コモンウォンバット ケースメソッド 50問

状況を読み、飼い主として「最初に取るべき行動」を4択から選んでください。回答後に解説・課題・改善案が表示されます。マニュアルを見る

解答と解説・課題と改善案(全50問)

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Q1真夏の昼に巣穴の外で倒れている病気

8月の午後2時、気温34℃。動物園の飼育担当者が見回りに行くと、7歳のオスのウォンバットが本来眠っているはずの時間に巣穴の外の日なたで横たわっていた。口を開けて浅く速い呼吸をし、口元からよだれが垂れている。声をかけると頭を少し動かすが立ち上がろうとしない。近くの水場は空になっていた。

この場面で最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか

  1. すぐ日陰に移し、常温の水を体にかけて風を送りながら30分以内に獣医師へ連絡する
  2. 氷水を張ったたらいに全身を浸けて一気に体温を下げる
  3. 巣穴に戻して自力で回復するのを夕方まで待つ
  4. 写真を撮って園内の掲示板で相談し、指示を待つ

正解A.すぐ日陰に移し、常温の水を体にかけて風を送りながら30分以内に獣医師へ連絡する

解説気温28℃を超える日中に巣穴の外で倒れ、開口呼吸とよだれがあるのは典型的な熱中症のサインで、今すぐ対応が必要な緊急事態である。マニュアル通り、涼しい日陰へ移して常温の水をかけ風を当てて放熱させ、飲めるなら水を与え、30分以内に獣医師へ連絡する。氷水に浸けると末梢血管が収縮して深部の熱が逃げにくくなり、ショックを起こす危険がある。巣穴に戻して待つのは、意識が低下している個体を観察できない場所に置くことになり、悪化を見逃す。相談や記録は冷却と連絡の後で行うべきで、時間を失う行為である。

課題気温34℃の日に水場が空のまま放置されており、水場の点検頻度が季節に合っていなかった。冷房付き避難室への誘導や日中の見回り時間も暑さのピークに対応していなかった可能性がある。

改善案夏季は水場を複数設置して1日2回以上交換し、見回りで必ず残量を確認する。気温28℃超の予報が出た日は日中の活動を制限し、冷房付き避難室と日陰の巣穴を使える状態に保つ。冷却用の水とタオルを飼育場入口に常備する。

Q2四角いフンが丸1日出ていない病気

11月の朝8時、保護施設で飼育している5歳のメス。毎朝の掃除で数えている立方体のフンが昨日の朝から1個も見つからない。前夜のペレットは半分残り、牧草もあまり減っていない。腹部は普段より少し張って見えるが、呼びかけると歩いて巣箱に戻る。先週、来園者がパンを投げ入れていたと報告があった。

この状況で最も適切な判断はどれか

  1. 牧草をやめて水分の多い果物を多めに与え、腸を動かしてから様子を見る
  2. 餌を高繊維の草だけにして水を確保し、当日中に獣医師の診察を受ける
  3. 人用の便秘薬を体重換算で少量与えて、明日まで排便を待つ
  4. 自然に出ることが多いので、あと2日ほど掃除で確認を続ける

正解B.餌を高繊維の草だけにして水を確保し、当日中に獣医師の診察を受ける

解説ウォンバットは糞が減る・出ないことが消化管停滞の最初のサインで、24時間出なければ危険とされる。餌を高繊維の草だけにして水を確保し、当日中に受診するのが正しい。腹部膨満や無気力があればさらに緊急度が上がり即受診となる。果物は高糖質で腸内環境をさらに乱し、停滞を悪化させる。人用の下剤は草食動物の腸に不適切で、用量も不明なまま与えるのは危険である。2日待つのは、停滞が進んで腹部膨満や無気力に至ると命に関わるため不適切。パンの投げ入れが誘因の可能性が高く、獣医師には餌の内容変化として必ず伝える。

課題来園者による高糖質食品の投げ入れが放置され、その後の排便観察が強化されていなかった。前日から餌の減りが悪かったにもかかわらず、糞の数と関連づけて異変を判断できていなかった。

改善案毎日の糞の数・形・硬さを記録表に残し、前日比で減ったら即座に餌と行動を確認する。柵の周囲に投げ入れ防止の二重柵と注意表示を設置し、異物投入の報告があった日は48時間排便と食欲を重点観察する体制にする。

Q3口の周りが汚れて食べこぼす病気

3月の夜、動物園の10歳のオス。給餌中に観察すると、牧草を口に入れてはぼろぼろと落とし、口の周りが緑色に汚れよだれで濡れている。硬い根菜には近づかず、柔らかい若草だけを少しかじる。月初の体重測定では前月より2kg減っていた。担当者は歯を見ようと手で口をこじ開けようとした。

担当者の取るべき対応として最も適切なものはどれか

  1. 口を無理に開けず、柔らかい草と水分の多い餌を用意して体重を記録し2日以内に受診する
  2. 硬い樹皮を大量に入れて歯を自力ですり減らせるようにして1か月様子を見る
  3. 指で口を開けて歯を確認し、伸びた部分をニッパーで切る
  4. 食欲が落ちただけなので好物の果物を増やして食べさせる

正解A.口を無理に開けず、柔らかい草と水分の多い餌を用意して体重を記録し2日以内に受診する

解説食べこぼし・よだれ・口周りの汚れ・体重減少・硬い餌を避ける行動は、一生伸び続ける歯の過長や不正咬合の典型的なサインである。マニュアル通り、口を無理に開けず、柔らかい草や水分の多い餌で当面の摂食を支え、体重を測って2日以内に受診する。すでに過長した歯は硬い餌では削れず、痛みで食べられないまま1か月放置すれば衰弱する。素人が口を開けると咬まれる危険が高く、ニッパーで切ると歯が割れて歯根を傷める。果物は糖質が高く肥満と下痢の原因で、歯の問題の解決にならない。

課題月1回の歯の確認が食べこぼしという目安で行われておらず、体重減少が起きてから気づいた。硬い草・根・樹皮を毎日与えて歯を摩耗させる給餌が不十分だった可能性がある。

改善案硬い牧草・根菜・樹皮を毎日必ず与え、月1回は食べこぼしと口周りの汚れを記録する。体重は月1回以上測定し、前月比で減少したら歯の異常を第一に疑って受診する。歯科処置に対応できる野生動物獣医師を事前に確保しておく。

Q4壁に体をこすり続けかさぶただらけ病気

2月の夕方、保護施設に来て半年の3歳のメス。ここ数日、柵や丸太に何度も体をこすりつける。近づいて見ると背中と脇腹の皮膚が厚く固くなってひび割れ、脱毛し、目や耳の縁に灰色のかさぶたがある。隣の飼育場には別のウォンバットが1頭いて、担当者は素手でこの個体を触った後にそちらの給餌も行っていた。

この場面で最も適切な対応はどれか

  1. 市販の犬用ノミ取りシャンプーで全身を洗って様子を見る
  2. かゆみ止めに人用の塗り薬を患部に塗って1週間観察する
  3. 手袋で扱い、患部を撮影して他個体から隔離し、寝床を消毒して数日以内に受診する
  4. 冬のかさかさ肌なので保湿クリームを塗り、春まで待つ

正解C.手袋で扱い、患部を撮影して他個体から隔離し、寝床を消毒して数日以内に受診する

解説皮膚の肥厚・ひび割れ・脱毛・目や耳のかさぶた・こすりつけ行動は、ウォンバットで最も重要な疾患である疥癬(ヒゼンダニ)の典型像である。疥癬は人にも他個体にも感染するため、手袋で扱い、患部を写真に記録し、他個体から隔離して寝床を消毒したうえで数日以内に受診する。進行すれば衰弱して死に至るため放置は許されない。犬用シャンプーや人用の塗り薬はヒゼンダニに効かないうえ、皮膚がひび割れた状態で使うと刺激で悪化させる。乾燥肌として春まで待つのは診断を遅らせ、隣の個体と担当者への感染を広げる。

課題皮膚のかさぶたや脱毛を週1回観察する習慣がなく、こすりつけ行動が数日続いても疥癬を疑えなかった。素手で触った後に別個体の世話をしており、感染拡大の経路を作ってしまった。

改善案週1回の皮膚チェックを記録表に組み込み、脱毛・かさぶた・ひび割れを見つけたら即隔離と手袋対応に切り替える。個体ごとに用具を分け、作業順は健康な個体から行う。作業後の手洗いと衣類の交換を徹底し、定期的に獣医師の駆虫を受ける。

Q5軟便が続き歯ぐきが白い病気

6月の夜、動物園の4歳のオス。1週間ほど前から立方体だったフンが崩れて軟便になり、毛づやが悪くなってきた。体重は月初より1.5kg減っている。今夜、口元を観察すると歯ぐきが白っぽく見えた。飼育場は雨が続いて土がぬかるみ、糞の除去が3日間できていなかった。

最も適切な対応はどれか

  1. 糞を採取して当日中に獣医師へ持ち込み、飼育場の糞を除去して土を乾かす
  2. 軟便には整腸剤が効くので人用のビオフェルミンを与えて1週間待つ
  3. 貧血に良いとされる牛肉や卵を与えて栄養をつける
  4. 雨が止めば自然に治るので梅雨明けまで観察する

正解A.糞を採取して当日中に獣医師へ持ち込み、飼育場の糞を除去して土を乾かす

解説軟便・下痢、痩せ、毛づやの悪化、歯ぐきが白い貧血の兆候は、腸内寄生虫の典型的な症状である。糞便検査で虫卵を確認して適切な駆虫を受ける必要があり、貧血が出ている段階では当日中の受診が望ましい。同時に飼育場の糞をこまめに除去し、ぬかるんだ土を乾かして再感染を防ぐ。人用の整腸剤は寄生虫に効果がなく、時間を浪費して貧血を進める。ウォンバットは草食動物で、肉や卵は消化できず消化管停滞を招く。梅雨明けまで待つのは、糞で汚染された湿った土が感染を広げ続けるため不適切である。

課題雨天を理由に糞の除去を3日間怠り、湿った土が寄生虫の温床になった。年数回行うべき糞便検査の記録がなく、軟便が1週間続いても寄生虫を疑う判断ができなかった。

改善案天候に関わらず毎日糞を除去し、雨季は排泄場所に砂や木チップを敷いて排水を良くする。年3〜4回の定期糞便検査を年間計画に入れ、軟便が2日続いた時点で検査に出す。体重と毛づやの記録を月1回比較して変化を早期に拾う。

Q6掘らなくなり首と尻が太った病気

10月の夜、動物園の12歳のメス。来園者の人気者で、担当者は毎晩サツマイモやリンゴ、ペレットをたっぷり与えてきた。最近は首の後ろと尻に脂肪がつき、夜も巣箱の前で座っていることが多く、以前は毎晩掘っていた土の山に手をつけない。餌の食べ方にムラが出て、今夜は牧草に口をつけなかった。

この状況で最も適切な判断はどれか

  1. 高齢なので体力を落とさないよう好物の果物をさらに増やす
  2. 掘らないのは老化なので土の山を撤去して平らな運動場にする
  3. 運動不足なのでリードを付けて園内を毎日散歩させる
  4. 果物とペレットを減らして牧草主体に戻し、掘る行動の減少を伝えて獣医師に血液検査を相談する

正解D.果物とペレットを減らして牧草主体に戻し、掘る行動の減少を伝えて獣医師に血液検査を相談する

解説首や尻の脂肪、動きの鈍さ、掘る行動の減少、食欲ムラは肥満と脂肪肝の典型的なサインであり、牧草に口をつけなくなった点は肝機能の悪化も示唆する。果物とペレットを減らして牧草主体の食事に戻し、掘る行動の減少を体調不良の指標として獣医師に伝え、数日以内に血液検査を相談するのが正しい。果物を増やせば脂肪肝を悪化させる。土の山はウォンバットにとって最重要のエンリッチメントで、撤去すると運動の機会を完全に奪う。リード散歩はこの動物に不向きで、驚くと時速40kmで突進しけがや逸走につながる。

課題来園者受けを優先して高糖質の果物とペレットを毎晩多量に与え、給餌基準を逸脱していた。掘る行動の減少が体調不良のサインであることを担当者が認識しておらず、老化と片づけていた。

改善案給餌量を個体ごとに文書化し、果物と根菜は週数回の歯の摩耗用、ペレットは夜1回ごく少量に限定する。毎晩の掘削行動を記録し、減少が続いたら体調不良として獣医師に報告する。体重測定を月1回行い、目標体重を設定して管理する。

Q7目やにとくしゃみが1週間続く病気

12月の朝、保護施設の8歳のオス。1週間前から目やにが出て、掃除中に何度もくしゃみをし、鼻の周りが濡れている。餌はまだ食べているが、巣箱の乾草がカビ臭く、湿って固まっている部分がある。巣箱内の温湿度計は湿度85%を示していた。担当者は「風邪だから温めれば治る」と考え、巣箱に暖房を入れて密閉しようとしている。

