マメジカ ケースメソッド 50問
状況を読み、飼い主として「最初に取るべき行動」を4択から選んでください。回答後に解説・課題・改善案が表示されます。マニュアルを見る
解答と解説・課題と改善案(全50問)
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Q1夕方の給餌後に左脇腹が張って落ち着かない病気
17時、室内放飼場で飼育する4歳の雄ジャワマメジカに夕方の餌を与えた30分後、担当者が見回ると個体が立ったり伏せたりを繰り返し、左脇腹が明らかに膨らんでいる。呼吸が速く、口を少し開けてよだれが垂れている。今日は来園者向けイベントの余りのバナナとリンゴを普段の3倍ほど与えていた。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 残りの餌を下げ、刺激せず立たせたまま1時間以内に獣医師の診察を受ける
- 腹を手で強くもんでガスを出し、横に寝かせて楽にさせる
- ガス抜きのため市販の人用消化薬を水に溶かして飲ませる
- 夜のうちに自然にガスが抜けるので翌朝まで様子を見る
正解A.残りの餌を下げ、刺激せず立たせたまま1時間以内に獣医師の診察を受ける
解説左脇腹の膨満、不穏、開口呼吸とよだれは反芻動物の鼓脹症の典型で、果物の急な増量が引き金になっている。まず餌を止め、追い回さず静かに立たせたまま、1時間以内に受診する。横倒しにすると第一胃のガスが横隔膜を圧迫して呼吸がさらに苦しくなるため寝かせない。腹をもむ、人用薬を飲ませる行為は効果がなく、保定ストレスで捕捉性筋障害を起こす危険もある。鼓脹は数時間で窒息死に至ることがあり、様子見は禁忌。横倒しで呼吸が速い場合は即受診の扱いになる。
課題イベントの余り物を給餌計画と無関係に大量に与えたことが直接の原因。果物は副食で少量に留めるという基本が現場に徹底されておらず、給餌量の記録や上限が決まっていなかった。
改善案1日の果物・野菜の上限量を給餌表に明記し、余り物の流用を禁止する。葉・枝葉中心の食事を守り、切り替えは1〜2週間かけて徐々に行う。給餌後30分の観察を日課にし、脇腹の張りを毎回チェックする。
Q2健診の保定後、放飼場に戻しても立ち上がれない病気
午前10時、年1回の健康診断で3歳の雌マメジカを追い込んで捕まえ、5分ほど素手で保定して採血した。放飼場に戻して20分後、個体は横になったまま立てず、四肢が硬直して小刻みに震えている。先ほど排泄した尿がコーラのような暗赤色だった。担当者は「驚いただけだろう」と考えている。
この状況で最も適切な対応はどれか
- 疲れているだけなので隠れ家に入れ、半日そっとして回復を待つ
- 立たせようと脚を持って補助し、歩かせて筋肉をほぐす
- 捕捉性筋障害を疑い、暗く静かな保温箱に入れて直ちに救急受診する
- 脱水対策としてスポーツドリンクを口に流し込んでから様子を見る
正解C.捕捉性筋障害を疑い、暗く静かな保温箱に入れて直ちに救急受診する
解説追い回しと保定の後の起立不能、硬直、震え、暗赤色の尿は捕捉性筋障害の典型所見で、筋肉の崩壊物が腎臓を傷め、数日後に急死することもある。回復を待たず、刺激を最小限にして暗い保温箱に収容し、その足で獣医師に搬送する。無理に立たせたり歩かせたりすると筋損傷が広がる。口から液体を流し込むのは誤嚥の危険があり、人用飲料は不要。半日の様子見は受診の機会を失う最悪の選択。受診時は偶蹄類であること、保定の時間と方法、尿の色を伝える。
課題追い込みと素手での長時間保定という捕獲方法そのものが発症の原因。暗幕や捕獲箱を使う計画がなく、マメジカが保定ストレスに極めて弱いという知識が共有されていなかった。
改善案健診は捕獲箱に自分から入るよう事前に慣らし、暗幕と布で視界を遮って短時間で終える手順書を作る。保定後は必ず1時間観察し、立てない・尿が濃い場合は即受診と決める。獣医師と鎮静の要否を事前に相談する。
Q33日続く軟便と肛門周りの汚れ病気
2月の朝、飼育員が放飼場の糞を回収すると、普段は小さな粒状の糞が3日前から形のない軟便になり、今朝は水っぽい。6歳の雌マメジカの肛門周囲の毛が汚れ、被毛の艶も落ちてきた。先週から新しく入荷した野菜を洗わずにそのまま与え始めていた。食欲はまだある。
飼育員が取るべき対応として最も適切なものはどれか
- 果物と野菜を止めて葉類だけにし、便を採取して当日中に受診する
- 人用の下痢止めを少量砕いて餌に混ぜ、止まるまで続ける
- 食欲があるので問題なしと判断し、1週間様子を見る
- 腸を休ませるため丸1日絶食させ、水だけ与える
正解A.果物と野菜を止めて葉類だけにし、便を採取して当日中に受診する
解説軟便から水様便への進行、毛艶の低下は腸炎や寄生虫症のサインで、新しい未洗浄の野菜が引き金の可能性が高い。マニュアルの通り果物を止めて葉類のみにし、便を採取して当日中に受診し、糞便検査を受ける。人用の下痢止めは反芻動物の消化に有害で、原因が寄生虫や細菌なら悪化させる。反芻動物の絶食は第一胃の微生物バランスを崩し鼓脹や衰弱を招くため不可。1週間の様子見は小型で体重1.5〜2.5kgの個体では脱水が急速に進み危険。元気消失や血便が出れば即受診。
課題新しい野菜を洗浄せず、しかも急に食事内容を変えたことが原因。便の状態を記録する習慣が弱く、3日間の軟便を見過ごした。糞便検査の定期実施もされていなかった。
改善案生野菜は必ず洗浄し、新しい食材は少量から1週間かけて導入する。糞の形状・量を毎日記録し、2日続けて軟便なら受診する基準を決める。糞便検査を年数回定期的に実施し、床の糞は毎日除去する。
Q4冬の朝、隠れ家で丸まって震えている病気
1月の朝8時、夜間に暖房のタイマーが切れていたことに気づき、室温計は16℃を示していた。8歳の雄マメジカは隠れ家の奥で丸まって動かず、近づいても耳だけ動かす。耳と脚を触ると冷たく、体が小刻みに震えている。鼻先に透明な鼻汁がつき、呼吸はやや速く浅い。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ドライヤーの温風を体に直接当てて一気に温める
- 室温を28℃前後に上げ、布で包んだ湯たんぽを体の片側に当てて1時間観察する
- 運動させて体温を上げるため、放飼場内を歩くように追い立てる
- 熱い湯に脚をつけて末端から温める
正解B.室温を28℃前後に上げ、布で包んだ湯たんぽを体の片側に当てて1時間観察する
解説20℃を下回る環境でのマメジカは低体温と肺炎を起こしやすく、耳や脚の冷え、震え、鼻汁、浅く速い呼吸はその所見である。まず室温を28℃前後まで上げ、湯たんぽを布で包んで体の片側に当て、自分で離れられる余地を残す。1時間で改善しなければ受診し、呼吸が速いままなら肺炎を疑って当日中に診察を受ける。ドライヤーや熱湯は低温火傷と急激な血管拡張によるショックを招く。追い立てることは捕捉性筋障害の引き金になり、衰弱した個体では致命的である。
課題暖房タイマーの設定ミスと、夜間の温度低下を知らせる仕組みがなかった。終年25℃以上という飼育条件の重要性が夜勤・当直者に共有されず、温度記録も翌朝まで確認されなかった。
改善案暖房は連続運転とし、温度ロガーと警報を設置して下限20℃で通知が来るようにする。保温灯の予備を常備し、冬季は始業前と終業後に室温を記録する。震え・鼻汁を確認したら保温と受診の手順を掲示しておく。
Q5雄の口元から血、食べこぼしが増えた病気
4月、5歳の雄マメジカが夕方の枝葉をくわえてはこぼし、口元によだれと少量の血が見える。よく見ると左の上顎犬歯(牙)が根元近くで折れている。前日、見学者の子どもが柵を叩いたときに驚いて金網に激突する姿を職員が目撃していた。食べる量は半分程度に減っている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 折れた牙をペンチで整え、消毒液を口に塗る
- 柔らかい果物だけに切り替えて1週間様子を見る
- 出血と食べこぼしの状況を記録し、当日中に獣医師に歯の診察を依頼する
- 痛みをとるため人用の鎮痛剤を餌に混ぜて与える
正解C.出血と食べこぼしの状況を記録し、当日中に獣医師に歯の診察を依頼する
