るべき行動」を4択から選んでください。回答後に解説・課題・改善案が表示されます。マニュアルを見る
解答と解説・課題と改善案(全50問)
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Q1神社の境内で拾った幼獣が冷たくぐったり病気
6月の朝6時、散歩中に神社の大木の根元で毛の生えかけたムササビの幼獣を見つけた。体は冷たく、手のひらに乗せるとわずかに動くだけで鳴かない。周囲に親の姿はなく、昨夜は雨だった。自宅に連れ帰り、とりあえず何か飲ませようと小動物用ミルクを用意したところだ。
連れ帰った直後に最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 空腹だろうからスポイトでミルクをすぐ飲ませる
- タオルで包み湯たんぽを横に置き30分かけて温め、温まってから糖液を数滴
- ドライヤーの温風を当てて一気に体を温める
- 野生動物なので触らず、すぐ元の場所に戻して立ち去る
正解B.タオルで包み湯たんぽを横に置き30分かけて温め、温まってから糖液を数滴
解説雨に濡れて落下した幼獣は低体温と低血糖を同時に起こしている。冷えた体に授乳すると消化できず下痢や誤嚥で死亡するため、まず30分以上かけてゆっくり温め、温まってから糖液を舌に数滴、その後薄めたミルクへ進める。ドライヤーは急激な加温で循環が崩れ火傷も起こす。衰弱した幼獣を戻すだけでは助からない。ムササビは鳥獣保護管理法の対象なので、保温と並行して都道府県の鳥獣担当課に連絡し、当日中に野生動物を診られる動物病院へ受診する。
課題「弱っている=空腹」と考え、保温より授乳を優先しようとした。落下幼獣の第一の死因は低体温と低血糖であり、保温が最初という知識がなかった。また保護には許可が必要という法規制を知らなかった。
改善案野生動物を見つけたらまず保温、次に行政連絡、授乳は温まってからという順序を覚える。都道府県の鳥獣担当課と野生動物を診られる動物病院の連絡先を調べておく。湯たんぽやフリースをすぐ用意できるようにしておく。
Q2授乳後にむせて鼻からミルクが出た病気
保護して5日目、生後1か月ほどのムササビ幼獣。午後9時、仰向けに抱いてシリンジで小動物用ミルクを与えていたところ、急にむせて鼻の穴からミルクが流れ出た。その後も呼吸のたびにプチプチという音がして、口を少し開けて速く呼吸している。
この時の対応として最も適切なものはどれか
- むせが落ち着いたら残りのミルクを飲ませて栄養を確保する
- 鼻を拭いてそのまま寝かせ、翌朝の様子で受診を判断する
- 逆さにして背中を強く叩き、ミルクを吐き出させる
- 授乳を中止し腹ばいにして鼻口を拭き、呼吸音が続くなら今すぐ受診する
正解D.授乳を中止し腹ばいにして鼻口を拭き、呼吸音が続くなら今すぐ受診する
解説仰向けでの授乳と流し込みは誤嚥の典型的な原因で、ミルクが気管に入ると誤嚥性肺炎を起こす。呼吸音や開口呼吸が続いているなら肺に入った可能性が高く、夜間でも今すぐ受診する。残りを飲ませればさらに誤嚥し、翌朝まで待つと肺炎が進んで手遅れになる。逆さにして叩くのは骨折や頭部外傷の危険があり、気管の奥のミルクは出ない。授乳は腹ばいの姿勢で、幼獣が自分で吸う分だけ与えるのが原則である。
課題人の赤ちゃんと同じ仰向け姿勢で授乳し、シリンジで押し出して与えていた。ムササビ幼獣の正しい授乳姿勢を調べずに始めたことが誤嚥の直接の原因になった。
改善案授乳は腹ばいで頭を少し上げた姿勢にし、シリンジは押さず幼獣の吸う力に任せる。一回量を少なく回数を多くし、授乳後は鼻口を確認する習慣をつける。獣医師に授乳方法を直接指導してもらう。
Q3幼獣の便が水のように緩くなった病気
保護8日目の幼獣。昨日まで黄色いペースト状だった便が、今朝から水様になり、肛門周りの毛がべったり汚れている。昨日ミルクの銘柄を切らし、別の小動物用ミルクにいきなり替えたばかり。食欲はあり、まだ元気に動くが、お腹が少し張っている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ミルクを一段薄め、経口補水液を少量ずつ与えて便を撮影し、翌日までに受診する
- 人用の下痢止めを少量飲ませて様子を見る
- ミルクを完全に止めて一日絶食させ腸を休ませる
- 元気があるので今まで通りの濃さで続け、数日様子を見る
正解A.ミルクを一段薄め、経口補水液を少量ずつ与えて便を撮影し、翌日までに受診する
解説ミルクの急な切り替えは幼獣の下痢の代表的な原因で、脱水が急速に進む。濃度を一段薄め、経口補水液を少量ずつ与えて水分を保ち、便の写真を持って翌日までに受診する。人用の下痢止めは小動物では危険で用量もわからない。完全な絶食は幼獣の低血糖を招き、小さな体では数時間で命に関わる。同じ濃さで続けると下痢が悪化する。ぐったりする、血便が出る、冷たくなるなら即受診に切り替える。
課題ミルクの予備を用意しておらず、切らした時点で新しい銘柄に一気に切り替えた。幼獣の消化管は急な変更に弱いという知識がなく、切り替えは数日かけて混ぜながら行うという基本が守られなかった。
改善案ミルクは必ず予備を一袋持ち、切り替える時は数日かけて旧新を混ぜる比率を変えていく。便の色と硬さを毎回記録し、変化があれば写真を残す。経口補水液と小さなシリンジを常備しておく。
Q4よだれと食べこぼしが目立つ成獣病気
飛膜の怪我で保護して3か月になる成獣のムササビ。許可を得て自宅の飼育室で管理している。最近、葉をくわえてもぽろぽろ落とし、口の周りと胸の毛がよだれで濡れている。夜に餌の減りも少ない。餌は手に入りやすい果物と市販のリスフードが中心で、枝はあまり入れていなかった。
最も疑うべき状態と対応として適切なものはどれか
- 果物の食べ過ぎによる口内炎なので、果物を抜いて数日待つ
- 歯周病なので人用の口腔スプレーをかけて様子を見る
- 切歯の過長による不正咬合を疑い、当日中に受診して歯の処置を受ける
- ストレスによる食欲低下なので飼育室を明るくして声をかける
正解C.切歯の過長による不正咬合を疑い、当日中に受診して歯の処置を受ける
解説ムササビの切歯は一生伸び続け、野生では硬い枝や木の実で削れる。柔らかい果物やペレット中心の餌では摩耗せず、伸びた歯で口が閉じにくくなり、よだれと食べこぼし、体重減少が出る。歯の処置は獣医師にしかできないため当日中に受診する。果物を抜いても伸びた歯は戻らず、人用スプレーは誤飲の危険がある。夜行性のムササビの部屋を明るくするのは強いストレスとなり逆効果である。
課題入手しやすい果物とペレットで代用し、ムササビ本来の葉と枝を中心とした食事になっていなかった。歯の長さを週1回確認する習慣がなく、気づいた時には数週間分伸びていた。
改善案毎日生枝とどんぐりなど硬い物を入れて歯を自然に削らせる。週1回、タオルで包んで口元を確認し、歯の長さと口周りの汚れを記録する。放獣後に自力で採食できることが目標であることを常に意識する。
Q5後ろ足がふらつき止まり木から落ちる病気
春に保護し、ミルクから離乳して4か月になる若いムササビ。離乳後の食事はバナナやリンゴ、ひまわりの種が中心だった。最近、後ろ足を引きずるように歩き、止まり木に登ろうとして床に落ちることが続いている。背中が少し曲がって見える。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 運動不足なので広い部屋に放して登らせ、足を鍛える
- 高い止まり木を外し低いケージに移し、抱き上げは最小限にして当日中に受診する
- カルシウムの錠剤を砕いて大量に食べさせる
- 自然に治ることが多いので1〜2週間様子を見る
正解B.高い止まり木を外し低いケージに移し、抱き上げは最小限にして当日中に受診する
解説果物と種子中心の餌はカルシウムが不足しリンが多く、成長期の個体は代謝性骨疾患を起こす。骨がもろく、わずかな落下で骨折するため、まず落下を防ぐ低いケージに移し、抱き上げを減らして当日中に受診する。治療は獣医師の診断に基づく栄養補正が必要で、自己判断でカルシウムを大量に与えると別の障害を起こす。放して運動させれば骨折し、放置すれば変形が進んで放獣できなくなる。
課題離乳後の餌を人の都合で果物と種子に偏らせ、ムササビ本来の多種の葉を与えていなかった。成長期にカルシウムとビタミンD3が重要という知識がなく、ふらつきが出るまで異常に気づけなかった。
改善案離乳後は多種の生葉と枝を主食にし、果物と種子はごく少量にする。栄養補助は獣医師の指示に従う。週1回体重を測り、歩き方と登り方を観察して記録する。保護時点で獣医師と食事計画を作る。
Q6丸一日餌が減らず便も出ていない病気
保護飼養中の成獣。昨夜入れた葉と木の実が今朝ほとんど減っておらず、ケージの床に新しい便もない。巣箱を覗くと丸まって眠っているが、普段なら日没後すぐ出てくるのに昨夜は出てきた気配がない。室温は22℃で変わっていない。
この状況での判断として最も適切なものはどれか
- 夜行性で昼は寝るのが当たり前なので、今夜まで待って再確認する
- 好物の果物を増やして食欲を刺激し、数日様子を見る
- 巣箱から引っ張り出して無理にでも食べさせる
- 24時間の絶食と排便停止は危険信号なので当日中に受診する
正解D.24時間の絶食と排便停止は危険信号なので当日中に受診する
解説葉食中心のムササビは常に腸が動いている動物で、丸一日食べず便が出ないのは消化管の停滞や全身の病気のサインである。小型の草食性哺乳類は絶食が長引くほど肝臓や腸に障害が起き回復が難しくなるため、当日中に受診する。夜まで待つとさらに半日絶食が延びる。果物を増やすのは原因の解決にならず、無理に食べさせると誤嚥する。受診時は餌の減り、便の有無、最後に食べた時刻を伝える。
課題「夜行性だから昼は寝ていて当然」という認識が、前夜の出巣がなかったという異常の見落としにつながった。毎朝の餌の減りと便の数を記録する習慣がなく、変化に気づくのが半日遅れた。
改善案毎朝、餌の減り、便の数と形、出巣の有無をノートに記録する。前夜から食べていないと分かった時点で受診を決める基準を作る。野生動物を診られる病院の診察時間と夜間救急の連絡先を飼育室に貼っておく。
Q7鼻水とゼーゼーという呼吸音病気