この状況で最も適切な対応はどれか

  1. 巣箱を密閉して暖房を強め、湿度を保ったまま数日待つ
  2. 人用の風邪薬を餌に混ぜて数日間与える
  3. 湿った乾草を全交換して換気し湿度を50〜70%に戻し、症状が続くなら数日以内に受診する
  4. 目やには拭き取れば済むので放置し、くしゃみが止まるまで待つ

正解C.湿った乾草を全交換して換気し湿度を50〜70%に戻し、症状が続くなら数日以内に受診する

解説目やに・鼻水・くしゃみが続くのはマニュアルのサインチェックリストに挙げられる異常であり、湿度85%でカビ臭い寝床が刺激と感染の原因になっている可能性が高い。湿った乾草を全交換し換気して湿度を50〜70%の適正範囲に戻し、症状が続くなら数日以内に獣医師の診察を受ける。巣箱を密閉して暖房を強めると結露と過湿がさらに進み、カビと細菌が増える。人用の風邪薬は草食有袋類に安全性が確認されておらず、成分によっては中毒を起こす。放置は呼吸器感染が肺炎へ進む危険を見逃す。

課題巣箱内の乾草の湿り気とカビ臭に気づかず、週1回の全交換が守られていなかった。温湿度計の数値を確認する習慣がなく、冬の結露と過湿という環境要因を見落としていた。

改善案巣箱の乾草は週1回全交換し、雨や雪の日は追加で湿り気を点検する。巣内の温湿度を毎日記録し、湿度70%超なら換気や乾燥した敷材の追加で調整する。目やに・鼻水・くしゃみは記録表の観察項目に入れ、3日以上続けば受診とする。

Q8腹が膨れて動かず息が荒い病気

9月の深夜1時、動物園の夜間巡回で6歳のメスを確認すると、巣穴の入口でうずくまり、腹部が丸く膨らんでいる。触ると硬く、体を丸めて動こうとしない。呼吸は速く浅い。日誌を見ると昨日の朝からフンがゼロで、担当者は「明日出るだろう」と申し送りしていた。園の獣医師は帰宅しており、外部の夜間動物病院は野生動物対応の可否が不明である。

この深夜に取るべき最も適切な行動はどれか

  1. 腹部を強くマッサージしてガスを抜き、朝まで待つ
  2. 園の獣医師に今すぐ電話し、指示を受けながら搬送準備を進める
  3. 野菜ジュースを飲ませて腸を動かし、朝の出勤時に報告する
  4. 痛みを和らげるため人用の鎮痛剤を与えて巣穴に戻す

正解B.園の獣医師に今すぐ電話し、指示を受けながら搬送準備を進める

解説24時間以上糞が出ず腹部が膨らむ状態は、マニュアルで「今すぐ連絡」に分類される緊急事態であり、消化管停滞から腸閉塞や鼓脹へ進んでいる可能性が高い。深夜であっても園の獣医師へ直ちに連絡し、指示を受けながら大型犬用ケージや木箱での搬送準備を進める。硬く膨らんだ腹部を強くマッサージすると腸の破裂や激痛によるショックを招く。野菜ジュースは糖質が高く停滞を悪化させ、朝まで待つのは致命的な時間の浪費である。人用鎮痛剤は有袋類に安全な用量が不明で、消化管出血や腎障害の危険があり、痛みを隠して重症度の判断も難しくする。

課題前日朝からフンがゼロだったのに「明日出る」と楽観的な申し送りをし、24時間ルールが現場で共有されていなかった。夜間に連絡できる獣医師の緊急連絡体制と、野生動物対応可能な外部病院の情報が整理されていなかった。

改善案糞が24時間出なければ緊急連絡という基準を申し送り表に明記し、夜間巡回者も判断できるようにする。獣医師の夜間連絡先と野生動物対応可能な外部病院のリストを飼育場と事務所に掲示する。搬送用ケージと保温・保冷用品を常に使える場所に置く。

Q9春先に日中ふらつきよだれ病気

5月の午前11時、気温29℃の晴天。保護施設の2歳のオスが日中に巣穴から出てきてふらふらと歩き、口からよだれを垂らしている。前日までは元気で食欲もあった。担当者は「まだ夏ではないので熱中症ではない」と考え、来園者向けに柵の前で撮影を続けさせていた。巣穴内の温度計は26℃を示している。

最も適切な対応はどれか

  1. 夏前なので熱中症ではなく、歯の異常を疑い明日受診の予約を取る
  2. 熱中症を疑い、すぐ日陰の涼しい場所へ移して常温の水をかけ風を当て、獣医師に連絡する
  3. 来園者が驚かせたストレスなので、撮影を止めてそっとしておく
  4. ふらつきはてんかん発作の前兆なので押さえつけて動かないようにする

正解B.熱中症を疑い、すぐ日陰の涼しい場所へ移して常温の水をかけ風を当て、獣医師に連絡する

解説気温28℃を超えれば季節に関わらず熱中症のリスクがあり、日中に巣穴から出てふらつき、よだれを流すのはその典型的なサインである。巣穴内が26℃と高めなことも逃げ場が機能していないことを示す。すぐ日陰の涼しい場所へ移して常温の水をかけ風を当て、飲めるなら水を与えて30分以内に獣医師へ連絡する。歯の異常でもよだれは出るが、ふらつきと日中の異常行動を伴う場合は熱中症を先に除外すべきで、翌日では遅い。ストレスと片づけると初期の熱中症を見逃す。押さえつけると体温がさらに上がり、暴れて負傷する。

課題「夏ではない」という思い込みで気温の実測値を軽視し、28℃超という行動制限の基準を適用しなかった。巣穴内が26℃と適温上限を超えていたのに、冷房室や日陰の確認をせず来園者の撮影を優先した。

改善案季節ではなく実測気温で判断し、28℃超の日は日中の活動を控えさせ冷房室と水場を確保する。巣穴内温度が22℃を超えたら断熱や換気を見直す。春先から冷却用の水とタオルを準備し、来園者対応より個体の安全を優先する手順を明文化する。

Q10足を引きずり餌場に来ない病気

1月の夜、動物園の15歳のメス。ここ2晩、左後肢を引きずるように歩き、いつもより餌場に来るのが遅い。飼育場に転落するような段差はなく、他個体もいない。触ろうとすると嫌がって巣箱に戻る。担当者は高齢による関節の衰えだと考え、記録には残さず様子を見ることにした。

この状況で最も適切な判断はどれか

  1. 高齢なので自然な衰えとして受け入れ、記録だけ残して観察を続ける
  2. 歩き方の異常は当日中の受診対象なので、動画を撮って獣医師に連絡し診察を受ける
  3. 痛み止めとして人用の湿布を貼り、1週間様子を見る
  4. 足を触って骨折の有無を自分で確かめ、腫れがなければ放置する

正解B.歩き方の異常は当日中の受診対象なので、動画を撮って獣医師に連絡し診察を受ける

解説足を引きずる・歩き方が変という症状は、マニュアルの救急トリアージで当日中の受診に分類される。原因は外傷、関節炎、爪や指の異常、脊椎の問題など多岐にわたり、外見だけでは判断できない。歩き方の動画を撮り、獣医師に連絡して診察を受けるのが正しい。高齢による衰えと決めつけて記録だけにするのは、治療可能な疾患を見逃し痛みを長引かせる。人用の湿布は成分が皮膚から吸収され中毒の危険があるうえ、剥がして飲み込む恐れもある。無理に足を触ると咬まれる危険があり、素人が骨折の有無を判断することはできない。

課題高齢という先入観で歩行異常を病気のサインとして扱わず、記録も残さなかった。歩き方の異常が当日受診の基準であることが担当者に浸透していなかった。

改善案サインチェックリストの各項目と受診の緊急度を飼育場に掲示し、歩行異常は当日受診と定める。高齢個体は月1回の体重・歩行・食欲の記録を強化し、変化があれば動画で記録して獣医師と共有する。触診は獣医師に任せ担当者は観察に徹する。

Q11餌は食べるのに体重が減り続ける病気

4月の月例測定で、保護施設の9歳のオスの体重が3か月連続で減り、合計4kg落ちていた。担当者の記録では毎晩の牧草とペレットは完食している。しかしフンは以前より小さく数も減り、口周りに軽い汚れがある。皮膚や歩行に異常はない。施設の獣医師は月1回の巡回のみで、次回は3週間後である。

この状況で最も適切な判断はどれか

  1. 完食しているので問題なく、次回の巡回まで待つ
  2. ペレットを倍量にして体重を戻し、次回巡回で報告する
  3. 体重記録と糞の写真を添えて獣医師に今連絡し、数日以内の臨時診察を依頼する
  4. 運動のしすぎなので飼育場を狭くして掘る量を減らす

正解C.体重記録と糞の写真を添えて獣医師に今連絡し、数日以内の臨時診察を依頼する

解説3か月連続の体重減少は、完食して見えても実際には食べこぼしや歯の異常、寄生虫、消化吸収の問題が隠れている可能性を示す。糞が小さく減り、口周りが汚れている点は不正咬合や消化管の機能低下を示唆する。マニュアルでは餌の減りや体重減少は異常のサインで、数日以内の受診を要する。体重記録と糞の写真、餌の内容を添えて獣医師に連絡し、3週間先を待たずに臨時診察を依頼する。完食を根拠に待つのは根本原因を放置する。ペレット増量は肥満や消化管停滞を招き、原因を隠す。飼育場を狭くすると最重要のエンリッチメントを奪い、体調をさらに悪化させる。

課題体重減少が3か月続いても、糞の変化や口周りの汚れと関連づけて異常と判断できなかった。獣医師の巡回間隔が長く、臨時診察を依頼する判断基準が施設内で決められていなかった。

改善案月例体重が前月比5%以上減少したら臨時診察を依頼する基準を設ける。完食の記録だけでなく食べこぼしの量、糞の大きさと数を毎日記録して体重と併せて評価する。獣医師との連絡手段と臨時診察の依頼フローを文書化しておく。

Q12けいれんして倒れ意識がない病気

7月の夜10時、動物園の13歳のオス。担当者が最後の見回りで飼育場に入ると、個体が横倒しになり四肢を突っ張ってけいれんしていた。数十秒でけいれんは止まったが呼びかけに反応せず、口からよだれと泡が出ている。周囲に嘔吐物はなく、外傷も見当たらない。担当者は1人で、園の獣医師は帰宅している。

この状況で最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか

  1. 口に手を入れて舌を引き出し、窒息を防ぐ
  2. 周囲の危険物を離して呼吸と脈を確認し、直ちに獣医師へ電話して指示を仰ぐ
  3. 水をかけて意識を戻し、立たせて歩かせる
  4. 人用の抗けいれん薬が家にあるので取りに行って飲ませる

正解B.周囲の危険物を離して呼吸と脈を確認し、直ちに獣医師へ電話して指示を仰ぐ

解説けいれんと意識消失はマニュアルで「今すぐ連絡」に分類される最重症の状態で、熱中症、中毒、代謝異常、脳の疾患など複数の原因が考えられる。まず自分が咬まれないよう距離を保ちつつ周囲の危険物を離し、胸の上下で呼吸、後肢内側の大腿動脈で脈を確認して、直ちに獣医師へ電話し指示を仰ぐ。けいれん中や直後に口へ手を入れると強い咬合力で重傷を負う。水をかけて立たせるのは意識のない個体に無意味で、転倒や誤嚥を招く。人用の抗けいれん薬は有袋類での安全性が不明で、意識のない動物に経口投与すると誤嚥して窒息する。

課題夜間の最終見回りが1人体制で、緊急時に応援を呼ぶ手順や獣医師への連絡フローが整っていなかった。高齢個体の持病や既往の記録が乏しく、けいれんの原因を推定する情報が不足していた。

改善案夜間も緊急時に2人目を呼べる連絡網を整備し、獣医師の携帯番号を飼育場に掲示する。呼吸数・脈拍の確認方法を全担当者が実習で身につける。高齢個体は定期的な血液検査で持病を把握し、けいれんなどの既往を個体カルテに記録して共有する。

Q13金網に爪が引っかかり出血怪我

9月の夜、保護施設の4歳のメス。仮設の運動場の床に敷いた金網に前肢の爪を引っかけ、暴れて抜いた際に爪が根元から割れて出血した。個体は三本足で歩き、地面に血の跡が点々と続く。担当者が近づくと威嚇して土を掘ろうとし、傷口に土が入っている。

最も適切な対応はどれか

  1. 清潔なガーゼで圧迫止血し、土掘りをさせないよう巣箱に誘導して当日中に受診する
  2. 動物は舐めて治すので放置し、翌週の巡回で獣医師に見せる
  3. 割れた爪を根元からペンチで抜いて消毒液をかける
  4. 出血が止まるまで土を掘らせて気を紛らわせる