解説牙の折れ、口元の出血、食べこぼしは歯の異常のサインで、折れた歯髄が露出していれば激痛と感染を起こす。無保定で観察し、状況を記録して当日中に獣医師の診察を受け、鎮静下での処置を依頼する。自分で牙を整えることは保定ストレスと更なる損傷を招き不可。人用鎮痛剤は反芻動物に毒性があるものが多く用量も不明で与えてはならない。果物中心の食事は鼓脹や下痢の原因となり、問題を先送りするだけである。頭部激突の後なので、ふらつきや鼻血がないかも併せて確認する。
課題金網の内側が布や植栽で覆われておらず、見学者が柵を叩ける構造だった。驚いて激突するというマメジカの習性に対する施設側の対策と来園者への注意喚起が不足していた。
改善案金網の内側を布や植栽で覆い、柵と見学通路の間に距離を取る。見学者には走らない・叩かない・覗き込まないを掲示と声かけで徹底する。健診時に牙のチェックを項目化し、硬い枝葉で自然な摩耗を促す。
Q6痩せて歯肉が白い、糞便検査は1年していない病気
9月、2頭を飼育する放飼場で、1歳の若い雌マメジカが数週間かけて痩せ、毛艶が落ちてきた。今朝は軟便を出し、隠れ家から出る時間も短い。あくびをした瞬間に見えた歯肉が白っぽかった。床材は夏の間ずっと湿ったままで、糞便検査は1年以上受けていない。同居の母親は元気そうに見える。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 痩せているので高カロリーの穀物ペレットを一気に増やす
- 2頭分の便を採取して当日中に受診し、床材を乾いたものに全面交換する
- 若い個体は痩せやすいだけなので冬まで様子を見る
- 市販の犬猫用駆虫薬を体重換算で与えて終わりにする
正解B.2頭分の便を採取して当日中に受診し、床材を乾いたものに全面交換する
解説痩せ、貧血による白い歯肉、下痢、毛艶の低下、子の発育不良は寄生虫症の典型で、湿った床材と糞便検査の欠落が背景にある。同居個体も感染している可能性が高いので2頭分の便を採取して当日中に受診し、適切な駆虫と再検査を獣医師の指示で行う。並行して床材を乾いた土や落ち葉に交換し、糞を毎日除去して再感染を断つ。犬猫用駆虫薬の流用は種により毒性があり不可。穀物の急増は鼓脹の原因になる。貧血が進んだ個体の様子見は突然死につながる。
課題年数回必要な糞便検査が1年以上行われず、床材の湿りすぎも放置されていた。多頭飼育で1頭が発症したときに同居個体を同時に調べる意識が欠けていた。
改善案糞便検査を年3〜4回の年間計画に入れ、結果を個体カルテに残す。床材は湿度を保ちつつ排水を確保し、湿った部分は週単位で交換する。月1回の体重測定と歯肉色の観察を記録し、減少傾向で受診する。
Q7扉を閉めた瞬間、細い脚が挟まった怪我
午後2時、作業用の扉を閉めたとき、足元にいた2歳の雌マメジカの前脚が扉と枠の隙間に挟まった。個体はすぐに脚を抜いて逃げたが、右前脚を浮かせて3本脚で跳ね、隠れ家に飛び込んだ。遠目に見ると脚の中ほどが不自然に曲がっているようだ。出血は見えない。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 隠れ家から引き出して脚を伸ばし、割り箸と包帯で添え木を当てる
- 追いかけず暗くした捕獲箱に自ら入るよう誘導し、直ちに受診する
- 痛みが引くまで放飼場でそっとしておき、翌日歩けるか確認する
- 抱き上げて車に乗せ、膝の上に乗せたまま動物病院へ向かう
正解B.追いかけず暗くした捕獲箱に自ら入るよう誘導し、直ちに受診する
解説脚が不自然な向きに曲がっているのは骨折の疑いで、救急受診の対象である。鉛筆ほどの細い脚は追い回しや保定でさらに折れやすく、添え木を自分で当てる行為は骨片をずらし神経や血管を傷める。追わず、暗くした捕獲箱を隠れ家の近くに置いて自分から入るよう誘導し、横倒しを防ぐ布を敷いて静かに搬送する。膝の上での搬送は跳ねて二次損傷と逸走の危険がある。翌日まで待つと骨が変位し、治療の選択肢が狭まる。獣医師には偶蹄類であること、挟まれた状況と時刻を伝える。
課題扉を手で押さえずに閉めたことと、足元の確認を怠ったことが原因。扉と枠の隙間が2cm以上あり、細い脚が入る構造が放置されていた。足元にいる習性への注意が作業手順になかった。
改善案扉や柵の隙間を2cm以下に改修し、扉は必ず手で押さえてゆっくり閉める手順を定める。作業前に個体の位置を確認し、隠れ家にいる時間帯に出入りする。捕獲箱を常設して日常的に慣らしておく。
Q8激突後、頭を振ってふらつき鼻血が出ている怪我
開園直後の9時半、園内放送のテスト音が放飼場まで大きく響いた。3歳の雄マメジカが跳ね上がって木製の壁に頭から激突し、転倒後に起き上がったが、頭を左右に振りながらふらついて歩く。鼻先から血が垂れ、額に小さな裂傷があり出血している。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 出血部を清潔なガーゼで押さえて止血し、ふらつきと鼻血があるので即受診する
- 軽い打撲と判断し、隠れ家に戻って落ち着くまで1日様子を見る
- 意識を保たせるため声をかけ続け、立たせたまま歩かせる
- 鼻に綿を詰め、消毒液で額の傷をこすって洗う
正解A.出血部を清潔なガーゼで押さえて止血し、ふらつきと鼻血があるので即受診する
解説頭部激突の後のふらつきと鼻血は頭蓋内の損傷や鼻骨骨折を示唆し、即受診の基準にあたる。額の出血は清潔なガーゼで押さえ、布を剥がさず上から重ねる。搬送は暗い捕獲箱で静かに行い、追い回さない。声をかけ続けたり歩かせたりすると興奮と二次損傷を招き、脳の損傷があれば悪化する。鼻に綿を詰めると呼吸を妨げ、傷をこすると組織を傷める。頭部外傷は数時間後に症状が進むことがあるため、1日の様子見は危険である。
課題園内放送のテストがマメジカの飼育区画に影響することを運営側が把握していなかった。突然の大きな音が致死的なパニックを起こす動物であることが部署間で共有されていなかった。
改善案放送・工事・イベントの音響は飼育担当に事前連絡し、必要なら時間をずらす仕組みを作る。壁は柔らかい素材や植栽で覆い、スピーカーを飼育区画から離す。頭部激突の観察項目(ふらつき・鼻血・瞳孔)を掲示する。
Q9コンクリート床の仮設舎で蹄が割れ跛行怪我
施設改修のため、7歳の雌マメジカを2週間コンクリート直床の仮設舎で飼育していた。今朝から左後脚を引きずり、観察すると蹄の先端が縦に割れ、周囲がわずかに赤い。床は常に湿っており、乾いた土や岩は置いていない。食欲は普通だが歩く距離が減った。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- ニッパーで割れた部分を切り落とし、瞬間接着剤で固める
- 乾いた厚い敷料の床に移し、当日中に受診して鎮静下の削蹄を依頼する
- 蹄は自然に治るので改修が終わるまでそのままにする
- 毎日消毒液の足浴を行い、2週間後に治っていなければ受診する
正解B.乾いた厚い敷料の床に移し、当日中に受診して鎮静下の削蹄を依頼する
解説硬く常に湿ったコンクリート床は蹄の割れや異常な伸びの原因で、跛行があれば当日中の受診対象である。まず乾いた土や厚い敷料の床に移して蹄の負担と感染を減らし、獣医師に鎮静下での削蹄と処置を依頼する。自分で切る行為は保定ストレスで捕捉性筋障害を起こし、出血や深部感染の原因にもなる。放置すると蹄の亀裂が深くなり、感染が関節に及ぶ。消毒液の足浴は毎日の保定を要し、マメジカには現実的でなく有害である。
課題仮設舎の床が金網やコンクリート直床であってはならないという基本が改修計画に反映されていなかった。乾いた土と岩を置く配慮もなく、仮設期間中の蹄の観察も行われていなかった。
改善案仮設舎でも土と落ち葉またはバークチップを厚く敷き、乾いた土と岩の両方を置く。改修計画の段階で飼育担当が床材を確認する手順を加える。跛行・蹄の状態を毎日の観察記録に項目として入れる。
Q10雄を2頭同居させた翌朝、腹部に牙の傷怪我
繁殖期の11月、展示上の都合で若い雄2頭を同じ放飼場に入れた翌朝、担当者が見回ると年下の雄が隠れ家の隅でうずくまり、脇腹から腹部にかけて牙で裂かれたような深い傷が2か所あり、床に血がにじんでいる。もう1頭の雄は落ち着かず蹄を打ち鳴らしている。
担当者が取るべき対応として最も適切なものはどれか
- 傷口に軟膏を塗って同居を続け、順位が決まるまで見守る
- 2頭を直ちに分け、負傷個体は傷を清潔な布で圧迫しながら即受診する
- 負傷個体を水で洗って放飼場に戻し、翌日の定期診察まで待つ
- 攻撃した雄を叱って追い回し、別の檻に移す
