キツネザル類 ケースメソッド 50問
状況を読み、飼い主として「最初に取るべき行動」を4択から選んでください。回答後に解説・課題・改善案が表示されます。マニュアルを見る
解答と解説・課題と改善案(全50問)
印刷・復習用。クリックで開きます。
Q1水をよく飲むのに痩せてきたワオ病気
9月の朝8時。施設で飼育する8歳のオスのワオキツネザルが、この1か月で水入れを空にする回数が倍になり、床材がいつも尿で濡れている。食欲はむしろ旺盛で、来園者がバナナを多めに与えていた時期と重なる。それなのに月1回の体重測定で300g減っていた。毛づやは悪く、目もわずかに白っぽく見える。
飼育担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 食欲があるので問題なし。暑さで水を飲むだけと考え涼しい場所を増やす
- 痩せているので栄養をつけるため果物と高カロリー食を増やして様子を見る
- 果物を止め、飲水量と尿の回数を記録し、尿を採って当日中に受診する
- ネットで調べて糖尿病と判断し、人用の血糖値サプリを餌に混ぜる
正解C.果物を止め、飲水量と尿の回数を記録し、尿を採って当日中に受診する
解説多飲多尿、食べるのに痩せる、目が白いの3つはキツネザル類の糖尿病の典型で、果実偏重の給餌が引き金になる。マニュアルの受診基準でも多飲多尿は当日中の受診である。まず原因となる果物を止め、飲水量と尿の回数を記録し、尿を採取して獣医に持参すれば診断が早まる。暑さのせいと決めつけると、白内障やケトアシドーシスに進んでから発見される。痩せているからと果物やカロリーを増やすのは血糖をさらに上げる最悪の対応。人用サプリは成分も用量も不明で、診断を遅らせるだけでなく中毒の恐れもある。
課題来園者や一部職員が「喜ぶから」と甘い果物を多く与え、給餌量の管理が担当者間で共有されていなかった。飲水量の記録がなく、床材の濡れという毎日見えるサインを1か月放置した。
改善案果物は全給餌量の1割以下と明文化し、来園者の給餌は禁止または専用の野菜に限る。水入れの交換時に残量を記録し、床材の濡れ方の変化も日誌に書く。8歳以上は年1回の血液・尿検査を定期化する。
Q2休眠中のネズミキツネザルが冷たい病気
11月の昼13時。夜行性のネズミキツネザル舎で、2歳のメスが巣箱の中で丸まって冷たくなっている。この種は乾季に休眠することを知っているが、先週の体重は55gで秋に蓄えるべき尾の脂肪が薄い。室温計は16℃を示し、暖房の設定を昨夜から下げたままだった。声をかけても反応がほとんどない。
飼育担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 休眠ではなく低体温と判断し、室温を20℃以上に戻しタオルで包んで徐々に温め病院に連絡する
- 自然な休眠と判断し、起こさないよう巣箱を暗くして春まで触らない
- すぐ温めるためドライヤーの温風を体に直接当てて起こす
- 口にハチミツを多めに流し込んでエネルギーを与え、動くまで待つ
正解A.休眠ではなく低体温と判断し、室温を20℃以上に戻しタオルで包んで徐々に温め病院に連絡する
解説ネズミキツネザルの休眠は尾に脂肪を十分蓄えた個体が行う正常な生理だが、体重が軽く尾が細い個体が16℃という低温下で冷たく反応がないのは、休眠ではなく低体温・低血糖の緊急事態である。室温を20℃以上に戻し、タオルで包んで徐々に温めながら病院に連絡する。「自然な休眠」と決めつけて放置すると数時間で死亡する。ドライヤーの温風は体表だけ急激に温めて血管が開き、ショックを起こす。反応がない個体の口に液体を流し込むと誤嚥する。糖は意識があるときに口の端に少量つける程度にとどめる。
課題休眠と低体温の違いを体重と尾の脂肪で見分ける基準がなく、「この種は休眠する」という知識だけで判断しそうになった。体重が軽い個体がいるのに暖房を下げた温度管理も問題だった。
改善案休眠を許すのは体重が基準を満たし尾が太い個体のみとルール化し、それ以外は冬も20℃以上を保つ。休眠中も週1回は体重を量り、急減すれば起こして給餌する。暖房設定の変更は体重表を確認してから行い、変更を日誌に残す。
Q3木登りを嫌がり地面に座り込むワオ病気
5月の午後、屋外展示のワオキツネザルの群れで、6歳のメス1頭だけが止まり木に登らず地面に座り込んでいる。腹が垂れ、歩くと左右に揺れる。体重は3.6kgで、群れの他の個体より1kg近く重い。餌はまとめて1か所に置いており、この個体が真っ先に食べ尽くす。来園者からは「かわいい」と人気で、果物をねだる芸を覚えている。
この状況への対応として最も適切なものはどれか
- 人気個体なので現状のままにし、来園者の求めに応じて果物の芸を続ける
- 急いで痩せさせるため餌を2日間抜き、水だけにする
- 痛みが原因かもしれないので人用の鎮痛剤を少量与えて登らせる
- 肥満と判断し、果物を減らし給餌場所を複数に分けて体重を月1回記録、獣医に健診を依頼する
正解D.肥満と判断し、果物を減らし給餌場所を複数に分けて体重を月1回記録、獣医に健診を依頼する
解説標準より2割以上重く、腹が垂れ、木登りを避けるのはキツネザル類の肥満の典型であり、糖尿病や関節疾患、落下骨折の前段階である。果物を減らして霊長類ペレットと葉物野菜中心に戻し、給餌場所を頭数以上に分散して独占を防ぎ、採食に時間をかけさせる。月1回の体重記録と獣医による健診で糖尿病や関節の問題を確認する。人気を理由に放置すれば数年以内に糖尿病になる。絶食はケトン体の増加や低血糖を招き、群れの序列にも悪影響を与える。人用鎮痛剤は原猿類での安全性が確立しておらず、肝臓・腎臓障害の危険がある。
課題餌を1か所にまとめ置きしたため序列上位の個体が独占する構造になっていた。来園者の人気と「芸」の報酬が果物となり、給餌量の管理が崩れていた。体重と群れ平均の差に気づいていながら対応が遅れた。
改善案給餌場所を頭数以上に分散し、餌を隠すフィーダーで採食時間を延ばす。芸や来園者対応の報酬は葉物野菜など低糖のものに替える。全頭の体重を月1回表にし、標準の2割を超えたら獣医と食事計画を立てる。
Q4口臭が強く片側で噛むワオ病気
3月の給餌時間。12歳のオスのワオキツネザルが、ペレットを口の右側だけで噛み、硬い野菜を口から落とす。近づくと強い口臭がし、よだれで胸の毛が濡れている。下の前歯が櫛状の歯櫛に食べかすが詰まり、最近は仲間の毛づくろいにも参加しない。顔の左側がわずかに膨らんで見える気もする。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 口の中を確認するため仲間と一緒のまま口を手でこじ開けて歯を見る
- 口を無理に開けず柔らかい野菜ペーストで水分を確保し、顔の腫れがあるので当日中に獣医に口腔検査を依頼する
- 人用の歯磨き粉と歯ブラシで毎日歯を磨いて様子を見る
- 口臭は臭腺の匂いと同じで正常と考え、特に何もしない
正解B.口を無理に開けず柔らかい野菜ペーストで水分を確保し、顔の腫れがあるので当日中に獣医に口腔検査を依頼する
解説片側噛み・硬い物を落とす・強い口臭・よだれは歯周病や歯根膿瘍のサインで、顔の腫れを伴えば膿瘍が広がっている可能性が高い。マニュアルでは口を気にして食べない場合は数日以内の口腔検査、顔の腫れがあれば当日とされる。口を無理にこじ開けると痛みで激しく噛まれ、犬歯による裂傷を負う。群れの前で保定すれば仲間が加勢して危険。歯磨きは痛みのある口には苦痛で、膿瘍は磨いても治らず鎮静下の処置が必要である。口臭を臭腺の匂いと混同するのは観察不足で、放置すると歯櫛が使えず毛づくろいができなくなり群れでの立場も悪化する。
課題柔らかい果物中心の給餌が長く続き、枝葉や硬い野菜で歯を自然に磨く機会が少なかった。年1回の口腔検査が高齢個体にも行われておらず、毛づくろいへの不参加という社会的サインも見逃された。
改善案枝葉・硬い野菜を毎日与えて自然に歯を磨かせる。10歳以上は年1回の鎮静下健診で歯石除去と口腔検査を行う。毛づくろいへの参加や歯櫛の汚れを毎日の観察項目に加え、変化があれば数日以内に相談する。
Q5室内育ちの幼獣が足を引きずる病気
7月、生後8か月のワオキツネザルの幼獣を母親が育児放棄したため、職員が屋内の人工哺育室で育てている。最近、跳躍に失敗して棚から落ち、右後ろ足を引きずるようになった。背中がやや丸く、あごの形も左右で違って見える。餌はミルクの後、果物とゆで野菜を中心に与えてきた。屋内は窓ガラス越しの光しか入らず、UVB灯は設置していない。
獣医に相談する際に最も重要な見立てはどれか
- 単なる捻挫なので冷やして2週間安静にすれば治ると伝える
- 幼獣はよく転ぶものなので経過観察で問題ないと伝える
- 日光とカルシウム不足による代謝性骨疾患の疑いがあり、レントゲンと食事・UVBの見直しを急ぐと伝える
- 成長痛なので人用のカルシウム錠剤を毎日与え始めたと伝える
正解C.日光とカルシウム不足による代謝性骨疾患の疑いがあり、レントゲンと食事・UVBの見直しを急ぐと伝える
解説ガラス越しの光はUVBをほとんど通さず、果物とゆで野菜中心の食事はカルシウムとビタミンD3が不足する。成長期の幼獣でこの条件が重なれば代謝性骨疾患が起こり、骨がもろくなって跳躍失敗や骨折、背中の丸まり、あごの変形が生じる。レントゲンで骨密度と骨折の有無を確認し、霊長類用ペレットへの切り替えと屋外日光浴かUVB灯の設置を急ぐ。捻挫や成長痛と決めつけると骨折を見逃し変形が固定する。人用カルシウム錠剤は用量が不明で、ビタミンD3なしでは吸収されず、過剰は腎臓に負担をかける。
課題人工哺育の環境設計でUVBと食事バランスが考慮されず、ガラス越しの光で日光浴ができていると誤解していた。果物中心の離乳食が代謝性骨疾患の原因になることを知らなかった。
改善案人工哺育の個体にもUVB灯を設置するか、毎日屋外で日光浴させる。離乳後は霊長類用ペレットを基本にし、果物は1割以下に抑える。成長期は月1回の体重測定と年1回のレントゲンで骨の状態を確認し、跳躍失敗が出たら即相談する。
Q6幼獣の血便と群れの給餌場所病気
6月の朝、ワオキツネザルの群れで生後5か月の幼獣が水様便をし、便に血が混じっている。母親の背中にしがみつく力が弱く、昨日の夕方から乳を飲む回数が減った。群れは共用の給餌台で食べており、先月新しいオスを検疫なしで合流させたばかり。他の成獣にはまだ症状がない。
飼育担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 便を密閉して持参し母子を当日中に受診、給餌場所を他個体と分けて手袋で清掃する
- 幼獣の下痢はよくあることなので、整腸作用のあるヨーグルトを与えて2〜3日様子を見る
- 母親から幼獣を取り上げて人工哺育に切り替え、群れはそのままにする
- 人用の下痢止めを水に溶かして群れ全体に飲ませる
正解A.便を密閉して持参し母子を当日中に受診、給餌場所を他個体と分けて手袋で清掃する
解説幼獣の血便と吸乳低下は半日で脱水が進む緊急度の高い状態で、マニュアルでも血便は当日受診である。検疫なしで合流した新入個体がいるため寄生虫やサルモネラなど感染性の下痢を疑い、便を密閉して持参し糞便検査を受ける。母子は一緒に受診して授乳を維持し、給餌場所を他個体と分け手袋で清掃して群れ内の拡大と人への感染を防ぐ。ヨーグルトなどの乳製品はキツネザルの消化に向かず、数日の様子見で幼獣は脱水で命を落とす。母親から引き離すと幼獣のストレスと免疫低下を招く。人用下痢止めは原因を隠し、感染性下痢では病原体を体内にとどめて悪化させる。
課題新入個体を30日以上の検疫なしで群れに合流させ、病原体を持ち込ませた。共用給餌台で全頭が同じ場所を使い、感染が広がりやすい構造だった。前日の吸乳低下に気づきながら翌朝まで対応が遅れた。
改善案新入個体は必ず30日以上隔離し、2回の糞便検査が陰性になってから合流させる。給餌台を分散し毎日洗浄する。幼獣がいる群れは授乳回数とつかまり方を毎日記録し、異常があれば当日中に獣医に連絡する体制を作る。