11月、保護中の若いムササビ。朝、巣箱の中からゼーゼーという音が聞こえ、覗くと鼻の周りが濡れていて呼吸が速い。飼育室は北側の窓際に置いており、昨夜の室温は12℃まで下がっていた。餌は少し食べているが、いつもより動きが鈍く巣箱から出てこない。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 飼育室を暖かい部屋に移し巣箱を厚くして保温し、当日中に受診する
- 人の風邪薬を少量ミルクに混ぜて飲ませる
- 加湿器の蒸気を巣箱に直接当てて鼻を通す
- 食べているので問題なく、暖かくなる春まで様子を見る
正解A.飼育室を暖かい部屋に移し巣箱を厚くして保温し、当日中に受診する
解説寒さで体力が落ちると呼吸器感染を起こしやすく、鼻水と呼吸音は肺炎に進む前の重要なサインである。まず保温して体力の消耗を止め、当日中に受診して診断を受ける。人の風邪薬は小動物に有害で用量も不明なため絶対に与えない。蒸気を直接当てると巣箱内が過熱・過湿になり火傷の危険もある。食欲があっても呼吸の異常は急変しやすく、様子見は危険である。
課題飼育室を北側の窓際に置き、夜間の室温低下を把握していなかった。成獣でも15℃を下回る環境は負担になるという認識が薄く、温度計をケージの高さに置いていなかった。
改善案飼育室は窓から離れた場所に置き、温度計をケージの高さに設置して毎朝確認する。冬は巣箱を厚くしヒーターを外側に設置する。呼吸の速さと音を日々観察し、変化があれば当日受診する基準を決める。
Q8保護直後の成獣に脱毛とフケ病気
交通事故で保護されたムササビを一時的に預かることになり、許可の手続きを進めている。到着して2日目、タオル越しに観察すると背中に円形の脱毛があり、フケが多く、体を頻繁に掻いている。預かった際は素手で扱ってしまった。
この時の対応として最も適切なものはどれか
- 乾燥が原因なので保湿クリームを塗る
- 自然に治るので様子を見て、慣れるまで毎日素手で触って観察する
- 手袋で扱い他の動物と隔離し、脱毛とフケの写真を撮って獣医師に駆虫と検査を頼む
- シャンプーで全身を洗って清潔にする
正解C.手袋で扱い他の動物と隔離し、脱毛とフケの写真を撮って獣医師に駆虫と検査を頼む
解説野生由来の個体はダニやノミ、皮膚糸状菌をほぼ必ず持っており、円形脱毛とフケは糸状菌の典型例である。糸状菌は人にもうつるため、手袋で扱い、他の動物と隔離し、獣医師に駆虫と検査を依頼する。保湿クリームは原因を隠すだけで舐めれば有害。素手で毎日触れば人に感染する。全身シャンプーは野生動物に強いストレスで低体温を起こし、飛膜を濡らすと乾きにくい。素手で触った手は念入りに洗い、人に発疹が出たら皮膚科へ。
課題到着時に素手で扱い、野生動物は寄生虫や真菌を持っている前提で対応する意識がなかった。到着直後の健康チェックと獣医師の初診を済ませる前に、自宅で観察を始めてしまった。
改善案野生動物の受け入れ時は必ず厚手手袋を使い、到着後すぐ獣医師で初診と駆虫を受ける。他のペットとは部屋を分け、掃除用具も専用にする。扱った後は必ず手洗いし、人の皮膚の変化も確認する。
Q9巣箱から落ちた幼獣が動かない怪我
保護して3週間の幼獣。元気が出てきたので高さ1mの位置に巣箱を取り付けたケージに移した。夕方、ケージの床で幼獣が横たわっているのを発見。呼吸はしているが起き上がらず、触ると小さく鳴いた。片方の後ろ足が不自然な方向に曲がって見える。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 足を触って骨折かどうか確かめ、添え木を当てて固定する
- 触診せずタオルごと箱に移し、暗く静かにして今すぐ受診する
- 巣箱に戻して安静にし、翌朝の様子で判断する
- 痛み止めとして人用の鎮痛剤を米粒ほど与える
正解B.触診せずタオルごと箱に移し、暗く静かにして今すぐ受診する
解説幼獣の落下は骨折と頭部外傷の両方を疑う。素人が足を触ると骨折端が動いて神経や血管を傷つけ、添え木もさらに痛みと損傷を与える。タオルごと箱に移して暗く静かにし、動かない・足の変形があるため今すぐ受診する。翌朝まで待てば骨折部の損傷が進み、痛みで食べられず幼獣は急速に衰弱する。人用鎮痛剤は小動物に中毒を起こすことがあり絶対に与えない。
課題まだ登る力が未熟な幼獣を、床に厚い寝床のない高さ1mのケージに移してしまった。段階的に高さを上げるという原則を守らず、落下に備えた床の準備もなかった。
改善案幼獣は低い箱から始め、登り下りが安定してから少しずつ高さを上げる。ケージの床には常に厚いフリースや寝床を敷き、落下時の衝撃を減らす。移動後の数日は様子を頻繁に見て、登り方が不安定なら元の環境に戻す。
Q10猫がくわえていた幼獣に小さな傷怪我
5月の夕方、庭で飼い猫がムササビの幼獣をくわえているのを見つけ、取り上げた。幼獣は鳴いて動き、よく見ると脇腹に針で刺したような小さな傷が2つあるだけで出血はほとんどない。元気そうなので、保温して明日の朝一番に行政へ連絡しようと考えている。
この時の判断として最も適切なものはどれか
- 猫の咬傷は小さくても内部で感染が進むため、保温し当日中に獣医師の診察を受ける
- 出血がなく元気なので消毒液を傷に塗って翌朝まで待つ
- 傷が小さいので何もせず、翌朝元の場所に戻す
- 傷口を絞って血を出し、絆創膏を貼って保温する
正解A.猫の咬傷は小さくても内部で感染が進むため、保温し当日中に獣医師の診察を受ける
解説猫の牙は細く深く刺さり、皮膚の傷が小さくても筋肉や内臓まで達していることが多い。猫の口内細菌が体内に入ると数時間で感染が広がり、小さな幼獣は一晩で敗血症になる。見た目が元気でも当日中に受診し、必要な処置を受ける。消毒液を表面に塗っても深部の細菌には届かず、傷を絞ると組織が傷む。咬まれた個体を戻しても生存は望めない。保温と行政連絡は並行して行う。
課題傷の小ささと見た目の元気さで重症度を判断してしまった。猫の咬傷が深く感染しやすいという知識がなく、飼い猫が野生動物を捕まえる環境を放置していた。
改善案猫に咬まれた野生動物は例外なく当日受診と覚える。飼い猫は室内飼いにし、庭に出すなら繁殖期の春と秋は特に注意する。野生動物を診られる病院と行政の連絡先を事前に調べて携帯に登録しておく。
Q11ケージの金網に引っかかり飛膜が裂けた怪我
夜11時、飼育室から激しく暴れる音がして見に行くと、成獣のムササビが金網の継ぎ目に飛膜を引っかけていた。自力で外れたが、体側の飛膜に3cmほどの裂け目ができ、縁から血がにじんでいる。興奮して金網を走り回っている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 裂け目を手で引っ張って合わせ、テープで貼り合わせる
- 出血は少ないので放っておけば自然に治る
- 興奮が落ち着くまで部屋の電気をつけたまま観察を続ける
- 部屋を暗くして落ち着かせ、タオルで包んで出血部をガーゼで押さえ、翌朝一番に受診する
正解D.部屋を暗くして落ち着かせ、タオルで包んで出血部をガーゼで押さえ、翌朝一番に受診する
解説飛膜は薄い皮膚で血管が多く、裂けると治りにくい。まず暗くして興奮を鎮め、タオルで包んで裂け目をガーゼで軽く押さえて止血する。飛膜の損傷は滑空能力に直結し、放獣できるかどうかを左右するため、小さくても翌朝一番に受診する。手で引っ張ったりテープを貼ると膜がさらに裂け、毛と一緒にテープを剥がす際に損傷が広がる。明るいまま観察を続けると夜行性のムササビはさらに暴れて傷が広がる。
課題金網の継ぎ目や針金の突起を点検せずにケージを使用していた。飛膜という薄く広い器官を持つ動物では、ケージの小さな突起が致命的な怪我につながるという認識が不足していた。
改善案ケージ設置前に継ぎ目や角を指でなぞり、突起はヤスリで削るかテープで覆う。爪が引っかかるタオル地や糸のほつれた布は使わない。飛膜は週1回伸ばして傷の有無を確認し、小さな傷でも受診する。
Q12庭の防鳥ネットに成獣が絡まっている怪我
早朝、果樹にかけた防鳥ネットに大きなムササビが絡まって動けなくなっていた。首と前足にネットが食い込み、もがくたびに締まっている。歯をむき出して威嚇し、近づくと鳴く。手元には厚手の革手袋、タオル、はさみがある。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 素手でネットをほどき、外れたらそのまま逃がす
- ネットごと木から外し、絡まったまま動物病院に持ち込む
- 革手袋をはめ、タオルで頭を覆って暗くし、ネットをはさみで切って外し、鳥獣担当課と獣医師に連絡する
- 暴れるので自然に外れるのを待ち、数時間後に様子を見る
正解C.革手袋をはめ、タオルで頭を覆って暗くし、ネットをはさみで切って外し、鳥獣担当課と獣医師に連絡する
解説ムササビの切歯は深い咬傷を起こすため素手は厳禁。頭をタオルで覆い暗くすると落ち着きやすく、ネットはほどかず切って外す。締め付けた部分は時間とともに血流が止まり壊死するため、数時間放置は危険である。外した後は箱に入れ、鳥獣保護管理法の対象なので都道府県の鳥獣担当課に連絡し、締め付け痕や傷を獣医師に診てもらう。無傷に見えてもすぐ逃がすと後で壊死や感染が起きる。ネットごと運ぶのは移動中に締まり続けて危険である。
課題ムササビが出る地域で、網目の大きい防鳥ネットを木に直接かけていた。野生動物が絡まる危険を想定した設置になっておらず、朝の見回りも遅かった。
改善案防鳥ネットは目の細かい物を選び、たるみなく張って早朝と夕方に見回る。厚手手袋とはさみ、タオル、運搬用の箱を一式そろえておく。鳥獣担当課と野生動物対応の病院の連絡先を事前に把握しておく。
Q13給餌中に手を咬まれて離さない怪我
保護飼養中の成獣に餌を入れようと素手でケージに手を入れたところ、驚いたムササビに人差し指を深く咬まれた。歯が食い込んだまま離さず、強い痛みで反射的に手を引き抜こうとしている。ムササビも興奮して体をよじっている。
この瞬間に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 痛みをこらえて一気に手を引き抜く
- 手の動きを止め、空いた手のタオルで顔を覆って暗くし、緩んだ瞬間に手を引く
- 大声を出して驚かせ、顔を叩いて口を開けさせる
- ムササビの鼻を強くつまんで息ができないようにする
正解B.手の動きを止め、空いた手のタオルで顔を覆って暗くし、緩んだ瞬間に手を引く