正解A.清潔なガーゼで圧迫止血し、土掘りをさせないよう巣箱に誘導して当日中に受診する

解説爪が根元から割れて出血した場合、清潔なガーゼで5分以上圧迫して止血し、必要なら圧迫したまま包帯で固定する。ウォンバットは掘削本能が強く、傷口に土が入ると化膿しやすいため、当日中に受診して処置を受ける。土掘りを止めるには巣箱へ誘導する。翌週まで放置すると土や糞による感染で骨まで化膿する恐れがある。割れた爪を無理に抜くと出血が増え激痛で咬まれる危険があり、処置は獣医師が鎮静下で行うべきである。掘らせ続ければ傷口に土が入り続け止血もできない。

課題仮設運動場に金網の床を使い、爪が引っかかる構造をそのままにしていた。ウォンバットに硬い床や粗い金網は爪の外傷の原因であることが設計段階で考慮されていなかった。

改善案床は土の地面を基本とし、金網を使う場合は爪が入らない目の細かいものにして必ず土や砂で覆う。仮設施設でも設置前に爪と指の引っかかりを点検する。止血用ガーゼと包帯を飼育場に常備し、圧迫止血の手順を担当者全員で確認する。

Q14巣穴が崩れて生き埋めになった怪我

6月の大雨の翌朝、動物園の飼育場で6歳のオスが掘っていた巣穴の天井部分が崩れているのを発見した。個体の姿が見えず、崩れた土の間から呼吸に合わせてわずかに土が動いているように見える。担当者はスコップを持っているが、掘れば個体の体を傷つけないか迷っている。

この場面で最初に取るべき行動はどれか

  1. 獣医師の到着を待ってから安全に掘り出す
  2. 重機を呼んで一気に土を取り除く
  3. 速やかに手とスコップで頭部側から掘り出して呼吸を確認し、咳や歩行不能があれば即受診する
  4. 水を流し込んで土を柔らかくし、自力で出てくるのを待つ

正解C.速やかに手とスコップで頭部側から掘り出して呼吸を確認し、咳や歩行不能があれば即受診する

解説巣穴の崩落で生き埋めになった場合、窒息と胸部圧迫で数分が命を分ける。マニュアル通り速やかに掘り出し、呼吸を確認する。頭部側から掘って気道を先に確保し、スコップは体の近くでは使わず手で土を除く。掘り出した後に歩けない、咳をする、呼吸が速いなら肺の損傷や骨折を疑い即受診する。獣医師の到着を待てば窒息に間に合わない。重機は個体を押しつぶす危険が高く、水を流し込めば土が泥となって気道を塞ぎ溺水させる。

課題大雨後に巣穴の崩落リスクが高まることを想定した点検が行われていなかった。飼育場設計時に土の深さと締め固め、支柱位置の確認が不十分で、雨で緩んだ天井を支える構造がなかった。

改善案大雨や地震の後は巣穴の入口と地表のひび割れを必ず点検する。設計段階で土の深さと支柱基礎を確認し、崩れにくい人工巣箱を併設して雨季の避難先にする。掘り出し用のスコップと手袋を飼育場入口に置き、崩落時の手順を訓練しておく。

Q15花火に驚き柵に激突して鼻血怪我

8月の夜9時、園近くで打ち上げ花火が始まった。動物園の5歳のメスが大きな音に驚き、時速40kmほどで走って金属柵に頭から激突した。倒れてすぐ立ち上がったが、鼻から血が出て歩き方がふらついている。目は開いているが、名前を呼んでも反応が鈍い。

最も適切な対応はどれか

  1. 立ち上がったので大丈夫と判断し、翌朝まで様子を見る
  2. 意識・鼻血・歩行を確認して記録し、ふらつきがあるので当日中に獣医師の診察を受ける
  3. 鼻にティッシュを詰めて止血し、走らせて元気を確認する
  4. 頭を冷やすため氷水をかけ、巣穴に押し込んで安静にさせる

正解B.意識・鼻血・歩行を確認して記録し、ふらつきがあるので当日中に獣医師の診察を受ける

解説驚いて柵に突進し頭を打った場合、意識・鼻血・歩行を確認するのが基本で、鼻血やふらつきがあれば頭部や頸部の損傷を疑い当日中に受診する。反応が鈍い点は脳震盪や頭蓋内出血の可能性を示し、時間とともに悪化することがある。立ち上がったことを根拠に翌朝まで待つのは、夜間に急変しても気づけない。鼻にティッシュを詰めると気道を塞ぎ、走らせると出血や脳の損傷を悪化させる。氷水をかけるのは頭部外傷に意味がなく、押し込む行為は暴れて二次的な衝突を招く。

課題近隣の花火大会の予定を把握しておらず、大きな音に対する事前の備えがなかった。金属柵に緩衝材が付いておらず、驚いた個体が突進した際の衝撃を吸収できない構造だった。

改善案花火や工事など大きな音の予定を事前に確認し、当日は暗い巣箱や屋内に誘導しておく。金属柵や扉には緩衝材を取り付け、飼育場内で急に大きな音を立てない運用を徹底する。頭部打撲後の観察項目(意識・鼻血・歩行・瞳孔)を記録表にしておく。

Q16同居個体に咬まれ脇腹が裂けた怪我

3月の繁殖期、保護施設で2頭を同居させていた飼育場で夜間に激しい争いが起きた。朝、若いオスの脇腹に深さ2cmほどの裂けた咬み傷があり、周囲が腫れて毛が血で固まっている。個体は歩けるが、傷口を気にして体をひねる。担当者は2頭を同じ場所に置いたまま消毒しようと近づいた。

最も適切な対応はどれか

  1. 傷口にオキシドールをたっぷりかけて泡立たせ、2頭はそのまま同居させる
  2. 傷を流水で洗い圧迫止血し、2頭を分離して当日中に受診し抗菌処置を受ける
  3. 自然に治るので、争わないよう餌を増やして様子を見る
  4. 傷口を縫うため瞬間接着剤でふさぎ、包帯を巻く

正解B.傷を流水で洗い圧迫止血し、2頭を分離して当日中に受診し抗菌処置を受ける

解説ウォンバットは基本的に単独性で、繁殖期の同居は咬傷の原因になる。同種間の咬傷は深く、汚れた土の中で活動するため膿みやすい。傷を流水で洗い、清潔なガーゼで圧迫止血し、まず2頭を分離して再度の争いを防ぎ、当日中に受診して抗菌処置を受ける。オキシドールは組織を傷めて治りを遅らせ、同居を続ければ再び咬まれる。深い咬傷は自然治癒しにくく、餌を増やしても縄張り争いは止まらない。瞬間接着剤で傷口を閉じると内部に細菌を閉じ込め、膿瘍を悪化させる。

課題単独性の動物を繁殖期に同居させ、争いを避けるための巣穴数や広さが不足していた。夜間の争いを察知する手段がなく、朝まで発見が遅れた。傷の処置を優先して分離という安全確保を後回しにしていた。

改善案同居は原則避け、行う場合も繁殖期は必ず分ける。同居させる際は個体数以上の巣穴と十分な広さを確保し、夜間カメラで争いを監視する。分離用の予備飼育場を常に空けておき、咬傷が起きたら分離・洗浄・圧迫止血・受診の順で対応する手順を掲示する。

Q17扉に頭を挟まれ悲鳴を上げた怪我

11月の夕方、動物園の担当者が巣箱の重い引き戸を閉めたところ、内側にいた8歳のメスが顔を出していて頭が扉と柱の間に挟まった。個体は悲鳴を上げて暴れ、扉はがっちり動かない。担当者は後ろから体を引っ張って抜こうとしたが、個体はさらに暴れて扉を蹴っている。

この状況で最も適切な対応はどれか

  1. 体をもっと強く引いて一気に引き抜く
  2. 扉を強く押して開けようとし、開かなければハンマーで叩く
  3. 引っ張るのをやめ、扉をレールごと外して解放し、その後頭部と歩行を確認する
  4. 個体が疲れて静かになるまで放置してから抜く

正解C.引っ張るのをやめ、扉をレールごと外して解放し、その後頭部と歩行を確認する

解説扉や柵の隙間に頭や足が挟まれた場合、マニュアルでは「無理に引かず扉を外す」とされる。引っ張れば頸椎や頭部を圧迫して損傷を悪化させ、暴れさせて二次的なけがも生む。まず引っ張るのをやめ、扉をレールごと外して解放し、解放後は意識・鼻血・歩行を確認して異常があれば当日中に受診する。扉を強く押したり叩いたりすると振動と圧力が頭部に加わり、さらに恐怖で暴れる。静かになるまで放置するのは、圧迫による呼吸障害や血流障害が続くため危険である。

課題扉を閉める前に個体の位置を確認するという基本手順が守られていなかった。扉が重く緊急時に外しにくい構造で、挟まれた際の解放方法が担当者に周知されていなかった。

改善案扉を閉める前に必ず個体の位置を目視し、声かけと確認を習慣化する。扉は緊急時に工具なしでレールから外せる構造にし、隙間に頭や足が入らないよう調整する。挟まれ事故の対応手順を掲示し、定期的に扉の取り外し訓練を行う。

Q18段差から落ちて後肢が動かない怪我

2月の夜、改修中の展示場で仮置きされた高さ1.5mの土手から、7歳のオスが転落した。担当者が駆けつけると、個体は前肢で体を引きずって進もうとするが後肢が動かず、尿を漏らしている。痛みで唸り、担当者が触ろうとすると咬みつこうとする。

最も適切な対応はどれか

  1. 板や硬い台に乗せて背骨を動かさないよう固定し、暗くしたケージで即受診する
  2. 抱き上げて巣箱に運び、翌朝の獣医師巡回まで安静にさせる
  3. 後肢をマッサージして血流を良くし、立たせて歩かせる
  4. 痛みが引くまで放置し、動けるようになってから運ぶ

正解A.板や硬い台に乗せて背骨を動かさないよう固定し、暗くしたケージで即受診する

解説1m以上の段差からの転落で後肢が動かず失禁している場合、脊椎損傷が強く疑われる。マニュアルでも落下後に歩けないなら即受診とされる。背骨を曲げないよう板や硬い台に乗せ、厚手の布で顔を覆って咬まれないようにし、暗くした大型ケージで直ちに搬送する。抱き上げると脊椎がたわんで脊髄損傷が悪化し、翌朝まで待てば回復の機会を失う。後肢のマッサージや歩行は損傷部位を動かして麻痺を固定させる。放置は痛みと麻痺を長引かせ、膀胱麻痺による腎障害も進む。

課題改修中に1m以上の段差を作り、転落防止の柵やスロープを設けていなかった。飼育場に1m以上の段差を作らないという基本原則が工事計画に反映されていなかった。

改善案改修や仮設工事の際も段差は1m未満に抑え、やむを得ない場合は柵で立ち入りを制限する。工事期間中は個体を別の飼育場に移す。脊椎損傷を疑う場合の搬送用に硬い板と大型ケージを用意し、担架での固定手順を訓練しておく。

Q19担当者が手を咬まれ離れない怪我

10月の夜、保護施設で新人担当者が巣箱内の6歳のオスに手を伸ばして餌皿を取ろうとしたところ、手首を深く咬まれた。個体は口を離さず、担当者は反射的に手を引き抜こうとして悲鳴を上げた。傍らには先輩担当者がいて、手には厚手のタオルと木の棒がある。

先輩担当者が取るべき最も適切な行動はどれか

  1. 個体の頭を棒で叩いて驚かせ、口を離させる
  2. 新人の腕をつかんで一緒に力いっぱい引き抜く
  3. 新人に動かず声を出さないよう伝え、タオルで個体の顔を覆い、口の端に棒を差し込みてこで開ける
  4. 水をかけて個体を驚かせ、離れたらすぐ新人を病院へ連れて行く

正解C.新人に動かず声を出さないよう伝え、タオルで個体の顔を覆い、口の端に棒を差し込みてこで開ける

解説ウォンバットの咬合力は非常に強く、手を引き抜こうとすると傷が大きく裂ける。マニュアルの咬傷解除手順に従い、咬まれた人は動かず声を出さず、厚手の布で個体の顔を覆って視界を遮り、口の端に硬い棒を差し込みてこの原理で少し開けて手を抜く。離れたら個体を巣箱に誘導し人は退避する。その後は傷を流水で洗い圧迫止血し、骨折の可能性もあるため必ず医療機関を受診する。頭を叩く・押さえつけると防御反応でさらに強く咬む。引き抜くのは最も避けるべき行為である。水をかけても離すとは限らず、驚かせる方法は咬み直しの危険を伴う。

課題新人が単独で巣箱内に手を入れる作業を行い、咬傷解除の手順を教育されていなかった。巣箱内での作業を安全に行うための道具や、個体を先に別区画へ移す手順が整備されていなかった。

改善案巣箱内の作業は個体を別区画に誘導してから行い、手を入れる作業を禁止する。新人研修で咬傷解除の手順(動かない・顔を覆う・棒でてこ)を実技で教える。厚手のタオルと硬い棒、止血用品を巣箱付近に常備し、咬傷時は必ず医療機関を受診する規則にする。