Q7繁殖期の闘争で追われ出血するオス怪我
10月の夕方、ワオキツネザルの群れで若いオス同士が激しく追いかけ合い、下位の3歳のオスが腕から出血しながら隅に追い詰められている。群れのメスも加勢して威嚇している。腕の傷は犬歯による深い裂傷で血が滴っている。他の職員は帰宅し、担当者1人だけが残っている。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 群れの中に入って追っている個体を手で払い、出血個体を抱えて外に出す
- 自然な序列争いなので介入せず、翌朝まで様子を見て傷を確認する
- 傷口に人用の消毒液と絆創膏を貼ってそのまま群れに戻す
- 扉操作で追われている個体を別室へ隔離し、落ち着いてから圧迫止血して当日中に受診の手配をする
正解D.扉操作で追われている個体を別室へ隔離し、落ち着いてから圧迫止血して当日中に受診の手配をする
解説秋から冬の繁殖期はワオキツネザルの闘争が激しくなり、犬歯による裂傷は深く化膿しやすい。まず扉操作で追われている個体を別室に誘導して隔離し、興奮が収まってから清潔なガーゼで圧迫止血し、当日中に獣医の処置を受ける。興奮した群れの中に1人で入ると、メスを含む複数頭から咬まれる重大事故になる。翌朝まで放置すれば出血と再攻撃で死亡する恐れがある。人用の消毒液は組織を傷め、絆創膏は剥がして食べるうえ、傷を閉じたまま群れに戻せば膿瘍と再攻撃を招く。
課題繁殖期に闘争が増える時期なのに、隠れ場や退避できる部屋の準備と職員の複数配置ができていなかった。下位オスが追い詰められる兆候を日中に見逃し、夕方の単独勤務で発見した。
改善案繁殖期は隠れ場と給餌場所を頭数以上に増やし、追われた個体が逃げ込める別室を常に空けておく。闘争が増える時期は夕方も2人体制にし、扉操作で隔離する手順を訓練する。傷の処置用のガーゼとキャリーを舎内に常備する。
Q8高い棚から落ちて足を引きずる怪我
2月の午前、屋内舎で15歳の老齢メスのワオキツネザルが3mの棚から跳躍に失敗して床に落ちた。起き上がったが左後ろ足を完全に浮かせ、足首が腫れて不自然な角度に曲がっている。群れの仲間が近寄って匂いを嗅いでいる。本人は痛がって鳴き、触ろうとすると威嚇する。
飼育担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 足をまっすぐに戻して割り箸と包帯で添え木を当ててから病院へ行く
- 動かさないよう暗い箱に誘導して仲間と分け、添え木はせず当日中に受診する
- 歩けるので骨折ではないと判断し、2〜3日安静にして腫れが引くか見る
- 痛み止めとして人用の鎮痛剤を餌に混ぜ、翌週の定期健診まで待つ
正解B.動かさないよう暗い箱に誘導して仲間と分け、添え木はせず当日中に受診する
解説足を浮かせ、腫れて不自然な角度に曲がっているのは骨折や脱臼の典型で、老齢個体は骨がもろく落下骨折が多い。マニュアルどおり動かさずに暗い箱へ誘導し、添え木は当てず当日中に受診する。素人の添え木は骨の端をずらして神経や血管を傷つけ、痛みで激しく咬まれる。歩けても骨折は否定できず、数日放置すると骨が変形したまま固まる。人用の鎮痛剤は原猿類での安全性が不明で、痛みを隠して患部を使わせ悪化させる。仲間と分けるのは、群れが弱った個体を攻撃することがあるためである。
課題老齢・肥満個体がいるのに止まり木の間隔が若い個体の跳躍距離のままで、低い経路や落下地点の緩衝材がなかった。老齢個体の運動能力低下を見越したレイアウト変更がされていなかった。
改善案老齢個体のために低い棚板や斜めの通路を追加し、高所の下に草地や緩衝材を敷く。滑る棚板は表面を替える。年2回、群れの個体ごとに跳躍能力を観察し、失敗が増えた個体がいればレイアウトを見直す。搬送用の暗い箱を常備する。
Q9扉を閉めた瞬間に尾を挟んだ怪我
4月の清掃後、担当者が給餌口の扉を閉めた瞬間、後ろにいた4歳のメスのワオキツネザルの長い尾を挟んでしまった。悲鳴を上げて逃げ、尾の中ほどが折れ曲がって皮膚が裂け出血している。本人は尾を引きずりながら棚に登ろうとしている。
担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 折れ曲がった尾を手でまっすぐに戻し、テープで固定して様子を見る
- 尾は飾りなので放置し、自然に治るのを待つ
- 尾を掴まず個体を暗い箱に誘導し、出血は圧迫、折れ曲がりはそのままにして当日中に受診する
- 出血部に止血剤の粉をたっぷり振りかけて群れに戻す
正解C.尾を掴まず個体を暗い箱に誘導し、出血は圧迫、折れ曲がりはそのままにして当日中に受診する
解説ワオキツネザルの尾は体より長く、扉や金網に挟まれやすい。折れ曲がりと裂傷は尾椎の骨折を疑い、血流が途絶えると壊死して切断が必要になるため当日中の受診が必要である。尾を掴んで捕まえるとさらに損傷するので、暗い箱に誘導して出血は清潔なガーゼで圧迫し、曲がりは素人が戻さず獣医に任せる。手で戻すと骨片がずれて血管を傷つけ、テープは血流を止めて壊死を早める。尾はバランスと群れの合図に使う重要な器官で、放置すれば壊死と感染が進む。止血剤の粉は傷を汚染し、群れに戻せば仲間が傷を舐めたり咬んだりする。
課題扉の開閉時に個体の位置、特に長い尾の位置を確認する習慣がなかった。清掃後の気の緩みと、尾が挟まりやすい構造の給餌口をそのまま使っていたことが事故を招いた。
改善案扉と給餌口は閉める前に必ず個体と尾の位置を声に出して確認するルールにする。扉の隙間に緩衝材をつけ、ゆっくり閉まる金具に替える。尾を掴んだ捕獲を禁止し、暗い箱への誘導訓練を全職員で行う。
Q10二重扉の内側が開いたままで脱走事故
8月の朝9時、新人職員が屋外ケージの二重扉の内側を開けたまま外側を開けてしまい、7歳のメスのワオキツネザルが外に飛び出した。園路を走り、近くの木に登って群れの方を見て鳴いている。来園者が集まり始め、スマートフォンを向けている。担当者はその場にいて、キャリーと好物の葉物野菜は手元にない。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 追わずに来園者を遠ざけ、管理事務所に連絡して応援と道具を呼び、群れの声と好物で誘導する
- 逃げるとさらに遠くへ行くので全力で木に登って捕まえる
- 来園者と一緒に大声で呼びながら木の周りを囲んで追い込む
- すぐに自治体や警察に連絡すると大事になるので、園内だけで静かに捕獲して報告しない
正解A.追わずに来園者を遠ざけ、管理事務所に連絡して応援と道具を呼び、群れの声と好物で誘導する
解説キツネザル類は跳躍力が高く、追えば園外へ逃げて回収が困難になり、来園者が咬まれる事故にもつながる。追わずに来園者を遠ざけ、事務所に連絡して人員・キャリー・好物を揃え、群れの声が聞こえる方向に好物で誘導するのが基本である。群れ性が強いため仲間のいる方へ戻る習性を利用する。木に登って捕まえようとすると落下やパニックで咬まれる。大声で囲むと恐怖でさらに遠くへ跳び、来園者に飛びかかる恐れがある。CITES附属書Iの動物の逸走は重大事故であり、自治体や警察への連絡と記録は必須で、隠せば信用と法的責任の問題になる。
課題新人職員に二重扉の操作手順が徹底されておらず、内側が開いたまま外側を開ける危険が認識されていなかった。脱走時の連絡経路・役割分担・道具の保管場所が決まっておらず、担当者が丸腰で対応した。
改善案二重扉は「内側を閉めて施錠してから外側を開ける」を掲示し、新人は1か月は先輩と2人で操作する。逸走対応マニュアルを作り、キャリー・好物・ネットを各舎に常備、連絡先一覧を掲示する。年1回の逸走訓練を全職員で実施する。
Q11暗い舎で足元のネズミキツネザルを踏んだ事故
12月の夕方、夜行性のネズミキツネザル舎は展示のため薄暗い。清掃で入った職員が床の暗がりに降りていた3歳のオスに気づかず足で踏んでしまった。甲高い悲鳴の後、床で横になり腹で呼吸しながら動かない。体重60gの小さな体で、口から少量の血が見える。
職員が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ショックを与えないよう手で何度も撫でて励まし、起き上がるのを待つ
- タオルを敷いた小さな暗い箱にそっと移して保温し、病院に電話しながら今すぐ搬送する
- 小さいので病院では診られないと考え、巣箱に戻して翌朝まで様子を見る
- 口の血を洗うためスポイトで水を口に流し込み、ミルクを飲ませる
正解B.タオルを敷いた小さな暗い箱にそっと移して保温し、病院に電話しながら今すぐ搬送する
解説体重60gの小動物を人が踏めば、内臓損傷や肋骨骨折、気胸の可能性が高く、口からの出血は肺や内臓の損傷を示す。マニュアルの「今すぐ受診」に該当し、タオルを敷いた暗い箱にそっと移して保温し、病院に電話しながら搬送する。撫でるのは体内出血を悪化させ、ショックを深める。翌朝まで待てば数時間で死亡する。意識のはっきりしない個体の口に液体を流すと誤嚥し、さらに呼吸を悪化させる。搬送中は暗く静かにし、揺らさないことが重要である。
課題夜行性種の舎に入る際、床の暗がりに個体がいる前提で足元を確認する習慣がなかった。薄暗い展示環境で清掃作業をする手順と照明の工夫が不十分だった。
改善案入室前に赤色ライトで床を照らし、個体の位置を全頭確認してから足を踏み出す。清掃は個体が巣箱に入る時間帯に行い、入口に「足元確認」の掲示を置く。小型種用の搬送箱とタオル、カイロを舎内に常備し、搬送先の電話番号を掲示する。
Q12来園者が落としたアボカドを食べた中毒・誤飲
5月の昼、来園者が弁当のアボカドサンドの一部をケージ近くに落とし、金網越しに手を伸ばした5歳のオスのワオキツネザルが拾って食べた。30分後、落ち着きがなくなり、呼吸が速く、吐きそうな仕草を繰り返している。食べた量ははっきりしないが、アボカドの皮と果肉のかけらが残っている。
飼育担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 食べた量が少ないので問題ないと考え、水を多めに飲ませて様子を見る
- 塩水を飲ませて無理に吐かせてから群れに戻す
- 果物の一種なので中毒にはならないと判断し、記録だけ残す
- 残ったアボカドを袋に入れ、食べた推定量と時刻を伝えて今すぐ受診する
正解D.残ったアボカドを袋に入れ、食べた推定量と時刻を伝えて今すぐ受診する
解説アボカドに含まれるペルシンは多くの動物で心筋障害や呼吸困難を起こし、マニュアルでも与えてはいけない食品に挙げられている。食後30分で呼吸が速く落ち着かないのは中毒症状の始まりの可能性があり、心臓への影響は急速に進むため今すぐ受診する。残った実物と推定量・時刻は診断に不可欠なので持参する。塩水で吐かせるのは塩分中毒と誤嚥の危険があり、原猿類では禁忌である。「果物だから大丈夫」は誤りで、症状が出てから放置すれば致死的になる。水を飲ませても毒は薄まらず、呼吸が苦しい個体に飲ませると誤嚥する。
課題来園者が金網越しに手を伸ばせる距離に個体が近づける構造で、落とし物を拾える設計になっていた。来園者への「食べ物を持ち込まない・落とさない」の注意喚起が不十分だった。
改善案ケージ前に柵を設け、来園者と金網の間に1m以上の距離を作る。入口に飲食禁止の掲示と「サルに有害な食品」の一覧を示す。清掃時にケージ周辺の落とし物を点検し、中毒時の受診先と連絡手順を舎内に掲示する。
Q13輪ゴムを口に入れたまま逃げた中毒・誤飲
3月の給餌中、職員が野菜を束ねていた輪ゴムを落とし、2歳のメスのワオキツネザルが拾って口に入れたまま棚に逃げた。数分後、口の中を探るような仕草をし、げっぷのような動きをしたが輪ゴムは見当たらない。その後は普通に食べているが、職員は飲み込んだのかどうか確信がない。
職員の対応として最も適切なものはどれか
- 普通に食べているので飲み込んでいないと判断し、何もしない
- 吐かせるためにオリーブ油を飲ませ、床で転がす