正解B.2頭を直ちに分け、負傷個体は傷を清潔な布で圧迫しながら即受診する
解説雄の牙は上顎犬歯が牙状に伸びたもので、裂傷は深く腹腔に達することがある。腹部の傷は即受診の対象で、まず2頭を分けて再攻撃を止め、清潔な布で5分以上圧迫止血しながら暗い箱で搬送する。同居を続ければ繰り返し攻撃され死亡する。軟膏だけで放置すると腹膜炎や内臓損傷を見逃す。攻撃した雄を追い回すと捕捉性筋障害を起こし、2頭目の救急患者を生む。分離は柵の開閉で静かに行う。
課題雄同士は同居させないという基本が展示の都合で無視された。繁殖期の雄の攻撃性と牙の危険性を評価せず、同居初夜の監視体制もなかった。
改善案雄同士の同居を禁止する飼育方針を文書化し、展示計画は飼育担当の承認を要件にする。繁殖期の雄には柵越しに作業し素手で触らない。個体の移動や導入時は初日の夜も監視カメラや巡回で確認する。
Q11繁殖期の雄に手を噛まれて離れない怪我
12月の午後、担当者が放飼場内で給餌器を交換しようとしゃがんだところ、繁殖期で気の立った雄マメジカが突然近づき、右手の甲を牙で噛んだ。牙が深く刺さったまま個体は固まり、離さない。痛みで反射的に手を振りほどきたくなる。周囲には他の職員はいない。
噛まれた直後の対応として最も適切なものはどれか
- 手を勢いよく引き抜き、個体を蹴り払って距離を取る
- 大声で助けを呼び、空いた手で個体の首を押さえ込む
- 動きを止めて視線を外し、布を個体の顔にかけて口が緩んだ瞬間にゆっくり手を引く
- 噛まれたまま放飼場の外へ歩き出し、個体を扉に引っかけて外す
正解C.動きを止めて視線を外し、布を個体の顔にかけて口が緩んだ瞬間にゆっくり手を引く
解説牙が刺さった状態で引き抜いたり振り払ったりすると、鋭い牙で皮膚が大きく裂け、個体の歯も折れる。叫んだり押さえ込むとパニックが悪化して噛み直す。まず動きを止め声を出さず視線を外し、布や上着を顔にかけて暗くして口が緩むのを待ち、緩んだ瞬間にゆっくり手を引く。その後個体を隠れ家に戻し30分は近づかない。自分の傷は流水で洗って圧迫止血し、深い刺し傷は当日中に受診して感染予防を受ける。個体側も脚と口に異常がないか観察する。
課題繁殖期の雄に対し、柵越しに作業し素手で触らないという原則を守らず、単独で放飼場内に入った。しゃがむ前の周囲確認も不十分で、布など咬傷時の道具を携行していなかった。
改善案繁殖期の雄の飼育区画は2人作業か柵越し作業に限定し、作業用に厚手の布を常に携行する。給餌器の交換は個体が隠れ家に入る時間帯に行う。咬傷時の手順を掲示し、職員全員で確認する。
Q12倒木の高さから飛び降りて脚を浮かせる事故
放飼場の環境改善として高さ70cmの倒木を新しく設置した翌日、1歳の雄マメジカが見回りの職員に驚いて倒木の上から飛び降りた。着地後に右後脚を浮かせ、3本脚で隠れ家へ跳ねていった。出血や骨の露出は見えないが、1時間たっても脚を地面につけない。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 隠れ家から引っ張り出して脚を触り、折れていないか自分で確かめる
- 捻挫だろうと判断し、歩けるようになるまで数日様子を見る
- 倒木を撤去し、捕獲箱で静かに搬送して当日中に受診する
- 痛みがあれば動かないはずなので、餌で誘って無理にでも歩かせる
正解C.倒木を撤去し、捕獲箱で静かに搬送して当日中に受診する
解説高い構造物からの飛び降りは細い脚の骨折の代表的原因で、片脚を浮かせ続ける跛行は当日中の受診基準にあたる。細い脚はヒビでも見た目で分からないため、自分で触って確かめることは保定ストレスと骨片の変位を招く。再発防止として倒木は撤去し、捕獲箱に自ら入るよう誘導して静かに搬送する。数日の様子見は不完全骨折を完全骨折に進め、無理に歩かせることも同様に危険である。脚が不自然な向きなら即受診。
課題高さのある構造を作らないという飼育条件が環境改善の計画で見落とされた。登らず歩ける起伏が目的だったのに、70cmという高さが細い脚に対して危険であることを検討しなかった。
改善案新しい構造物は高さ20cm程度までの緩やかな起伏に限定し、設置前に飼育担当と獣医師が図面で確認する。導入後1週間は驚かせない観察期間を設け、職員の見回りルートも隠れ家から遠い側に変更する。
Q13二重扉を開けたまま作業、個体が外へ逃げた事故
午後4時、新人職員が内扉と外扉を同時に開けたまま餌を運び込んだ隙に、2歳の雌マメジカが足元をすり抜けて通路へ逃げた。個体はバックヤードの資材置き場の棚の下に潜り込んで凍りついている。周囲には他の職員が集まり始め、誰かが「追い込もう」と言っている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 人を減らして静かにし、暗い捕獲箱と餌を近くに置いて自分から入るのを待つ
- 職員全員で棚を囲み、網で一気に捕まえる
- 棚の下に手を入れて脚をつかんで引き出す
- ホースで水をかけて棚の下から追い出す
正解A.人を減らして静かにし、暗い捕獲箱と餌を近くに置いて自分から入るのを待つ
解説逃げたマメジカは追わないことが原則で、追い回すと激突による外傷や捕捉性筋障害で死亡しうる。まず人を減らし静かにして出入口を閉じ、暗い捕獲箱と好物の枝葉を棚の近くに置いて自分から入るのを待つ。凍りついている個体は刺激がなければその場に留まる。全員で囲む、脚をつかむ、水をかけるといった方法はすべてパニックを誘発し、鉛筆ほどの脚が折れる。収容後は30分以上暗い箱で休ませ、立てない・尿が暗赤色なら受診する。
課題二重扉の運用が徹底されず、内外の扉を同時に開けた。新人への教育が不十分で、足元にいる習性への注意がなかった。逸走時の手順と捕獲箱の常備場所が決まっていなかった。
改善案二重扉は片方を必ず閉めてからもう片方を開けるルールを掲示し、内扉に自動閉鎖装置をつける。逸走時の手順書(静かにする・追わない・捕獲箱を置く)を作り、新人研修に組み込む。捕獲箱と暗幕をバックヤードに常備する。
Q14園内に迷い込んだ犬の鳴き声でパニック事故
日曜の11時、来園者が連れてきた犬が放飼場のガラス前で吠え続けた。4歳の雌マメジカは跳ね回って壁に3回激突した後、放飼場の隅で横倒しになり、呼吸が激しく口を開けている。立ち上がろうとしては倒れる。犬は職員が外に出したが、来園者が窓に顔を寄せて覗き込んでいる。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 窓を暗幕で覆って来園者を遠ざけ、個体を無理に起こさず獣医師に即連絡する
- すぐに抱き上げて診療所まで走る
- 落ち着くまで見守り、立てたら通常通り展示を続ける
- 興奮を鎮めるため水を顔にかけて正気づかせる
正解A.窓を暗幕で覆って来園者を遠ざけ、個体を無理に起こさず獣医師に即連絡する
解説犬の姿や声はマメジカにとって致死的なパニックの原因で、激突の繰り返しによる外傷と、横倒しで起き上がれない状態は即受診の基準にあたる。まず刺激源を断つため窓を暗幕で覆い来園者を遠ざけ、個体を追わず刺激せず、獣医師に直ちに連絡して現場で診てもらうか暗い捕獲箱で搬送する。抱き上げて走ることは更なる激突と捕捉性筋障害を招く。水をかける行為は刺激を増やすだけである。立てたとしても数日後に捕捉性筋障害で急死することがあるため、展示再開はせず経過観察と受診が必要。
課題ペット同伴の来園ルールが放飼場の近くで守られておらず、犬の侵入経路や吠え声を遮る構造がなかった。覗き込む来園者を制止する職員配置も不足していた。
改善案飼育区画周辺をペット同伴禁止区域にして掲示と巡回で徹底する。観覧窓に目隠しの植栽や高さ制限を設け、パニック時に即座に覆える暗幕を常備する。犬の声が届かない位置への移設も検討する。
Q15清掃中にしゃがんだ膝で個体を踏みつけた事故
朝の清掃で、職員が落ち葉を集めるためにしゃがんだとき、足元の植栽に隠れていた3歳の雌マメジカの背中に膝を乗せてしまった。個体は悲鳴のような声を出して跳ね、隠れ家に逃げ込んだ。数分後に見ると、腰を落として後脚を引きずるように歩き、排尿の姿勢を取っても尿が出ていない。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 驚いただけと判断し、通常の清掃を終えてから様子を見る
- 脊椎や骨盤の損傷を疑い、刺激を避けて捕獲箱で静かに搬送し即受診する