Q20丸太が倒れ前肢を潰され腫れた怪我

5月の夜、動物園の飼育場で立てかけてあった重い丸太が倒れ、3歳のメスの右前肢に当たった。担当者が見ると、前肢は根元から腫れ上がり、地面に着けず持ち上げたまま三本足で歩く。腫れた部分の皮膚は一部裂けて出血し、傷口から白いものがのぞいて見える。

最も適切な対応はどれか

  1. 傷口を清潔なガーゼで覆って圧迫し、肢を動かさないよう暗いケージに収容して今すぐ受診する
  2. 折れていても野生では自然に治るので、餌を増やして観察する
  3. 腫れた肢を自分で添え木で強く固定し、明日まで様子を見る
  4. 傷口を土で覆って止血し、自力で歩かせて回復を促す

正解A.傷口を清潔なガーゼで覆って圧迫し、肢を動かさないよう暗いケージに収容して今すぐ受診する

解説重い丸太による圧迫で肢が腫れ、傷口から白いものがのぞく状態は開放骨折の可能性が高く、マニュアルの「骨が見える」は今すぐ連絡の基準である。傷口を清潔なガーゼで覆って圧迫止血し、肢を動かさないよう暗くした大型ケージに収容して直ちに受診する。放置すれば骨が感染し、肢の切断や敗血症につながる。素人の添え木は骨片をずらし血管や神経を傷つけるうえ、強く縛れば血流が止まる。土で覆うと細菌が入り感染を悪化させ、歩かせれば骨折が悪化する。

課題重い丸太を固定せずに立てかけ、倒れて個体に当たる危険を放置していた。エンリッチメント用の構造物の安定性を点検する習慣がなかった。

改善案丸太や木の根は地面に固定するか横置きにし、倒れる危険のある設置をしない。構造物は週1回点検して緩みや傾きを直す。開放骨折など今すぐ受診すべき状態の一覧を掲示し、搬送用ケージと止血用品を常備する。

Q21暖房器具に触れて腹に火傷怪我

1月の朝、氷点下の夜が続いたため屋内飼育室に置いた電気ヒーターの周りに、9歳のオスが一晩中寄り添っていた。朝の点検で腹部の毛が焦げ、皮膚が赤く一部水ぶくれになっているのを発見した。個体は痛がって腹を地面に着けず、餌を食べようとしない。担当者はアロエの葉を貼ろうと考えている。

最も適切な対応はどれか

  1. アロエや人用の火傷軟膏を塗り、様子を見る
  2. ヒーターを撤去し、患部に常温の流水を優しくかけて冷やし、清潔な布で覆って当日中に受診する
  3. 水ぶくれを針で破って中の液を出し、消毒液をかける
  4. 寒いので火傷部分を温めたタオルで包んで保温する

正解B.ヒーターを撤去し、患部に常温の流水を優しくかけて冷やし、清潔な布で覆って当日中に受診する

解説電気ヒーターへの長時間の接触は低温火傷を起こし、皮膚の深部まで損傷が及ぶことが多い。まず原因となるヒーターを撤去し、患部に常温の流水を優しくかけて熱を取り、清潔な布で覆って当日中に受診する。腹部の広い火傷は感染や脱水を招くため、獣医師の処置が必要である。アロエや人用の軟膏は成分の安全性が不明で、舐めて中毒を起こす可能性もある。水ぶくれを破ると細菌の侵入口になり、消毒液は損傷した組織をさらに傷める。火傷部分を温めるのは熱の損傷を進行させる最も避けるべき行為である。

課題ヒーターに直接触れられる状態で設置し、防護カバーや距離の確保をしていなかった。0℃以下で屋内に入れる対策はしたが、巣箱に厚い乾草を敷くという本来の保温方法より器具に頼っていた。

改善案暖房器具は個体が触れない位置に設置し、必ず防護柵とカバーを付ける。冬の保温は巣箱に乾草を厚く敷き断熱構造で20℃前後を保つことを基本とし、器具は補助にとどめる。夜間の温度を記録し、朝の点検で皮膚と毛の状態を確認する。

Q22野犬に襲われ背中に牙の傷怪我

4月の早朝、保護施設の柵の下に穴が掘られ、野犬が侵入した形跡があった。5歳のメスは巣穴に潜って尻で入口をふさぎ身を守ったようだが、背中と尻に牙による刺し傷が数か所あり、出血は少ないが傷の周りが腫れている。個体は興奮して巣穴から出てこず、担当者を威嚇する。

最も適切な対応はどれか

  1. 出血が少ないので消毒だけして、腫れが引かなければ来週受診する
  2. 無理に引き出して全身を洗い、傷口に人用の抗生物質軟膏を塗る
  3. 落ち着くのを待って傷を流水で洗い、深い刺し傷は膿みやすいため当日中に受診して抗菌処置を受ける
  4. 野犬を追い払えば安全なので、個体には触れず柵の穴だけ直す

正解C.落ち着くのを待って傷を流水で洗い、深い刺し傷は膿みやすいため当日中に受診して抗菌処置を受ける

解説犬の牙による刺し傷は表面の出血が少なくても深部に細菌が入り、数日で膿瘍を作る。腫れている時点で感染が始まっている可能性が高い。個体が落ち着くのを待ち、厚手の布で顔を覆って安全に扱い、傷を流水で洗い、当日中に受診して抗菌処置を受ける。消毒だけで来週まで待つと膿瘍が広がり敗血症の危険がある。興奮した個体を無理に引き出すと咬傷事故になり、人用の抗生物質軟膏は用量も安全性も不明である。柵の修理は重要だが、個体の傷を放置してはならない。

課題柵下の毎日点検が行われておらず、野犬の掘り込みによる侵入を防げなかった。柵と底網による捕食者対策が不十分で、野生動物との接触による疥癬などの持ち込みリスクも高まっていた。

改善案柵は地中1m以上まで埋め、底網を設置して毎日柵下を点検し穴を埋める。野犬やキツネの侵入痕跡を見たら即日補修し、監視カメラで夜間の侵入を確認する。外傷後は傷だけでなく疥癬などの感染も数週間観察し、獣医師に野生動物との接触を伝える。

Q23朝の点検で個体がいない事故

6月の朝6時、動物園の担当者が飼育場に入ると4歳のオスの姿がなく、柵の下に直径40cmほどのトンネルが外へ向かって掘り抜かれていた。飼育場は林に接しており、外側にも土が盛り上がった跡が続いている。担当者はまず園長に報告する前に、1人で林に入って追いかけようとした。

この状況で最も適切な行動はどれか

  1. 1人で林に入り、見つけたら素手で捕まえて連れ戻す
  2. 園内に報告して複数人で巣穴周辺を捜索し、好物の餌でおびき寄せて捕獲用ケージに誘導する
  3. 腹が減れば自分で戻ってくるので柵の穴を開けたまま夜まで待つ
  4. 大声を出しながら追い立てて飼育場の方向へ走らせる

正解B.園内に報告して複数人で巣穴周辺を捜索し、好物の餌でおびき寄せて捕獲用ケージに誘導する

解説ウォンバットは一晩で柵下を掘り抜くことがあり、逸走時はマニュアル通り巣穴周辺を捜索し、餌でおびき寄せて捕獲する。まず園内に報告し、複数人で役割を分けて掘り抜いた先や近くの巣穴になりそうな場所を探し、好物の餌で捕獲用ケージへ誘導する。1人で追いかけて素手で捕まえようとすると、20〜35kgの力強い個体に咬まれたり、驚いた個体が時速40kmで逃げてさらに遠くへ行く。穴を開けたまま待つのは他の野生動物の侵入や個体の遠方への移動を許す。大声で追い立てると恐怖で走り出し、道路への飛び出しや柵への激突で負傷する。

課題柵下の毎日点検と掘り抜き穴の埋め戻しが習慣化しておらず、底網が設置されていなかった。逸走時の連絡体制と捕獲用具の準備、役割分担が事前に決められていなかった。

改善案柵下に底網を設置し、毎日柵沿いを歩いて掘り込みを埋める。逸走時の手順(報告・捜索範囲・捕獲用ケージと餌・搬送)を文書化し、年1回訓練する。個体にマイクロチップを入れ、周辺の林や道路の地図を用意して捜索範囲を決めておく。

Q24資材搬入の軽トラックに轢かれた事故

9月の夕方、保護施設の飼育場に乾草を運ぶため軽トラックを入れたところ、薄暗い中で巣穴から出てきた8歳のメスの後半身に前輪が乗り上げた。運転者はすぐ後退した。個体は動けず横たわり、呼吸は速く、口の端に血がにじんでいる。腹部を触ると硬く張っており、後肢は動かない。

最も適切な対応はどれか

  1. 自力で動くまでその場で見守り、動けたら巣穴に戻す
  2. 抱き上げて巣箱へ運び、温めて休ませてから翌朝受診する
  3. 硬い板に水平に乗せて動かさず、暗いケージに収容して獣医師に連絡しながら即搬送する
  4. 痛みが強いので人用の鎮痛剤を飲ませてから運ぶ

正解C.硬い板に水平に乗せて動かさず、暗いケージに収容して獣医師に連絡しながら即搬送する

解説車両による轢過は骨盤や脊椎の骨折に加え、口の血と硬い腹部から肺や内臓の損傷、腹腔内出血が疑われる最重症の状態である。硬い板に水平に乗せて脊椎を動かさず、暗くした大型ケージに収容して獣医師に連絡しつつ直ちに搬送する。搬送前に野生動物対応可能な獣医師へ連絡し、事故の状況を伝える。動くまで見守れば内出血で失血死する。抱き上げると脊椎や骨盤の損傷が悪化し、翌朝まで待つのは致命的である。意識があっても内臓損傷が疑われる個体に経口で薬を与えると誤嚥や消化管出血を招き、人用鎮痛剤は有袋類での安全性も不明である。

課題薄暗い活動時間帯に車両を飼育場へ進入させ、個体の位置を確認する手順が守られていなかった。車両進入時の誘導員配置や、個体を先に別区画へ誘導する運用がなかった。

改善案車両の進入は個体が巣穴内にいる明るい時間帯に限定し、必ず誘導員が個体の位置を確認してから行う。可能なら個体を別区画に誘導して扉を閉める。搬送用の硬い板と大型ケージを常備し、内臓損傷を疑う場合の即搬送基準を担当者に周知する。

Q25水場に落ちて溺れかけた事故

7月の夜、動物園で新しく設置した深さ60cmのコンクリート製の池に、2歳のオスが滑り落ちた。担当者が気づいた時には壁が登れずもがいており、鼻と口が水に沈んでは浮かんでいる。引き上げると、ぐったりして呼吸が弱く、口から水を吐き、体は冷たくなっている。

引き上げた後に最も適切な対応はどれか

  1. 逆さに吊るして水を全部吐かせてから巣穴に戻す
  2. ドライヤーの熱風で全身を一気に温め、元気になるまで待つ
  3. 呼吸と脈を確認し、頭を低くして水を排出させ、タオルで体を拭き保温して今すぐ獣医師に連絡する
  4. 水を吐いたので回復したと判断し、餌を与えて様子を見る

正解C.呼吸と脈を確認し、頭を低くして水を排出させ、タオルで体を拭き保温して今すぐ獣医師に連絡する

解説溺水後にぐったりして呼吸が弱い場合、まず胸の上下で呼吸、後肢内側の大腿動脈で脈を確認する。頭を低くして気道の水を排出させ、呼吸が止まっていれば横向きに寝かせて心肺蘇生を開始する。体はタオルで拭いて毛布で保温し、今すぐ獣医師に連絡する。水を吸い込んだ肺は数時間後に肺炎や肺水腫を起こすため、回復して見えても受診が必要である。逆さ吊りは頸椎を傷め、25kg前後の体重では現実的でもない。ドライヤーの熱風は低温火傷と急激な血圧変動を招く。水を吐いたことを回復と誤解して餌を与えると誤嚥し、遅発性の肺障害を見逃す。

課題ウォンバットが登れない垂直壁の深い池を設置し、滑り落ちた際の脱出路を用意していなかった。水場は浅く重い容器が基本という飼養条件が新設備の設計に反映されていなかった。

改善案水場は浅く重い容器か、緩やかな斜面で自力で出られる構造にし、深い池は柵で囲む。新設備は設置前に転落・溺水・挟まれのリスクを点検する。呼吸・脈の確認と心肺蘇生の手順を担当者全員が訓練し、保温用毛布とタオルを飼育場に常備する。

Q26柵の隙間に後肢が挟まり暴れる事故

3月の夜、保護施設の運動場で、7歳のオスが古い金属柵の下部の隙間に右後肢を突っ込んで抜けなくなった。個体は激しく暴れて柵を引っ張り、足首の皮膚がすりむけて出血し始めている。担当者2人が駆けつけたが、柵は溶接されていて簡単には外れない。