- 飲み込んだ前提で獣医に連絡し、食欲・便・嘔吐を数日記録して輪ゴムが便に出るか確認、嘔吐や食欲低下があれば当日受診
- 輪ゴムが胃にあるはずなので人用の下剤を餌に混ぜて出す
正解C.飲み込んだ前提で獣医に連絡し、食欲・便・嘔吐を数日記録して輪ゴムが便に出るか確認、嘔吐や食欲低下があれば当日受診
解説キツネザル類は手先が器用で何でも口に入れ、輪ゴムやビニールは腸閉塞の原因になる。飲み込んだか不明なときは飲み込んだ前提で獣医に連絡し、食欲・便・嘔吐を数日記録して便に出るか確認する。嘔吐、食欲低下、便が出ないといった閉塞のサインが出たら当日受診で、レントゲンや内視鏡の判断を仰ぐ。「食べているから大丈夫」は腸に詰まってからの発見を招く。油を飲ませたり転がしたりしても異物は出ず、誤嚥の危険がある。人用の下剤は腸の動きを無理に強め、異物が詰まった腸を傷つけて穿孔を起こす恐れがある。
課題給餌作業に輪ゴムなど小さな異物を持ち込み、落としたことに即座に対応する手順がなかった。器用な手で何でも口に入れる種の特性を踏まえた持ち込み物の管理ができていなかった。
改善案舎内に持ち込む物は必要最小限にし、輪ゴム・ネジ・ビニールは入口で外す。給餌後は持ち込んだ物の数を数えて確認する。異物を口にした場合の記録表(日時・物・経過)を用意し、便チェックを担当者全員で引き継ぐ。
Q14猛暑日の午後によだれとふらつき環境・災害
8月の午後14時、気温35℃。屋外展示のワオキツネザルの群れで、10歳のメスが日陰に入らず岩の上でぐったりし、口を開けて速い呼吸をし、よだれを垂らしている。立ち上がるとふらつく。ミストは故障中で、日陰は群れの上位個体が占領している。水入れは空に近い。
飼育担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 涼しい屋内へ誘導し、ぬるい水で体を濡らして風を当てながら冷やし、病院に連絡して今すぐ受診する
- 氷水の入ったバケツに全身を浸けて一気に体温を下げる
- 暑いだけなので日陰が空くまで待ち、夕方涼しくなったら様子を見る
- 水をたくさん飲ませるためスポーツ飲料を口に流し込む
正解A.涼しい屋内へ誘導し、ぬるい水で体を濡らして風を当てながら冷やし、病院に連絡して今すぐ受診する
解説キツネザル類はマダガスカルの動物だが30℃を超える高温多湿には弱く、口を開けた速い呼吸・よだれ・ふらつきは熱中症の典型でマニュアルでも今すぐ受診の基準である。涼しい屋内に移し、ぬるい水で体を濡らして風を当てて徐々に冷やしながら病院に連絡する。氷水に浸けると末梢血管が急に収縮して体温が下がらず、ショックを起こす。夕方まで待てば多臓器不全に進む。意識のはっきりしない個体に液体を流し込むと誤嚥し、スポーツ飲料の糖分は糖尿病リスクの高い種に不適切である。
課題ミストの故障を放置し、日陰が序列上位に独占される構造で下位個体が逃げ場を失っていた。水入れの残量確認も不十分で、猛暑日の巡回頻度が通常のままだった。
改善案日陰と水場を群れの頭数以上に分散し、上位個体が独占できないようにする。ミストや扇風機は夏前に点検し予備を用意する。30℃を超える日は1時間ごとに巡回して全頭の呼吸と居場所を確認し、屋内への退避ルールを決めておく。
Q15真冬の深夜に停電で暖房が止まった環境・災害
1月の深夜2時、大雪で地域が停電し、屋内舎の暖房が止まった。当直の職員が気づいた時点で室温は12℃まで下がり、ワオキツネザルの群れは棚で身を寄せ合って震えている。別室のネズミキツネザルは体重の軽い若い個体が2頭おり、巣箱の中で動きが鈍い。復旧の見込みは不明である。
当直職員が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ワオは寒さに強いので群れはそのままにし、朝まで待って復旧を確認する
- 小型で軽いネズミキツネザルを最優先に布で包んだカイロと毛布で保温し、ワオにも毛布と巣箱を追加して室温を記録しながら上司と獣医に連絡する
- 石油ストーブをケージ内に持ち込んで至近距離で温める
- 全頭を自宅に連れ帰って暖かい部屋で預かる
正解B.小型で軽いネズミキツネザルを最優先に布で包んだカイロと毛布で保温し、ワオにも毛布と巣箱を追加して室温を記録しながら上司と獣医に連絡する
解説停電時は体重が軽く体温を失いやすい小型種から優先して保温する。ネズミキツネザルは数十グラムで、12℃では低体温と低血糖が急速に進むため、布で包んだカイロと毛布で温める。ワオも10℃以下は危険で、身を寄せ合えるよう巣箱と毛布を追加し、室温を記録しながら応援と獣医に連絡する。ワオが寒さに強いという思い込みは誤りで、放置すれば幼獣や老齢個体が低体温になる。石油ストーブのケージ内持ち込みは火傷・一酸化炭素中毒・火災の危険がある。CITES附属書Iの動物を無断で園外に持ち出すのは法的にも管理上も不適切で、移動自体が大きなストレスになる。
課題停電時の非常用電源や代替の保温手段が準備されておらず、当直職員が体重の軽い個体から優先する判断基準を共有されていなかった。室温の低下に気づくまで時間がかかる監視体制だった。
改善案各舎に使い捨てカイロ・毛布・発泡スチロール箱を常備し、停電時の保温手順と優先順位を掲示する。室温が設定を下回ると当直に通知する温度警報を設置する。非常用電源の導入か、電気を使わない暖房の準備を冬前に点検する。
Q16口唇ヘルペスの職員が給餌をしたい感染症・衛生
2月の朝、ワオキツネザルの担当職員の唇に水ぶくれができ、口唇ヘルペスの再発だと本人は言う。熱はなく元気なので、いつもどおり舎内に入って手渡しで給餌し、慣れた個体に顔を近づけて声をかけるつもりでいる。手袋はつけるがマスクは暑いので外したいと言う。
責任者の判断として最も適切なものはどれか
- 熱もなく元気なので通常どおり作業させ、手洗いだけ徹底させる
- 手袋をつければ十分なので、マスクなしでの作業を許可する
- 動物の方が人にうつす病気なので、人のヘルペスは気にしなくてよいと説明する
- 発症中は動物との直接接触を禁止し、給餌は他の職員に代える。復帰後もマスク・手袋を徹底する
正解D.発症中は動物との直接接触を禁止し、給餌は他の職員に代える。復帰後もマスク・手袋を徹底する
解説人の単純ヘルペスウイルスは原猿類を含むサル類に重症の脳炎を起こし、致死的になることが知られている。口唇ヘルペス発症中は唾液や水ぶくれにウイルスが多く、顔を近づけたり手渡し給餌をしたりすれば動物に逆感染させる。マニュアルでも発症中は接触禁止、マスク・手袋、口移し厳禁と明記されている。手洗いや手袋だけでは飛沫や顔の接触を防げない。「人の病気は動物に関係ない」は誤りで、人からサルへうつる麻疹・結核・インフルエンザとともに、施設飼養での最重要の衛生ルールである。
課題人からサルへの逆感染のリスクが職員に十分理解されておらず、「元気なら作業できる」という判断基準だけで動いていた。体調不良時の代替要員の確保と申告ルールが整っていなかった。
改善案口唇ヘルペス・風邪・発熱・発疹がある職員は霊長類舎に入らないルールを明文化し、毎朝の体調申告を習慣にする。代替要員を常に決めておく。全職員に人からサルへうつる感染症の研修を年1回行い、マスク・手袋の着用を常時の標準にする。
Q17複数頭に下痢が広がった後の清掃感染症・衛生
7月、ワオキツネザルの群れ8頭のうち3頭が軟便になり、1頭は血便で獣医がサルモネラを疑って検査中である。担当職員は同じ長靴と器具でネズミキツネザル舎の清掃にも回っており、給餌容器は共用のシンクでまとめて洗っている。職員の1人が昨夜から腹痛を訴えている。
衛生管理として最も適切な対応はどれか
- 検査結果が出るまでは通常どおり清掃し、結果次第で対策を考える
- 下痢の個体だけ隔離すれば十分なので、器具や靴の共用は続ける
- 症状のある個体を隔離し、舎ごとに長靴・器具・洗浄場所を分けて手袋で便を処理、腹痛の職員は作業を外し医療機関を受診させる
- 群れ全体に人用の抗生物質を餌に混ぜて予防する
正解C.症状のある個体を隔離し、舎ごとに長靴・器具・洗浄場所を分けて手袋で便を処理、腹痛の職員は作業を外し医療機関を受診させる
解説サルモネラは便を介して個体間にも人にも感染する人獣共通感染症で、マニュアルでも器具は個体群ごとに分け消毒し下痢便は手袋で処理するとされている。症状のある個体を隔離し、舎ごとに長靴と器具を分け、洗浄場所も共用しない。腹痛のある職員は感染している可能性があるため作業を外し受診させる。検査結果待ちで通常作業を続けると別の舎に広がる。個体隔離だけでは靴や器具に付いた便が運ばれる。抗生物質の自己判断投与は耐性菌を生み、用量も不明で、診断を妨げる。
課題舎ごとの器具・長靴・洗浄場所の分離がなく、職員が病原体を運ぶ構造だった。職員の体調不良を感染症の一部として捉える視点がなく、作業を続けさせていた。
改善案舎ごとに専用の長靴・器具・消毒槽を置き、色分けして混用を防ぐ。給餌容器は舎別に洗浄し、下痢発生時は洗浄順序を健康な群れから先にする。職員の下痢・腹痛は申告して作業を外す規則を作り、年2回の糞便検査を群れと職員の両方に実施する。
Q18手渡し給餌中に指を咬まれ離さない救命救急
4月の午後、ワオキツネザル舎で職員が野菜を手渡していたところ、6歳のオスが指ごと咬みつき、犬歯が食い込んで離さない。痛みで職員は反射的に手を引こうとし、周囲の個体も興奮して集まってきている。もう1人の職員は舎の外にいる。
咬まれた職員が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 力いっぱい手を引き抜き、大声で叱って追い払う
- 動きを止め体を低くして視線を外し、外の職員に布や板を顔の前に入れてもらい離れたら静かに退室する
- 空いている手で個体の頭を叩いて離させる
- 咬まれたまま仲間が落ち着くのを待ち、離すまで動かずに5分以上耐える
正解B.動きを止め体を低くして視線を外し、外の職員に布や板を顔の前に入れてもらい離れたら静かに退室する
解説咬まれた手を引き抜くと犬歯が裂傷を広げ、大声や叩く行為は個体をさらに興奮させて咬み続ける原因になる。マニュアルの手順どおり動きを止めて体を低くし視線を外し、布や板を顔の前に差し込んで噛む対象を移すのが安全である。離れたら静かに後退して扉を閉め、仲間が加勢する前に退室する。複数頭がいるワオでは興奮が群れに伝わり、長く留まるほど危険が増すので「離すまで耐える」は不適切。退室後は流水で5分洗い消毒し、必ず当日受診してサル咬傷と伝え、口唇ヘルペスの有無も医師に伝える。
課題手渡し給餌を群れの中で行う習慣があり、咬傷のリスクと引き離しの手順が職員に共有されていなかった。舎内に布や板などの道具がなく、2人体制でも外の職員が即座に支援できる配置になっていなかった。
改善案手渡し給餌は原則やめ、フィーダーや給餌口を通した給餌に切り替える。舎内に厚手の布と板を常備し、2人体制で1人は常に扉の近くに立つ。年1回、咬傷時の引き離し訓練と、咬まれた後の洗浄・受診・報告の手順を全職員で確認する。
Q19金網で裂けた腕からの出血が止まらない救命救急
6月の朝、3歳のメスのワオキツネザルが金網のほつれに腕を引っかけて裂傷を負い、腕の内側から血が滴り続けている。暗い箱に誘導して落ち着かせたが、ガーゼを当てても血がにじみ続け、5分ごとに外して確認しているうちに10分が過ぎた。毛が血で固まり、本人はぐったりしてきた。
この段階で最も適切な止血と搬送の対応はどれか
- 新しいガーゼを重ねて5分以上はがさずに圧迫し、腕の付け根側を軽く握り、圧迫したまま今すぐ搬送する
- 出血部位の上を紐で強く縛って完全に血を止め、止まったことを確認してから搬送する
- 止血剤の粉をたっぷり振りかけて乾くまで待ち、固まったら群れに戻す
- ガーゼをこまめに替えて出血量を正確に記録し、30分止まらなければ受診する
正解A.新しいガーゼを重ねて5分以上はがさずに圧迫し、腕の付け根側を軽く握り、圧迫したまま今すぐ搬送する