解説咬まれた状態で手を引き抜くと切歯が肉を裂き、傷が深く大きくなる。動きを止めるとムササビの緊張が緩みやすく、顔をタオルで覆って暗くすれば力が抜けることが多い。緩んだ瞬間に手を引き、ムササビを巣箱の方へ下ろす。大声や叩く行為は恐怖でさらに強く咬み直し、鼻をつまむのも暴れて傷が広がる。離れたら流水で5分洗い消毒し、深い傷や腫れ、熱が出れば人の病院を受診し破傷風の接種歴を確認する。
課題野生動物のケージに素手で手を入れた。ムササビは臆病で追い詰められると強く咬むという性質を軽視し、厚手手袋の着用や、餌を入れる前に居場所を確認する手順が習慣化していなかった。
改善案ケージに手を入れる時は必ず厚手の革手袋をつけ、巣箱に入っている時間帯に手早く餌を交換する。咬まれた時の手順を飼育室に貼り、タオルを常に手の届く場所に置く。破傷風の予防接種歴を確認しておく。
Q14爪が折れて指先から出血している怪我
午後、飼育室の床に点々と血の跡があり、巣箱の中の成獣を見ると前足の指先から血が出ている。爪が根元から折れたようだ。出血は多くないが止まっておらず、ムササビは足を舐めている。手元に清潔なガーゼと手袋がある。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 手袋をはめタオルで包み、ガーゼで出血部を5分間押さえ続け、止まらなければ押さえたまま受診する
- 消毒液を傷にかけ、絆創膏を巻いて様子を見る
- 血が出る爪を根元から自分で抜いて止血する
- 舐めれば治るので触らずそっとしておく
正解A.手袋をはめタオルで包み、ガーゼで出血部を5分間押さえ続け、止まらなければ押さえたまま受診する
解説爪の出血は量が少なく見えても止まりにくい。タオルで包んで安全を確保し、ガーゼで5分間押さえ続けるのが基本で、途中で何度も確認すると血の塊が取れて止まらない。5分押さえても止まらない場合は押さえたまま受診する。消毒液や絆創膏は舐めて飲み込む危険があり、動物は絆創膏をすぐ外す。残った爪を抜くと出血と痛みが増す。止血後も数日以内に受診し、感染や爪の根元の損傷を確認する。
課題ケージ内に爪が引っかかる布や網目の粗い部分があり、点検を怠っていた。出血に対する基本の圧迫止血と、ガーゼ・手袋などの救急用品の準備は整っていたが、使い方を事前に確認していなかった。
改善案ケージの床材や布に爪が引っかかる物がないか週1回点検する。救急用品の箱にガーゼ、手袋、タオル、止血の手順を書いたメモを入れておく。爪の伸びすぎは獣医師に相談し、無理に自分で切らない。
Q15世話中にケージから逃げて部屋に出た事故
夜9時、飼育室で餌を交換するためケージの扉を開けた瞬間、成獣のムササビが飛び出してカーテンレールの上に逃げた。部屋の窓は網戸で、廊下への扉は開いたまま。追いかけるとさらに高い本棚の上へ移動して威嚇している。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 虫取り網で捕まえようと追い回す
- 大きな音を立てて驚かせ、ケージへ追い込む
- 手で捕まえようと椅子に登って手を伸ばす
- 廊下の扉と窓を閉め、部屋を暗くして好物とケージを開けて置き、静かに待つ
正解D.廊下の扉と窓を閉め、部屋を暗くして好物とケージを開けて置き、静かに待つ
解説まず逃げ道を断つことが最優先で、扉と窓を閉め、網戸も破られることがあるので窓自体を閉める。追い回すとパニックで飛膜や骨を傷つけ、咬傷事故も起きる。ムササビは暗く静かになると落ち着いて自分からケージや巣箱に戻ることが多いため、部屋を暗くし、扉を開けたケージと好物を置いて待つ。椅子に登って手を伸ばすのは人が転落する上に咬まれる。屋外に出てしまったら都道府県の鳥獣担当課に連絡する。
課題廊下への扉を開けたまま、夜の活動時間帯に扉を開けて餌交換をした。ムササビの活発な時間帯と脱走の危険を結びつけて考えておらず、世話の前に部屋を閉め切る手順が決まっていなかった。
改善案世話は扉と窓を閉め切った部屋で行い、餌交換は巣箱に入っている日中に行う。ケージの扉は二重ロックにし、開ける前に居場所を確認する習慣をつける。脱走時の手順(閉める・暗くする・待つ・連絡)を貼っておく。
Q16木の下で鳴いている幼獣を見つけた事故
11月の夕方5時、公園の大きなケヤキの根元で毛の生えそろったムササビの幼獣がキュルキュル鳴いている。外傷はなく元気で、自分で少し動いている。上を見ると幹に樹洞がある。子どもが「かわいそうだから家で飼おう」と言っている。
この時の判断として最も適切なものはどれか
- かわいそうなので家に連れ帰り、ペットとして育てる
- 外傷がなく日没前なら親が迎えに来る可能性があり、都道府県の鳥獣担当課に連絡し指示を仰ぐ
- すぐ樹洞に登って自分で戻してやる
- 犬猫を飼っている知人に譲って育ててもらう
正解B.外傷がなく日没前なら親が迎えに来る可能性があり、都道府県の鳥獣担当課に連絡し指示を仰ぐ
解説ムササビは鳥獣保護管理法の対象で、許可なく捕獲や飼養をすると違法になる。また巣から落ちた幼獣は日没後に出巣した母親が回収することがあり、外傷がなく元気なら無理に拾わない方がよい場合がある。まず都道府県の鳥獣担当課に連絡し、見守りの可否や保護の手順について指示を受ける。自分で樹洞に登るのは転落の危険と、別の巣に入れてしまう恐れがある。知人に譲るのも無許可飼養で、犬猫のいる家は幼獣にとって最も危険な環境である。
課題野生動物を「かわいそう」という感情だけで判断し、法律上の扱いと母親による回収の可能性を知らなかった。子どもに野生動物を拾わないという教育ができていなかった。
改善案野生の幼獣を見つけたら、外傷の有無・時間帯・周囲の状況を確認して行政に連絡する手順を家族で共有する。地域の鳥獣担当課の番号を携帯に登録し、子どもには野生動物は飼えないことを日頃から伝えておく。
Q17巣箱の蓋に尾と飛膜を挟んだ事故
昼間、巣箱の掃除をしようと蓋を開けたところ、中の成獣が驚いて飛び出そうとし、慌てて蓋を閉めた拍子に尾と飛膜の一部を挟んでしまった。ムササビは鳴いて暴れ、蓋はまだ尾を挟んだままになっている。素手で、近くにタオルも手袋もない。
この瞬間に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 蓋をゆっくり持ち上げて挟みを解き、タオルで包んで静かにし、腫れや動きの異常があれば受診する
- 暴れて危ないので蓋を押さえたまま落ち着くのを待つ
- 蓋を一気に跳ね上げて逃がし、後で捕まえる
- 尾を引っ張って蓋から抜く
正解A.蓋をゆっくり持ち上げて挟みを解き、タオルで包んで静かにし、腫れや動きの異常があれば受診する
解説挟まれた部分は時間とともに血流が止まり組織が傷むため、まず蓋をゆっくり持ち上げて解放する。一気に跳ね上げると驚いて飛び出し、脱走や落下につながる。尾を引っ張ると皮膚が抜ける重い怪我を起こす。解放後はタオルで包んで暗く静かにし、尾や飛膜の腫れ、変色、動かし方の異常があれば受診する。見た目に問題がなくても翌日まで観察する。
課題ムササビが巣箱で寝ている昼間に蓋を開けたが、飛び出した時の対応を想定していなかった。掃除の前に別の巣箱や箱へ移す手順がなく、驚いた動物が逃げようとする動きに慌てて対応した。
改善案巣箱掃除は予備の巣箱と交換する方式にし、個体が中にいる状態で蓋を大きく開けない。蓋の開閉は常にゆっくり行い、蓋と箱の間に隙間が残る構造に改造する。掃除の手順を書いて飼育室に貼っておく。
Q18夜、暗い飼育室の床に降りた個体事故
ケージの外で運動させるため、閉め切った飼育室で夜間に放している許可飼養者。深夜、音がして様子を見に行こうと電気を消したまま部屋に入り、一歩踏み出したところで足元に何かが触れた。ムササビが床の餌を拾っていたらしい。
この飼育者の行動で改めるべき点として最も適切なものはどれか
- 夜間は様子を見に行かず、朝まで部屋に入らない
- 靴下を脱いで裸足で入ると感触で分かるので踏まない
- 入室前に照明を点けて床と足元を確認し、扉を開ける前に居場所を確かめる
- 床に餌を置かなければ降りてこないので対策は不要
正解C.入室前に照明を点けて床と足元を確認し、扉を開ける前に居場所を確かめる
解説ムササビは暗がりでは人の目に見えず、床に降りている個体を踏むと骨折や内臓損傷を起こす。入室前に照明を点け、扉を開ける前に居場所を確認するのが基本である。夜間に様子を見ないのは異常の発見が遅れ、裸足で入るのは踏んだ時に咬まれる危険がある。床に餌がなくても落ちた餌や探索で床に降りることはある。踏んでしまった時は動けない・鳴き続ける・呼吸が速い場合に今すぐ受診する。
課題放し飼い中に消灯のまま入室するという危険な行動が習慣になっていた。ムササビが床に降りることを想定せず、入室の手順も決まっていなかった。部屋に放す運動自体にも脱走と咬傷の危険がある。
改善案入室前の点灯と居場所確認を手順として貼り出す。可能なら部屋に放さず、高さのある大型ケージ内で登りと移動の運動をさせる。放す場合は放す時間を決めて家族全員に周知し、扉に注意札をかける。
Q19街路樹の剪定枝を与えた夜に様子が変中毒・誤飲
葉の確保に困り、市街地で剪定されていた街路樹のケヤキの枝をもらって与えた。その夜、ムササビがよだれを大量に出し、体を震わせて動きがおかしい。葉はかなり食べられている。枝には薬剤散布のような白い粉が少し付いていたことを思い出した。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 水をたくさん飲ませて薬を薄め、様子を見る
- 口に指を入れて無理に吐かせる
- 牛乳を飲ませて毒を中和する
- 残りの枝を全部取り除き、枝の一部と症状の時刻をメモして今すぐ受診する
正解D.残りの枝を全部取り除き、枝の一部と症状の時刻をメモして今すぐ受診する
解説街路樹や公園の木は殺虫剤や除草剤が散布されていることがあり、葉食のムササビは葉を大量に食べるため中毒を起こしやすい。よだれと震えは農薬中毒を疑う重い症状で、まず原因の枝を全て取り除き、枝の一部と食べた時刻、症状の経過を持って今すぐ受診する。無理に吐かせると誤嚥し、小動物は吐かせる行為自体が危険である。牛乳は中和せず下痢を起こす。水を飲ませても薬の吸収は止まらない。
課題出所の不明な街路樹の枝を、散布歴を確認せず与えた。ムササビが葉を主食とするため農薬の影響を受けやすいという認識がなく、安全な葉の入手先を事前に確保していなかった。
改善案葉と枝は農薬を使わない自宅や知人の庭、許可を得た山林など出所の分かる場所から採る。採取前に散布歴を確認し、与える前に水洗いする。中毒時に持参する「原因物・時刻・症状」の記録方法を飼育室に貼っておく。