この場面で最も適切な対応はどれか

  1. 2人で体を引っ張り、勢いをつけて足を引き抜く
  2. 暴れ疲れるまで距離を取って待ち、静かになったら引き抜く
  3. 足に油を塗って滑らせ、無理やり抜く
  4. タオルで顔を覆って落ち着かせ、柵の一部を工具で切断して解放し、傷を洗って歩行を確認する

正解D.タオルで顔を覆って落ち着かせ、柵の一部を工具で切断して解放し、傷を洗って歩行を確認する

解説挟まれ事故では無理に引かず、挟んでいる側を外すのが原則である。暴れる個体は厚手のタオルで顔を覆って視界を遮り落ち着かせ、柵の一部を金属切断工具で切って解放する。解放後は傷を流水で洗って圧迫止血し、歩行を確認して足を引きずるなら当日中に受診する。引っ張れば足首の骨折や皮膚の大きな裂傷を招き、暴れ疲れるまで待つ間に血流障害と組織損傷が進む。油を塗っても金属に挟まった骨は抜けず、力を加えるほど損傷が広がる。

課題古い柵の下部に足が入る隙間があるのを点検で見逃していた。柵の緊急切断に使える工具が飼育場近くに用意されておらず、解放に時間がかかる状態だった。

改善案柵は足や頭が入る隙間がないよう定期点検し、隙間があれば目の細かい網や板で塞ぐ。金属切断工具と厚手のタオルを飼育場付近に常備し、挟まれ時の解放手順を担当者で共有する。挟まれた後は数日間、歩行と腫れを観察する。

Q27延長コードをかじって感電事故

12月の夜、動物園の屋内飼育室で保温用の延長コードが床を這っていた。担当者が戻ると、5歳のメスがコードのそばで横倒しになり、口の周りが焦げて泡を吹き、コードは咬み切られてむき出しになっている。個体は体を小刻みに震わせ、呼びかけに反応しない。コードはまだコンセントに刺さっている。

最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか

  1. すぐ個体に触れて安全な場所へ引きずり出す
  2. コードを素手でつかんで個体から引き離す
  3. 水をかけて口の焦げを冷やす
  4. 先にブレーカーかコンセントを切って電源を断ち、それから呼吸と脈を確認し獣医師へ即連絡する

正解D.先にブレーカーかコンセントを切って電源を断ち、それから呼吸と脈を確認し獣医師へ即連絡する

解説感電事故では、救助者自身の感電を防ぐため、まず電源を断つことが最優先である。ブレーカーを落とすかコンセントを抜いてから個体に近づき、胸の上下で呼吸、大腿動脈で脈を確認する。呼吸や脈がなければ横向きに寝かせて心肺蘇生を開始し、いずれにせよ獣医師へ今すぐ連絡する。感電は口の火傷だけでなく不整脈や肺水腫を数時間後に起こすため、意識が戻っても受診が必要である。通電中の個体やコードに触れると救助者も感電する。水は電気を通し、感電の範囲を広げるうえ、火傷の冷却にもならない。

課題かじる習性の強い動物の飼育室で延長コードを床に這わせ、保護管やカバーを付けていなかった。暖房器具の配線を個体の届かない位置に固定するという基本的な安全設計が欠けていた。

改善案配線は個体の届かない高さに固定し、床を通す場合は金属製の保護管に入れる。飼育室への電気器具設置時はブレーカーの位置を担当者全員が把握しておく。感電時の手順(電源を切る・呼吸脈確認・心肺蘇生・受診)を掲示し、丸太や木の根など安全なかじり対象を十分に与える。

Q28見学用通路の柵越しに転落事故

10月の夕方、保護施設の見学イベント中、飼育場と見学通路を隔てる高さ80cmの土手の上で餌を食べていた3歳のメスが足を滑らせ、通路側のコンクリート床に落ちた。個体は立ち上がったが、右前肢を浮かせたまま歩き、見学者が取り囲んで写真を撮り始めた。個体は興奮して来場者の足元に突進しようとしている。

担当者が最初に取るべき行動はどれか

  1. 見学者を下がらせて静かにさせ、個体を暗いケージへ誘導して前肢の状態を確認し当日中に受診する
  2. そのまま撮影を続けさせ、イベント終了後に飼育場へ戻す
  3. 個体を抱えて土手の上へ持ち上げ、元の場所に戻す
  4. 驚かせて飼育場へ走らせ、自力で戻らせる

正解A.見学者を下がらせて静かにさせ、個体を暗いケージへ誘導して前肢の状態を確認し当日中に受診する

解説転落後に前肢を浮かせて歩くのは骨折や捻挫の可能性があり、足を引きずる状態は当日中の受診対象である。同時に、見学者に取り囲まれた個体は恐怖で突進し、時速40kmでぶつかれば人も個体も負傷する。まず見学者を下がらせて静かにさせ、個体を暗くしたケージへ誘導して安全を確保してから前肢を観察し、当日中に受診する。撮影を続けさせるのは個体のストレスと突進事故の危険を放置する。抱え上げると20〜35kgの個体に咬まれ、患肢を悪化させる。驚かせて走らせれば骨折が悪化し、再度の転落や柵への激突も招く。

課題見学イベントで個体が転落しうる位置に餌を置き、通路との間に転落防止の柵がなかった。イベント時の見学者統制と、事故発生時に個体を隔離する手順が用意されていなかった。

改善案見学通路との境界に転落防止の柵か緩やかな斜面を設け、餌場は境界から離す。イベントでは見学者との距離と静粛を保つ係を配置し、緊急時に個体を収容するケージを近くに置く。転落後の歩行異常は当日受診とする基準を共有する。

Q29地震で巣箱が倒れ下敷き事故

2月の深夜2時、震度5強の地震が発生した。動物園の夜間巡回者が飼育場に向かうと、コンクリートブロックを積んで作った人工巣箱が崩れ、8歳のオスが上半身だけ外に出た状態でブロックの下敷きになっていた。個体は口を開けて浅い呼吸をし、声を出さず、後半身は瓦礫の下で動かない。余震が続いている。

最も適切な対応はどれか

  1. 余震が収まるまで数時間待ってから救出する
  2. 上半身をつかんで一気に引き出す
  3. ブロックを1つずつ手で除去して解放し、硬い板に乗せて獣医師に連絡しながら即搬送する
  4. ブロックの上からさらに重石を置いて動かないようにし、朝を待つ

正解C.ブロックを1つずつ手で除去して解放し、硬い板に乗せて獣医師に連絡しながら即搬送する

解説ブロックの下敷きで浅い呼吸をしている状態は、胸部圧迫と骨盤や脊椎の損傷が疑われる。自身の安全を確認しながらブロックを1つずつ除去して解放し、脊椎を動かさないよう硬い板に乗せ、暗いケージで獣医師に連絡しつつ直ちに搬送する。長時間の圧迫は圧挫症候群を起こし、解放後の急変もあるため獣医師の管理下が必要である。数時間待つのは圧迫による呼吸障害と循環障害を進める。上半身を引き出すと瓦礫に挟まった後半身の骨折が悪化し脊髄を損傷する。重石を追加するのは論外である。

課題人工巣箱を接着や固定のないブロック積みで作り、地震で崩れる構造だった。災害時の夜間対応手順と救出用具の配置、余震下での作業の安全基準が決められていなかった。

改善案人工巣箱は一体成型か固定した構造にし、崩れないことを設計で確認する。地震後の点検手順と救出用具(手袋・板・ケージ)の置き場を決め、夜間巡回者にも周知する。災害時の獣医師連絡と搬送先を事前に取り決め、年1回訓練を行う。

Q30二重扉を開け放ち園内に脱走事故

4月の夕方、閉園間際の保護施設で、清掃中に外側の扉を開けたまま内側の扉を開けた新人担当者の横を、6歳のメスがすり抜けて園路に出た。個体は来場者の帰路に向かって走り出し、途中で花壇を掘り始めた。数人の来場者がスマートフォンを向けて近づいている。

最も適切な対応はどれか

  1. 来場者に協力を求め、全員で囲んで追い込む
  2. 走って追いかけ、後ろから飛びついて抱きかかえる
  3. 掘っているうちに疲れて寝るので、そのまま見守る
  4. 来場者を遠ざけて静かにし、好物の餌で捕獲用ケージへ誘導して収容する

正解D.来場者を遠ざけて静かにし、好物の餌で捕獲用ケージへ誘導して収容する

解説逸走した個体は驚かせず、餌でおびき寄せて捕獲するのがマニュアルの基本である。来場者を遠ざけて刺激を減らし、複数の担当者で囲いを作りつつ、好物の餌で捕獲用ケージへ誘導して収容する。来場者に囲ませると個体が恐怖で時速40kmで突進し、人も個体も負傷する。飛びついて抱きかかえるのは20〜35kgの強い力と咬合力で重傷を負う危険が高い。掘っているうちに寝るとは限らず、園外へ出れば道路での事故につながる。

課題二重扉は片方を閉めてからもう片方を開けるという運用が新人に徹底されていなかった。清掃時に個体を別区画へ誘導する手順もなく、閉園間際で人員が少ない時間帯に作業を行った。

改善案二重扉の同時開放を物理的に防ぐインターロックを付け、扉ごとに「片方を閉めてから」の表示を貼る。清掃は個体を別区画に移してから行い、新人は先輩と2人で作業する。園内逸走時の来場者誘導と捕獲手順を訓練し、捕獲用ケージと餌を各飼育場に配置する。

Q31ビニール袋をのみ込んだらしい中毒・誤飲

5月の朝、動物園の飼育場に風で飛んできたレジ袋の切れ端が散らばっており、4歳のオスの糞の1つにビニールの破片が混ざっていた。個体は食欲があり普段通り掘っているが、担当者は袋の残りが見当たらず、まだ腹の中にある可能性があると考えている。担当者は塩水を飲ませて吐かせようと考えた。

最も適切な対応はどれか

  1. 飼育場のごみを除去し、食欲と糞の数を毎日記録して減少があれば即受診し、獣医師にも状況を報告する
  2. 塩水や過酸化水素水を飲ませて吐き出させる
  3. 糞に出たので全部排出されたと考え、特に何もしない
  4. 腸を動かすため果物とパンを多めに与えて様子を見る

正解A.飼育場のごみを除去し、食欲と糞の数を毎日記録して減少があれば即受診し、獣医師にも状況を報告する

解説ウォンバットはビニールやロープなどを飲み込みやすく、マニュアルでは食欲低下や糞の減少があれば即受診とされる。現時点で症状がなくても、残りの袋が腸に残っている可能性があるため、飼育場のごみを除去し、食欲と糞の数・形を毎日記録して減少や腹部膨満が出たら即受診する。獣医師にも状況を報告して必要なら画像検査を相談する。ウォンバットは嘔吐しにくく、塩水や過酸化水素水を飲ませると塩中毒や食道の損傷を起こすだけで危険である。破片が糞に出ても残りが排出された証拠にはならない。果物やパンは高糖質で消化管停滞を招き、異物による閉塞をむしろ悪化させる。

課題飼育場のごみを毎日除去する手順が守られておらず、風で飛来するごみへの対策もなかった。誤飲時に吐かせるという他動物の対処法を安易に当てはめようとした。

改善案毎朝の点検で飼育場内のごみと柵の破片を除去し、風上側に防風ネットを設置する。誤飲を疑ったら記録表に食欲・糞の数・腹部の状態を毎日書き、糞が24時間出なければ即受診する。吐かせる処置は行わず獣医師に相談することを掲示する。

Q32来園者がタマネギ入り弁当を投入中毒・誤飲

8月の昼、動物園で来園者が柵越しに弁当の残りを投げ入れ、5歳のメスがタマネギの炒め物と白飯を食べてしまったと通報があった。担当者が確認すると個体は巣穴に戻っており、今のところ症状はない。しかしタマネギは草食動物にも赤血球を壊す毒性があると担当者は記憶している。

最も適切な対応はどれか

  1. 少量なので問題なく、通常の観察を続ける
  2. 牛乳を飲ませて毒を薄める
  3. 指で喉を刺激して吐かせる
  4. 食べた量と時刻を記録して獣医師に今すぐ連絡し、数日間は歯ぐきの色や尿の色、元気を観察する

正解D.食べた量と時刻を記録して獣医師に今すぐ連絡し、数日間は歯ぐきの色や尿の色、元気を観察する

解説タマネギ類はマニュアルの与えてはいけない食品に挙げられ、含まれる成分が赤血球を壊して数日後に貧血や血色素尿を起こす。症状が遅れて出るため、食べた量と時刻を記録してすぐ獣医師に連絡し、指示を受ける。数日間は歯ぐきが白くないか、尿が赤や茶色でないか、元気や食欲に変化がないかを観察し、異常があれば即受診する。少量でも体重に対する比率で毒性が出ることがあり、白飯という高糖質食品も消化管停滞の原因になる。牛乳は乳糖を消化できず下痢を招き、毒を薄める効果はない。ウォンバットは嘔吐が難しく、喉を刺激する行為は咬傷事故を招く。