解説圧迫止血は5分以上はがさずに続けることが基本で、こまめにはがすと血餅が取れて出血が再開する。すでに10分経過しぐったりしているのは失血が進んでいるサインで、マニュアルどおり圧迫したまま今すぐ搬送する。四肢の付け根側を軽く握って血流を減らすのは有効だが、紐で強く縛る駆血は組織の壊死を招き、素人が長時間行うのは危険である。止血剤の粉は深い裂傷では効かず汚染の原因になり、群れに戻せば傷を咬まれる。記録を優先して搬送を遅らせると失血性ショックに陥る。
課題金網のほつれという環境の不備を点検で見逃していた。圧迫止血の基本(はがさずに5分以上)が職員に浸透しておらず、確認のために何度もはがして出血を長引かせた。
改善案毎朝の巡回で金網のほつれ・突起・隙間を指で触って点検し、見つけ次第補修する。止血の手順を舎内に掲示し、ガーゼと包帯、搬送箱を常備する。出血が5分の圧迫で止まらなければ搬送に移るという基準を決め、訓練で体に覚えさせる。
Q20朝、床で動かない個体を発見した救命救急
9月の朝7時、開舎した職員が、11歳のオスのワオキツネザルが床に横たわって動かないのを発見した。昨夜の閉舎時は普通に食べていた。体は温かいが、呼びかけに耳も目も動かない。他の個体が周りで鳴いている。職員は1人で、獣医の出勤は1時間後である。
職員が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 死亡していると判断し、群れから離して袋に入れ獣医の出勤を待つ
- すぐに胸を強く押して心臓マッサージを始め、口に口をつけて人工呼吸を行う
- 胸の動きで呼吸、胸の左側に手を当てて心拍、瞳孔の左右差を確認し、群れから静かに分けて獣医と夜間救急に電話して指示を仰ぐ
- 群れの仲間が看取れるようそのまま置き、写真を撮って記録に残す
正解C.胸の動きで呼吸、胸の左側に手を当てて心拍、瞳孔の左右差を確認し、群れから静かに分けて獣医と夜間救急に電話して指示を仰ぐ
解説体が温かいのに反応がない個体は、意識障害・低血糖・中毒・心停止直後など複数の可能性があり、まず呼吸(胸の動き)・心拍(胸の左側、ワオは1分100〜200)・瞳孔の左右差を確認する。マニュアルどおり心停止が疑われてもまず病院に電話し指示を仰ぐことが基本で、群れから静かに分けて搬送の準備をする。確認せずに死亡と判断して袋に入れるのは蘇生の機会を奪う。確認なしの胸部圧迫は心拍がある個体を傷つけ、口移しの人工呼吸は人獣間の感染リスクがあり禁止されている。写真や群れの看取りを優先して時間を失うのは本末転倒である。
課題開舎時に倒れた個体を発見した場合の確認手順と連絡先が担当者に浸透しておらず、1人勤務の朝に判断を委ねる体制だった。前夜の閉舎時の観察で予兆を捉えられなかった可能性もある。
改善案意識・呼吸・心拍の確認方法と正常値を舎内に掲示し、年1回は模型で練習する。獣医不在時間帯の夜間救急と連絡順序を一覧にして掲示する。閉舎時は全頭の食事量・動き・便を記録し、異変があれば当直に申し送る。
Q21目が白く濁り壁にぶつかる老齢個体病気
11月、17歳の老齢メスのワオキツネザルの両目が白く濁り、棚への跳躍で壁にぶつかるようになった。飲水量は以前から多く、体重は半年で400g減った。傷が治りにくく、先月の小さな咬み傷がまだ湿っている。群れでは序列が落ち、給餌台に近づくと追い払われる。
この個体に対して最も適切な対応はどれか
- 老化による白内障なので治療はせず、群れでの自然な経過に任せる
- 目が見えないので群れから完全に引き離し、単独の小さなケージで飼う
- 視力を補うため目薬を人用の薬局で買って点眼し、棚を低くするだけにする
- 糖尿病による白内障を疑い、血液・尿検査と傷の処置を獣医に依頼、給餌場所を分けて低い経路を作る
正解D.糖尿病による白内障を疑い、血液・尿検査と傷の処置を獣医に依頼、給餌場所を分けて低い経路を作る
解説白内障・多飲・体重減少・治りにくい傷の組み合わせは、キツネザル類で多い糖尿病の合併症を強く示す。老化だけと決めつけず血液・尿検査で診断し、治りにくい傷は感染の温床になるので獣医の処置を受ける。視力低下で序列が落ちた個体には給餌場所を分けて食事を確保し、低い経路を作って落下を防ぐ。群れから完全に引き離すと群れ性の強いワオは強いストレスを受け、免疫がさらに低下する。人用の目薬は原因を解決せず、糖尿病が続けば傷から敗血症に至る。治療しない選択は、食べられず傷が化膿する苦痛を放置することになる。
課題多飲と体重減少という糖尿病の初期サインを「老化」で片付け、半年間検査をしなかった。序列低下で食事が取れていない状況と、傷の治りの悪さを関連づけて考えられなかった。
改善案10歳以上の個体は年1回の血液・尿検査を定期化し、多飲や体重減少があれば老化と決めつけず受診する。老齢個体用に低い棚と別の給餌場所を設け、食事量を個別に確認する。傷は1週間で治らなければ獣医に見せる基準を作る。
Q22金網に指を引っかけ爪ごと裂けた怪我
10月の午後、4歳のオスのワオキツネザルが網目の粗い金網を登っていて指を引っかけ、人差し指の爪が根元からめくれて出血している。指は腫れているが曲がり方は正常に見える。本人は指を舐め続け、金網から降りてこない。
飼育担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 暗い箱に誘導して清潔なガーゼで圧迫し、指の変形がなければ当日中に受診、出血が止まらなければ今すぐ搬送する
- 舐めれば治るので自然に任せ、1週間後に腫れが引いているか確認する
- めくれた爪をハサミで切り落とし、消毒液をかけて群れに戻す
- 金網から引き剥がして捕まえ、指に包帯をきつく巻いて固定する
正解A.暗い箱に誘導して清潔なガーゼで圧迫し、指の変形がなければ当日中に受診、出血が止まらなければ今すぐ搬送する
解説爪が根元からめくれた傷は出血が多く、指の骨や腱に及ぶこともある。マニュアルどおり暗い箱に誘導して圧迫止血し、変形や脱臼がなければ当日中、出血が止まらなければ今すぐ受診する。舐め続けると唾液の細菌で化膿し、指を失うこともある。素人が爪を切り落とすと痛みで暴れて咬まれ、傷も深くなる。金網から無理に引き剥がすと指がさらに裂け、きつい包帯は血流を止める。治療後も金網の網目が粗いままなら再発するため、環境の改善が必要である。
課題指が入る粗い網目の金網をそのまま使い、爪や指の裂傷リスクを放置していた。爪の状態の定期点検がなく、怪我の後の捕獲・誘導方法も職員間で統一されていなかった。
改善案金網は指が入らない細かい網目か板壁に替え、登る面は丸太や太いロープにする。月1回の体重測定時に爪と指を点検する。暗い箱への誘導による捕獲を標準手順とし、ガーゼ・搬送箱を舎内に常備する。
Q23延長コードを噛んで感電した事故
1月の夕方、屋内舎でヒーター用の延長コードを金網の外側に這わせていたところ、2歳のメスのワオキツネザルが金網越しに手を伸ばして被覆を噛み、火花とともに悲鳴を上げて床に落ちた。口の周りが焦げたように見え、ぐったりして呼吸が浅い。コードはまだ金網に触れている。
職員が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- すぐ個体を抱き上げて口の火傷を確認し、水で冷やす
- まず電源プラグを抜いてから近づき、呼吸と心拍を確認して病院に電話しながら今すぐ搬送する
- 軽い感電なので巣箱で休ませ、翌朝食べるか確認する
- 口の焦げに人用の火傷薬を塗り、水を飲ませて様子を見る
正解B.まず電源プラグを抜いてから近づき、呼吸と心拍を確認して病院に電話しながら今すぐ搬送する
解説感電事故では救助者も感電するため、まず電源を切ることが最優先である。コードが金網に触れている状態で個体や金網に触れると二次災害になる。電源を切った後、呼吸と心拍を確認し、病院に電話しながら今すぐ搬送する。感電は口の火傷だけでなく不整脈や肺水腫を数時間後に起こすため、「軽そう」でも巣箱で休ませてはいけない。人用の火傷薬は舐めて中毒を起こし、口の火傷で水を飲ませると誤嚥する。口の中の火傷は食事がとれず脱水に進むため、獣医の処置が必要である。
課題手先が器用で金網越しに物を引き寄せる種の特性を無視し、コードを手の届く位置に這わせた。感電時にまず電源を切るという基本手順が職員に共有されていなかった。
改善案コードは金網から1m以上離すか金属製のコード保護管に通し、手が届く範囲に電気製品を置かない。ヒーターはケージ外に設置し、ブレーカーの位置と電源の切り方を舎内に掲示する。毎朝の巡回でコードの噛み跡を点検する。
Q24来園者が投げたチョコレートを数頭が食べた中毒・誤飲
4月の休日、混雑した展示場で来園者が金網越しにチョコレートの小袋を投げ入れ、ワオキツネザルの群れのうち3頭が奪い合って食べた。1時間後、2頭が落ち着きなく走り回り、1頭は嘔吐した。どの個体がどれだけ食べたかはわからない。
飼育担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 嘔吐したので毒は出たと考え、残りの2頭も吐くまで走らせて様子を見る
- 食べたのは少量と考え、水を多めに与えて翌日の便で確認する
- 包装を回収して種類と推定量を記録し、食べた可能性のある全頭を今すぐ受診させ、群れ全体の観察を強化する
- 元気な2頭は問題ないので、嘔吐した1頭だけを翌朝受診させる
正解C.包装を回収して種類と推定量を記録し、食べた可能性のある全頭を今すぐ受診させ、群れ全体の観察を強化する
解説チョコレートに含まれるテオブロミンは小型の動物ほど影響が強く、興奮・嘔吐・頻脈・けいれんを起こし致死的になることがある。体重2〜3kgのワオで小袋でも危険量になりうるため、包装を回収して種類と推定量を記録し、食べた可能性のある全頭を今すぐ受診させる。どの個体がどれだけ食べたか不明なときは全頭を対象にするのが安全側である。嘔吐しても吸収は続いており、走らせるのは心臓への負担を増やす。症状が出るまでに数時間かかることがあり、元気そうな個体を翌朝まで待つのは危険である。
課題来園者が金網越しに物を投げ入れられる展示構造で、混雑時の監視と注意喚起が不足していた。中毒時に「誰が食べたか不明なら全頭対応」という基準が決まっていなかった。
改善案金網の前に柵と透明板を設け、投げ入れできない構造にする。休日は展示場に監視員を配置し、給餌禁止の掲示を目立つ場所に置く。中毒時の対応表(有害食品の一覧・受診基準・全頭対応の原則)を舎内に掲示し、職員で共有する。
Q25震度6の地震、ケージが傾いた環境・災害
3月の午後、震度6の地震で屋外展示場の金網の一部が傾き、ワオキツネザルの群れ8頭がパニックで走り回っている。余震が続き、来園者の避難誘導も必要である。1頭が傾いた金網の隙間から外に出そうになっており、別の1頭は落下して足を引きずっている。職員は2人いる。
職員2人の役割として最も適切なものはどれか
- 2人とも怪我をした個体の救護にあたり、群れと来園者は後回しにする
- 2人で群れの中に入り全頭を捕まえて屋内に運ぶ
- 来園者を集めて群れの捕獲を手伝ってもらう
- 1人は来園者を遠ざけながら脱走しそうな隙間を板で塞ぎ、もう1人は群れを屋内へ誘導して扉を閉め、落ち着いてから怪我の個体を確認し獣医に連絡する
正解D.1人は来園者を遠ざけながら脱走しそうな隙間を板で塞ぎ、もう1人は群れを屋内へ誘導して扉を閉め、落ち着いてから怪我の個体を確認し獣医に連絡する
解説災害時は人の安全確保と動物の封じ込めを並行して行う。CITES附属書Iの霊長類が園外に出れば回収困難で人への咬傷事故も起こりうるため、来園者を遠ざけつつ隙間を板で塞ぐことを最優先にする。同時にもう1人が群れを屋内へ誘導して扉を閉めれば、余震の中でも安全が確保できる。怪我の個体は群れが落ち着いてから確認し獣医に連絡する。救護を先にすると脱走と来園者の事故を招く。パニック状態の群れに入って捕まえるのは咬傷の危険が高い。来園者に捕獲を手伝わせるのは咬傷・感染のリスクがあり厳禁である。