- 腰をマッサージして動かし、歩けるようにしてから受診を判断する
- 鎮痛のため人用の湿布を腰に貼ってから隠れ家に戻す
正解B.脊椎や骨盤の損傷を疑い、刺激を避けて捕獲箱で静かに搬送し即受診する
解説体重2kg程度の個体に人の膝が乗ると、脊椎や骨盤の損傷が起こりうる。後脚を引きずる、排尿姿勢で尿が出ないという所見は神経損傷の疑いが強く、即受診の対象である。マッサージや動かす行為は脊髄損傷を悪化させる。人用の湿布は成分が有害で保定も要する。捕獲箱に自ら入るよう誘導し、横倒しを防ぐ布を敷いて静かに搬送し、獣医師には踏みつけの状況と排尿の有無を伝える。排尿ができない状態は数時間で膀胱や腎臓に障害を起こすため、清掃を優先する様子見は不可。
課題小さく静かに足元にいるというマメジカの習性に対し、しゃがむ前に周囲を確認する手順がなかった。植栽の中に個体がいる前提での清掃動線が決められていなかった。
改善案作業前に個体の位置を必ず確認し、隠れ家に入っているのを見てから作業する。しゃがむ前に周囲を目視する手順を手順書に明記する。作業中は個体がいる側の区画を柵で一時的に仕切り、動線を分ける。
Q16床に落ちていたビニール片を飲み込んだ中毒・誤飲
枝葉を束ねていた青いビニールひもと袋の切れ端が放飼場内に残されていたことに夕方気づいた。回収すると一部が欠けており、5歳の雄マメジカの口元に青い糸が1本垂れている。個体は反芻する姿を見せず、夜の餌を少ししか食べない。腹は張っていないが落ち着きがない。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 口から出ている糸を引っ張って取り出す
- 糸を切らず引っ張らず、残渣の写真と欠けた量を記録して当日中に受診する
- 食物繊維で押し出すため果物を多めに与える
- 数日で便に出るので糞を観察しながら待つ
正解B.糸を切らず引っ張らず、残渣の写真と欠けた量を記録して当日中に受診する
解説ひもやビニール片は反芻動物の第一胃や腸に滞留し、閉塞や腸の壊死を起こす。口から見えている糸を引っ張ると腸を切るように傷め、たぐり寄せられた腸が壊死するため絶対に引かない。残渣の写真と欠けた量、口元の糸の状態を記録し、当日中に受診する。反芻の停止と食欲低下は半日以上続けば同日受診の基準でもある。果物の増量は鼓脹の原因になる。数日の様子見は閉塞が進んで手術が必要になる危険がある。腹が張る、よだれ、横倒しになれば即受診。
課題枝葉の設置前に床を点検し残渣を毎日撤去するという基本が守られず、結束材が放飼場内に持ち込まれた。飼料の準備場所で結束材を外す手順が決まっていなかった。
改善案枝葉の結束材は準備室で外し、放飼場内にはビニールやひもを持ち込まないルールを掲示する。設置前と閉園後の2回、床の異物点検をチェックリストで行う。反芻の有無を毎日の観察項目に加える。
Q17来園者が投げ入れたパンと菓子を食べていた中毒・誤飲
日曜の午後、放飼場の柵越しに来園者が菓子パンとチョコレート菓子を投げ入れ、6歳の雌マメジカがそれを食べているのを職員が見つけた。床には包装紙とチョコの欠片が散らばっている。個体は今のところ元気に見えるが、口の周りに茶色い汚れがある。食べた量ははっきりしない。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 元気なので問題なしと判断し、残りを回収して通常通りにする
- 塩水を飲ませて吐かせ、胃の中のものを出す
- 残りを回収し、食べた種類と推定量を記録して獣医師に連絡し、脇腹の張りと便を観察する
- 中和のため牛乳を飲ませて様子を見る
正解C.残りを回収し、食べた種類と推定量を記録して獣医師に連絡し、脇腹の張りと便を観察する
解説パンや甘い菓子は反芻動物の第一胃で急激に発酵し、鼓脹症や酸性化による下痢を起こす。チョコレートはテオブロミンが有害で、体重2kg程度の個体では少量でも危険である。反芻動物は構造上吐かせることができず、塩水は塩中毒を起こす。牛乳は意味がなく下痢を助長する。残りを回収し、種類と推定量を記録して獣医師に連絡し、指示を仰ぐ。数時間は脇腹の張り、よだれ、落ち着きのなさ、便の状態を観察し、張りや開口呼吸が出れば即受診する。元気に見える段階での油断が最も危険。
課題来園者が餌を投げ入れられる距離に柵があり、給餌禁止の掲示や監視が不十分だった。パン・穀物・菓子が鼓脹や中毒の原因になることが来園者に伝わっていなかった。
改善案柵と観覧通路の間に二重の仕切りと植栽を設け、投げ入れを物理的に防ぐ。給餌禁止と理由を掲示し、休日は巡回を増やす。誤食時の観察項目と獣医師の連絡先を飼育室に掲示する。
Q18採ってきた枝葉に農薬散布の跡中毒・誤飲
6月の朝、近隣の農家から提供された桑の枝葉を与えて2時間後、3歳の雄マメジカが大量のよだれを流し、体が細かく震えている。脚元がふらつき、瞳孔が小さく見える。確認すると農家は前日に果樹園で農薬を散布しており、枝葉も近くで採取されたものだった。他の個体にもすでに同じ枝葉を与えている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 全個体から枝葉を直ちに撤去し、農薬名を確認して即受診、他の個体も観察する
- 水を大量に飲ませて薄めれば大丈夫なので様子を見る
- 症状のある1頭だけを受診させ、他の個体の枝葉はそのままにする
- 解毒のため活性炭を口に流し込んでから受診を判断する
正解A.全個体から枝葉を直ちに撤去し、農薬名を確認して即受診、他の個体も観察する
解説大量のよだれ、震え、ふらつき、縮瞳は有機リン系などの農薬中毒を疑う所見で、即受診が必要である。同時に、同じ枝葉を食べた他の個体も発症する可能性があるため、全放飼場から直ちに撤去し、農家に薬剤名と散布日を確認して獣医師に伝える。治療薬の選択に農薬名が重要となる。水を飲ませても解毒にはならず、活性炭の自己投与は誤嚥を招き、反芻動物では効果も不確実で保定ストレスも伴う。発症した1頭だけの対応では残りの個体を危険にさらす。
課題提供される枝葉の採取場所や農薬散布歴を確認する仕組みがなく、農薬のかかった葉を与えてはいけないという原則が調達段階で担保されていなかった。
改善案枝葉の提供元には採取場所と散布歴の申告を求め、散布後一定期間は受け入れない基準を決める。施設内で無農薬の桑やビワを栽培して自給率を上げる。新しい供給元の枝葉は少量から試し、給餌後の観察を記録する。
Q19真夏に冷房が止まり放飼場が34℃環境・災害
8月の13時、放飼場の空調が故障し、室温計が34℃、湿度90%を示している。ガラス越しの直射日光が床に当たり、7歳の雌マメジカは日陰のない場所で横になって口を開けて浅く速い呼吸をしている。水容器は1つだけで水は減り、ぬるくなっている。修理業者の到着は2時間後と言われた。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 氷水を体にかけて一気に冷やし、修理を待つ
- 直射日光を遮光し、冷たい水を複数置き、ミストや送風で環境を下げ、改善なければ受診する
- 30℃までは適温範囲なので修理まで何もしない
- 個体を捕まえて冷房のきいた事務所に抱えて移す
正解B.直射日光を遮光し、冷たい水を複数置き、ミストや送風で環境を下げ、改善なければ受診する
解説適温は25〜30℃で、34℃の高湿度に直射日光が加わると熱中症の危険がある。開口呼吸と横臥はすでに熱ストレスの所見。まず遮光幕で直射を遮り、冷たい新鮮な水を複数の低い重い容器で置き、ミストや送風で体感温度を下げ、凍らせたペットボトルを布で包んで近くに置く。氷水を直接かける急冷は末梢血管の収縮で体温が下がりにくくなり、驚いて激突する危険もある。捕まえて移動することは捕捉性筋障害を招く。30分で呼吸が落ち着かない、立てない場合は即受診する。
課題空調の故障時の代替手段(予備の送風機・遮光幕・ミスト)が準備されておらず、夏場なのに水容器が1つだけだった。直射日光が床に当たる構造も放置されていた。
改善案夏季は遮光と日陰を常設し、水容器を複数置いて飲水量を記録する。予備の送風機とミスト装置、凍らせた保冷材を常備する。温湿度ロガーに上限30℃の警報を設定し、空調の点検を夏前に行う。
Q20冬の夜、停電で暖房と保温灯が止まった環境・災害