課題来園者が食べ物を投げ入れられる柵の構造で、投入防止の対策と注意表示が不十分だった。中毒性のある食品の一覧と、遅発性の症状を観察する手順が担当者間で共有されていなかった。

改善案柵の外側に投げ入れ防止の二重柵や透明パネルを設置し、餌やり禁止の表示と監視を強化する。与えてはいけない食品(タマネギ類・アボカド・パン・穀物・菓子)の一覧を飼育場に掲示する。誤食が判明したら記録して獣医師に連絡し、数日間の観察項目を記録表に加える。

Q33除草剤散布後の草を食べた中毒・誤飲

6月の朝、保護施設の隣接地で前日に除草剤が散布されていたことが判明した。夜のうちに9歳のオスが柵際の草を食べたらしく、柵沿いの草がかじられている。朝の点検で個体はよだれを垂らし、ふらつきながら歩き、時折体を震わせている。糞は普段通り出ている。

最も適切な対応はどれか

  1. 水をたくさん飲ませて毒を薄め、様子を見る
  2. 散布された薬剤名を確認し、症状を伝えて獣医師に今すぐ連絡し、柵際の草を除去して搬送準備をする
  3. 活性炭を大量に飲ませて自分で解毒する
  4. 農薬は草食動物には効かないので通常通り給餌する

正解B.散布された薬剤名を確認し、症状を伝えて獣医師に今すぐ連絡し、柵際の草を除去して搬送準備をする

解説農薬がかかった草はマニュアルで禁止された餌であり、よだれ・ふらつき・震えは神経系に作用する中毒症状として緊急性が高い。薬剤名と散布量を隣接地に確認し、症状と経過を伝えて獣医師に今すぐ連絡する。解毒剤や処置は薬剤によって異なるため、獣医師の指示が不可欠である。同時に柵際の草を除去して再摂取を防ぎ、暗くしたケージで搬送準備を進める。水を飲ませるだけでは中毒は改善せず、ふらつく個体に無理に飲ませると誤嚥する。活性炭は薬剤によっては無効で、投与量や方法を誤れば誤嚥性肺炎を招く。除草剤は動物にも毒性があり、放置は致命的である。

課題隣接地の除草剤散布の情報を事前に把握しておらず、柵際の草が汚染される可能性への対策がなかった。柵の外側から草を食べられる構造で、薬剤の飛散を防ぐ緩衝帯が設けられていなかった。

改善案隣接地の管理者と連絡を取り、農薬散布の予定を事前に通知してもらう。柵の内側に幅数mの緩衝帯を設けて柵際の草を定期的に刈り、散布後は柵際の草を除去する。中毒を疑う際は薬剤名の確認と獣医師連絡を最優先とする手順を掲示する。

Q34柵の塗装片をかじって食べた中毒・誤飲

11月の夜、動物園の古い鉄柵の塗装がはがれ、7歳のメスが柵をかじって塗装片を飲み込んでいるのを担当者が見た。塗装は数十年前のもので鉛が含まれている可能性がある。個体は今は元気に見えるが、ここ数週間食欲にムラがあり、糞が小さくなっていた。担当者は「金属は消化されないから大丈夫」と考えている。

最も適切な対応はどれか

  1. 塗装片は消化されず糞に出るので放置する
  2. 牛乳と卵を与えて胃の粘膜を保護する
  3. 個体を柵から遠ざけて塗装片を拾い、様子を見て症状が出たら受診する
  4. 柵をかじれないよう区画を変え、塗装の成分を確認して獣医師に相談し血液検査を受ける

正解D.柵をかじれないよう区画を変え、塗装の成分を確認して獣医師に相談し血液検査を受ける

解説古い塗装には鉛が含まれることがあり、慢性的にかじると鉛中毒で食欲ムラ、消化管の運動低下、貧血、神経症状が出る。すでに食欲ムラと糞の縮小があるため、まず柵をかじれないよう区画を変えるか柵を覆い、塗装の成分を施設の記録や検査で確認して獣医師に相談し、血液検査で鉛濃度を測る。塗装片が消化されなくても鉛は胃酸で溶けて吸収されるため放置は危険である。牛乳や卵は草食動物に不適切で消化管停滞を招き、鉛の吸収を防ぐ効果もない。症状が出てから受診するのでは、すでに出ている食欲ムラと糞の変化を見逃したまま中毒が進む。

課題古い鉄柵の塗装の劣化と成分を点検しておらず、かじる習性への対策もなかった。数週間続いた食欲ムラと糞の縮小を異常として記録・報告していなかった。

改善案柵や構造物の塗装は成分を確認し、鉛を含む可能性があれば剥離して無鉛塗料に塗り替える。柵をかじる行動を観察したら、丸太や木の根など安全なかじり対象を増やす。食欲ムラや糞の変化が1週間続いたら獣医師に報告する基準を設ける。

Q35果物を大量にもらい翌朝下痢中毒・誤飲

9月の朝、保護施設の3歳のオス。前日にイベントで来園者が持参したリンゴとブドウを担当者がサービスとして大量に与えた。今朝は水様便が広がり、個体は巣箱の前でぐったりして水を飲もうとしない。口の周りが乾き、皮膚をつまむと戻りが遅い。担当者は下痢止めに人用の薬を与えようと考えた。

最も適切な対応はどれか

  1. 果物を止めて牧草と水だけにし、脱水の兆候があるので当日中に獣医師の診察を受ける
  2. 人用の下痢止めを体重換算で与え、様子を見る
  3. 水分補給のためスポーツドリンクを大量に飲ませる
  4. 下痢は自然に治るので、餌を全て止めて1日絶食させる

正解A.果物を止めて牧草と水だけにし、脱水の兆候があるので当日中に獣医師の診察を受ける

解説果物の与えすぎはマニュアルで肥満と下痢の原因として禁止されており、大量の糖質は腸内細菌のバランスを崩して水様便を起こす。皮膚のつまみ戻りが遅く水を飲まない状態は脱水のサインで、当日中の受診が必要である。果物を止めて牧草と新鮮な水だけにし、獣医師に餌の内容と便の状態を伝える。人用の下痢止めは腸の動きを止めて毒素を滞留させ、草食動物には特に危険である。スポーツドリンクは糖質が多く下痢を悪化させる。絶食は草食動物の腸の動きを止めて消化管停滞を招く。

課題来園者サービスを優先して給餌基準を逸脱し、果物を大量に与えた。果物は週数回少量までという飼養条件が担当者に共有されておらず、イベント時の給餌ルールもなかった。

改善案給餌計画を文書化し、果物と根菜は歯の摩耗用に週数回少量と定める。イベントでの来園者からの持ち込み餌は受け取らず、与える場合も計画内の量にする。下痢が出たら果物を止め、脱水の兆候(皮膚の戻り・口の乾き・飲水拒否)があれば当日受診とする。

Q36猛暑日に冷房室の電源が落ちた環境・災害

8月の午後1時、気温37℃。動物園の冷房付き避難室の空調が故障し、室温が32℃まで上がっている。10歳のメスは避難室の隅で口を開けて速い呼吸をし、外の巣穴は前日の雨で浸水して使えない。修理業者の到着は夕方になる見込みで、担当者は個体をそのまま室内に置いておくべきか迷っている。

最も適切な対応はどれか

  1. 扇風機を回すだけで夕方の修理を待つ
  2. 氷を大量に体の周りに積んで冷やす
  3. 外の日なたに出して風に当てる
  4. 布で包んだ保冷剤や濡れタオルで体を冷やし風を当て、別の涼しい部屋か遮光した場所へ移して獣医師に連絡する

正解D.布で包んだ保冷剤や濡れタオルで体を冷やし風を当て、別の涼しい部屋か遮光した場所へ移して獣医師に連絡する

解説気温28℃以上ではウォンバットは巣穴か冷房室にいるべきであり、室温32℃で開口呼吸が出ている状態は熱中症の初期である。布で包んだ保冷剤や濡れタオルで体を冷やし風を当てながら、別の涼しい部屋か遮光して風通しの良い場所へ移し、30分以内に獣医師へ連絡する。扇風機だけでは32℃の室温では冷却が不十分で、夕方まで待つと重症化する。氷を直接積むと体表の血管が収縮して深部体温が下がらず、低温火傷も起こす。外の日なたは室内よりさらに高温で、状態を急激に悪化させる。

課題冷房室が単一の空調に依存し、故障時の代替冷却手段や予備の避難場所が用意されていなかった。巣穴の浸水で第二の逃げ場も失われ、暑さ対策の冗長性が欠けていた。

改善案冷房室には予備の空調や非常用電源を備え、故障時に使える別の涼しい部屋を確保する。保冷剤・濡れタオル・扇風機を夏季は常備し、室温が26℃を超えたら警報が出る温度計を設置する。巣穴の排水を改善し、雨天後も使える状態を維持する。

Q37冬の停電で夜間に氷点下環境・災害

1月の夜11時、大雪による停電が発生し、保護施設の屋内飼育室の暖房が止まった。外気温は氷点下5℃、室温は下がり続けている。14歳の高齢オスは薄い乾草の上でじっとして震えている。復旧の見込みは翌朝以降で、担当者は手持ちのカイロで個体を直接温めるか、乾草を追加するか迷っている。

最も適切な対応はどれか

  1. 使い捨てカイロを腹に直接貼り付けて温める
  2. 室内でカセットコンロを燃やして室温を上げる
  3. 断熱した巣箱に乾草を厚く敷き詰め、毛布で覆って冷気を遮り、体温低下の兆候があれば獣医師に連絡する
  4. 寒さに強い動物なので何もせず朝まで待つ

正解C.断熱した巣箱に乾草を厚く敷き詰め、毛布で覆って冷気を遮り、体温低下の兆候があれば獣医師に連絡する

解説ウォンバットは0℃以下では屋内へ入れ、冬は巣箱に乾草を厚く敷くのが基本の保温方法である。停電時は断熱した巣箱に乾草を厚く敷き詰め、毛布で覆って冷気を遮り、体温を自ら保てる環境を作る。高齢個体が震えを止めてぐったりする、反応が鈍くなるなど体温低下の兆候があれば獣医師に連絡する。カイロを直接貼ると低温火傷を起こし、剥がして飲み込む危険もある。密閉した室内でカセットコンロを燃やすと一酸化炭素中毒で人も個体も命を落とす。氷点下で薄い乾草のまま放置すれば高齢個体は低体温症に陥る。

課題冬季の停電を想定した保温計画がなく、非常用電源や十分な乾草の備蓄が不足していた。高齢個体が寒さに弱いことを踏まえた冬の寝床の厚さが確保されていなかった。

改善案冬季は乾草を多めに備蓄し、巣箱の断熱を強化して停電時も20℃前後を保てる構造にする。非常用電源や電気を使わない保温手段(毛布・断熱材)を準備する。高齢個体は冬の体温低下のサインを記録表に載せ、停電時の連絡手順を決めておく。

Q38台風接近で飼育場が冠水し始めた環境・災害

9月の夕方、大型台風の接近で動物園の飼育場に雨水が流れ込み、6歳のメスが掘った地下巣穴の入口に水が迫っている。個体は巣穴の奥にいるらしく姿が見えない。風雨は強まる一方で、担当者は巣穴に入って個体を引き出すか、水位が上がる前に別の対策を取るか判断を迫られている。

最も適切な対応はどれか

  1. 巣穴に腕を入れて個体を引きずり出す
  2. 水が入っても巣穴の奥は安全なので何もしない
  3. 巣穴の入口を土のうで塞いで水を止め、個体はそのまま閉じ込める
  4. 好物の餌で巣穴から誘い出し、高台の屋内飼育室か暗いケージへ避難させる

正解D.好物の餌で巣穴から誘い出し、高台の屋内飼育室か暗いケージへ避難させる

解説地下巣穴は冠水すると出口を失い、溺死や崩落の危険が高まる。強風雨の中でも、好物の餌で巣穴から誘い出し、高台の屋内飼育室か暗くしたケージへ避難させるのが正しい。ウォンバットは驚くと突進するため、静かに誘導し、収容後は保温と休息を確保する。巣穴に腕を入れると咬まれる危険が高く、奥にいる個体を引き出すことは物理的にも困難である。巣穴の奥は冠水すれば逃げ場がなく、水を含んだ土は崩落しやすい。入口を土のうで塞ぐと排水も換気もできず、内部で溺れる。

課題台風接近時の避難計画がなく、飼育場の排水路と地下巣穴への浸水対策が不十分だった。個体を早めに屋内へ移す判断基準が決まっておらず、対応が風雨の強まる直前になった。

改善案気象警報が出た段階で個体を屋内飼育室に避難させる基準を設け、餌で誘導する訓練を平時から行う。飼育場に排水路と土手を設けて巣穴への浸水を防ぎ、避難用ケージと餌、保温用品を常備する。災害時の担当者の役割分担と連絡先を掲示する。