課題地震時の役割分担(封じ込め・来園者誘導・救護)が決まっておらず、金網の耐震性や隙間を塞ぐ資材の備えがなかった。屋内への誘導訓練が日常的に行われていなかった。
改善案災害時の役割分担表を作り、封じ込めを最優先と明記する。板・ロープ・工具を各舎に備え、金網の耐震点検を年1回行う。日常から合図で屋内に入る訓練をして、緊急時に群れを素早く収容できるようにする。年1回の避難訓練に動物の収容も組み込む。
Q26群れから孤立し隅で動かない若いメス病気
11月の朝、ワオキツネザルの群れで3歳のメスが1頭だけ隅の低い棚にいて、日光浴にも毛づくろいにも参加しない。近づく仲間に威嚇されて追い払われ、背中に小さな脱毛と引っかき傷がある。昨日の夕方の餌はほとんど食べておらず、体重は先月より200g減っていた。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 序列争いは自然なことなので、群れのまま経過を見守る
- 病気や怪我が序列低下の原因になりうるため、当日中に獣医の診察を受け、食事が取れるよう別の給餌場所を用意する
- 群れから永久に引き離し、単独ケージで静かに飼う
- 仲間に受け入れられるよう果物を多めに与えて機嫌を取らせる
正解B.病気や怪我が序列低下の原因になりうるため、当日中に獣医の診察を受け、食事が取れるよう別の給餌場所を用意する
解説ワオキツネザルはメス優位の群れ社会で、体調を崩した個体が序列を落とし攻撃されることが多い。日光浴・毛づくろいへの不参加、食欲低下、体重減少はマニュアルの異常サインに該当し、孤立し攻撃されている状態は当日受診の基準である。病気や怪我が隠れていないか獣医に診てもらい、食事が確保できるよう別の給餌場所を用意する。「自然なこと」と放置すると衰弱と攻撃で死亡する。永久に単独飼育にすると群れ性の強い種には強いストレスで、復帰も難しくなる。果物で機嫌を取るのは糖尿病リスクを上げ、序列の問題は解決しない。
課題序列争いと体調不良の見分けがつかず、食欲低下と体重減少というサインを「群れの問題」と片付けていた。追われた個体が安全に食べられる場所がなかった。
改善案日光浴・毛づくろいへの参加と食事量を個体ごとに毎日記録し、2日続けて不参加なら受診する基準を作る。給餌場所と隠れ場を頭数以上に用意し、下位個体が食べられる構造にする。体重は月1回測り、1割減で獣医に相談する。
Q27休眠中のネズミキツネザルの体重が急減病気
1月、室温を20℃に保った舎で、4歳のオスのネズミキツネザルが12月から休眠に入っている。休眠開始時は尾が太く体重90gだったが、今週の測定で65gまで落ちた。週1回の測定では先週から10g減っている。巣箱の中で触ると冷たく、わずかに動く。夕方の餌は手をつけていない。
飼育担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 休眠中の体重減少が急すぎるため起こして保温し、夕方に給餌を再開して獣医に当日中に相談する
- 休眠中は体重が減るのが当然なので春まで測定もやめて静かにする
- 休眠を早く終わらせるため室温を30℃に上げて強制的に起こす
- 痩せているので高カロリーの果物とハチミツを起きたときに大量に与える
正解A.休眠中の体重減少が急すぎるため起こして保温し、夕方に給餌を再開して獣医に当日中に相談する
解説ネズミキツネザルの休眠では尾の脂肪を少しずつ使うため緩やかな体重減少は正常だが、1週間で10g以上、開始時から3割近い減少は脂肪を使い切った危険な状態である。マニュアルどおり休眠中も週1回体重を量り、急減すれば起こして保温し、夕方の給餌を再開して当日中に獣医に相談する。測定をやめると衰弱に気づけない。30℃まで急に上げると体温調節が追いつかずショックを起こす。果物やハチミツの大量給餌は休眠明けの消化管に負担が大きく、糖尿病リスクも高めるので、昆虫や樹液ガムなど通常食から少量ずつ戻す。
課題休眠中の正常な体重減少と危険な急減の境界が決まっておらず、測定値の推移を評価する基準がなかった。休眠を許す体重基準を満たしていたものの、途中で中止する判断基準が準備されていなかった。
改善案休眠中の体重測定を週1回続け、開始時から2割減または週5g以上の減少で起こす基準を決める。起こした後の給餌は通常食を少量ずつ夕方に与え、室温は20〜26℃を保つ。休眠個体ごとに体重グラフを作り、担当者全員が見られるようにする。
Q28老齢オスの顔が腫れて食べない病気
6月の朝、16歳のオスのワオキツネザルの左の頬が大きく腫れ、目の下まで膨らんでいる。昨日から餌を口に入れても吐き出し、水は少し飲む。口臭が強く、腫れた部分を手で触ろうとする。数か月前から硬い野菜を避けていたが、記録に残していなかった。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 腫れを冷やすため氷を頬に押し当て、2〜3日で引くか見る
- 口の中を無理に開けて膿を絞り出し、消毒液で洗う
- 歯根膿瘍を疑い、口を無理に開けず柔らかい野菜ペーストで水分を確保して当日中に獣医の口腔検査を受ける
- 人用の抗生物質を餌に混ぜて1週間与える
正解C.歯根膿瘍を疑い、口を無理に開けず柔らかい野菜ペーストで水分を確保して当日中に獣医の口腔検査を受ける
解説頬から目の下にかけた腫れ、強い口臭、硬い物を避けてきた経過は歯根膿瘍の典型で、老齢個体の歯周病が進行した結果である。マニュアルでは顔の腫れは当日受診とされ、鎮静下での口腔検査と処置が必要になる。口を無理に開けず、柔らかい野菜ペーストで水分と栄養を確保する。氷を当てても膿瘍は治らず、数日放置すれば膿が目や顎の骨に広がる。素人が膿を絞ると痛みで激しく咬まれ、感染を広げる。人用の抗生物質は用量も種類も不明で、膿瘍は排膿と原因歯の処置なしでは治らない。
課題硬い野菜を避け始めた数か月前のサインを記録せず、歯周病の初期段階を見逃した。老齢個体に対する年1回の口腔検査が実施されていなかった。
改善案食べ方の変化(片側噛み・硬い物を避ける・口から落とす)を日誌の必須項目にし、担当者間で引き継ぐ。10歳以上は年1回の鎮静下健診で歯を診る。枝葉や硬い野菜を日常的に与え、歯石を自然に落とす環境を作る。
Q29小さな傷が1か月治らないワオ病気
8月、9歳のメスのワオキツネザルの腕の小さな咬み傷が1か月経っても塞がらず、湿って周囲の毛が抜けている。本人は元気で食欲もあり、来園者向けの果物給餌の時間には真っ先に来る。飲水量は多めだが夏だからと思っていた。体重は横ばいである。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 元気で食欲があるので、傷に市販の軟膏を塗って様子を見る
- 夏の湿気で治りが遅いだけなので乾燥させるため日光浴を増やす
- 傷を舐めるのを防ぐため包帯をきつく巻いて群れに戻す
- 治らない傷と多飲から糖尿病などの基礎疾患を疑い、傷の処置と血液・尿検査を獣医に依頼し果物給餌を止める
正解D.治らない傷と多飲から糖尿病などの基礎疾患を疑い、傷の処置と血液・尿検査を獣医に依頼し果物給餌を止める
解説キツネザル類の糖尿病は傷が治りにくいことや多飲として現れることがあり、元気で食欲があっても否定できない。1か月塞がらない傷は感染や基礎疾患のサインで、獣医による傷の処置と血液・尿検査が必要である。果物給餌が引き金になるため直ちに止める。市販軟膏は舐めて摂取し、原因を放置する。湿気のせいと決めつけると、糖尿病が進んで白内障や感染症に至る。きつい包帯は血流を止め、ワオは包帯を外して食べるため危険で、仲間が傷を咬む原因にもなる。
課題来園者向けの果物給餌が日常化し、糖尿病リスクが放置されていた。飲水量の増加を季節のせいにし、治らない傷と関連づけて考える視点がなかった。傷の経過観察に期限がなかった。
改善案来園者向け給餌は葉物野菜に替え、果物は全量の1割以下に制限する。傷は1週間で治らなければ受診する基準を決める。飲水量を季節ごとの平均と比較して記録し、夏でも平均を大きく超えれば検査する。年1回の血液・尿検査を全頭に実施する。
Q30工事の騒音で尾の毛を抜き始めた病気
9月、隣接する建物の工事が始まって2週間、ワオキツネザルの群れで5歳のオスが自分の尾の毛を抜き、同じ場所を行ったり来たりする行動を繰り返す。尾の中ほどに脱毛と赤い皮膚が見え、仲間から離れて過ごす時間が増えた。食欲はやや低下している。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 工事が終われば治るので、何もせず終了を待つ
- ストレス性の自傷を疑い、騒音から遠い隠れ場と採食行動を増やす環境改善を行い、皮膚の状態を獣医に見せて皮膚病を除外する
- 脱毛部に人用のかゆみ止めを塗り、尾を舐めないようエリザベスカラーを自作して着ける
- 群れのストレスを減らすため、この個体を単独ケージに移す
正解B.ストレス性の自傷を疑い、騒音から遠い隠れ場と採食行動を増やす環境改善を行い、皮膚の状態を獣医に見せて皮膚病を除外する
解説騒音などの環境ストレスは霊長類で自傷や常同行動(同じ動きの繰り返し)を引き起こし、脱毛と皮膚炎に進む。マニュアルでも脱毛や同じ動きの繰り返しは異常サインである。騒音から遠い隠れ場を増やし、餌を隠すフィーダーなどで採食時間を延ばして環境を改善する一方、寄生虫や真菌などの皮膚病が隠れていないか獣医に確認する。工事の終了を待つ間に自傷は習慣化し、皮膚の感染も進む。人用のかゆみ止めは舐めて摂取し、自作のカラーは群れでの毛づくろいや採食を妨げてストレスを増やす。単独ケージへの移動は群れ性の強いワオにさらなるストレスを与える。
課題工事の開始を事前に把握せず、騒音から群れを守る隠れ場や舎の移動を検討していなかった。常同行動の初期を見逃し、2週間放置した。
改善案周辺の工事やイベントの予定を事前に把握し、騒音が予想される時期は隠れ場を増やし必要なら舎を移す。常同行動や脱毛を毎日の観察項目に入れ、出現した日に環境改善を始める。採食に時間のかかる給餌方法を日常化し、ストレスの逃げ道を作る。
Q31新しく来た個体の便に白い虫病気
4月、他園から移動してきた2歳のメスのワオキツネザルを検疫室で預かって5日目、便に白く細長い虫が混じっているのを職員が見つけた。本人は元気で食欲もある。移動元からは「健康」と聞いており、検疫期間は2週間の予定で、来週には群れに合流させるつもりだった。
職員の対応として最も適切なものはどれか
- 便を密閉して獣医に糞便検査を依頼し、検疫室を手袋で清掃・消毒、治療と再検査が終わるまで合流を延期する
- 元気なので予定どおり来週に群れへ合流させ、群れ全体に駆虫薬を与える
- 市販の犬用駆虫薬を体重から計算して与え、合流は予定どおりにする
- 虫は自然に排出されるので検疫を2週間で終えて合流させる
正解A.便を密閉して獣医に糞便検査を依頼し、検疫室を手袋で清掃・消毒、治療と再検査が終わるまで合流を延期する
解説便に虫が見えるのは寄生虫感染が確定的で、元気でも群れに持ち込めば幼獣や老齢個体に下痢・衰弱をもたらす。便を密閉して糞便検査を受け、虫の種類に合った駆虫を獣医に依頼し、再検査で陰性を確認するまで合流を延期する。検疫室は手袋で清掃し消毒する。マニュアルでも新入個体は30日以上の検疫が基本であり、2週間では短い。群れに合流させてから駆虫するのは感染拡大を許す。犬用駆虫薬は原猿類での安全性や用量が確立しておらず、寄生虫の種類も不明なまま投与するのは危険である。虫が自然に排出される保証はなく、人に感染する種類もある。
課題検疫期間が2週間と短く、糞便検査なしで合流させる計画だった。移動元の「健康」という情報を鵜呑みにし、自園での検査を省いていた。
改善案新入個体の検疫は30日以上とし、入舎時と合流前の2回の糞便検査が陰性であることを合流の条件にする。検疫室専用の長靴・器具を用意し、作業順序は健康な群れを先にする。移動元からは検査記録を書面で受け取る。