1月の夜21時、地域の停電で飼育室の暖房と保温灯がすべて停止し、室温は1時間で22℃まで下がった。復旧の見込みは不明。2頭のマメジカは隠れ家に入っているが、外は氷点下で、床からの冷えが進んでいる。発電機はなく、カセットガスのストーブと湯たんぽ、毛布は倉庫にある。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- カセットストーブを隠れ家の目の前に置き、個体を直接温める
- 個体を捕まえて暖かい職員室のケージに移す
- 隠れ家を毛布で覆い、布で包んだ湯たんぽを隠れ家の片側に置き、室温を記録しながら交換を続ける
- 朝まで何もせず、復旧してから温度を上げる
正解C.隠れ家を毛布で覆い、布で包んだ湯たんぽを隠れ家の片側に置き、室温を記録しながら交換を続ける
解説マメジカは20℃を下回ると体調を崩し、低体温や肺炎を起こす。停電時はまず隠れ家を毛布で覆って熱を逃がさず、布で包んだ湯たんぽを隠れ家の片側に置き、個体が離れられる余地を残して2〜3時間ごとに交換する。室温を記録し、20℃を切れば獣医師に連絡する。カセットストーブを至近に置くと火傷や一酸化炭素の危険があり、驚いて激突する。捕まえて移動することは保定ストレスによる捕捉性筋障害を招くため、移動より現場での保温を優先する。朝まで放置すれば翌朝には震えと鼻汁が出る。
課題冬季の停電に対する非常用電源や保温計画がなかった。暖房設備のある室内という条件は満たしていたが、床からの冷えを防ぐ敷料の厚みや停電時の手順が決まっていなかった。
改善案小型発電機または蓄電池を導入し、保温灯1台分の電源を確保する。停電時手順書(毛布・湯たんぽ・温度記録・連絡先)を作り、冬前に訓練する。床にバークチップを厚く敷いて冷えを防ぎ、隠れ家は断熱材入りの木箱にする。
Q21震度5の地震、放飼場の壁が傾いた環境・災害
午前6時に震度5強の地震が発生し、放飼場の樹脂板の壁が一部傾き、天井の照明器具が落ちて床に破片が散った。5歳の雄マメジカは隠れ家に入ったまま出てこない。余震が続き、担当者は個体の安全確認と施設の点検を一人で行わなければならない。外には逃げられる隙間ができている可能性がある。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 隠れ家から引き出して外傷の有無を手で確認する
- 声をかけず出入口と隙間を先に塞ぎ、破片を静かに回収し、遠くから呼吸と姿勢を観察する
- 安全のため個体を捕まえて車に積み、避難所へ連れていく
- 余震が収まるまで放飼場に近づかず半日放置する
正解B.声をかけず出入口と隙間を先に塞ぎ、破片を静かに回収し、遠くから呼吸と姿勢を観察する
解説地震後のマメジカは極度に警戒しており、追い回しや保定は捕捉性筋障害と逸走を招く。まず逸走経路となる隙間と出入口を静かに塞ぎ、床の破片を回収して怪我を防ぎ、声をかけず離れた位置から耳と目の動き、胸の上下、姿勢を観察する。隠れ家にいる個体は安全な場所にいると考え、無理に出さない。横倒しや跛行、出血が見えれば獣医師に連絡する。車に積んで避難することは最後の手段で、捕獲箱に自ら入るよう誘導できる場合に限る。半日の放置は隙間からの逸走や出血の見逃しにつながる。
課題地震時の点検手順と優先順位が決まっておらず、隙間の封鎖や破片の回収といった初動が担当者個人の判断に委ねられていた。照明器具の落下防止や壁の固定も不十分だった。
改善案災害時手順書に「隙間封鎖→破片回収→遠隔観察→獣医師連絡」の順番を明記する。照明や壁を耐震固定し、避難用の捕獲箱と暗幕、湯たんぽを飼育室に常備する。年1回の災害訓練で捕獲箱への誘導を練習する。
Q22出産後の胎盤処理と妊娠中の職員感染症・衛生
4月の早朝、放飼場で雌マメジカが出産しており、床に胎盤と体液が残っている。母子は隠れ家に入っている。清掃担当の職員は妊娠中で、通常通り乾いたほうきで床を掃いてから胎盤を素手で拾おうとしている。飼育室は換気が弱く、乾いた糞が舞いやすい。
リーダーの指示として最も適切なものはどれか
- 妊娠中の職員は作業から外し、別の職員が手袋とマスクで床を湿らせてから胎盤を回収し焼却する
- 出産は自然なことなので、母子を見守るため胎盤はそのまま残す
- 妊娠中でも手袋をすれば問題ないので、そのまま作業を続けさせる
- 胎盤は栄養になるので母親に食べさせてから残りを掃除する
正解A.妊娠中の職員は作業から外し、別の職員が手袋とマスクで床を湿らせてから胎盤を回収し焼却する
解説偶蹄類の出産時の胎盤・体液や乾いた糞の粉塵は、Q熱の感染源となる。Q熱は妊婦に流産などの重大な影響を与えるため、妊娠中の職員は出産物や乾いた糞の処理から外す。別の職員が手袋・マスクを着用し、床を水で湿らせて粉塵を抑えてから胎盤を回収し、焼却処分する。乾いたほうきで掃く行為は粉塵を舞い上げて吸入リスクを高める。胎盤を残すと感染源が放飼場にとどまり、母親に食べさせる行為も衛生上推奨されない。母子を刺激しないよう静かに短時間で行う。
課題出産予定が把握されていながら、出産物の処理手順と妊娠中の職員の配置が事前に検討されていなかった。乾いた清掃が習慣になっており、Q熱の経路についての知識が現場に浸透していなかった。
改善案出産予定日の前後は作業者を限定し、妊娠中・免疫低下のある職員は配置しない。出産物は手袋・マスク着用で即回収し焼却する手順を掲示する。清掃は必ず水で湿らせてから行い、換気を改善する。
Q23下痢の子と健康個体の世話の順番感染症・衛生
施設には3つの放飼場があり、そのうち1つで生後3か月の子マメジカが水様便を続けている。新人職員は効率を考え、朝の作業を下痢の子がいる放飼場から始め、同じ長靴と手袋のまま他の2区画の飲み水容器を補充し、作業の合間に飼育通路でおにぎりを食べていた。
指導として最も適切なものはどれか
- 作業順は気にせず、終わってから手を洗えば十分と伝える
- 下痢個体は最後に世話し、区画ごとに長靴と手袋を分け、飼育区画内では飲食しないよう改める
- 下痢の子の放飼場だけ消毒すれば他は同じ装備で構わない
- 子の下痢は自然に治るので特別な対策は不要と伝える
正解B.下痢個体は最後に世話し、区画ごとに長靴と手袋を分け、飼育区画内では飲食しないよう改める
解説子や下痢個体の糞便にはクリプトスポリジウムやサルモネラが含まれる可能性があり、人にも他個体にも経口感染する。作業順は健康な成獣から始め、子や下痢個体を最後にし、区画ごとに長靴と手袋を専用にして交差感染を防ぐ。飲み水容器は毎日洗浄して乾燥させる。飼育区画内での飲食は糞便に触れた手からの経口感染の典型経路で禁止する。作業後は石けんで手洗いする。下痢の子は便を採取して当日中に受診し、血便や元気消失があれば即受診とする。
課題作業順と装備の分離、飼育区画内での飲食禁止という人獣共通感染症対策の基本が新人に教育されていなかった。効率を優先する考え方が衛生より上位に置かれていた。
改善案作業順(健康→子・下痢個体)を手順書に明記し、区画ごとに色分けした長靴と手袋を用意する。飲食は休憩室に限定し掲示する。新人研修で人獣共通感染症の経路を説明し、手洗い設備を各区画の出口に設置する。
Q24横倒しで呼吸がない、胸を押すべきか救命救急
閉園後の18時、見回りで放飼場の隅に横倒しになった9歳の雄マメジカを発見した。声をかけず近づいて観察すると、耳も目も反応がなく、胸の上下が見えない。口から泡が出ている。後肢の内側に手を当てても脈を感じない。獣医師は車で15分の距離にいて、電話はつながった。
担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 気道を伸ばし口の泡を拭い、肘の後ろの胸を片手で毎分100〜120回圧迫し、30回ごとに鼻から2回息を吹き込みながら獣医師に搬送する
- 死亡と判断して何もせず、翌朝の獣医師の到着を待つ
- 心臓を動かすため体を強く揺さぶり、大声で名前を呼ぶ
- 仰向けにして腹を強く押し、口の泡が出なくなるまで続ける
正解A.気道を伸ばし口の泡を拭い、肘の後ろの胸を片手で毎分100〜120回圧迫し、30回ごとに鼻から2回息を吹き込みながら獣医師に搬送する
解説反応・呼吸・脈がない場合は心肺停止として直ちに蘇生を始める。横向きに寝かせて首を伸ばし気道を確保し、口の泡を拭い、肘の後ろの胸を片手で毎分100〜120回圧迫する。30回ごとに鼻から2回息を吹き込み、2分ごとに反応を確認し、暗い箱で搬送中も続ける。揺さぶりや大声は蘇生にならず、仰向けで腹を押すと第一胃の内容物が逆流して誤嚥を起こす。見た目で死亡と判断して何もしないのは、蘇生の可能性を自ら捨てることになる。獣医師には偶蹄類であること、発見時刻、蘇生開始時刻を伝える。