Q20放した部屋で観葉植物をかじっていた中毒・誤飲
許可飼養者が閉め切ったリビングでムササビを運動させていたところ、窓際のポトスの葉がかじられ、床に葉のかけらが落ちていた。ムササビは今のところ普通に動いているが、口の周りをしきりに前足でこすっている。食べた量は分からない。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 普通に動いているので何もせず様子を見る
- ケージに戻し、植物名とかじられた葉の写真を撮ってすぐ動物病院に電話し指示を受ける
- 口をこすっているので水で口の中を洗い流してから放し続ける
- 人用の胃薬を少量与えて胃を守る
正解B.ケージに戻し、植物名とかじられた葉の写真を撮ってすぐ動物病院に電話し指示を受ける
解説ポトスなど多くの観葉植物は口や喉の粘膜を刺激する成分を含み、口をこする仕草はその刺激のサインである。まずケージに戻して追加の摂取を防ぎ、植物名と食べた様子の写真を持ってすぐ動物病院に電話し、受診の要否を指示してもらう。症状が軽く見えても植物によっては腎臓や心臓に影響するため「様子を見る」は危険。口を無理に洗うと誤嚥と咬傷の危険があり、人用の胃薬は小動物に有害になりうる。
課題運動させる部屋に観葉植物を置いたままにしていた。葉を食べるムササビにとって室内の植物は餌に見えるという当然の危険を想定していなかった。放す前の部屋の安全点検が習慣化していなかった。
改善案運動させる部屋からは観葉植物、電気コード、小物を全て取り除く。放す前に点検リストで確認する。観葉植物の多くに有害性があることを調べ、万一の時に植物名を即答できるよう鉢に名札をつける。
Q21猛暑日の午後、飼育室でぐったり環境・災害
8月の午後3時、外出から戻ると飼育室の温度計が31℃を指していた。エアコンのタイマーが切れていた。ムササビは巣箱から出て床に伸び、口を開けて速く呼吸し、よだれが出ている。体を触ると熱く、呼びかけても反応が鈍い。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 冷房を入れた涼しい部屋に移し、濡れタオルで体を包んで扇風機の風を当て、今すぐ受診する
- 氷水に体を浸けて一気に冷やす
- 冷房だけ入れて巣箱に戻し、夜まで様子を見る
- 冷たい水を無理に口に流し込む
正解A.冷房を入れた涼しい部屋に移し、濡れタオルで体を包んで扇風機の風を当て、今すぐ受診する
解説ムササビは暑さに弱く、28℃を超える環境では熱中症の危険が高い。開口呼吸とよだれ、体の熱さは重症のサインで、すぐ涼しい部屋に移し、濡れタオルと風で体表から冷やしながら今すぐ受診する。氷水は急激な冷却で血管が収縮して逆に体温が下がらず、ショックを起こす。巣箱に戻すだけでは冷えず、夜まで待てば臓器障害が進む。意識が朦朧とした動物に水を流し込むと誤嚥する。搬送中も冷やしすぎず、震えが出たら冷却をやめる。
課題真夏にエアコンをタイマー運転にし、外出中の室温上昇を想定していなかった。温度計を確認する習慣はあったが、異常時に通知が来る仕組みや、室温が上がった時の逃げ場がなかった。
改善案夏は冷房を連続運転にし、外出時はスマートフォンで室温を確認できる温度計を使う。停電や故障に備え、保冷剤や凍らせたペットボトルを常備し、飼育室は直射日光の当たらない北側に置く。28℃を超えたら即対応と決めておく。
Q22真冬の停電で幼獣の保温ができない環境・災害
1月の夜11時、大雪で停電になった。保護中の生後3週の幼獣は、電気式のペットヒーターで30℃前後に保温していたが、ヒーターが止まり、室温は下がり続けている。復旧の見込みは不明。手元に使い捨てカイロ、ペットボトル、カセットコンロ、タオルがある。
この状況での保温方法として最も適切なものはどれか
- カイロを箱の中に直接入れて幼獣に密着させる
- カセットコンロを飼育室で燃やし続けて部屋を暖める
- 湯を入れたペットボトルやカイロをタオルで包んで箱の外側や隣に置き、箱をさらに毛布で覆う
- 寒さに強い動物なので何もせず朝まで待つ
正解C.湯を入れたペットボトルやカイロをタオルで包んで箱の外側や隣に置き、箱をさらに毛布で覆う
解説幼獣は自分で体温を保てず、保温が止まると数時間で低体温になる。カセットコンロで湯を沸かしペットボトルに入れ、タオルで包んで箱の外側や隣に置き、箱全体を毛布で覆えば熱が逃げにくい。熱源を直接密着させると低温火傷を起こし、幼獣は熱くても逃げられない。コンロを室内で燃やし続けるのは一酸化炭素中毒と火災の危険がある。成獣なら低温にある程度耐えるが幼獣は耐えられず、放置は危険である。温度計で箱内を確認し、復旧しない場合は翌朝獣医師に相談する。
課題保温を電気ヒーター一本に頼り、停電時の代替手段を準備していなかった。幼獣の保温は命に直結するという認識はあったが、災害時の具体的な手順を考えていなかった。
改善案停電に備えて使い捨てカイロ、湯たんぽ、毛布、電池式温度計を飼育室に常備する。熱源は必ずタオル越しに箱の外側に置くと決めておく。カセットコンロは換気できる別室で短時間だけ使う。地域の停電情報の確認方法を把握しておく。
Q23保護個体の耳にマダニが付いていた感染症・衛生
保護したばかりの成獣をタオル越しに観察していると、耳の付け根に小豆大に膨らんだマダニが付いているのに気づいた。急いで取ってやりたいが、ピンセットしかない。素手で扱うのは怖いが、放っておくのも心配だ。同じ部屋には飼い犬もいる。
この時の対応として最も適切なものはどれか
- 指でつまんで力いっぱい引き抜く
- 自分で潰さず手袋で扱って隔離し、獣医師に除去と駆虫を依頼する
- ライターの火を近づけてダニを落とす
- 放っておけば満腹になって自然に落ちるので何もしない
正解B.自分で潰さず手袋で扱って隔離し、獣医師に除去と駆虫を依頼する
解説マダニは野生動物にほぼ必ず付いており、SFTSなどの重い感染症を人にうつすことがある。潰したり無理に引き抜くとダニの口器が皮膚に残り、体液が人の手に付着して感染の危険がある。火を近づけるのは火傷の原因になる。自分で処置せず手袋で扱い、他の動物から隔離して、獣医師に除去と全身の駆虫を依頼する。自然に落ちるのを待てばその間に飼育室内で産卵し、人や他の動物に移る。扱った後は必ず手洗いし、自分の体にダニが付いていないか確認する。
課題保護直後に獣医師の初診と駆虫を受ける前に、自宅で観察を始めていた。野生動物にはマダニが付いていて人にも危険な感染症を媒介するという知識が不十分で、扱う時の手袋も徹底していなかった。
改善案保護した個体は自宅に入れる前に獣医師で初診と駆虫を受ける流れを作る。扱う時は必ず手袋とタオルを使い、扱った後は手洗いと自分の体の点検をする。飼育室は他の動物と分け、敷材はこまめに交換して処分する。
Q24落下した成獣の呼吸が止まっている救命救急
深夜、飼育室の高い止まり木から成獣が落ちて動かなくなった。駆け寄ると胸の動きがなく、鼻口に手をかざしても空気の流れを感じない。胸の左側に指を当てると弱い拍動を感じる。夜間救急の動物病院は車で20分の距離にある。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 心臓が動いているので何もせず、そのまま車で病院に向かう
- 体を強く揺すって叩き、目を覚まさせる
- 水をかけて刺激し、反応を待つ
- 鼻と口を布で覆って軽く息を吹き込み、拍動がなくなれば胸を挟んで圧迫しながら搬送する
正解D.鼻と口を布で覆って軽く息を吹き込み、拍動がなくなれば胸を挟んで圧迫しながら搬送する
解説呼吸が止まっても心臓が動いている間は人工呼吸で救える可能性がある。鼻と口を薄い布で覆い、胸が軽く膨らむ程度に息を吹き込む。拍動が触れなくなったら親指と指で胸を挟み、毎分100回以上の速さで圧迫を加える。これを続けながら家族の運転で病院に向かう。何もせず移動すれば20分の間に酸素が途絶え脳が傷つく。揺すったり叩くと骨折や頭部損傷が悪化し、水をかけても呼吸は戻らず低体温を招く。咬まれる危険があるので布は必ず使う。
課題高い止まり木の下に落下を受け止める厚い寝床がなく、夜間に単独で世話をしていたため、蘇生と搬送を同時に行う人手がなかった。蘇生の手順を事前に確認していなかった。
改善案ケージの床には常に厚い寝床を敷き、止まり木の高さと配置を見直す。人工呼吸と胸部圧迫の方法を獣医師に教わり、手順を飼育室に貼る。夜間救急の病院と家族の連絡網を決め、搬送役と蘇生役を分担できるようにする。
Q25衰弱した個体を病院へ運ぶ準備救命救急
冬の朝、保護中の成獣が巣箱で冷たくなって動きが鈍く、当日中の受診を決めた。病院までは車で40分。手元には段ボール箱、タオル、湯たんぽ、厚手手袋、小型の鳥かごがある。家族が「かごに入れて窓際に置けば日光で暖かい」と言っている。
搬送の準備として最も適切なものはどれか
- 段ボール箱にタオルを敷き、湯たんぽは箱の外側に沿わせ、手袋で移して暗く静かに揺らさず運ぶ
- 鳥かごに入れて窓際に置き、日光で温めながら運ぶ
- 湯たんぽを箱の中に入れ、ムササビを直接その上に乗せて運ぶ
- 膝の上にタオルで包んで抱き、話しかけながら運ぶ
正解A.段ボール箱にタオルを敷き、湯たんぽは箱の外側に沿わせ、手袋で移して暗く静かに揺らさず運ぶ
解説衰弱した個体の搬送は、暗く静かで揺れず、ゆっくり温まる環境が基本である。段ボール箱にタオルを敷き、湯たんぽは箱の外側に沿わせると過熱と低温火傷を防げる。厚手手袋で移すのは咬傷予防のため。鳥かごは明るく、金網に飛膜や爪が引っかかり、窓際の直射日光は過熱と脱水を招く。湯たんぽに直接乗せると動けない個体は火傷する。膝の上で抱くと咬まれる危険と、車内で逃げる危険がある。到着までに体温の変化と反応をメモしておく。
課題搬送用の箱と保温の方法を事前に決めておらず、家族と認識が違っていた。衰弱した野生動物に必要な「暗い・静か・ゆっくり温める」という条件を共有できていなかった。
改善案搬送用の箱、タオル、湯たんぽ、手袋を一式まとめて飼育室に置き、家族全員が手順を知っておく。病院までの経路と所要時間を確認し、受診時に伝える情報(保護日、体重推移、餌、便の写真、許可証)をファイルにしておく。
Q26目の開いていない幼獣のお腹が張って便が出ない病気