Q32ヒーターの上で腹を火傷した怪我
12月の朝、屋内舎のパネルヒーターの上で寝ていた3歳のメスのワオキツネザルの腹の毛が焦げ、皮膚が赤くただれている。ヒーターには保護カバーがなく、表面温度が高くなっていた。本人は腹を舐め続け、歩くときに体を丸める。食欲はある。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- ただれが広がらないよう人用の火傷薬を厚く塗って群れに戻す
- 氷をタオルに包んで腹に押し当て、30分以上冷やし続ける
- ヒーターの電源を切り、患部を流水で軽く冷やしてから舐めないよう箱に入れ、当日中に受診する
- 食欲があるので問題なく、焦げた毛を切って様子を見る
正解C.ヒーターの電源を切り、患部を流水で軽く冷やしてから舐めないよう箱に入れ、当日中に受診する
解説ヒーターの表面に長時間触れる低温火傷は見た目より深く、数日かけて皮膚が壊死することがある。まず原因のヒーターを切り、患部をぬるめの流水で軽く冷やしてから、舐めて悪化させないよう暗い箱に入れて当日中に受診する。人用の火傷薬は舐めて摂取し、皮膚の評価を妨げる。氷での長時間冷却は組織を傷め、体重2〜3kgの個体では低体温になる。食欲があっても火傷は進行し、感染を起こせば広範囲の壊死になる。ヒーターには必ずカバーを付け、乗っても高温にならない製品を選ぶ必要がある。
課題保護カバーのないパネルヒーターをケージ内に置き、表面温度を確認していなかった。キツネザル類が暖かい場所に長時間座る習性を踏まえた配置になっていなかった。
改善案ヒーターはケージの外側か、動物が触れない位置に設置し、ケージ内に置く場合は必ずカバーと温度制御を付ける。冬前に表面温度を測って確認する。暖かい場所を複数作り、1か所に長時間密着しないようにする。火傷時の受診基準を掲示する。
Q33爪が剥がれて出血し群れが集まる怪我
7月の午後、屋外展示場で5歳のオスのワオキツネザルが岩から滑り落ち、後ろ足の爪が1本根元から剥がれて出血した。本人は岩の上で傷を舐め、血が滴っている。群れの仲間が集まって傷の匂いを嗅ぎ、数頭が威嚇を始めた。担当者が到着したとき、上位のメスが傷ついた個体を追い払おうとしている。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 群れの自然な反応なので介入せず、傷が自然に止まるか岩の上で観察する
- 傷ついた個体を群れの真ん中で抱き上げて止血する
- 出血しているので人用の止血パウダーを遠くから振りかける
- 扉操作で傷ついた個体を屋内に誘導して群れと分け、落ち着いてからガーゼで圧迫止血し、当日中に受診する
正解D.扉操作で傷ついた個体を屋内に誘導して群れと分け、落ち着いてからガーゼで圧迫止血し、当日中に受診する
解説ワオキツネザルの群れは弱った個体や血の匂いに反応して攻撃することがあり、傷ついた個体をそのまま群れに置くのは危険である。扉操作で屋内に誘導して群れと分け、落ち着いてから清潔なガーゼで圧迫止血し、爪の根元の損傷は骨に及ぶこともあるので当日中に受診する。介入しないと再攻撃で傷が増える。群れの中で抱き上げると興奮した仲間に咬まれる。止血パウダーは深い傷には効かず、汚染と舐め取りの原因になる。受診後も群れに戻す際は傷が治ってから行い、戻す時間帯と観察を計画する。
課題滑りやすい岩の表面と、怪我をした個体を群れから素早く分離する手順が整っていなかった。群れが弱った個体を攻撃する習性を踏まえた準備が不足していた。
改善案岩や棚の表面を滑りにくい素材に替え、落下地点に緩衝材を敷く。屋内へ誘導して分離する訓練を日常の給餌で行い、緊急時に使えるようにする。止血用ガーゼと搬送箱を展示場の近くに常備し、受診後の復帰手順を獣医と決めておく。
Q34老齢個体が落ちて動けず、どう捕まえるか怪我
3月の夕方、18歳の老齢オスのワオキツネザルが棚から落ち、床で腰を浮かせたまま後ろ足を動かせない。痛がって近づく職員を威嚇するが、逃げることはできない。群れは屋内に収容済みで、この個体だけ展示場に残っている。搬送箱と厚手の布はある。
獣医に搬送するための最も適切な捕獲方法はどれか
- 尾を掴んで引き寄せ、素早く搬送箱に入れる
- 厚手の布を頭からそっと被せて視界を遮り、布ごと胸と腰を支えて水平のまま箱に入れ、暗く保温して運ぶ
- 後ろ足を持って逆さに吊り上げ、暴れる前に箱に入れる
- 動けるようになるまで床に置き、朝まで待ってから運ぶ
正解B.厚手の布を頭からそっと被せて視界を遮り、布ごと胸と腰を支えて水平のまま箱に入れ、暗く保温して運ぶ
解説後ろ足が動かない落下は腰や脊椎の骨折を疑い、動かし方を誤ると麻痺が悪化する。厚手の布を頭から被せて視界を遮ると落ち着き、咬傷も防げる。布ごと胸と腰を支えて体を水平に保ち、搬送箱に入れて暗く保温し、揺らさずに運ぶ。尾を掴むと尾の損傷と脊椎への負担になり、マニュアルでも尾を掴んだ捕獲は禁止されている。逆さに吊ると骨折部がずれ、神経を傷つける。朝まで放置すれば痛みとショック、低体温で状態が悪化する。当日中の受診が基準であり、搬送中も体温と呼吸を確認する。
課題老齢個体が高所から落ちる危険を見越したレイアウト変更がなく、落下後の捕獲手順が決まっていなかった。尾を掴まない、水平に保つといった基本が職員に浸透していなかった。
改善案老齢個体には低い棚と斜めの通路を用意し、高所の下に緩衝材を敷く。布を使った捕獲と水平搬送の訓練を年1回行い、搬送箱と厚手の布を各舎に常備する。脊椎損傷が疑われる際の搬送方法を獣医と確認して掲示する。
Q35咬み傷が化膿して顔が腫れてきた怪我
10月、繁殖期の闘争で頬を咬まれた4歳のオスのワオキツネザルの傷を、担当者は「小さい傷」と判断して受診せず群れに戻していた。5日後、頬が腫れて熱を持ち、傷口から黄色い液が出ている。本人は元気がなく、餌を口に入れると痛そうに吐き出す。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 膿瘍を疑い、個体を群れから分けて当日中に受診し、排膿と処置を獣医に依頼する
- 腫れた部分を手で押して膿を出し、消毒液で洗って群れに戻す
- 人用の抗生物質を餌に混ぜ、3日間様子を見る
- 腫れは自然に破れて治るので、温めて膿が出るのを待つ
正解A.膿瘍を疑い、個体を群れから分けて当日中に受診し、排膿と処置を獣医に依頼する
解説キツネザル類の犬歯による咬み傷は深く、表面が閉じても内部で細菌が増えて膿瘍になりやすい。マニュアルでも咬傷は化膿しやすく当日受診とされており、腫れ・熱感・膿の排出は膿瘍の確定的なサインである。群れから分けて当日中に受診し、排膿と洗浄、抗生物質の処方を獣医に受ける。素人が膿を絞ると痛みで咬まれ、細菌が深部に押し込まれる。人用抗生物質は種類と用量が不適切で、膿瘍は排膿なしには治らない。温めて自然に破れるのを待つと、顔の膿瘍は目や顎の骨に広がり、敗血症に至る恐れがある。
課題「小さい傷」という自己判断で受診を省き、咬傷が化膿しやすいという基本を踏まえていなかった。繁殖期の闘争で生じた傷を記録し経過を追う仕組みがなかった。
改善案咬傷は大きさにかかわらず当日中に獣医に報告し、処置の要否を判断してもらう。傷の記録表(日付・部位・経過写真)を作り、3日ごとに確認する。繁殖期は闘争の発生を毎日記録し、傷ついた個体の食事と行動を個別に観察する。
Q36ネズミキツネザルの尾の先が黒く変色怪我
2月、夜行性のネズミキツネザル舎で、3歳のメスの尾の先端3cmが黒く乾いて変色し、触ると冷たく硬い。1週間前に巣箱の扉の隙間に尾を挟んだ記録があるが、そのときは出血もなく「大丈夫」と判断していた。本人は尾の先を気にして噛んでいる。食欲は普通である。
飼育担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 黒い部分は自然に取れるので、噛まないよう見守る
- 変色部分をハサミで切り落とし、消毒して巣箱に戻す
- 尾の壊死と判断し、当日中に受診して切断を含む処置を獣医に相談する
- 血行を良くするため温めたタオルで尾を包み、マッサージする
正解C.尾の壊死と判断し、当日中に受診して切断を含む処置を獣医に相談する
解説尾の先端が黒く乾き冷たく硬いのは、挟まれた際に血流が途絶えた壊死である。マニュアルでも尾は壊死すると切断になるため当日受診とされ、放置すると壊死が根元側に広がり、感染が全身に回る。噛んでいるのは痛みと違和感のサインで、自分で噛みちぎると出血と感染を起こす。素人が切り落とすと壊死と健康組織の境界を誤り、出血と激痛を招く。温めやマッサージは壊死組織には無効で、境界部を傷める。ネズミキツネザルは尾に脂肪を蓄える種で、尾の損傷は休眠や体重管理にも影響するため、獣医と今後の管理も相談する。
課題尾を挟んだ時点で出血がないことを理由に受診を省き、血流障害が後から壊死に進むことを知らなかった。小型種の巣箱の扉に隙間があり、尾が挟まる構造を放置していた。
改善案尾や指を挟んだ場合は出血の有無にかかわらず当日中に獣医に報告し、数日間は色と温度を毎日確認する。巣箱の扉は隙間のない構造か布製の垂れ幕に替える。小型種の尾の脂肪蓄積と健康状態を月1回の体重測定時に記録する。
Q37夜22時、食べないが元気そうな個体救命救急
8月の夜22時、当直職員がワオキツネザル舎を見回ると、7歳のメスが夕方の餌を全く食べていない。見た目は普通に棚に座っているが、よく見ると腹が張って硬く、時々体を丸めて口を開けている。排便は今日の記録がない。昼間、職員が舎内でビニール袋を見失ったという申し送りがあった。
当直職員の判断として最も適切なものはどれか
- 元気そうなので朝の獣医の出勤まで待ち、食べるか確認する
- 腹を温めて排便を促すため、湯たんぽをケージに入れて様子を見る
- 人用の便秘薬を水に溶かして飲ませ、朝までに便が出るか見る
- 異物による腸閉塞を疑い、夜間救急に電話して症状と申し送りを伝え、指示に従い搬送の準備をする
正解D.異物による腸閉塞を疑い、夜間救急に電話して症状と申し送りを伝え、指示に従い搬送の準備をする
解説半日以上食べない、腹が張って硬い、排便がない、ビニール袋の紛失という組み合わせは異物による腸閉塞を強く疑わせる。腸閉塞は数時間で腸の壊死や穿孔に進むため、見た目が元気でも夜間救急に電話して症状と申し送りを伝え、指示に従って搬送の準備をする。マニュアルの「半日以上食べない」は当日受診、ぐったりすれば今すぐの基準であり、閉塞が疑われる場合は夜間でも相談すべきである。朝まで待つと穿孔で手遅れになる。温めても異物は動かず、便秘薬は閉塞した腸を傷つけて穿孔を起こす危険がある。
課題舎内に持ち込んだビニール袋を見失ったまま作業を終え、異物摂取の可能性を当直に十分な危機感で伝えていなかった。夜間の受診判断基準が当直職員に明確でなかった。
改善案舎内への持ち込み物は入退室時に数を確認し、紛失時は即座に全職員で捜索して獣医に報告する。夜間救急の連絡先と「今すぐ」「当日」の判断基準を当直室に掲示する。閉舎時に全頭の食事と排便を記録し、ゼロの個体は当直の重点観察対象にする。
Q38池に落ちて這い上がれない事故
6月の午後、屋外展示場の周囲にある堀の池に、生後10か月の若いワオキツネザルが跳躍に失敗して落ちた。岸は垂直のコンクリートで、必死に水をかいているが這い上がれない。母親が岸で鳴いている。職員は網と長い板を持って駆けつけたが、池の深さは1m以上ある。
職員が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 自力で登れるまで見守り、落ち着いたら餌で呼ぶ
- 長い板を水面に差し入れて足場を作り、網で素早くすくい上げてタオルで保温、呼吸を確認して当日中に受診する
- 池に飛び込んで抱きかかえ、そのまま岸に上がる
- 母親を池のそばに連れてきて助けさせる
正解B.長い板を水面に差し入れて足場を作り、網で素早くすくい上げてタオルで保温、呼吸を確認して当日中に受診する