課題高齢個体の体調変化が日中の観察で把握されておらず、閉園後の発見まで時間が経過していた。心肺蘇生の手順を職員が訓練しておらず、現場で迷う状況だった。
改善案高齢個体は食事量・反芻・呼吸数を毎日記録し、変化があれば早めに受診する。心肺蘇生の手順(圧迫位置・回数・人工呼吸)を飼育室に掲示し、年1回ぬいぐるみで練習する。閉園前の最終見回りを義務化する。
Q25脚からの出血が止まらず、搬送の準備救命救急
午後3時、放飼場の点検で、2歳の雌マメジカの左後脚の内側から出血し、床に血の跡が点々と続いているのを見つけた。金網の切れ端が植栽の中に落ちている。個体は隠れ家の入口で立っているが脚を浮かせ、血が滴り続けている。近づくと逃げようとする。獣医師の診療所までは車で20分。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 脚を心臓より高く持ち上げて5分待ち、止まらなければ受診する
- 止血帯を太ももに強く巻いてから、抱えて車で運ぶ
- 捕獲箱に誘導し、清潔な布で5分以上圧迫し、布は剥がさず重ね、保温した暗い箱で搬送する
- 消毒液を傷に流し込んで洗い、自然に止まるのを待つ
正解C.捕獲箱に誘導し、清潔な布で5分以上圧迫し、布は剥がさず重ね、保温した暗い箱で搬送する
解説脚の出血は清潔な布で5分以上強く押さえ続け、血が染みても布は剥がさず上から重ねる。細い脚を心臓より高く持ち上げる行為は骨折や脱臼の危険があり、脚は動かさないことを優先する。止血帯は組織の壊死を招き、小さな脚には適さない。消毒液を流し込んでも出血は止まらず、組織を傷める。追い回しを避けるため捕獲箱に自ら入るよう誘導し、布で横倒しを防ぎ、布で包んだ湯たんぽで25℃以上を保って静かに搬送する。体重2kg前後の個体は少量の出血でも循環血液量に対して大きいため、止まらなければ即受診。
課題植栽の中に金網の切れ端が残され、設置前の床点検と残渣の撤去が不十分だった。出血時の止血用品と捕獲箱が飼育室にすぐ使える状態で準備されていなかった。
改善案資材の設置・撤去後は切れ端や釘を金属探知機や目視で点検する。清潔なガーゼ・布・湯たんぽ・捕獲箱を一式にして飼育室に常備する。出血時の手順(圧迫・重ねる・動かさない)を掲示し訓練する。
Q26半日以上食べず反芻する姿を見ない病気
11月の夕方、担当者が記録を見返すと、6歳の雌マメジカが朝の枝葉にほとんど口をつけず、昼も隠れ家の奥で伏せたまま反芻している様子がない。腹の張りはなく、便は朝に少量出ただけ。耳は動き反応はあるが、いつもなら夕方の給餌で真っ先に出てくるのに今日は出てこない。室温は27℃で変化はない。
担当者の判断として最も適切なものはどれか
- 朝まで待って翌日も食べなければ受診を考える
- 好物の果物を多めに与えて食欲を引き出す
- 新しい枝葉に交換して気分転換させ、2〜3日様子を見る
- 食欲低下と反芻停止が半日以上続いているので、当日中に獣医師の診察を受ける
正解D.食欲低下と反芻停止が半日以上続いているので、当日中に獣医師の診察を受ける
解説反芻動物にとって反芻の停止は第一胃の機能不全のサインで、食欲低下と合わせて半日以上続けば当日中の受診基準にあたる。鼓脹、腸炎、異物、感染症、歯の痛みなど原因は多様で、小型で体重2kg前後の個体は体力の余裕が少なく、翌朝まで待つと急激に悪化する。果物の増量は第一胃の発酵を乱し鼓脹を誘発する。枝葉の交換だけで2〜3日様子を見る対応は時間を失う。受診時は体重、食事内容、便の写真、保定や移動の有無、室温を伝える。
課題観察記録はあったが、朝の時点で食欲低下に気づきながら行動基準が決まっていなかった。反芻の有無が観察項目に明確に入っておらず、夕方まで判断が遅れた。
改善案反芻の有無と食べ残し量を朝夕の記録項目に入れ、朝の食欲低下は昼に再確認する。半日以上の食欲低下と反芻停止で当日中に受診する基準を手順書に書き、担当者が迷わず獣医師に連絡できる体制にする。
Q27鼓脹の個体を受診前に横倒しで搬送した病気
午後8時、4歳の雄マメジカが鼓脹を起こし、獣医師の指示で搬送することになった。新人職員が個体を捕獲箱に入れたが、箱の中で個体が横倒しになっており、呼吸が急に速く苦しそうになり開口呼吸を始めた。診療所まではあと15分かかる。車内で箱を開けると個体は起き上がれない。
車内での対応として最も適切なものはどれか
- 横倒しのまま速度を上げて急いで走り、到着後に処置を任せる
- 箱を開けて個体を抱き出し、膝の上で腹をさすりながら運ぶ
- 布を使って静かに胸を下にした伏せの姿勢に戻し、両脇を布で支えて横倒しを防ぎ、獣医師に状態を電話で伝える
- 箱の上から冷水をかけて意識をはっきりさせる
正解D.箱の上から冷水をかけて意識をはっきりさせる
解説鼓脹の個体が横倒しになると膨らんだ第一胃が横隔膜を圧迫し、呼吸が急激に悪化して窒息しうる。搬送中は胸を下にした伏せの姿勢を保つことが最優先で、布を両脇に詰めて横倒しを防ぎ、個体を直接つかまず静かに姿勢を戻す。獣医師には到着前に開口呼吸と起立不能を伝え、到着後すぐ処置できるようにする。横倒しのまま急いで走ることは揺れで症状を悪化させる。抱き出して腹をさする行為は保定ストレスと脱走の危険があり効果もない。冷水をかけるのは刺激を増やすだけで、搬送箱の基本は暗く通気がよく布を敷いて横倒しを防ぐことである。
課題搬送箱の準備で横倒しを防ぐ布の詰め方が新人に教えられておらず、鼓脹個体は姿勢が致命的に重要であることが共有されていなかった。搬送中の観察担当も決まっていなかった。
改善案捕獲箱には両脇を支える布を常にセットし、鼓脹・呼吸困難の個体は伏せの姿勢を保つ注意点を箱に貼る。搬送は運転者と観察者の2人体制にし、獣医師への事前連絡を手順にする。新人研修で搬送練習を行う。
Q28鼻汁とくしゃみ、呼吸が速く浅い若い個体病気
2月、暖房は動いているが窓際からすきま風が入る放飼場で、1歳の雄マメジカが数日前からくしゃみをし、鼻先に白っぽい鼻汁がつく。今朝は隠れ家から出てこず、遠くから数えると呼吸が1分間に60回以上で浅い。食べる量も減った。床の近くの温度計は19℃を示し、天井付近は26℃だった。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- すきま風を遮断して床付近を25℃以上にし、鼻汁と呼吸数を記録して当日中に受診する
- くしゃみ程度なので暖かくなる春まで様子を見る
- 人用の風邪薬を少量餌に混ぜて数日続ける
- 加湿のため個体の体に霧吹きで水をかける
正解A.すきま風を遮断して床付近を25℃以上にし、鼻汁と呼吸数を記録して当日中に受診する
解説すきま風で床付近が20℃を下回ると、鼻汁・くしゃみ・浅く速い呼吸・食欲低下といった肺炎の所見が出る。マメジカは床近くで生活するため、天井付近の温度ではなく床の温度が重要である。まずすきま風を塞ぎ床付近を25℃以上に保ち、呼吸数と鼻汁の性状を記録して当日中に受診する。若い個体の肺炎は進行が速く、春まで待てば命に関わる。人用の風邪薬は反芻動物に有害で用量も不明である。体に直接水をかけると気化熱で体温を奪い、驚いて激突する危険もある。湿度は加湿器で60〜80%を保つ。
課題温度計が天井付近にあり、個体が生活する床付近の温度を把握していなかった。すきま風が放置され、冬の保温が形だけになっていた。くしゃみが数日続いた時点で受診を検討しなかった。
改善案温度計を床から20cm以内に設置し、床付近の温度を記録する。冬前に窓や扉の隙間を点検して遮断し、保温灯で床からの冷えを防ぐ。くしゃみ・鼻汁が2日続けば受診する基準を決め、呼吸数の正常値を掲示する。
Q29引っ越し後の個体が立ち上がれず尿が濃い病気
他園から搬入された3歳の雌マメジカが到着し、輸送箱から放飼場に放した。輸送は8時間かかり、途中で箱が倒れる場面もあった。翌朝、個体は放飼場の隅に伏せたまま立とうとしては崩れ、排尿は少量で暗赤色だった。前日は到着後すぐ餌を食べたため、搬入担当者は「輸送の疲れだけだろう」と話している。
担当者の判断として最も適切なものはどれか
- 新しい環境のストレスなので、3日間は誰も近づかず放置する