保護して4日目、まだ目の開いていないムササビの幼獣。ミルクはよく飲むが、この2日間ほとんど便と尿を見ていない。お腹がぱんぱんに張って硬く、授乳後に落ち着かず鳴いている。保護者は授乳のたびに箱に戻すだけで、他には何もしていない。
最初に試すべき対応として最も適切なものはどれか
- 便秘薬を人の子ども用の量の半分だけ与える
- お腹を強くもんで便を押し出す
- 授乳の前後にぬるま湯で湿らせたコットンで肛門と陰部を軽くなでて排泄を促し、出なければ当日受診する
- ミルクの量を倍に増やして腸を動かす
正解C.授乳の前後にぬるま湯で湿らせたコットンで肛門と陰部を軽くなでて排泄を促し、出なければ当日受診する
解説目の開かない幼獣は母親に肛門周りを舐められて初めて排泄する。人が育てる場合は授乳の前後にぬるま湯で湿らせたコットンで肛門と陰部を軽くなでて排泄を促す必要があり、これを知らないと便も尿も出ず膀胱と腸が張って命に関わる。刺激しても出ない場合は当日中に受診する。便秘薬は幼獣には危険で、お腹を強くもむと内臓を傷つける。ミルクを増やせば張りが悪化する。排泄の回数と色も毎回記録する。
課題幼獣には排泄の刺激が必要という育児の基本を知らずに授乳だけ続けていた。保護直後に獣医師や経験者から育て方を教わる機会を持たず、自己流で始めたことが根本の問題である。
改善案保護した日に野生動物を診られる獣医師に連絡し、授乳の姿勢、量、排泄刺激の方法を直接教わる。授乳と排泄の記録表を作り、便と尿の有無を毎回書く。コットンとぬるま湯を授乳セットに常備する。
Q27週に一度の体重測定で減り続けている病気
離乳して2か月の若いムササビ。毎週日曜に体重を測っており、3週続けて少しずつ減っている。見た目は元気で夜はよく動き、葉も食べているように見える。便はやや小さく乾いている。保護者は「成長期だから一時的だろう」と考えている。
この時の判断として最も適切なものはどれか
- 元気で食べているので成長の揺らぎと考え、来月まで様子を見る
- 3週連続の減少は異常と考え、記録と便を持って数日以内に受診し、食事内容を見直す
- 高カロリーの種子とナッツを大量に与えて体重を戻す
- 体重計の誤差なので測るのをやめる
正解B.3週連続の減少は異常と考え、記録と便を持って数日以内に受診し、食事内容を見直す
解説成長期の若い個体は本来体重が増えていくもので、3週連続の減少は歯の異常、寄生虫、栄養不足、消化器の病気などが隠れているサインである。見た目の元気さは当てにならず、便が小さく乾いていることも摂取量の不足を示す。体重の記録と便を持って数日以内に受診し、食事内容を獣医師と見直す。種子とナッツを大量に与えるとカルシウム不足と肥満を招き、放獣後の採食にも悪影響がある。測定をやめれば異常を発見する手段を失う。
課題体重測定という良い習慣はあったが、記録の変化を異常と判断する基準がなかった。「成長期だから」という思い込みで、3週間の減少という明確なサインを見逃しかけていた。
改善案体重は週1回同じ時間に測り、2週連続で減れば受診と基準を決める。葉の種類と実際に食べた量、便の大きさを毎日記録する。成長期の目安体重を獣医師に確認し、記録表に書いておく。
Q28寒い朝、出巣せず餌が減っていない病気
2月の朝、室温が8℃まで下がった飼育室で、成獣のムササビが巣箱から出た気配がなく、昨夜入れた葉がそのまま残っている。巣箱を覗くと丸まったまま動きが非常に鈍く、呼びかけても顔を上げるだけ。体に触れると普段より冷たい。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 冬眠に入ったので春まで静かに寝かせておく
- ストーブの前に巣箱ごと置いて急いで温める
- すぐに無理やり葉を食べさせて体力をつけさせる
- 暖かい部屋に移して巣箱を毛布で覆い、ゆっくり温めながら当日中に受診する
正解D.暖かい部屋に移して巣箱を毛布で覆い、ゆっくり温めながら当日中に受診する
解説ムササビは冬眠しない動物で、動きが鈍く体が冷たいのは低体温と衰弱のサインである。暖かい部屋に移し、巣箱を毛布で覆い、湯たんぽを外側に当ててゆっくり温めながら当日中に受診する。冬眠と誤解して放置すれば死亡する。ストーブの前で急激に温めると血圧が変動しショックや火傷を起こす。衰弱した動物に無理に食べさせると誤嚥する。温まって動き出しても食欲が戻らない場合は受診を遅らせない。
課題飼育室の夜間の室温が8℃まで下がる環境を放置していた。成獣は15℃以上が目安であり、ムササビが冬眠しない動物であるという基本知識も不足していた。温度管理の仕組みが冬に対応していなかった。
改善案冬は夜間も15℃以上を保てるよう暖房を設定し、巣箱を厚くして巣材を多めに入れる。温度計をケージの高さに置き毎朝確認する。急な冷え込みの予報が出たら前夜に対策する。「ムササビは冬眠しない」を家族で共有する。
Q29授乳の間隔が空いた幼獣がけいれん病気
保護2週目の幼獣。仕事の都合で前回の授乳から8時間空いてしまった。帰宅すると箱の中で幼獣が小刻みに震え、手足を突っ張るようにけいれんしている。体はやや冷たく、口の中は乾いて白っぽい。呼びかけに反応しない。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 保温しながら砂糖水を舌に数滴ずつ乗せ、落ち着かなければ今すぐ受診する
- 口にミルクをたっぷり流し込んで栄養を補う
- けいれんが収まるまで箱の中で見守り、収まったら通常の授乳をする
- 冷たい水で顔を濡らして意識を戻す
正解A.保温しながら砂糖水を舌に数滴ずつ乗せ、落ち着かなければ今すぐ受診する
解説幼獣は数時間授乳が空くだけで低血糖と低体温を起こし、けいれんはその重い症状である。保温しながら砂糖水を舌に数滴ずつ乗せて吸収させ、すぐ落ち着かない、反応が戻らない場合は夜間でも今すぐ受診する。意識のない幼獣にミルクを流し込むと誤嚥して肺炎を起こす。けいれんを見守るだけでは低血糖が進み脳に障害が残る。冷たい水は低体温を悪化させる。回復しても当日中に受診し、授乳間隔を見直す。
課題幼獣の授乳間隔を守れない生活環境で保護を引き受けていた。小さな幼獣は数時間の絶食が致命的という認識が不足し、代わりに授乳する人や預け先を用意していなかった。
改善案幼獣の保護は授乳間隔を守れる体制が前提で、無理なら行政や保護施設に預け先を相談する。砂糖水や糖液を授乳セットに常備し、低血糖のサイン(震え、冷たさ、反応の鈍さ)を覚える。外出時は家族と授乳を分担する。
Q30金網の切れ端で足を切り血が止まらない怪我
ケージの補修をした翌晩、ムササビが前足を引きずり、足の裏から血が流れていた。補修部分の金網の切れ端が突き出ている。出血はにじむ程度ではなく、ケージの床に血だまりができている。ムササビは興奮して動き回っている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 止血剤の粉を傷に振りかけてケージに戻す
- 興奮が収まるまで待ってから傷を見る
- 部屋を暗くして手袋でタオルに包み、ガーゼで5分間圧迫し、止まらなければ押さえたまま受診する
- 足にきつく輪ゴムを巻いて血を止める
正解C.部屋を暗くして手袋でタオルに包み、ガーゼで5分間圧迫し、止まらなければ押さえたまま受診する
解説血だまりができるほどの出血は圧迫止血が必要で、まず部屋を暗くして興奮を抑え、手袋とタオルで保定してガーゼで5分間押さえる。途中で何度もめくると止まらない。5分で止まらない場合は押さえたまま受診する。止血剤の粉は深い傷には効かず、舐めて飲み込む。待っている間に出血は続き、小さな体では失血が早い。輪ゴムで足を縛ると血流が止まって壊死する危険がある。止血後も傷の深さと金属による汚染の確認のため当日中に受診する。
課題ケージ補修後に切れ端や突起の点検をせず、そのまま個体を戻した。金網を扱う動物のケージでは、補修箇所が最も怪我の原因になりやすいという意識がなかった。
改善案補修後は手で全面をなぞり、突起をヤスリで削るかテープで覆ってから個体を戻す。救急箱にガーゼ、手袋、タオルを入れ、圧迫止血の手順を貼っておく。補修は個体を別の箱に移してから行う。
Q31犬に追われた成獣、傷はないが呼吸が速い怪我
夕方、庭に落ちていた成獣のムササビを飼い犬がくわえて振り回し、慌てて取り上げた。毛が濡れている以外に目立つ傷や出血はなく、歯型も見当たらない。しかしぐったりして動かず、呼吸がとても速く、歯茎が白っぽい。犬は小型犬で、くわえていたのは数秒だった。
この時の判断として最も適切なものはどれか
- 傷がないので庭の木に戻して立ち去る
- 外傷が見えなくてもショックと内部損傷を疑い、箱で保温し暗くして今すぐ受診する
- 犬が小型なので心配なく、落ち着くまで家で一晩様子を見る
- 元気づけるために果物を口に押し込む
正解B.外傷が見えなくてもショックと内部損傷を疑い、箱で保温し暗くして今すぐ受診する
解説犬に振り回された動物は、皮膚に傷がなくても内臓の損傷や内出血、肋骨の骨折を起こしていることが多い。速い呼吸、動かない、歯茎が白いのはショックのサインで、今すぐ受診が必要である。保温し暗い箱に入れて静かに搬送する。木に戻しても自力で登れず、再び捕食される。小型犬でも顎の力は十分に内臓を傷つけ、一晩様子を見れば内出血で死亡する。ショック状態の動物に物を食べさせると誤嚥する。鳥獣担当課への連絡も忘れない。
課題犬を庭に放している家で、野生動物との接触を想定していなかった。見た目の傷の有無で重症度を判断し、ショック状態のサインを知らなかった。
改善案犬を庭に出す時は見守り、野生動物を見つけたら犬を室内に入れてから対応する。ショックのサイン(速い呼吸、白い歯茎、動かない)を覚え、犬猫に捕まった野生動物は例外なく当日受診と決める。搬送箱と手袋を用意しておく。
Q32止まり木から落ちて頭を打ち目つきが変怪我
夜、成獣が止まり木から滑って床に落ちた。すぐ起き上がったが、ふらふらと円を描くように歩き、片方の目の黒目がもう片方より大きく見える。鼻から薄い血が一筋出ている。手足は動いており、骨折はなさそうに見える。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 歩けているので巣箱に戻して朝まで様子を見る
- 頭を冷やすために氷を布で包んで頭に当て続ける
- 巣箱から出ないよう明るくして観察を続ける
- タオルで包んで暗い箱に入れ、揺らさず今すぐ夜間救急へ搬送する
正解D.タオルで包んで暗い箱に入れ、揺らさず今すぐ夜間救急へ搬送する
