基本情報
- 寿命
- 飼育下で10〜14年
- 体重
- 1.5〜2.5kg(世界最小級の偶蹄類)
- 性格
- 極めて臆病。驚くと全力で跳ねて激突する
- 飼育難易度
- 極高(施設飼養が前提、個人向きでない)
- 法規制
- 偶蹄類で家畜伝染病予防法の検疫対象。愛護法
- 最重要ポイント
- 驚かせない。隠れ家と高温多湿を常に確保
生態と特徴
- 体の特徴
- 体長約45cm、鉛筆ほどの細い脚。角はなく雄は上顎犬歯が牙状に伸びる
- 原産地・分布
- 東南アジア(ジャワ島・マレー半島・ボルネオなど)
- 野生での生息環境
- 熱帯雨林の下草が茂る林床、川沿いの湿った藪
- 活動時間・睡眠
- 薄明薄暮〜夜行性。日中は藪の中で休み反芻する
- 社会性・人との関係
- 単独か雌雄ペアで小さな縄張りを持つ。人を強く警戒
特徴的な行動・習性
- 危険を感じると凍りつき、次の瞬間に跳ねて逃げる
- 反芻動物で、食後は物陰でじっと反芻する
- 蹄を地面に打ち鳴らして警戒を伝える
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
捕捉性筋障害
予兆追い回しや保定後に起立不能・硬直・震え・暗赤色の尿、数日後に急死することも
予防追い回さない。保定は暗幕と布で短時間に。移動は捕獲箱で静かに行う
鼓脹症
予兆左脇腹が張る・落ち着かず立ったり伏せたり・呼吸が速い・口を開けてよだれ
予防果物や穀物の急な増量を避け、葉・枝葉中心で徐々に切り替える
下痢・腸炎
予兆軟便〜水様便が続く・体重減少・被毛の艶が落ちる・肛門周囲の汚れ
予防急な食事変更をしない。生野菜の洗浄、糞便検査を定期的に受ける
寄生虫症
予兆痩せる・貧血で歯肉が白い・下痢・毛艶の低下、子は発育不良
予防糞便検査を年数回。床の糞は毎日除去し、床材の湿りすぎを防ぐ
低体温・肺炎
予兆丸まって動かない・耳や脚が冷たい・鼻汁・呼吸が速く浅い・食欲低下
予防終年25℃以上を保つ。冬は暖房と保温灯、すきま風を遮断する
牙・歯の異常
予兆雄の牙の折れ・伸びすぎ、口元の出血、食べこぼし、よだれ、口臭
予防金網への激突を防ぐ。健診時に歯のチェック。硬い枝葉で自然な摩耗を促す
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
腹が張り苦しそう
食事を止め静かに立たせたまま刺激を避け、1時間以内に受診。横倒しで呼吸が速ければ即受診
保定後に立てない
捕捉性筋障害の疑い。追わず暗く静かな保温箱に入れ、その足で救急受診。回復を待たない
下痢が続く
果物を止め葉類のみに。便を採取し当日中に受診。元気消失・血便なら即受診
震えて動かない
室温を28℃前後に上げ、湯たんぽを布で包み体の片側に当てる。1時間で改善なければ受診
起こりやすい怪我と予防・応急処置
脚の骨折
予防床は滑らない土や厚い敷料にする。段差・網の隙間・突然の大きな音をなくす
応急処置追いかけず、暗くした捕獲箱に自分から入るよう誘導し即受診。添え木は自分で当てない
激突による外傷
予防壁は柔らかい素材や植栽で覆う。見学者や作業は静かに、急に近づかない
応急処置出血部を清潔なガーゼで押さえる。頭を打った後のふらつき・鼻血は即受診
蹄の割れ・伸び
予防硬すぎる床や常時湿った床を避け、乾いた土と岩の両方を置く
応急処置跛行があれば乾いた床に移し、当日中に受診して削蹄を依頼。自分で切らない
牙による咬傷
予防雄同士を同居させない。繁殖期の雄には柵越しに作業し素手で触らない
応急処置傷口を水道水で洗い圧迫止血。深い傷・腹部の傷は即受診。相手雄とは分ける
動物由来感染症(人にうつる病気)
サルモネラ症
感染経路糞便に触れた手からの経口感染
予防作業後の手洗い。飼育区画内で飲食しない。長靴と手袋を専用にする
クリプトスポリジウム症
感染経路糞便で汚れた水・飼料・手から経口
予防子や下痢個体の世話は最後に。飲み水容器は毎日洗浄し乾燥させる
Q熱
感染経路出産時の胎盤・体液や乾いた糞の粉塵吸入
予防出産物はすぐ回収し焼却。清掃は水で湿らせてから。妊婦は作業を避ける
皮膚糸状菌症
感染経路脱毛部に触れた手や器具から接触感染
予防円形脱毛の個体は手袋で扱い器具を分ける。手に発疹が出たら皮膚科へ
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 主食は葉・枝葉・草(桑・クワ・ビワなど)を1日2〜3回
- 果物・野菜は副食。小さく切って量は控えめに
- 反芻動物用ペレットは少量。夜間に多く食べる習性
水
- 常に新鮮な水を低い重い容器で。毎日交換
- 高温期は飲水量が増える。容器を複数置く
与えてはいけないもの
- パン・穀物・甘い菓子(鼓脹・下痢の原因)