- 脱水だろうと判断し、スポーツドリンクを口から流し込む
- 立たせるために後ろから押して歩行を促す
- 輸送後の起立不能と暗赤色の尿は捕捉性筋障害を疑い、刺激を避けて直ちに獣医師の診察を受ける
正解D.輸送後の起立不能と暗赤色の尿は捕捉性筋障害を疑い、刺激を避けて直ちに獣医師の診察を受ける
解説長時間の輸送と箱の転倒は保定・移動のストレスに相当し、翌日以降の起立不能と暗赤色の尿は捕捉性筋障害の典型である。前日に食べていても筋肉の崩壊は進行し、腎不全や急死につながる。即受診の基準にあたり、暗い保温箱で刺激を避けて運ぶか、獣医師に現場に来てもらう。放置すれば回復の機会を失う。後ろから押して歩かせる行為は筋損傷を広げる。口から液体を流し込むのは誤嚥の危険があり、水分補給は獣医師の点滴に委ねる。搬入時の輸送状況と尿の色を詳細に伝える。
課題輸送中の箱の転倒という重要な情報が受け入れ側に正しく伝わらず、輸送後の捕捉性筋障害のリスク評価が行われていなかった。到着後24時間の観察計画と尿の色の確認項目がなかった。
改善案搬入時は輸送時間・転倒の有無・温度を記録して引き継ぐ。到着後72時間は起立・排尿の色・食欲を朝夕記録し、異常があれば即受診する。輸送箱は横倒し防止の構造にし、搬入は獣医師の立ち会いの下で行う。
Q30多頭飼育で1頭だけ痩せ、餌場に近づけない病気
10月、雌3頭を飼育する放飼場で、2歳の雌が1か月で体重を300g減らしていた。餌場は1か所で、優位な雌がそこを占め、若い雌は近づくと蹄を打ち鳴らされて逃げる。若い雌は食事量が減り、毛艶が落ち、糞も少ない。糞便検査は先月受けており陰性だった。隠れ家は1つしかない。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 痩せた個体に穀物ペレットを一気に増やして体重を戻す
- 餌場と隠れ家を複数方向に分けて追加し、体重を毎週測り、減少が続けば受診する
- 優位な雌を数日間別の檻に閉じ込めて罰する
- 自然な順位なので介入せず、来月の健診で相談する
正解B.餌場と隠れ家を複数方向に分けて追加し、体重を毎週測り、減少が続けば受診する
解説単独か雌雄ペアで小さな縄張りを持つマメジカは、餌場や隠れ家が1か所だと優位個体が占有し、劣位個体は慢性的なストレスと採食不足で痩せる。体重1.5〜2.5kgの動物で300gの減少は体重の15%前後にあたり深刻。餌場と水場を人の動線から離して複数方向に分け、隠れ家も複数置いて逃げ道を作る。体重を毎週記録し、改善しなければ受診して他の疾患を除外する。穀物の急増は鼓脹の原因になる。優位個体の隔離と再導入は争いを再燃させる。来月まで放置すれば衰弱が進む。
課題複数の隠れ家と餌場を複数方向に置くという飼育条件が守られず、多頭飼育での社会的ストレスが評価されていなかった。体重減少が1か月分まとまってから発見され、週単位の記録がなかった。
改善案頭数以上の隠れ家と餌場を複数方向に配置し、採食時に各個体が食べているかを観察記録する。体重は月1回ではなく週1回の目視と月1回の測定にし、10%の減少で受診する基準を決める。相性が悪ければ放飼場を分ける。
Q31円形の脱毛と担当者の手の発疹病気
7月、5歳の雄マメジカの首筋と背中に直径2cmほどの円形の脱毛が数か所現れ、フケが目立つ。同じ頃、担当者の前腕に赤く環状の発疹ができてかゆい。担当者は素手で個体に触れることもあり、ブラシや布は他の個体と共用している。個体の食欲は正常で元気そうに見える。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 脱毛部に人用の抗真菌クリームを塗って経過を見る
- かゆみは夏の汗疹だと考え、個体も人も様子を見る
- 個体を手袋で扱い器具を分け、数日以内に獣医師の診察を受け、担当者は皮膚科を受診する
- 脱毛部をアルコールで拭いて消毒し、日光に当てる
正解C.個体を手袋で扱い器具を分け、数日以内に獣医師の診察を受け、担当者は皮膚科を受診する
解説円形脱毛とフケ、接触した人の環状の発疹は皮膚糸状菌症を強く疑わせ、脱毛部に触れた手や器具から人や他個体に接触感染する。個体は手袋で扱い、器具を専用にして他個体への拡大を防ぎ、数日以内に獣医師の診察を受けて検査と治療を受ける。担当者も皮膚科を受診する。人用の抗真菌クリームは塗布のたびに保定が必要で、種への安全性も不明である。アルコールで拭く行為は皮膚を傷め、保定ストレスも伴う。元気に見えても放置すれば施設内に蔓延する。
課題素手で個体に触れ、ブラシや布を他個体と共用する運用が続いており、接触感染への対策がなかった。脱毛・フケを観察で確認する項目はあったが、人の症状との関連に気づくのが遅れた。
改善案個体ごとに器具を分け、作業は手袋を着用する。脱毛や円形の毛抜けを月1回の観察記録に入れ、発見時は手袋と器具分離を即実施する。職員の皮膚症状は報告する仕組みを作り、人獣共通感染症の一覧を掲示する。
Q32柵の隙間に挟まった脚、本人が暴れている怪我
午後1時、見回り中に3歳の雄マメジカが柵の縦棒の隙間に右前脚を膝まで突っ込んだまま抜けなくなっているのを発見した。個体は激しく暴れ、脚を引き抜こうとして柵に体を叩きつけている。隙間は約3cmで、脚の関節が引っかかっている。近くに他の職員はおらず、手元に布と工具がある。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 脚をつかんで力ずくで引き抜く
- 暴れているうちは近づかず、自力で抜けるのを待つ
- 大声で応援を呼びながら柵を蹴って広げる
- 静かに近づき布で頭を覆って暗くし、暴れが収まってから隙間を工具で広げて脚を抜き、受診する
正解D.静かに近づき布で頭を覆って暗くし、暴れが収まってから隙間を工具で広げて脚を抜き、受診する
解説細い脚が挟まった状態で暴れると、捻じれて骨折や脱臼を起こし、柵への激突で他の外傷も加わる。まず声を出さず静かに近づき、布で頭を覆って視界を遮ることでパニックを鎮める。暴れが収まったら隙間を工具で広げ、脚の向きに沿って無理なく抜く。力ずくで引き抜く行為は骨折を確実にし、関節を引っかけたまま引くと靭帯も断裂する。待つだけでは暴れ続けて損傷が増え、捕捉性筋障害にも進む。大声と柵を蹴る行為はパニックを悪化させる。解放後は跛行や腫れを観察し、脚を浮かせるなら当日中、不自然な向きなら即受診する。
課題柵の隙間が2cm以下という基準を超える3cmで放置されていた。単独の見回りで挟まれ事故が起きたときの対応手順と、布・工具の携行が定まっていなかった。
改善案柵や扉の隙間を全箇所計測し、2cm以下に改修する。見回り時は暗幕用の布を携行し、挟まれ時の手順(暗くする→落ち着かせる→隙間を広げる)を掲示する。改修まではネットや板で隙間を内側から覆う。
Q33展示ガラスに激突し額が裂けて出血怪我
午前10時、観覧窓のガラスに団体客が集まり、子どもが窓を叩いた瞬間に2歳の雌マメジカが跳ねてガラスに激突した。額の皮膚が2cmほど裂け、血が顔を伝って流れている。個体はすぐ隠れ家に逃げ込み、様子を見るとふらつきはなく鼻血もない。出血は少しずつ続いている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 観覧窓を暗幕で覆い、隠れ家で落ち着いた後に出血部を清潔なガーゼで押さえ、当日中に受診する
- 出血が止まるまで追いかけて捕まえ、消毒液で傷を洗う
- 小さな傷なので何もせず、展示を続けて様子を見る
- 傷に市販の人用の止血パウダーを吹きかけて放飼場に戻す
正解A.観覧窓を暗幕で覆い、隠れ家で落ち着いた後に出血部を清潔なガーゼで押さえ、当日中に受診する
解説激突の原因である観覧側の刺激をまず断つため、暗幕で窓を覆い来園者を遠ざける。ふらつきや鼻血がないので頭蓋内損傷の緊急性は低いが、裂傷は縫合と感染予防が必要で当日中に受診する。個体が落ち着いたら無理に追わず、捕獲箱に誘導するか隠れ家で静かに清潔なガーゼで押さえる。追いかけて捕まえることは再激突と捕捉性筋障害を招く。人用の止血パウダーは異物として傷の治癒を妨げ、保定も要する。展示を続けると刺激が続き再激突する。激突後はふらつき・鼻血・瞳孔の左右差を数時間観察し、出れば即受診に切り替える。
課題観覧窓に叩ける距離で団体客が集まる構造で、職員の案内や注意喚起が不足していた。驚くと全力で跳ねて激突する習性に対し、ガラスを柔らかい素材や植栽で緩衝する対策がなかった。