Q39巣箱内が結露で常に湿っている環境・災害

3月の朝、保護施設の人工巣箱を点検すると、内壁に水滴がびっしり付き、床の乾草が湿って黒ずんでいる。温湿度計は湿度90%を示していた。中にいる5歳のオスは背中の毛が湿り、皮膚に赤みがある。担当者は暖房を強めて乾かそうと考えたが、換気口は結露防止のため閉じてある。

最も適切な対応はどれか

  1. 換気口を開けて空気を入れ替え、湿った乾草を全交換し、湿度を50〜70%に保てるよう構造を見直す
  2. 暖房を強めて巣箱を密閉したまま乾燥させる
  3. 湿った乾草の上に新しい乾草を重ねて様子を見る
  4. 皮膚の赤みには人用の抗真菌薬を塗って湿度はそのままにする

正解A.換気口を開けて空気を入れ替え、湿った乾草を全交換し、湿度を50〜70%に保てるよう構造を見直す

解説マニュアルでは巣内の湿度は50〜70%で、結露や過湿は避けるべきとされる。湿度90%で乾草が黒ずんでいる状態はカビと細菌の温床で、皮膚の赤みは皮膚炎や皮膚糸状菌症の始まりである可能性がある。換気口を開けて空気を入れ替え、湿った乾草を全交換し、断熱と換気を両立する構造に見直す。皮膚の赤みが広がるなら数日以内に受診する。密閉したまま暖房を強めると温度差で結露がさらに増える。湿った乾草の上に重ねてもカビは残り、皮膚への影響が続く。人用の抗真菌薬は安全性が不明で、環境を直さなければ再発する。

課題結露対策として換気口を閉じたことで湿気がこもり、逆効果になっていた。温湿度計の数値を日常的に確認しておらず、乾草の週1回全交換も湿り気に応じて前倒しされていなかった。

改善案巣箱は断熱材で内外の温度差を減らし、換気口は常時少し開けて湿気を逃がす。温湿度を毎日記録し、湿度70%超が続けば乾草交換と換気を追加する。皮膚の赤みや脱毛は週1回の皮膚チェック項目とし、変化があれば獣医師に報告する。

Q40避難先の仮設施設に移送する環境・災害

7月の昼、火山活動の警戒レベル上昇で動物園に避難指示が出た。11歳のメスを気温33℃の中、車で2時間離れた提携施設へ移送する必要がある。用意できたのは大型犬用ケージ1台で、担当者は個体を捕まえて日なたのトラックの荷台に載せようとしている。移送後の受け入れ先には土の飼育場がなく、コンクリート床の獣舎のみである。

移送時の対応として最も適切なものはどれか

  1. 荷台に固定せずケージを載せ、早く着くよう高速で走る
  2. ケージを開けたまま車内に置き、自由に動けるようにする
  3. ケージの床に厚い乾草を敷き、布で包んだ保冷剤を添えて暗く覆い、空調の効いた車内に固定して移送し、到着後は土や乾草を敷いた区画を用意する
  4. 麻酔で眠らせて段ボール箱で運ぶ

正解C.ケージの床に厚い乾草を敷き、布で包んだ保冷剤を添えて暗く覆い、空調の効いた車内に固定して移送し、到着後は土や乾草を敷いた区画を用意する

解説マニュアルの搬送方法は、大型犬用ケージか頑丈な木箱に暗くして収容し、夏は布で包んだ保冷剤を添えることである。気温33℃での2時間移送は熱中症の危険が高いため、空調の効いた車内にケージを固定し、床に乾草を敷いて足元を安定させ、暗く覆ってストレスを減らす。到着後はコンクリート床では爪や指を傷めるため、土や厚い乾草を敷いた区画を用意する。荷台に固定しない高速走行はケージが動いて負傷し、日なたの荷台は熱中症を招く。ケージを開ければ車内で暴れて危険で、麻酔は獣医師の管理下でのみ行い、段ボールは強い力で破られる。

課題災害時の移送計画がなく、夏季の高温下で移送する手段と受け入れ先の飼育環境が事前に調整されていなかった。ケージの固定や保冷の準備が当日になって不足していた。

改善案災害時の移送先を事前に協定で決め、受け入れ先に土の地面か厚い乾草の区画を準備してもらう。移送用の大型ケージ、保冷剤、遮光布、固定ベルトを1セット常備する。年1回、餌でケージに誘導する訓練を行い、獣医師同行の移送手順を文書化する。

Q41疥癬の個体を素手で触った後感染症・衛生

2月の午後、保護施設で疥癬と診断された4歳のオスの治療を手伝った担当者が、手袋を外した後に素手で個体の背中を撫でてしまった。その日の夜、担当者の手首と腕にかゆみを伴う赤い発疹が出た。担当者は翌朝もそのまま健康な別の個体の給餌を担当する予定である。

最も適切な対応はどれか

  1. 発疹は一時的なので市販のかゆみ止めを塗り、予定通り別の個体の世話をする
  2. 疥癬個体との接触を続けて慣れさせれば発疹は消える
  3. 動物の病気は人に移らないので気にせず作業する
  4. 皮膚科を受診して疥癬への接触を伝え、他個体の世話を交代し、衣類を洗濯して寝床を消毒する

正解D.皮膚科を受診して疥癬への接触を伝え、他個体の世話を交代し、衣類を洗濯して寝床を消毒する

解説ウォンバットの疥癬は人にも感染する人獣共通感染症であり、素手で触った後の発疹は感染の可能性が高い。皮膚科を受診して疥癬個体との接触を伝えて治療を受け、他個体への感染を防ぐため世話を交代し、衣類を洗濯して寝床や作業道具を消毒する。マニュアルでも皮膚異常のある個体は手袋で扱い、作業後の手洗いと衣類交換が求められる。かゆみ止めだけでは治らず、他個体に持ち込む危険がある。接触を続けて慣れることはなく、感染が悪化する。動物の病気が人に移らないという認識は誤りである。

課題疥癬個体の扱いで手袋を外した後に素手で触れるという基本的な防護の違反があった。人獣共通感染症としての疥癬の認識が不十分で、感染時に他個体の世話を交代する手順もなかった。

改善案疥癬個体の作業は専用の手袋と衣類で行い、作業後に手洗いと衣類交換を義務化する。担当者に皮膚症状が出たら即受診し、治療完了まで他個体の世話から外れる規則を作る。健康な個体から順に作業し、感染個体は最後にするなど動線を分ける。

Q42水場の水が濁りネズミの糞がある感染症・衛生

10月の朝、動物園の飼育場の水場に濁った水がたまり、周囲にネズミの糞と足跡があった。担当者は素手で容器を洗おうとしたが、先週から6歳のメスが元気がなく、尿の色が濃くなったことを思い出した。担当者は長靴を履いていない。

最も適切な対応はどれか

  1. 水を捨てて新しい水を入れるだけで済ませる
  2. 長靴と手袋を着けて水場を洗浄し、ネズミの侵入経路を塞ぎ、個体の元気消失と尿の変化を獣医師に伝えて受診する
  3. 水場を撤去し、個体は餌の水分だけで過ごさせる
  4. ネズミの糞は人には無害なので通常通り作業する

正解B.長靴と手袋を着けて水場を洗浄し、ネズミの侵入経路を塞ぎ、個体の元気消失と尿の変化を獣医師に伝えて受診する

解説ネズミの尿に汚染された水や土はレプトスピラ症の感染源で、ウォンバットにも人にも感染する。マニュアルでは長靴と手袋の着用、水場の水の毎日交換、ネズミの侵入防止が求められる。元気消失と尿の色の変化は腎臓や肝臓の障害を示唆し、感染を疑って獣医師に伝え、当日中に受診する。水を替えるだけでは容器や周囲の汚染が残り、ネズミの侵入も続く。水場の撤去は脱水を招き、常時新鮮な水を用意するという飼養条件に反する。ネズミの糞や尿は人にも危険で、素手や素足での作業は担当者自身の感染リスクである。

課題水場の水を毎日交換する運用が守られておらず、ネズミの侵入痕跡を見逃していた。個体の元気消失と尿の変化を1週間放置し、衛生管理と健康観察が結びついていなかった。

改善案水場は毎日洗浄して水を交換し、夏は1日2回とする。餌の保管を密閉容器にし、ネズミの侵入経路を塞いで定期的に痕跡を点検する。飼育場作業は長靴と手袋を必須とし、個体の元気や尿の変化は記録して2日続けば獣医師に報告する。

Q43新入り個体を即日同居させたい感染症・衛生

5月、保護施設に野生で保護された推定2歳のメスが到着した。外見上は元気だが、耳の縁に小さなかさぶたがあり、皮膚の一部に脱毛が見える。施設長は展示を急ぎ、既存の8歳のオスと同じ飼育場に今日から入れたいと言う。担当者は健康診断がまだ済んでいないことを気にしている。

担当者の判断として最も適切なものはどれか

  1. 同居させず別区画で隔離して検疫し、皮膚病変を獣医師に診てもらってから導入を判断する
  2. 施設長の指示通り同居させ、争わなければ問題ない
  3. かさぶたを消毒してから同居させれば感染は防げる
  4. 1日だけ隔離して異常がなければ翌日同居させる

正解A.同居させず別区画で隔離して検疫し、皮膚病変を獣医師に診てもらってから導入を判断する

解説野生由来の個体は疥癬、寄生虫、皮膚糸状菌症などを持ち込む可能性が高く、耳のかさぶたと脱毛はまさに疥癬や皮膚糸状菌症を疑う所見である。同居させず別区画で隔離して検疫を行い、獣医師の診察と糞便検査、皮膚検査を経てから導入を判断する。ウォンバットはそもそも単独性で、同居自体が咬傷の原因になる。争いがなくても寝床の共有で疥癬は移る。表面の消毒ではヒゼンダニは除去できない。潜伏期間を考えると1日の隔離は無意味で、検疫は数週間を要する。

課題展示を優先する組織の圧力で、検疫という基本手順が省略されそうになった。野生個体の受け入れ時の検疫期間と検査項目、皮膚病変のある個体の扱いが施設の規則として定められていなかった。

改善案新規個体は数週間の検疫期間を設け、獣医師の診察・糞便検査・皮膚検査を必須とする規則を作る。検疫用の独立した区画と専用道具を確保し、作業は健康な個体の後に行う。単独飼育を原則とし、同居させる場合の条件と手順を文書化する。

Q44輪状の脱毛と担当者の腕の発疹感染症・衛生

7月の朝、動物園の5歳のオスの背中に直径3cmほどの輪状の脱毛が2か所見つかった。皮膚は少し赤くフケが出ている。同じ頃、この個体を担当する飼育員の前腕にも輪状の赤い発疹が出ていた。飼育員はこの個体の世話の後、続けて隣のウォンバットの寝床を交換している。

最も適切な対応はどれか

  1. 脱毛は季節の換毛なので気にせず作業を続ける
  2. 個体に人用の水虫薬を塗り、飼育員も同じ薬を使う
  3. 個体は汗をかかないので皮膚病はなく、飼育員の発疹は無関係と考える
  4. 個体を隔離して獣医師に数日以内に診せ、飼育員は皮膚科を受診し、接触後の手洗いと道具の分離を徹底する

正解D.個体を隔離して獣医師に数日以内に診せ、飼育員は皮膚科を受診し、接触後の手洗いと道具の分離を徹底する

解説輪状の脱毛、赤み、フケは皮膚糸状菌症の典型像で、マニュアルでは人獣共通感染症として隔離と接触後の手洗いが求められる。飼育員の腕の輪状発疹は同じ真菌に感染した可能性が高い。個体を隔離し、獣医師に数日以内に診せて診断と治療を受ける。飼育員は皮膚科を受診し、他個体への持ち込みを防ぐため道具を分離し、接触後の手洗いを徹底する。輪状の限局した脱毛は換毛では説明できない。人用の水虫薬は動物への安全性が不明で、舐めて中毒を起こす可能性がある。汗の有無と真菌感染は無関係で、飼育員の発疹を無視するのは感染拡大を招く。

課題皮膚の輪状病変を換毛と混同しやすく、週1回の皮膚チェックで早期に拾えていなかった。感染が疑われる個体の世話の後に他個体の寝床交換を行い、道具の分離と作業順の管理ができていなかった。

改善案週1回の皮膚チェックで輪状の脱毛や赤みを記録し、見つけたら即隔離する。個体ごとに道具を分け、作業は健康な個体から感染疑い個体の順に行う。担当者に皮膚症状が出たら報告して受診する制度を作り、寝床と巣箱は真菌に効く方法で消毒する。