解説左右の瞳孔の大きさが違う、円を描いて歩く、鼻血は頭部外傷で脳に損傷や出血が起きているサインである。手足が動いていても脳の損傷は時間とともに進むため、タオルで包んで暗い箱に入れ、揺らさず今すぐ夜間救急へ搬送する。朝まで待てば脳の腫れで死亡することがある。氷で頭を冷やしても脳内の出血は止まらず、低体温を招く。明るくして観察するのは夜行性の動物に強いストレスで、状態を悪化させる。搬送中は箱を水平に保つ。
課題止まり木が滑りやすく、床に落下の衝撃を受け止める寝床がなかった。頭部外傷のサイン(瞳孔の左右差、旋回、鼻血)を知らず、歩けるかどうかで重症度を判断しようとした。
改善案止まり木は樹皮付きの自然木にし、床に厚い寝床を敷く。頭部外傷のサインを飼育室に貼っておき、落下後は必ず瞳孔、歩き方、鼻口の出血を確認する。夜間救急の連絡先と経路を事前に確認しておく。
Q33道路脇で車にはねられた成獣を見つけた怪我
早朝、山沿いの道路の脇でムササビが横たわっているのを見つけた。胸が動いていて生きているが、後ろ足が変な方向を向き、口から血が出ている。近づくと弱く威嚇する。車には軍手、段ボール箱、ジャケットがある。携帯電話はつながる。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ジャケットを被せて厚手の布越しに箱へ移し、鳥獣担当課に連絡して野生動物を診られる病院へ運ぶ
- 素手で抱き上げて近くの森に放す
- 苦しそうなので水を飲ませてから道路脇に寝かせておく
- 軍手で足を触って骨折かどうか確かめてから運ぶ
正解A.ジャケットを被せて厚手の布越しに箱へ移し、鳥獣担当課に連絡して野生動物を診られる病院へ運ぶ
解説生きているムササビは威嚇して咬むため、ジャケットなど厚手の布を被せて視界を遮り、布ごと箱に移す。軍手では歯が貫通する。足を触ると骨折部が動いて神経や血管を傷つける。鳥獣保護管理法の対象なので都道府県の鳥獣担当課に連絡し、野生動物を診られる病院へ運ぶ。森に放しても動けず捕食され、道路脇に置けば再びはねられる。口の出血は内臓損傷の可能性もあり今すぐの受診が必要である。意識の弱い動物に水を飲ませると誤嚥する。
課題道路での保護に必要な厚手の手袋や布、搬送箱を車に積んでいなかった。野生動物の保護に法的な手続きと連絡先が必要なことを知らず、その場で判断することになった。
改善案山沿いを走る車には厚手の革手袋、大きめのタオル、段ボール箱を常備する。都道府県の鳥獣担当課と野生動物を診られる病院の連絡先を携帯に登録しておく。保護時は場所と時刻を記録し、放獣に備えて覚えておく。
Q34放獣前の個体が窓から外へ逃げた事故
放獣を1週間後に控えた成獣。夕方、飼育室の換気で開けた窓の網戸が外れ、ムササビが庭の木に飛び移って逃げた。暗くなり始めた庭の木の上で動いているのが見える。隣家には飼い猫がいて、夜はよくこの庭に入ってくる。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- すぐに木に登って手で捕まえる
- 懐中電灯を当てて大声で名前を呼び続ける
- 庭に扉を開けたケージと好物を置き、猫が近づかないよう見守り、鳥獣担当課に連絡して指示を受ける
- もう野生に戻ったとみなしてそのまま放置する
正解C.庭に扉を開けたケージと好物を置き、猫が近づかないよう見守り、鳥獣担当課に連絡して指示を受ける
解説逃げた個体は夜間に活動し、慣れた巣箱や餌の匂いに戻ってくることがある。庭に扉を開けたケージと好物を置いて静かに待ち、猫などの捕食者を見守る。木に登ると人が転落し、追えばさらに遠くに逃げる。光を当て大声を出すのはパニックを招く。放獣前の個体は体力や採食の準備が整っていないため「放獣になった」とはみなせず、保護地点とも違う場所である。許可飼養中の個体なので鳥獣担当課に連絡し、逃走の事実と今後の対応を相談する。
課題換気で窓を開ける時に網戸の状態を確認せず、ムササビが活動を始める夕方に行った。放獣前の個体の脱走は保護の努力が無駄になりうる重大事故という認識が薄かった。
改善案飼育室の窓は開けず、換気は換気扇か別室経由にする。窓を開けるなら日中、巣箱に入っている時間帯に限り、網戸と鍵を確認する。放獣の計画(場所、時期、方法)を鳥獣担当課と獣医師と事前に決め、脱走時の連絡先も把握しておく。
Q35巣材のタオルの糸が足に絡まっている事故
朝、巣箱を覗くと、巣材に入れた古いタオルのほつれた糸が成獣の後ろ足の指に何重にも絡まり、指先が紫色に腫れている。ムササビは足を気にして噛んでおり、糸を引っ張るたびに締まっているようだ。昨夜の観察では気づかなかった。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 糸を引っ張ってほどこうとする
- 手袋でタオルに包み、糸を小さなはさみで切って外し、腫れと血流を確認して当日中に受診する
- 自分で噛み切るのを待ち、数日様子を見る
- 指を温めて血流を良くしてから糸を外す
正解B.手袋でタオルに包み、糸を小さなはさみで切って外し、腫れと血流を確認して当日中に受診する
解説絡まった糸は引っ張るほど締まり、指先の血流を止める。紫色の腫れはすでに血流障害が起きているサインで、手袋とタオルで保定して糸をはさみで切って外す。外した後も血流が戻らない、変色が続く場合は指が壊死する恐れがあり、当日中に受診する。自分で噛み切るのを待つと指を噛み切ってしまうことがある。温めても糸が締まったままでは血流は戻らない。巣材の糸状の布はすべて取り除く。
課題ほつれたタオルを巣材に使い、糸が絡まる危険を見落としていた。爪が鋭く細かい動きの多いムササビには、糸状の素材が特に危険であるという認識がなかった。
改善案巣材はほつれないフリースか乾いた葉、細く裂いた紙にし、タオル地やほつれた布は使わない。毎朝の観察で足と飛膜に糸や異物が付いていないか確認する。小さなはさみと手袋を救急箱に入れておく。
Q36子どもが抱き上げて床に落としてしまった事故
許可飼養者の家で、来客の小学生がケージの扉を開けて幼獣を抱き上げ、驚いた幼獣に咬まれて手を離し、幼獣はフローリングの床に落ちた。幼獣は鳴きながらうずくまり、片方の前足を床につけない。子どもの指からも血が出ている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 子どもの手当てが先なので幼獣はケージに戻して後回しにする
- 幼獣の足を触って動くか確かめ、動けば問題ない
- 幼獣を巣箱に戻して落ち着かせ、翌日の様子で受診を決める
- 幼獣はタオルごと箱に入れ暗く静かにして当日中に受診し、子どもの傷は流水で5分洗い腫れれば病院へ
正解D.幼獣はタオルごと箱に入れ暗く静かにして当日中に受診し、子どもの傷は流水で5分洗い腫れれば病院へ
解説前足をつけない幼獣は骨折の可能性が高く、触診せずタオルごと箱に移して暗く静かにし、当日中に受診する。子どもの咬傷は流水で5分洗い消毒し、腫れや熱が出れば人の病院を受診して破傷風も相談する。両方を同時に進める。足を触って確かめるのは骨折を悪化させる。翌日まで待つと痛みで食べられず幼獣は衰弱する。動物と人の処置はどちらも後回しにしてはならない。
課題来客の子どもがケージの扉を開けられる環境だった。野生動物は人に慣れておらず、扱いには手袋と経験が必要という説明を来客にしていなかった。ケージに鍵がなかった。
改善案飼育室には来客を入れず、ケージには鍵をかける。家族と来客に「触らない、開けない」を事前に伝え、扉に注意札を貼る。咬傷時の手当て手順を飼育室に貼り、救急箱に消毒用品を用意しておく。
Q37放した部屋で電気コードをかじり倒れた事故
夜、閉め切ったリビングで運動させていたところ、ムササビがテレビの裏に入り込み、パチッという音とともに床に倒れた。電気コードに歯型がついて一部が焦げている。ムササビは口元が焦げて動かず、呼吸は浅い。コードはまだコンセントにつながっている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- コンセントを抜くかブレーカーを落としてから、手袋で箱に移し今すぐ受診する
- すぐに抱き上げて心臓マッサージをする
- 水をかけて意識を戻す
- 口の焦げを冷やしてから巣箱に戻し様子を見る
正解A.コンセントを抜くかブレーカーを落としてから、手袋で箱に移し今すぐ受診する
解説感電した動物に通電中のまま触れると人も感電する。まずコンセントを抜くかブレーカーを落とし、安全を確保してから手袋で箱に移す。感電は口の火傷だけでなく、数時間後に肺に水がたまる障害が起きるため、見た目が落ち着いても今すぐ受診する。通電中に抱き上げるのは二次災害を招き、水は感電の危険を広げ低体温も起こす。口の焦げを冷やすだけでは肺の障害を見逃す。搬送中は呼吸の速さを観察する。
課題運動させる部屋から電気コードを除去しておらず、テレビ裏など見えない場所の危険を点検していなかった。歯が伸び続け、物をかじる習性のあるムササビにとって、コードは最も危険な物の一つという認識が不足していた。
改善案運動させる部屋ではコードをカバーで覆うか電源を抜いて片付け、家具の裏も含めて点検する。可能なら部屋に放す運動をやめ、高さのある大型ケージで運動させる。感電時の「まず電源を切る」を家族で共有する。
Q38家族が夕食の残りを与えてしまった中毒・誤飲
帰宅すると、家族が「かわいそうだから」とムササビにネギ入りの炒め物とチョコレートの欠片を与えていた。ムササビは一部を食べたようで、口の周りが油で汚れている。今のところ普通に動いているが、与えてから1時間ほど経っている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 症状がないのでいつもの葉を与えて様子を見る
- 塩水を飲ませて吐かせる
- 食べた物と量、時刻をメモし、残りを取り除いてすぐ動物病院に電話して指示を受ける
- 牛乳を飲ませて胃の中の物を薄める
正解C.食べた物と量、時刻をメモし、残りを取り除いてすぐ動物病院に電話して指示を受ける
解説ネギ類は赤血球を壊して数日後に貧血を起こし、チョコレートは心臓と神経に作用する。食べてすぐ症状が出ないのが特徴で、無症状でも危険は続いている。食べた物と量、時刻を記録し、残りを片付けてすぐ動物病院に電話し、受診や処置の指示を受ける。塩水で吐かせるのは小動物では塩中毒と誤嚥を起こす危険な方法である。牛乳は中和せず下痢を招く。症状が出てからでは治療が難しくなる。