- ネギ類・ジャガイモの芽・アボカド・チョコ
- 農薬のかかった葉、カビや傷んだ果物
おもちゃ・遊び
- 新鮮な枝葉を吊るし、探しながら食べさせる
- 倒木や岩でルートを作り、登らず歩ける起伏
- 植栽の中に餌を隠し、採食時間を長くする
巣・寝床・隠れ家
- 複数の隠れ家(木箱・茂み)を必ず複数方向に
- 隠れ家は暗く、人の視線が届かない向きに置く
床材・トイレ
- 土と落ち葉、またはバークチップを厚く敷く
- 糞は小さな粒で決まった場所にする。毎日除去
- 金網やコンクリートの直床は骨折・蹄の損傷の元
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
木や樹脂板の壁。金網は激突で危険、使うなら内側を布や植栽で覆う
大きさ・広さ
1頭でも奥行きのある数十㎡の室内放飼場。小さな檻では飼えない
配置・レイアウト
- 隠れ家を出入口から遠い複数の隅に配置
- 開けた場所と茂みの両方を作り逃げ道を残す
- 餌場と水場は隠れ家の近く、人の動線から離す
設置場所の注意
- 人の往来や犬の声が届かない静かな場所
- 暖房設備のある室内。屋外飼育は冬に不可
運動・部屋んぽ・散歩
- 散歩は不要。放飼場内を自分で歩き回らせる
- 作業は同じ時間・同じ人・静かな動作で慣らす
- 見学者には走らない・叫ばない・覗き込まないを徹底
温湿度管理
適温25〜30℃。20℃を下回ると体調を崩しやすい
適湿度60〜80%。乾燥は皮膚・呼吸器に負担
夏・冬の対策
- 夏:直射日光を避け、ミストと日陰を確保
- 冬:暖房と保温灯で25℃以上、床からの冷えを防ぐ
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
蹄は硬い地面で自然に摩耗させる。伸びたら獣医師が鎮静下で削蹄する
ブラッシング・皮膚被毛ケア
ブラッシングは不要。脱毛・フケ・円形の毛抜けを観察で確認する
その他のケア
雄の牙の折れ・伸びすぎを健診時にチェック。目やにや鼻汁も記録する
外敵からの保護
- 犬・猫・キツネは姿や声だけで致死的なパニックの原因
- カラス・ネズミの侵入を防ぐ網と隙間の点検
- 蚊・ハエ・ダニ対策。夏は防虫網とこまめな清掃
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
ビニール片・ひも・釘などは飼料に混ざりやすい。設置前に床を点検し、残渣は毎日撤去する
踏みつけ
小さく静かに足元にいることがある。作業は足元を見て歩き、しゃがむ時は周囲を確認する
挟まれ
細い脚が扉や柵の隙間に入り骨折する。隙間は2cm以下にし、扉は手で押さえてゆっくり閉める
落下・転落
段差や倒木から飛び降りて脚を折る。高さのある構造は作らず、斜面は緩やかに仕上げる
逸走・脱走
小さく素早く隙間から出る。二重扉を徹底。逃げたら追わず、暗い捕獲箱と餌を置き静かに待つ
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 引き抜いたり振り払ったりしない(牙で裂ける)
- 叫んだり押さえ込んだりしない(パニック悪化)
安全な引き離しの手順
- 動きを止め、声を出さず視線を外す
- 布を顔にかけて暗くし、口が緩むのを待つ
- 緩んだ瞬間にゆっくり手を引く
- 個体は隠れ家に戻し、その後30分は近づかない
引き離した後の処置
傷を流水で洗い圧迫止血。深い刺し傷は当日中に受診し、個体も脚と口を観察
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 横倒しで起き上がれない・けいれん
- 脇腹の張りと開口呼吸・激しい苦悶
- 保定・移動後の起立不能や暗赤色の尿
- 脚が不自然な向き・骨の露出・大量出血
当日中に受診
- 跛行・片脚を浮かせる
- 食欲低下と反芻の停止が半日以上
- 下痢が続く・水様便・血便
受診時に伝えること・持ち物
偶蹄類と伝え、体重・食事内容・便の写真・保定や移動の有無・室温を伝える
意識・呼吸・心拍の確認
- 声をかけず近づき耳と目の動きで反応を見る
- 胸の上下を数える。安静時は規則的で静か
- 後肢内側の脈か胸に手を当て心拍を確認
蘇生の手順
- 横向きに寝かせ気道を伸ばし口の泡を拭う
- 肘の後ろの胸を片手で毎分100〜120回圧迫
- 圧迫30回ごとに鼻から2回息を吹き込む
- 2分ごとに確認、搬送中も続ける
止血
- 清潔な布で5分以上強く押さえ続ける
- 脚は心臓より高くせず動かさないのが優先
- 布は剥がさず上から重ね、止まらなければ即受診
搬送方法
- 暗く通気のある箱に布を敷き横倒しを防ぐ
- 湯たんぽを布で包み25℃以上を保ち静かに運ぶ
ケースメソッドで学ぶ