解説キツネザル類は泳ぎが得意ではなく、垂直の岸では疲労して数分で溺れる。板を差し入れて足場を作り、網で素早くすくい上げ、タオルで水気を取って保温し、呼吸と意識を確認する。水を吸い込んでいれば肺炎に進むため当日中に受診し、ぐったりしていれば今すぐ搬送する。見守るのは溺死を待つことになる。人が池に飛び込むとパニックの個体に咬まれ、職員自身の溺水事故にもなる。母親に任せても救助はできず、母親まで池に落ちる危険がある。救助後は低体温にも注意し、暗い箱で保温して観察する。
課題展示場の堀の岸が垂直で、落ちた個体が自力で上がれない構造だった。若い個体の跳躍失敗を見越した柵や緩い岸の整備がなく、水難救助の道具と手順が準備されていなかった。
改善案堀の岸に傾斜や登れるネットを設け、水際に柵を追加する。網・板・タオルを展示場の近くに常備し、救助手順を掲示する。幼獣が独立し始める時期は跳躍経路を点検し、水辺に近い棚は撤去する。溺水後の肺炎を考え、数日間呼吸を観察する。
Q39給餌口の扉に指を挟んで腫れた事故
5月の朝、職員が給餌口のスライド扉を閉めた際、金網の内側から手を伸ばしていた2歳のオスのワオキツネザルの指を挟んだ。悲鳴を上げて手を引き、中指が腫れて不自然に横に曲がっている。出血はない。本人は手を胸に抱えて棚の隅に座り、指を舐めている。
職員の対応として最も適切なものはどれか
- 出血がなく、指の曲がりは脱臼か骨折の可能性があるため、暗い箱に誘導し当日中に受診する
- 出血がないので問題なく、腫れが引くまで様子を見る
- 曲がった指を手で元の位置に戻し、テープで隣の指と固定する
- 痛みを和らげるため氷水に手を浸けさせ、人用の鎮痛剤を与える
正解A.出血がなく、指の曲がりは脱臼か骨折の可能性があるため、暗い箱に誘導し当日中に受診する
解説指が不自然に横に曲がり腫れているのは脱臼か骨折で、出血がなくても放置すれば変形したまま固まり、木登りや採食に支障が残る。マニュアルどおり暗い箱に誘導し、当日中に受診して整復や固定を受ける。素人が指を戻すと骨片や靭帯をさらに傷つけ、痛みで激しく咬まれる。氷水に浸けるのは嫌がって暴れ、保定の危険があり、人用鎮痛剤は原猿類での安全性が不明で、痛みを隠して患部を使わせる。給餌口の開閉時に手が届かないよう構造を見直すことも必要である。
課題給餌口の扉を閉める際に個体の手の位置を確認しておらず、手先の器用なキツネザルが金網越しに手を伸ばす習性を踏まえた操作手順がなかった。
改善案給餌口の扉は閉める前に声を出して個体の位置を確認し、手が届かない構造(二重のスライドや突き出し型)に改修する。扉には緩衝材を付け、急に閉まらない金具にする。挟まれ事故の際の受診基準(変形・腫れは当日)を掲示する。
Q40群れ全頭が屋外に出てしまった事故
9月の早朝、前夜の作業で屋外展示場の出入口の施錠を忘れ、風で扉が開いてワオキツネザルの群れ8頭が園路に出た。出勤した職員が発見したとき、群れは園路の植え込みで固まって地面の草を食べている。開園まで2時間あり、来園者はまだいない。職員は3人集まった。
職員3人の対応として最も適切なものはどれか
- 3人で群れを囲み、同時に走って展示場へ追い込む
- 1頭ずつ網で捕まえて展示場に運ぶ
- 追わず、展示場の扉を開けたまま好物の葉物野菜を中へ置き、群れの行動を妨げずに静かに誘導、同時に管理者と自治体に連絡し園路の封鎖を手配する
- まだ来園者がいないので放っておき、群れが自分で戻るまで待つ
正解C.追わず、展示場の扉を開けたまま好物の葉物野菜を中へ置き、群れの行動を妨げずに静かに誘導、同時に管理者と自治体に連絡し園路の封鎖を手配する
解説群れ性の強いワオキツネザルは仲間と一緒に動くため、全頭が固まっているうちに追わずに誘導するのが基本である。展示場の扉を開けて好物を置き、群れが自然に戻る動線を作る。追い込みや網での捕獲は群れを分散させ、跳躍力の高い個体が園外へ散る。脱走は重大事故であり、園内で解決できそうでも管理者と自治体への連絡と園路の封鎖は必須で、開園までに収容できない場合に備える。放置すれば分散し、来園者との接触や園外への逸走で咬傷事故や回収不能になる。
課題閉舎時の施錠確認が1人の記憶に頼っており、ダブルチェックの仕組みがなかった。逸走時の連絡先と役割分担、好物による誘導という基本方針が全職員に共有されていなかった。
改善案施錠は2人で確認し、チェック表に記録する。扉に閉め忘れを知らせるセンサーや自動閉鎖装置を付ける。逸走対応表(誘導優先・連絡先・封鎖範囲)を各舎に掲示し、年1回の訓練で群れの誘導を練習する。好物の葉物野菜を常に冷蔵庫に用意する。
Q41ロープが首に絡まり宙づりになった事故
4月の午後、屋内舎で遊具として吊るしたロープの端が輪になり、4歳のメスのワオキツネザルが跳躍の際に首を通してしまい、宙づりで暴れている。足が棚に届かず、鳴き声が出ない。他の個体が周囲で騒いでいる。職員は舎のすぐ外におり、ハサミは事務所にある。
職員が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 事務所にハサミを取りに走り、戻ってからロープを切る
- すぐ舎に入り、個体の体を持ち上げて首の負担を外しながらロープを緩めて外し、呼吸を確認して当日中に受診する
- 個体が自力で抜けられるよう、ロープを揺らして動きを助ける
- 他の個体を先に別室へ移してから救助に向かう
正解B.すぐ舎に入り、個体の体を持ち上げて首の負担を外しながらロープを緩めて外し、呼吸を確認して当日中に受診する
解説首が絞まって声が出ない状態は数分で窒息死する緊急事態で、道具を取りに行く時間はない。すぐ舎に入り、個体の体を持ち上げて首にかかる体重を外し、ロープを緩めて外す。暴れるので咬まれる可能性はあるが、厚手の布があれば頭に被せると落ち着く。救出後は呼吸と意識を確認し、喉の腫れや脳への影響が遅れて出ることがあるため当日中に受診し、ぐったりしていれば今すぐ搬送する。ロープを揺らすと絞まりが強くなる。他の個体を先に移すのは時間の浪費で、救助が間に合わない。
課題輪になりうるロープを遊具として吊るし、首や手足が絡まる危険を点検していなかった。緊急時に使うハサミや布が舎内に常備されていなかった。
改善案ロープは端を固定して輪ができない構造にし、太さは首が通らないものを選ぶ。毎朝の巡回で遊具のほつれ・輪・緩みを点検する。ハサミ・厚手の布・搬送箱を各舎の入口に常備し、首や手足の絡まりへの対応手順を掲示する。
Q42侵入した野良犬に群れが襲われた怪我
11月の夜明け、屋外展示場の柵の下を掘って侵入した野良犬がワオキツネザルの群れを襲い、見回りの職員が駆けつけた時には犬は逃げていた。群れは高い棚に避難しているが、1頭が地面で動かず腹に裂傷、もう1頭は足を引きずり、他の個体は外傷が見えない。職員は2人である。
職員2人の対応として最も適切なものはどれか
- 外傷のある2頭だけ搬送し、他の個体は普通に展示を続ける
- 腹の裂傷の個体を最優先に圧迫止血し今すぐ搬送、足の個体は当日中に受診、残りの全頭も犬の咬傷と感染の確認のため獣医の診察を受けさせる
- 群れが落ち着くまで数時間待ってから、怪我の確認を始める
- 裂傷の個体の腹を自分で縫合し、群れに戻す
正解B.腹の裂傷の個体を最優先に圧迫止血し今すぐ搬送、足の個体は当日中に受診、残りの全頭も犬の咬傷と感染の確認のため獣医の診察を受けさせる
解説腹の裂傷は内臓損傷の恐れがあり、圧迫止血しながら今すぐ搬送する。足を引きずる個体は骨折を疑い当日中に受診する。外傷が見えない個体も、犬の咬傷は毛に隠れて小さな穴しか見えないことが多く、深部で感染して数日後に膿瘍や敗血症になるため、全頭を獣医に診てもらう。犬からの感染症のリスクもある。見える怪我だけ対応すると隠れた咬傷を見逃す。数時間待つと裂傷の個体が失血で死亡する。素人の縫合は感染と内臓損傷の見逃しを招く。侵入経路の修復と、襲撃によるストレスで群れの序列が乱れる点にも注意する。
課題柵の下を掘って侵入できる構造で、外敵対策が不十分だった。夜間の見回り間隔が長く、襲撃に気づくのが遅れた。襲撃後の全頭診察という原則が共有されていなかった。
改善案柵の下に金網を埋設し、周囲に侵入防止の電気柵や監視カメラを設置する。夜間の見回りを増やすか、動体検知の警報を導入する。外敵襲撃時の対応(出血個体の優先搬送・全頭診察・侵入経路修復)を手順化し、獣医と連携して訓練する。
Q43消毒液の原液が床に残ったまま入舎中毒・誤飲
7月の朝、清掃担当が塩素系消毒液を原液のまま床にまき、十分にすすがずに水で薄めただけでワオキツネザルの群れを舎内に戻した。30分後、2頭が床を舐めた後によだれを流し、口を気にして前足で擦り、1頭は嘔吐している。舎内には塩素のにおいが強く残っている。
飼育担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 全頭を直ちに別室へ移して換気し、症状のある個体の口を水で軽く洗い、消毒液の製品名を持って今すぐ受診する
- よだれは唾液で消毒液を薄めている証拠なので、そのまま様子を見る
- 中和するために牛乳を飲ませ、床の消毒液を乾くまで放置する
- 嘔吐した個体だけを受診させ、他の個体は舎内で観察する
正解A.全頭を直ちに別室へ移して換気し、症状のある個体の口を水で軽く洗い、消毒液の製品名を持って今すぐ受診する
解説塩素系消毒液は口や食道の粘膜を傷め、気化したガスは呼吸器を刺激する。まず全頭を別室に移して曝露を止め、舎内を換気し、症状のある個体の口を水で軽く洗い流す。製品名と濃度は治療に必要なので持参し、今すぐ受診する。よだれは粘膜障害のサインで、唾液で薄まるという考えは誤りである。牛乳は消化に向かず、嘔吐している個体に飲ませると誤嚥する。症状のない個体も粘膜障害が遅れて出ることがあり、舎内に残すのは曝露を続けることになる。粘膜の損傷は数日後に食事が取れなくなる形で現れるため、受診後も全頭の食欲を観察する。
課題消毒液の希釈倍率とすすぎの手順が守られず、乾燥や換気の確認なしに動物を戻した。清掃担当と飼育担当の間で「戻してよい状態」の基準が共有されていなかった。
改善案消毒液は規定倍率で希釈し、すすぎ・乾燥・換気の完了を飼育担当が確認してから動物を戻す手順にする。使用する製品の安全データを舎内に置き、中毒時に提示できるようにする。清掃と収容のチェック表を作り、2人で確認する。
Q44展示場に植えた観葉植物を食べた中毒・誤飲
5月、展示場の景観のために業者が新しく植えた低木の葉を、ワオキツネザルの群れが食べているのを職員が発見した。植物の名前は不明で、葉が厚く白い汁が出る。2時間後、3頭がよだれを垂らし、1頭は心拍が速く呼吸が荒い。食べた量は数枚から十数枚と思われる。
職員の対応として最も適切なものはどれか
- 草食の動物なので植物で中毒にはならないと考え、様子を見る
- 植物を引き抜いて捨て、動物には水を多めに与える
- 植物の枝葉を袋に入れて持参し、症状の重い個体を今すぐ受診、食べた可能性のある全頭を獣医に診せ、残りの植物は即座に撤去する
- 吐かせるために塩水を飲ませ、全頭を走らせて排出を促す
正解C.植物の枝葉を袋に入れて持参し、症状の重い個体を今すぐ受診、食べた可能性のある全頭を獣医に診せ、残りの植物は即座に撤去する
解説キョウチクトウなど白い汁を出す観賞植物の多くは心臓や消化管に強い毒性を持ち、心拍の異常と呼吸の荒さは心毒性の症状である。植物を同定するため枝葉を持参し、症状の重い個体を今すぐ受診させ、食べた可能性のある全頭を獣医に診せる。残りの植物は即座に撤去して再摂取を防ぐ。キツネザルは葉を主食にするが、毒性植物を見分ける能力はなく、新しい植物は特に危険である。植物を捨てると同定ができず治療が遅れる。塩水での催吐は塩分中毒と誤嚥の危険があり、走らせることは心臓に負担をかける。
課題展示場に植える植物の安全性を事前に獣医や専門家が確認する手順がなく、業者任せになっていた。植物の名前を把握しないまま動物が接触できる場所に置いた。