課題家族がムササビに人の食べ物を与えてはいけないことを知らなかった。葉食性の野生動物であることや、ネギとチョコレートが多くの動物に有毒であることを家族全員に共有していなかった。
改善案与えてよい物と絶対に与えない物の一覧を飼育室に貼り、家族全員に説明する。餌は保護者だけが与えるルールにする。中毒時の記録方法と動物病院の電話番号を目立つ場所に掲示しておく。
Q39殺鼠剤のある納屋で弱っていた成獣中毒・誤飲
農家の納屋で弱っているムササビを見つけ保護した。納屋には殺鼠剤が置かれており、近くに食べ散らかした跡がある。ムササビは動きが鈍く、鼻から少量の血が出て、歯茎に小さな出血点があり、足の裏に青あざのような変色がある。外傷はない。
この時の対応として最も適切なものはどれか
- 鼻血は止まりそうなので保温して一晩様子を見る
- 殺鼠剤を食べた可能性と製品名を獣医師に伝え、箱に入れて揺らさず今すぐ受診する
- 出血を止めるためビタミン剤を自己判断で与える
- 納屋の外の木に戻して自然に回復させる
正解B.殺鼠剤を食べた可能性と製品名を獣医師に伝え、箱に入れて揺らさず今すぐ受診する
解説外傷がないのに鼻血や歯茎の出血点、皮下の変色があるのは、殺鼠剤による血液凝固の障害を強く疑う。殺鼠剤の中毒は時間とともに全身で出血が進み、治療には種類の特定が重要なため、製品名または写真を持って今すぐ受診する。一晩様子を見れば内出血で死亡する。治療薬は獣医師が診断して投与するもので、自己判断のビタミン剤は役に立たない。戻しても回復せず、捕食される。搬送中は揺らさず暗く静かにする。鳥獣担当課への連絡も行う。
課題殺鼠剤がムササビのような野生動物も中毒させることを想定せず、出血の原因を外傷に限定して考えていた。保護した場所の状況(薬剤の有無)が診断に重要な情報だという認識がなかった。
改善案野生動物を保護したら、見つけた場所の状況(薬剤、ネット、道路、農薬散布)を記録して獣医師に伝える。出血傾向のサイン(鼻血、歯茎の点状出血、皮下の変色)を覚える。殺鼠剤は野生動物の入れない容器で管理する。
Q40幼獣に牛乳を与えてしまい下痢と嘔吐中毒・誤飲
ムササビの幼獣を保護した初日、小動物用ミルクが手に入らず、家にあった牛乳を温めて飲ませた。翌朝、幼獣は水様の下痢をして、口の周りに吐いた跡があり、動きが鈍い。お腹がゴロゴロ鳴っている。まだ小動物用ミルクは手元にない。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 牛乳を薄めて少量ずつ続け、ミルクが届くまでしのぐ
- 豆乳や人の赤ちゃん用粉ミルクに切り替える
- はちみつ水を飲ませて栄養を補う
- 牛乳を中止して保温し、経口補水液を少量ずつ与えて当日中に受診し、適切なミルクを獣医師に相談する
正解D.牛乳を中止して保温し、経口補水液を少量ずつ与えて当日中に受診し、適切なミルクを獣医師に相談する
解説牛乳は乳糖が多く、小動物の幼獣はうまく消化できず下痢と嘔吐を起こし、急速に脱水する。牛乳をすぐ中止し、保温しながら経口補水液を少量ずつ与えて脱水を防ぎ、当日中に受診して適切なミルクを獣医師に相談する。牛乳を薄めても乳糖は残り、豆乳や人の赤ちゃん用粉ミルクも成分が合わず下痢が続く。はちみつは乳児に危険な細菌の問題があり栄養も不足する。ぐったりが進む、便に血が混じれば即受診に切り替える。
課題保護初日に適切なミルクを用意できず、牛乳で代用した。幼獣は牛乳で下痢を起こすという基本を知らず、獣医師への連絡より先に自己流で授乳を始めてしまった。
改善案幼獣を保護したら授乳前にまず保温し、獣医師か行政に連絡してミルクの種類と入手先を確認する。牛乳や人用ミルクは与えないことを覚える。経口補水液と小さなシリンジを常備し、小動物用ミルクを置いている店や病院を調べておく。
Q41地震で避難、ムササビをどう連れて行くか環境・災害
夜、大きな地震があり自治体から避難指示が出た。許可を受けて飼養中の成獣が1頭いる。ケージは大型で持ち出せない。手元に段ボール箱、キャリーバッグ、タオル、手袋、許可証、数日分の葉と水がある。避難所には他の人のペットもいるだろう。
連れ出しの準備として最も適切なものはどれか
- 手袋で保定しタオルを敷いた暗いキャリーに入れ、許可証と数日分の餌と水を持って避難し、避難先で他の動物から離して暗く静かに置く
- 野生動物なので外に放して自力で生き延びさせる
- 家に置いていき、落ち着いたら戻って世話をする
- ケージの扉を開けたまま家に残し、自由に逃げられるようにする
正解A.手袋で保定しタオルを敷いた暗いキャリーに入れ、許可証と数日分の餌と水を持って避難し、避難先で他の動物から離して暗く静かに置く
解説許可飼養中の個体は保護者に管理責任がある。手袋で保定し、タオルを敷いた暗いキャリーに入れ、許可証と数日分の餌と水を持って避難する。避難先では他の動物や人から離し、暗く静かな場所に置いて人を近づけない。放獣準備の整っていない個体を市街地で放すのは死なせるのと同じで、違法にもなりうる。家に置いていくと余震や火災、停電で保温や給餌が途切れる。扉を開けて残すと家の中で怪我をするか、逃げ出して捕食される。避難後は鳥獣担当課に状況を報告する。
課題災害時の持ち出し方法と避難先での管理を事前に決めていなかった。許可証や餌の備蓄、キャリーの準備はあったが、家族で手順を共有しておらず、夜間の地震に慌てて判断することになった。
改善案避難用のキャリー、手袋、タオル、許可証のコピー、数日分の餌と水をまとめて玄関近くに置く。避難所でのペットの扱いを自治体に事前に確認し、預け先候補として保護施設や獣医師にも相談しておく。年に一度、搬送の練習をする。
Q42暖房で湿度30%、飛膜がかさかさ環境・災害
12月、エアコン暖房を連続運転している飼育室の湿度計が30%を示している。成獣のムササビの飛膜の縁が乾いてひび割れたように見え、体をよく掻いている。フケも増えた。餌は食べており、動きは普通である。温度は22℃で安定している。
この状況での対応として最も適切なものはどれか
- 飛膜に人用のハンドクリームを塗る
- 湿度は関係ないので暖房設定だけ上げる
- 加湿器や濡れタオルで湿度を50〜60%に上げ、ひび割れが改善しなければ数日以内に受診する
- 飛膜に霧吹きで直接水をかけ続ける
正解C.加湿器や濡れタオルで湿度を50〜60%に上げ、ひび割れが改善しなければ数日以内に受診する
解説ムササビの適湿度は50〜60%で、暖房で30%まで下がると薄い飛膜や皮膚が乾燥してひび割れ、掻いて傷をつける。加湿器や濡れタオルで湿度を上げ、数日で改善しなければ皮膚病や寄生虫の可能性もあるため受診する。人用クリームは舐めて飲み込み、成分によっては有害である。暖房を上げると湿度はさらに下がる。霧吹きを直接かけると体が冷え、濡れた飛膜は乾きにくく皮膚のトラブルを起こす。
課題温度計は見ていたが湿度の管理を意識していなかった。暖房で湿度が下がること、飛膜という薄く広い皮膚を持つムササビは乾燥の影響を受けやすいことを知らなかった。
改善案温湿度計をケージの高さに置き、毎朝両方を記録する。冬は加湿器か濡れタオルで50〜60%を維持し、週1回飛膜を伸ばして縁の状態を点検する。掻く頻度やフケの量も記録し、変化があれば受診する。
Q43回復した成獣を放獣する日と場所環境・災害
飛膜の裂傷が治り、ケージ内で滑空に近い移動ができるようになった成獣。獣医師から放獣可能と言われた。家族は「もう暖かい日中に自宅の庭に放せばいい」と言う。保護した場所は車で30分の山沿いの神社で、今は1月、ここ数日は雪が続いている。
放獣の計画として最も適切なものはどれか
- 明日の昼、自宅の庭に放して自然に任せる
- 鳥獣担当課と相談し、保護地点付近の樹林で、天候の安定した日の日没後に放獣する
- 放獣せず家で一生飼い続ける
- 回復したら即日、夜中に近所の公園に放す
正解B.鳥獣担当課と相談し、保護地点付近の樹林で、天候の安定した日の日没後に放獣する
解説ムササビは縄張りを持ち、保護地点の近くに放すことで知っている森と樹洞に戻れる。大木のない住宅地の庭や公園に放すと食べ物も巣もなく、猫や車に襲われる。夜行性なので日没後に放し、雪や強風の日は避けて天候の安定を待つ。許可飼養の個体は放獣の時期と場所を鳥獣担当課と相談して決める。回復した個体を飼い続けるのは許可の目的に反し違法となる。放獣前には採食の確認と体重測定、駆虫を済ませておく。
課題放獣の原則(保護地点付近、日没後、天候の安定した日)を家族が知らず、便利さで庭を選ぼうとした。放獣計画を保護の早い段階から行政と獣医師と相談していなかった。
改善案保護時に場所と時刻を記録し、放獣は原則としてその付近で行う。回復の目安(採食、体重、滑空能力)を獣医師と決め、放獣日は天候と季節を見て鳥獣担当課と調整する。放獣時は箱を木の幹近くに置き、自分から出ていくのを待つ。
Q44咬まれた指が翌日腫れて熱を持っている感染症・衛生
昨日、保護中の成獣に人差し指を咬まれ、流水で洗って絆創膏を貼っておいた。今朝、指全体が赤く腫れて熱を持ち、ズキズキ痛む。わずかに膿が出ている。人の病院へ行くほどではないと考え、家の消毒液をかけてしのいでいる。
この人がとるべき行動として最も適切なものはどれか
- 腫れが引くまで市販の消毒液をかけ続ける
- 膿を絞り出して絆創膏を貼り替える
- 動物病院に行って人の傷も一緒に診てもらう
- 当日中に人の病院を受診し、野生動物に咬まれたことと破傷風の接種歴を伝える
正解D.当日中に人の病院を受診し、野生動物に咬まれたことと破傷風の接種歴を伝える
解説動物の咬傷は口内の細菌が深部に入り込み、翌日に腫れや熱、膿が出るのは感染が進んでいるサインである。放置すると骨や腱に広がり、全身に及ぶこともあるため当日中に人の病院を受診し、野生動物に咬まれたことと破傷風の接種歴を伝える。表面の消毒液は深部の細菌に届かず、膿を絞ると感染を広げる。動物病院は人を診察できない。咬まれた直後は流水で5分以上洗い、深い傷は当日に人の病院へ行くのが原則である。
課題咬まれた直後の対応が洗浄と絆創膏だけで、深い咬傷は当日に受診するという判断基準を持っていなかった。腫れと膿という明確な感染サインを軽視し、自己処置で済ませようとした。