Q45呼びかけに反応せず呼吸が止まった救命救急

6月の夜、動物園の9歳のオスが巣穴から出たところで突然倒れた。担当者が駆け寄って名前を呼び体を軽く叩いても反応がなく、胸の上下が見えない。後肢の内側に手を当てても脈を感じない。園の獣医師には電話でつながり、到着まで15分かかると言われた。担当者は獣医師の指示を受けながら処置を始める。

獣医師の到着まで担当者が行う処置として最も適切なものはどれか

  1. 仰向けに寝かせて腹を強く押し、胃の内容物を出す
  2. 何もせず毛布をかけて獣医師の到着を待つ
  3. 横向きに寝かせ、胸の最も高い部分を両手で1分100〜120回、胸の厚みの3分の1の深さで押し、30回ごとに鼻から2回息を吹き込む
  4. 頬を強く叩いて意識を戻し、水を飲ませる

正解C.横向きに寝かせ、胸の最も高い部分を両手で1分100〜120回、胸の厚みの3分の1の深さで押し、30回ごとに鼻から2回息を吹き込む

解説反応・呼吸・脈のいずれもない場合は心停止であり、マニュアルの心肺蘇生手順に従う。横向きに寝かせ、胸の最も高い部分に両手を重ねて1分100〜120回のテンポで胸の厚みの3分の1を圧迫し、30回押して鼻から2回息を吹き込む。獣医師の到着まで続け、数分続けても戻らなければ獣医師の指示に従う。仰向けで腹を押すのは心肺蘇生ではなく、内臓損傷と誤嚥を招く。何もせず待てば脳への血流が止まり、15分後には回復不能となる。意識のない個体に水を飲ませると誤嚥し、頬を叩いても心拍は戻らない。

課題心肺蘇生の手順を知っていても実技訓練がなく、胸を押す位置や強さ、テンポを現場で迷った可能性がある。倒れる前の予兆(活動低下・食欲・体重変化)の記録が乏しく、原因の推定が困難だった。

改善案反応・呼吸・脈の確認と心肺蘇生を年1回以上実技で訓練し、大型犬用の模型で圧迫の深さとテンポを体感する。夜間も獣医師と即座に連絡できる体制を維持する。日々の活動量・食欲・体重の記録で急変の予兆を拾い、高齢個体は定期健診を受ける。

Q46耳の裂傷から出血が止まらない救命救急

8月の夜、保護施設の4歳のメスが柵の突起に耳を引っかけて裂き、耳の縁から血が滴り続けている。個体は頭を振るたびに血を飛ばし、壁や地面に血の跡が広がる。担当者は止血しようとガーゼを当てたが、頭を振られて2分ほどで諦めた。出血は10分以上続いている。

最も適切な対応はどれか

  1. 血が飛ぶので個体を巣箱に閉じ込め、自然に止まるのを待つ
  2. 傷口に止血用の粉や小麦粉を振りかけて固める
  3. 耳を輪ゴムで根元から縛って血流を止める
  4. 顔を布で覆って落ち着かせ、清潔なガーゼで5分以上圧迫し、包帯で耳を頭に固定して止まらなければ圧迫したまま搬送する

正解D.顔を布で覆って落ち着かせ、清潔なガーゼで5分以上圧迫し、包帯で耳を頭に固定して止まらなければ圧迫したまま搬送する

解説耳の出血はマニュアル通り、清潔なガーゼで5分以上圧迫し、圧迫しながら包帯で耳を頭に固定するのが基本である。頭を振る個体には厚手の布で顔を覆って視界を遮り落ち着かせ、2人で保定して圧迫を続ける。5分以上圧迫しても止まらない場合は圧迫を続けたまま搬送し、10分以上続く出血は今すぐ受診の基準に当たる。巣箱に閉じ込めても頭を振るたびに出血が続き、失血が進む。小麦粉や粉末は傷を汚染して感染を招き、獣医師の処置の妨げになる。輪ゴムで根元を縛ると耳の組織が壊死する。

課題柵に耳を引っかける突起があり、点検で除去されていなかった。止血の基本である5分以上の持続圧迫が守られず、2分で諦めるなど処置の手順が身についていなかった。

改善案柵や構造物の突起を定期点検で除去し、緩衝材を付ける。清潔なガーゼ、包帯、厚手のタオルを飼育場に常備し、2人で保定して5分以上圧迫する練習を行う。出血が止まらない場合の搬送基準と獣医師の連絡先を掲示する。

Q47夜間に立てず呼吸が速い救命救急

10月の夜11時、動物園の夜間巡回で12歳のメスが巣穴の前でぐったりと横たわり、立ち上がろうとして崩れるのを発見した。口を開けて速い呼吸をし、呼びかけには弱く反応する。園の獣医師は不在で、巡回者は翌朝の出勤まで待つべきか、夜間に外部病院へ運ぶべきか迷っている。

最も適切な判断はどれか

  1. 口を開けて呼吸しぐったりして立てないのは今すぐ連絡の基準であり、獣医師に電話して指示を受け夜間でも搬送する
  2. 夜は病院が開いていないので朝まで巣穴に戻して待つ
  3. 水と餌を置いて自力で回復するか見守り、朝に報告する
  4. 動画を撮って翌朝の担当者に送り、判断を任せる

正解A.口を開けて呼吸しぐったりして立てないのは今すぐ連絡の基準であり、獣医師に電話して指示を受け夜間でも搬送する

解説マニュアルの救急トリアージでは、口を開けた呼吸とぐったりして立てない状態は「今すぐ連絡」に分類される。原因は熱中症、内出血、心臓や肺の疾患、重度の消化管停滞など複数考えられ、朝まで待てば命に関わる。園の獣医師に電話して指示を受け、野生動物対応可能な夜間病院へ搬送する。搬送時は大型犬用ケージに暗く収容し、体重・糞の状態・餌の内容・活動時間の変化を伝える。朝まで巣穴に戻すのは状態の急変を見逃す。餌と水を置いて見守るのは意識が低下している個体には無意味である。動画を送って判断を委ねるのは時間の浪費で、巡回者自身が緊急基準に基づき行動すべきである。

課題夜間巡回者が緊急時の判断基準と連絡先を把握しておらず、獣医師不在時の代替搬送先が決まっていなかった。夜間に外部病院へ搬送する権限や手順が現場に与えられていなかった。

改善案今すぐ連絡の基準一覧を巡回者に配布し、獣医師の携帯番号と野生動物対応の夜間病院を掲示する。夜間搬送の判断を巡回者に委ねる権限規定を作り、搬送用ケージと車両を夜間も使える状態にする。高齢個体は夜間巡回の重点観察対象とする。

Q48搬送中に暴れて呼吸が荒くなった救命救急

7月の昼、動物園の6歳のオスを爪の外傷で動物病院へ運ぶ途中、担当者はワイヤーケージに個体を入れて車の後部座席に置いた。夏の日差しが窓から差し込み、個体はケージの中で暴れて金網に体をぶつけ、口を開けて速い呼吸をし始めた。病院まではあと40分かかる。

最も適切な対応はどれか

  1. 暴れるのは元気な証拠なのでそのまま急いで走る
  2. 路肩に停めてケージを遮光布で覆い、冷房を強めて布で包んだ保冷剤を添え、落ち着かせてから獣医師に到着時刻と状態を連絡する
  3. ケージを開けて車内で自由にさせて落ち着かせる
  4. 窓を全開にして風を入れ、そのまま高速道路を走る

正解B.路肩に停めてケージを遮光布で覆い、冷房を強めて布で包んだ保冷剤を添え、落ち着かせてから獣医師に到着時刻と状態を連絡する

解説搬送はマニュアル通り、暗くしたケージに収容し、夏は布で包んだ保冷剤を添えるのが基本である。日差しを浴びて暴れ、開口呼吸をしているのは熱中症とストレスによる悪化の兆候で、40分放置すれば危険である。安全な場所に停めてケージを遮光布で覆い、冷房を強めて保冷剤を添え、落ち着かせてから獣医師に状態と到着時刻を連絡する。暴れる状態を元気と誤解して走り続けると熱中症が進み、金網で爪や鼻を傷める。ケージを開けると車内で暴れて運転が危険になり、逸走や事故につながる。窓を開けても夏の外気では冷えず、騒音が刺激になる。

課題搬送前にケージの遮光と冷却の準備をせず、ワイヤーケージをそのまま日差しの当たる座席に置いた。搬送中の観察項目と悪化時の対応が事前に考えられていなかった。

改善案搬送用ケージには遮光布と乾草を用意し、夏は保冷剤、冬は毛布を必ず添える。ケージは直射日光の当たらない場所に固定し、車内温度を出発前に調整する。搬送中は呼吸と行動を観察し、悪化したら停車して冷却と連絡を行う手順を決めておく。

Q49咬まれた担当者の手が変形している救命救急

3月の夜、保護施設で7歳のオスに右手を咬まれた担当者が、なんとか口から手を離した。手の甲が大きく裂けて出血が続き、中指が不自然な方向に曲がっている。担当者は「動物の傷はよくあること」と言い、水道で洗って絆創膏を貼り、作業を続けようとしている。同僚が止めるべきか迷っている。

同僚が取るべき最も適切な行動はどれか

  1. 本人の意思を尊重し、作業を続けさせる
  2. 消毒液を傷に流し込み、包帯を巻いて明日病院へ行かせる
  3. 痛み止めを飲ませて休憩させ、腫れが引かなければ受診させる
  4. 傷を流水で洗い清潔なガーゼで圧迫止血して、骨折の疑いがあるため今すぐ医療機関へ連れて行く

正解D.傷を流水で洗い清潔なガーゼで圧迫止血して、骨折の疑いがあるため今すぐ医療機関へ連れて行く

解説ウォンバットの咬合力は非常に強く、マニュアルでも骨折の恐れがあるため必ず医療機関を受診するとされる。指が不自然な方向に曲がっているのは骨折や脱臼の所見で、大きな裂傷は感染しやすい。傷を流水で洗い、清潔なガーゼで圧迫止血し、患部を心臓より高く保ちながら今すぐ医療機関へ連れて行く。本人の意思を尊重して作業を続けさせると、骨折の悪化と感染で手の機能を失う可能性がある。消毒液を傷に流し込むと組織を傷め、翌日まで待つと感染が広がる。痛み止めで症状を隠して休ませるのは骨折の診断を遅らせる。

課題動物による咬傷を軽視する現場の文化があり、必ず医療機関を受診する規則が徹底されていなかった。咬傷解除の手順と咬まれた後の対応が担当者に周知されておらず、同僚も止める基準を持っていなかった。

改善案咬傷は骨折と感染の危険が高いため、深さや本人の意思に関わらず必ず医療機関を受診する規則を作る。止血用品を飼育場に常備し、咬傷解除と応急処置の実技研修を行う。労災として記録し、咬まれた状況を分析して再発防止策を講じる。

Q50巣穴崩落から掘り出したが動かない救命救急

4月の早朝、保護施設で崩れた巣穴から5歳のメスを掘り出した。土まみれの体はぐったりとして自発的に動かず、口と鼻に土が詰まっている。担当者が胸を見ると、わずかに上下しているように見えるが確信が持てない。もう1人の担当者が獣医師に電話をかけている。

掘り出した直後に最も適切な対応はどれか

  1. 水を大量にかけて土を洗い流し、意識が戻るのを待つ
  2. すぐ胸を強く押して心肺蘇生を開始する
  3. 口と鼻の土を指で取り除いて気道を確保し、胸の上下と大腿動脈の脈を確認して、呼吸がなければ心肺蘇生を始め獣医師の指示に従う
  4. 逆さに持ち上げて土を吐かせる

正解C.口と鼻の土を指で取り除いて気道を確保し、胸の上下と大腿動脈の脈を確認して、呼吸がなければ心肺蘇生を始め獣医師の指示に従う

解説生き埋めから掘り出した後は、まず口と鼻の土を取り除いて気道を確保することが最優先で、これがなければ呼吸も人工呼吸もできない。次に胸の上下で呼吸、後肢内側の大腿動脈で脈を確認し、呼吸や脈がなければ横向きに寝かせて心肺蘇生を開始し、電話中の獣医師の指示に従う。呼吸があっても咳や歩行困難があれば肺の損傷を疑い即受診する。水を大量にかけると土が泥となって気道を塞ぎ、体温も下げる。気道確保と確認を飛ばして胸を押すと、呼吸している個体を傷つけ、詰まった土で窒息させる。25kg前後の個体を逆さに持ち上げるのは現実的でなく、頸椎を傷める。

課題巣穴崩落の危険を事前に点検しておらず、掘り出し後の気道確保と呼吸確認という順序が担当者に徹底されていなかった。心肺蘇生の訓練が不足し、確認をせずに処置に入る可能性があった。

改善案救命の順序(気道確保・呼吸と脈の確認・心肺蘇生・獣医師の指示)を掲示し、年1回以上の実技訓練を行う。大雨や地震の後は巣穴の点検を義務化し、崩れにくい人工巣箱を併設する。掘り出し用具と搬送用ケージ、保温用毛布を飼育場入口に常備する。

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