改善案展示場に植える植物は名前と毒性を事前に確認し、安全が確認できた種類のみ植える一覧を作る。業者には植物名の書面提出を求める。植えた後は数日間、群れの採食行動を観察する。有毒植物の一覧と中毒時の対応表を舎内に掲示する。
Q45真冬の晴れた日、屋外に出すべきか環境・災害
1月の朝、外気温は4℃で快晴。ワオキツネザルの群れは屋内舎にいるが、日光浴が骨の健康に大切だと聞いた新人職員が、外の展示場に出して日光浴させるべきか迷っている。屋外に屋根や風よけはなく、風が強い。屋内にはUVB灯があるが、使い方を知らない。
新人職員の判断として最も適切なものはどれか
- 日光浴は健康に必須なので、寒くても1時間は外に出す
- 群れは自分で判断するので扉を開け放し、好きに出入りさせる
- 日光浴より暖かさが大事なので、冬の間はUVB灯も使わず屋内で過ごさせる
- 10℃以下の屋外には出さず、屋内でUVB灯を使い、先輩に使い方を確認する
正解D.10℃以下の屋外には出さず、屋内でUVB灯を使い、先輩に使い方を確認する
解説ワオキツネザルの適温は15〜28℃で、マニュアルでは10℃以下の日は屋外に出さないとされている。4℃で風が強く屋根もない屋外では低体温の危険があり、日光浴の利益を上回る。冬場は屋内でUVB灯を使ってビタミンD3の合成を補い、晴れて10℃を超える穏やかな日に短時間の屋外日光浴を行う。扉を開け放すと屋内の温度が下がり、好奇心で出た若い個体が冷える。UVB灯を使わず冬中過ごすと代謝性骨疾患のリスクが上がる。使い方がわからない機器は自己判断で使わず、先輩に確認するのが正しい。
課題新人職員が日光浴の重要性だけを知り、気温による屋外活動の基準を教わっていなかった。UVB灯の使い方の引き継ぎがなく、屋外に屋根や風よけの整備もなかった。
改善案屋外に出す気温の基準(10℃以下は出さない、30℃超は注意)を舎内に掲示し、新人研修に含める。UVB灯の設置位置・照射時間・交換時期を書いたカードを機器に貼る。屋外展示場に屋根付きの日だまりと風よけを設け、冬でも短時間の日光浴ができるようにする。
Q46台風接近、屋外展示場の群れをどうする環境・災害
9月の午後、翌朝に大型台風の直撃が予報されている。屋外展示場にはワオキツネザルの群れ10頭がいて、屋内舎は狭く普段は夜だけ使っている。展示場の木は枝が折れそうで、金網の一部は老朽化している。停電の可能性も高い。職員は今日中に対策を取る必要がある。
職員の対策として最も適切なものはどれか
- 暗くなる前に全頭を屋内に収容して施錠し、飛散物の撤去と金網の補強、停電に備えたカイロ・毛布・水・餌の2日分を屋内に準備する
- 群れは台風に慣れているので屋外のままにし、朝に様子を見る
- 狭い屋内は喧嘩になるので、群れを半分ずつ屋外と屋内に分ける
- 台風が来てから状況を見て収容を判断する
正解A.暗くなる前に全頭を屋内に収容して施錠し、飛散物の撤去と金網の補強、停電に備えたカイロ・毛布・水・餌の2日分を屋内に準備する
解説台風では折れた枝や飛来物で金網が破れ、群れが逸走したり怪我をしたりする。暗くなる前、風が強まる前に全頭を屋内に収容して施錠し、飛散しそうな物を撤去して金網を補強する。停電で暖房や照明が止まる可能性があるため、カイロ・毛布・水・餌を2日分屋内に備える。屋外に残すのは逸走と怪我の危険が高く、マダガスカルの動物でも日本の台風に慣れてはいない。半分を屋外に残せば残した個体が危険にさらされ、群れを分けること自体がストレスになる。台風が来てからの収容は職員の安全も確保できず、暴風の中では誘導もできない。
課題屋外展示に依存した飼育で、全頭を安全に長時間収容できる屋内スペースと備蓄が不足していた。金網の老朽化を知りながら補修が後回しになっていた。
改善案屋内舎を全頭が2〜3日過ごせる広さと構造に整備し、隠れ場と給餌場所を頭数以上に置く。台風シーズン前に金網・屋根・樹木を点検し補修する。災害備蓄(カイロ・毛布・水・餌・懐中電灯)を各舎に置き、収容の判断基準を「暴風警報の発表前」と決めておく。
Q47インフルエンザの職員が熱を押して出勤感染症・衛生
1月の朝、ワオキツネザル担当の職員が38℃の発熱と咳で出勤してきた。家族がインフルエンザと診断されている。人手が足りず、本人は「マスクをするから大丈夫」と給餌と清掃をする意思を示している。群れには生後3か月の幼獣と17歳の老齢個体がいる。
責任者の判断として最も適切なものはどれか
- マスクと手袋をすれば問題ないので通常どおり作業させる
- 霊長類舎への立ち入りを禁止して帰宅させ、医療機関を受診させる。給餌と清掃は他の職員が行う
- 幼獣と老齢個体にだけ近づかないよう指示して作業させる
- 動物には人の風邪はうつらないと説明し、咳が出るときだけ舎を出るよう伝える
正解B.霊長類舎への立ち入りを禁止して帰宅させ、医療機関を受診させる。給餌と清掃は他の職員が行う
解説人のインフルエンザは飛沫でサル類に感染し、重症化することがある。マニュアルでも発熱・咳があれば飼育作業を休むとされ、特に幼獣と老齢個体は重症化しやすい。発熱と咳のある職員は霊長類舎への立ち入りを禁止して帰宅させ、受診させる。マスクだけでは清掃や給餌での飛沫や手指を介した接触を防ぎきれない。特定の個体にだけ近づかないという対応は、群れが密に接触して毛づくろいする種では意味がない。「人の病気はうつらない」は誤りで、麻疹や結核、ヘルペスと同様に人からサルへの逆感染は施設飼養での重要なリスクである。
課題人手不足で体調不良の職員に頼らざるを得ない体制で、体調不良時の立ち入り禁止ルールが徹底されていなかった。人からサルへの感染リスクが職員に理解されていなかった。
改善案発熱・咳・発疹のある職員は霊長類舎に入らない規則を明文化し、代替要員のリストを作る。職員にはインフルエンザと麻疹のワクチン接種を推奨し、流行期は毎朝の体温測定を行う。人からサルへうつる感染症の研修を年1回実施する。
Q48咳が続き痩せた個体と職員の健診感染症・衛生
10月、12歳のオスのワオキツネザルが1か月前から湿った咳をし、体重が3か月で500g減った。食欲はやや低下している。担当職員の1人は半年前から咳が続いているが「喫煙のせい」と言い、職場の健康診断を受けていない。群れの他の個体には今のところ症状がない。
責任者の対応として最も適切なものはどれか
- 季節の風邪と考え、暖かくして様子を見る
- 咳の個体だけ別室に移し、群れと職員はそのまま通常業務を続ける
- 結核を疑って咳の個体を隔離して獣医の検査を受けさせ、咳の続く職員に医療機関での胸部検査を受けさせる。群れの接触を記録し保健所に相談する
- 群れ全体に人用の咳止めシロップを与え、2週間で改善しなければ受診する
正解C.結核を疑って咳の個体を隔離して獣医の検査を受けさせ、咳の続く職員に医療機関での胸部検査を受けさせる。群れの接触を記録し保健所に相談する
解説1か月続く湿った咳と著しい体重減少はサル類の結核を疑う所見で、結核は人からサルへ、サルから人へ双方向に感染する。マニュアルでも咳・痩せは隔離して獣医へ、飼育者は年1回の胸部検査とされる。咳の個体を隔離して検査を受けさせ、咳の続く職員にも胸部検査を受けさせる。接触した個体と職員の記録を残し、保健所に相談して指示を仰ぐ。風邪と決めつけると群れと職員に広がる。個体だけ隔離しても感染源が職員なら解決しない。人用の咳止めは原因を隠し、結核は診断と治療が遅れるほど周囲への感染が増える。
課題職員の長引く咳を本人の自己判断で放置し、職場の健康診断が徹底されていなかった。動物の咳と体重減少を人獣共通感染症の視点で捉える体制がなかった。
改善案霊長類担当の職員は年1回の胸部検査を義務にし、2週間以上続く咳は受診を必須にする。動物の咳・体重減少は隔離と検査を即座に行う基準を作る。保健所との連絡先を掲示し、人獣共通感染症の疑いがあれば早期に相談する体制を整える。
Q49夜間救急へ1時間の搬送、どう運ぶか救命救急
2月の夜23時、けいれんを起こした6歳のメスのワオキツネザルを夜間救急へ運ぶことになった。病院まで車で1時間、外気温は2℃。けいれんは収まったがぐったりして体が冷えている。手元には段ボール箱、タオル、毛布、カイロ、キャリーがある。群れの仲間は騒いでいる。
搬送方法として最も適切なものはどれか
- 暖房の効いた車内で膝に抱いて運び、途中で意識を確認するため何度も声をかける
- キャリーに入れて外気が入るよう窓を開け、酔わないように速度を上げて運ぶ
- 群れの仲間を1頭一緒にキャリーに入れて安心させる
- タオルを敷いた暗い箱に入れ、布で包んだカイロと毛布で保温し、静かに運転して病院に到着時刻と状態を電話する
正解D.タオルを敷いた暗い箱に入れ、布で包んだカイロと毛布で保温し、静かに運転して病院に到着時刻と状態を電話する
解説けいれん後でぐったりし冷えている個体は、低体温と再発作の危険があるため、タオルを敷いた暗い箱に入れ、布で包んだカイロと毛布で保温し、揺れと光と音を避けて静かに運ぶ。病院には出発時に到着時刻と状態を電話し、受け入れの準備をしてもらう。膝に抱くのは意識が戻って咬まれる危険があり、何度も声をかけると刺激で発作を誘発する。窓を開けると低体温が進み、速度を上げると揺れで状態が悪化する。仲間を同乗させると狭いキャリーで興奮し、弱った個体を攻撃することがある。マニュアルでは群れの声が聞こえると落ち着くとされるが、同じ箱に入れることではない。
課題搬送方法の基本(暗く・保温・静かに・事前連絡)が職員に浸透しておらず、「抱いて運ぶ」「仲間と一緒に」といった人の感覚で判断する恐れがあった。夜間搬送の準備が常備されていなかった。
改善案搬送用の箱・タオル・毛布・カイロ・キャリーをひとまとめにして各舎に常備する。搬送手順と夜間救急の連絡先を掲示し、出発前の電話を必須にする。年1回、搬送の訓練を行い、保温と静かな運転の重要性を全職員で確認する。
Q50搬送中に呼吸が止まった救命救急
4月の深夜、溺水から救助した3歳のオスのワオキツネザルを夜間救急へ搬送中、同乗の職員が箱の中の個体の胸の動きが止まり、呼びかけにも反応しないことに気づいた。胸の左側に手を当てても心拍を感じない。病院まであと15分、運転手と2人で、電話はつながる。
同乗職員が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 病院に電話して状況を伝え指示を仰ぎ、指示に従い胸の両側を指で挟んで1分100〜120回の圧迫を続けながら搬送する
- 口に口をつけて人工呼吸を行い、肺に空気を送り続ける
- 車を止めて路肩で全力の蘇生を行い、心拍が戻ってから病院へ向かう
- すでに手遅れと判断し、箱の蓋を閉めて病院で死亡確認だけ受ける
正解A.病院に電話して状況を伝え指示を仰ぎ、指示に従い胸の両側を指で挟んで1分100〜120回の圧迫を続けながら搬送する
解説呼吸停止と心拍の消失は心停止であり、マニュアルどおりまず病院に電話して指示を仰ぎ、獣医の指示に従ってワオのサイズに合う胸部圧迫(胸の両側を指で挟み1分100〜120回)を搬送しながら続ける。口移しの人工呼吸は人獣間の感染リスクがあり禁止されている。車を止めると病院到着が遅れ、心拍が戻る確率は病院での処置で最も高い。溺水直後の心停止は蘇生の可能性があり、手遅れと決めつけるのは早い。蘇生中も体温を保ち、到着後すぐ獣医に引き継げるよう箱の蓋は開けたまま保温を続ける。
課題溺水救助後の観察が不十分で、呼吸の変化に気づくのが遅れた可能性がある。心停止時の電話連絡と圧迫方法を職員が訓練しておらず、現場での判断に迷いが生じた。
改善案溺水や意識障害の個体を搬送する際は、同乗者が1分ごとに胸の動きと反応を確認する。心停止時の手順(電話・圧迫の位置と速さ・口移し禁止)を搬送セットに同封し、年1回模型で練習する。夜間救急には出発時に電話し、到着前に状態の変化も伝える。

https://exoticpetsaver.com