改善案咬傷は流水で5分以上洗い、深い傷や出血の多い傷は当日人の病院を受診する。翌日に腫れや熱があれば必ず受診すると決めておく。破傷風の予防接種歴を確認し、作業時は厚手の革手袋を必ず使う。
Q45飼育ウサギと同じ部屋で掃除用具を共用感染症・衛生
許可を得て保護中のムササビと、以前から飼っているウサギを同じ部屋の別ケージで管理している。掃除はひとつのほうきとちりとりで両方を行い、餌皿も同じ洗い桶で洗っている。最近ウサギに軽い脱毛とフケが出てきた。
この状況で改めるべき点として最も適切なものはどれか
- 部屋を分け、掃除用具と洗い桶を専用にし、ウサギと保護個体の両方を獣医師に診せる
- ウサギの方だけ獣医師に診せ、部屋はそのままにする
- ケージの距離を少し離せば十分なので用具はそのまま使う
- ムササビを早く放獣すれば解決するので今は何もしない
正解A.部屋を分け、掃除用具と洗い桶を専用にし、ウサギと保護個体の両方を獣医師に診せる
解説野生由来のムササビはダニやノミ、皮膚糸状菌を持っていることが多く、共用の掃除用具や洗い桶を通じて同居動物に感染する。ウサギの脱毛とフケはその可能性が高い。部屋を分け、用具と洗い桶を専用にし、両方を獣医師に診せて駆虫と検査を受ける。ウサギだけ治しても感染源が残れば再発する。ケージの距離を離しても用具の共用で病原体は移る。回復前の放獣はできず、放獣までの間も感染は続く。扱う順番は健康な動物から先にし、手洗いと手袋の交換を徹底する。
課題保護した野生動物を既存のペットと同じ部屋で管理し、隔離と用具の分離という基本を守っていなかった。野生動物は寄生虫や真菌を持っている前提で受け入れる意識が不足していた。
改善案野生動物は別室で管理し、掃除用具、餌皿、洗い桶、タオルを専用にする。世話は健康な動物から先にし、終わるごとに手洗いと手袋交換をする。受け入れ時に獣医師で駆虫と検査を済ませ、同居動物にも異常がないか毎日確認する。
Q46子どもが幼獣を触ってミルクをあげたがる感染症・衛生
保護中のムササビ幼獣を見た小学生の子どもが「かわいいから抱っこしてミルクをあげたい」とせがむ。幼獣はまだ獣医師の初診を受けておらず、保護して2日目。子どもは最近手を洗う習慣が身についたばかりで、指をよく口に入れる癖がある。
保護者としての対応として最も適切なものはどれか
- 手を洗わせてから抱っこさせ、ミルクも与えさせる
- 触るのは良いが、キスや顔を近づけるのだけ禁止する
- 幼獣に触らせず世話は大人が行い、見るだけにして見た後も手を洗わせる
- 子どもにマスクをさせれば触らせてよい
正解C.幼獣に触らせず世話は大人が行い、見るだけにして見た後も手を洗わせる
解説野生由来の幼獣は駆虫や検査を受けるまで、サルモネラや糸状菌、ダニを持っている前提で扱う。子どもは手を口に入れやすく、感染症が重くなりやすいため触らせず、世話は大人が手袋で行う。見た後も手洗いを徹底する。手を洗ってから触っても触った後に口に入れれば意味がなく、キスだけ禁止しても手からの感染は防げない。マスクは手からの経口感染を防がない。幼獣にとっても慣れない人の扱いはストレスと落下事故の原因になる。
課題初診前の幼獣を子どもに見せ、触れる機会を作ってしまった。野生動物の人獣共通感染症の知識が家族に共有されておらず、子どもと高齢者は特に注意が必要という認識が薄かった。
改善案野生動物の世話は大人だけが行い、子どもには見るだけと決める。初診と駆虫が済むまでは飼育室への出入りを制限する。家族に手洗いの徹底と、野生動物を触らない理由を説明する。保護者自身も扱った後は必ず手洗いする。
Q47動かない個体の心拍をどこで確かめるか救命救急
朝、巣箱の中で成獣が横たわり、呼びかけても触れても反応がない。胸の動きはよく分からず、体は少し温かい。家族が「首の脈を測ろう」「耳に口を当てて心音を聞こう」と言っている。厚手手袋とタオルは手元にある。
心拍と呼吸の確認方法として最も適切なものはどれか
- 首の横を強く押して脈を探す
- タオル越しに保定し、胸の左側に指を当てて拍動を触れ、鼻口の空気の流れと胸の上下を見る
- 耳を口に当てて心音を聞く
- 体を揺すって反応があるかどうかだけで判断する
正解B.タオル越しに保定し、胸の左側に指を当てて拍動を触れ、鼻口の空気の流れと胸の上下を見る
解説ムササビは1kg前後の小型の動物で、首の脈は分かりにくく、強く押すと気道を圧迫する。胸の左側に指を当てれば拍動を触れやすく、同時に鼻口の空気の流れと胸の上下で呼吸を確認する。反応がなくても急に動いて咬むことがあるので、タオル越しに保定し手袋をつける。耳を口に当てるのは咬傷の危険が高く、音も聞き取りにくい。揺するだけでは心拍の有無が分からず、骨折や頭部損傷があれば悪化する。拍動があり呼吸がなければ人工呼吸、拍動もなければ圧迫を始めて搬送する。
課題意識のない個体の確認方法を家族が知らず、その場で意見が割れた。心拍と呼吸の確認手順を事前に獣医師に教わっておらず、緊急時に時間を失うところだった。
改善案心拍は胸の左側、呼吸は鼻口と胸の上下という確認方法を家族で共有し、飼育室に貼る。獣医師に蘇生の手順を教わる機会を作る。確認の際はタオルと手袋を使うことをルールにする。
Q48尾の付け根から出血が5分押さえても止まらない救命救急
ケージの扉に尾を挟んだ成獣の尾の付け根から出血している。手袋とタオルで保定し、ガーゼで5分間押さえたが、ガーゼを離すとまだ血がにじんで垂れてくる。夜10時で、夜間救急は車で30分。家族が運転できる。ムササビは暴れず、ぐったりし始めている。
次に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 止まるまで何度もガーゼを交換して確認を続ける
- 尾の付け根をひもで強く縛って止血する
- 出血は少量なので巣箱に戻し、朝一番に受診する
- 新しいガーゼを重ねて付け根側を押さえたまま箱に入れ、押さえ続けながら夜間救急へ搬送する
正解D.新しいガーゼを重ねて付け根側を押さえたまま箱に入れ、押さえ続けながら夜間救急へ搬送する
解説5分の圧迫で止まらない出血は家庭での止血の限界で、押さえたまま受診するのが原則である。ガーゼは剥がさず新しい物を重ね、出血部より付け根側を押さえながら箱に入れ、家族の運転で夜間救急へ向かう。頻繁にガーゼを交換すると固まりかけた血が剥がれて止まらない。ひもで縛ると尾の血流が止まり壊死する。少量に見えても小さな体では失血が速く、朝まで待てば貧血とショックになる。搬送中は暗く静かにし、保温する。
課題扉の開閉で尾を挟む事故が起き、ケージの可動部に尾や飛膜が入り込む危険を想定していなかった。止血は正しく始められたが、止まらない時の次の行動を決めておらず、迷う時間が生じた。
改善案扉はゆっくり閉め、閉める前に尾と飛膜の位置を確認する。「5分押さえて止まらなければ押さえたまま搬送」を救急手順として貼り、ガーゼを多めに常備する。夜間救急の連絡先と経路、運転を頼める人を事前に決めておく。
Q49深夜、口を開けて呼吸している救命救急
深夜1時、飼育室から異音がして見に行くと、成獣が止まり木の上で口を開けて呼吸し、胸と腹が大きく波打っている。鼻からはピンク色の泡が少し出ている。昨日まで食欲はあり、怪我の心当たりはない。夜間救急は車で25分。
この時の判断として最も適切なものはどれか
- 口を開けた呼吸と泡は命に関わる症状なので、箱に入れて揺らさず今すぐ夜間救急へ搬送する
- 昨日まで元気だったので朝の診察時間まで待つ
- 酸素が必要なので扇風機の風を顔に当て続ける
- 喉に何か詰まったと考え、口を開けて指で探る
正解A.口を開けた呼吸と泡は命に関わる症状なので、箱に入れて揺らさず今すぐ夜間救急へ搬送する
解説小型哺乳類の口を開けた呼吸は、呼吸不全の最終段階に近い非常に危険な状態で、鼻のピンク色の泡は肺に水がたまっているサインである。原因が何であれ今すぐ夜間救急へ搬送する。朝まで待てば数時間以内に死亡する可能性が高い。扇風機の風は酸素を増やさず、興奮と冷えを招く。口に指を入れると咬まれる上に、呼吸困難の動物を保定すると急変する。搬送は箱に入れて暗く静かにし、抱え込まず水平に保ち、保温しすぎないようにする。
課題夜間救急の受診基準を事前に決めておらず、「昨日まで元気だった」という印象が判断を遅らせかけた。呼吸の異常は小動物では最優先の緊急症状という認識が不十分だった。
改善案「口を開けて呼吸、鼻から泡や血、動かない、けいれん」は夜間救急と決めて飼育室に貼る。夜間救急の連絡先、経路、所要時間を家族で共有する。毎日呼吸の速さと様子を観察し、変化の記録を残しておく。
Q50低体温の個体を病院まで40分運ぶ救命救急
冬の早朝、保護直後の成獣が低体温で動けず、獣医師から「今すぐ連れてきて」と言われた。病院まで車で40分。家族が「早く温めたいから車のヒーターを最強にして、膝の上に乗せて直接湯たんぽを当てよう」と提案している。段ボール箱とタオル、手袋がある。
搬送中の保温として最も適切なものはどれか
- 車内を最強に暖め、膝の上で湯たんぽを直接当てて温める
- ヒーターの吹き出し口の前に箱を置いて熱風を当てる
- 箱にタオルを敷いて手袋で入れ、タオルで包んだ湯たんぽを箱の外側に沿わせ、車内は暖かめにして揺らさず運ぶ
- 低体温なので何も温めず、病院に任せて急いで運ぶ
正解C.箱にタオルを敷いて手袋で入れ、タオルで包んだ湯たんぽを箱の外側に沿わせ、車内は暖かめにして揺らさず運ぶ
解説低体温の個体は、急激な加温で血管が開いて血圧が下がり、ショックを起こすことがある。ゆっくり温めるのが基本で、タオルを敷いた箱に手袋で入れ、タオルで包んだ湯たんぽを箱の外側に沿わせて徐々に温める。車内は暖かめにし、揺れを減らして運ぶ。膝の上で直接湯たんぽを当てると動けない個体は低温火傷を負い、咬傷や車内での逃走の危険もある。熱風の直撃は過熱と脱水を招く。何も温めずに運ぶと40分の間に体温がさらに下がる。到着後は保温の方法と経過を獣医師に伝える。
課題「早く温めたい」という気持ちから急激な加温を選びそうになった。低体温の動物をゆっくり温める理由と、搬送中の正しい保温方法を家族が知らなかった。搬送の役割分担も決まっていなかった。
改善案搬送用の箱、タオル、湯たんぽ、手袋を一式用意し、「熱源は箱の外側、タオル越し」を家族で共有する。搬送は運転役と観察役の2人体制にし、観察役は呼吸と反応を記録する。病院に到着予定時刻を事前に伝える。

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