改善案観覧窓の前に柵を設けて手が届かない距離を確保し、窓の内側に植栽や布で緩衝帯を作る。団体客には入場前に静かに見る注意を伝え、職員を配置する。暗幕を窓際に常備し、激突後の観察項目を掲示する。
Q34蹄が伸びすぎて歩き方が変わった怪我
長雨の続いた7月、放飼場の床は全面がバークチップで柔らかく常に湿っている。8歳の雌マメジカの蹄が明らかに前方に伸びて反り返り、歩くときに脚を外に振り出すようになった。跛行はないが、昨日から後脚を時々浮かせる。担当者は自分で爪切りを使って切ろうと考えている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 爪切りで伸びた部分を自分で切り、出血したら止血剤を塗る
- 乾いた土と岩の場所を作って摩耗を促しつつ、当日中に獣医師に鎮静下の削蹄を依頼する
- そのうち自然に摩耗するので、乾いた季節まで待つ
- 蹄を柔らかくするため毎日お湯で足浴する
正解B.乾いた土と岩の場所を作って摩耗を促しつつ、当日中に獣医師に鎮静下の削蹄を依頼する
解説常時湿った柔らかい床では蹄が摩耗せず伸びすぎ、歩き方の変化や脚を浮かせる跛行の始まりにつながる。蹄は硬い地面で自然に摩耗させるのが基本で、伸びたら獣医師が鎮静下で削蹄する。脚を浮かせる跛行があれば当日中の受診対象である。自分で切ると保定ストレスで捕捉性筋障害を起こし、血管に達して出血や感染も起こす。乾いた季節を待てば変形が進み関節に負担がかかる。足浴は毎日の保定を要し現実的でなく、湿らせることは逆効果である。床には乾いた土と岩の区画を必ず設ける。
課題床材が全面バークチップで、乾いた土と岩の両方を置くという条件が満たされていなかった。長雨で湿度管理ができず、蹄の状態を定期的に観察する項目もなかった。
改善案放飼場に排水のよい乾いた土と平らな岩の区画を作り、湿った床材は週単位で交換する。月1回の観察で蹄の長さと歩様を記録し、伸びに気づいたら早めに獣医師に相談する。削蹄は健診とまとめて鎮静下で行う。
Q35母親を守ろうとした雌に手を噛まれた後の個体観察怪我
出産から1週間後の朝、担当者が子の体重を測ろうと隠れ家に手を入れたところ、母親の雌マメジカに手を噛まれた。手順通り布で暗くして口を外し、担当者は傷を洗って受診した。その日の午後、母親は右前脚を浮かせて歩き、口元に少し血がついている。子は母乳を飲んでいる。
母親に対する対応として最も適切なものはどれか
- 子を守る行動は正常なので、母子に数日間近づかない
- 跛行と口元の出血を記録し、離れた位置から観察して当日中に獣医師に相談する
- 跛行を確かめるため母親を隠れ家から出して歩かせる
- 口の中を確認するため再び手を入れて口を開ける
正解B.跛行と口元の出血を記録し、離れた位置から観察して当日中に獣医師に相談する
解説咬傷事故の後は人の治療だけでなく、個体の脚と口の観察が必要である。噛んだ瞬間に暴れたことで脚を痛め、歯が折れた可能性がある。片脚を浮かせる跛行は当日中の受診基準で、口元の出血は歯の損傷を示唆する。母子を驚かせないよう離れた位置から観察し、写真や記録を獣医師に伝えて診察方法を相談する。再び手を入れる行為は再咬傷と母親のストレス、育児放棄を招く。母親を出して歩かせることも同様に危険である。何もせず数日放置すれば、骨折や歯の感染が進行し授乳にも影響する。
課題出産直後の母親の防衛行動を予測せず、子の計測を隠れ家に手を入れる方法で行った。授乳期の作業手順が決まっておらず、咬傷後に個体側の観察を忘れそうになる状況だった。
改善案出産後2週間は隠れ家に手を入れず、子の計測は母親が採食で離れた時間に遠隔カメラや体重計を床に置く方法で行う。咬傷事故の後は人と個体の両方のチェックリストを埋める手順にし、記録を獣医師と共有する。
Q36給餌器の交換中、作業台から転落した怪我
午後3時、放飼場内に持ち込んだ高さ60cmの作業台の上に、4歳の雄マメジカが驚いて飛び乗り、そのまま反対側へ転落した。着地後に横倒しになり、数秒して起き上がったが左後脚を引きずり、脚の中ほどから骨が皮膚を突き破って見えている。出血は中程度で、個体は隠れ家の方へ向かおうとしている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 骨を元の位置に押し戻してから包帯を巻く
- 追いかけて捕まえ、脚を持ち上げて止血する
- 追わず暗い捕獲箱に誘導し、清潔な布で露出部を覆って軽く押さえ、脚を動かさず即受診する
- 隠れ家に入ったら落ち着くので、翌日の定期診察まで待つ
正解C.追わず暗い捕獲箱に誘導し、清潔な布で露出部を覆って軽く押さえ、脚を動かさず即受診する
解説骨の露出を伴う開放骨折は即受診の対象で、感染と神経血管の損傷が時間とともに進む。骨を押し戻す行為は汚染を深部に押し込み、神経や血管を傷める。追いかけて捕まえ脚を持ち上げると骨片が動いて損傷が広がり、捕捉性筋障害も誘発する。追わず、暗い捕獲箱に自ら入るよう誘導し、入ったら清潔な布で露出部を覆って軽く圧迫し、脚を動かさず横倒しを防いで静かに搬送する。翌日まで待てば感染が確立し脚の温存が難しくなる。獣医師には転落の高さと時刻、出血量を伝える。
課題放飼場内に高さのある作業台を持ち込み、個体が隠れ家に入っていない時間帯に作業した。段差や高さのある構造を作らない原則が、持ち込み資材には適用されていなかった。
改善案放飼場内に持ち込む資材は高さ20cm以下に制限し、作業は個体が隠れ家にいる時間帯か一時的に仕切ってから行う。持ち込み資材のチェックリストを作り、作業前に周囲を確認する手順を徹底する。
Q37ミスト配管の漏電で個体が倒れた事故
8月の昼、放飼場のミスト装置用ポンプの配線が水たまりに浸かり、水場の近くで3歳の雌マメジカが倒れているのを発見した。個体の脚が小刻みにけいれんし、周囲の床は濡れている。電源のブレーカーは別室にある。担当者は素手で個体を抱き上げて助けようとしている。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- すぐに個体を抱き上げて濡れた場所から離す
- 水をかけて体を冷やしながら獣医師を呼ぶ
- 個体を棒で突いて反応を確かめる
- 別室でブレーカーを落として通電を止めてから、反応・呼吸・心拍を確認し獣医師に連絡する
正解D.別室でブレーカーを落として通電を止めてから、反応・呼吸・心拍を確認し獣医師に連絡する
解説濡れた床と配線が接触した感電事故では、通電が続く限り救助者も感電する。まずブレーカーを落として通電を止め、安全を確保してから個体に近づく。素手で抱き上げる行為は自身の感電を招き、二次災害になる。水をかけるのは通電を広げる最悪の行為である。棒で突いて反応を見るのは意味がなく刺激にもなる。通電を止めた後、声をかけず耳と目の反応、胸の上下、後肢内側の脈を確認し、反応や呼吸がなければ心肺蘇生を始め、けいれんが続くなら即受診する。感電は数時間後に不整脈や肺水腫が出ることがあり、元気に見えても必ず受診する。
課題水場の近くにミストのポンプ配線があり、漏電遮断器や配線の防水処理がなかった。夏の高湿度環境で電気設備を使う施設として、感電時の手順とブレーカーの位置が担当者に周知されていなかった。
改善案放飼場内の電気機器はすべて漏電遮断器を通し、配線は床から離して防水管で保護する。ブレーカーの位置を飼育室の入口に掲示し、感電事故の手順(通電停止→反応確認→蘇生・受診)を訓練する。設備点検を月1回行う。
Q38水場の深い容器に頭から落ちて溺れかけた事故
改修中に仮置きした深さ30cmのバケツに水を入れて放飼場に置いていたところ、生後2か月の子マメジカが頭から落ちていた。担当者が発見したとき、子は水中でぐったりして動かない。引き上げると口と鼻から水が出て、呼吸は弱く不規則だが胸はわずかに動いている。体は冷たい。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 頭を下にして静かに水を出し、口の水を拭って呼吸を観察しながら布と湯たんぽで保温し即受診する
- 息を吹き返したので隠れ家に戻して母親に任せる
- 体を強く振って水を出し、背中を叩いて咳をさせる
- ドライヤーで体を乾かしながら、呼吸が落ち着くまで待ってから受診を決める
正解A.頭を下にして静かに水を出し、口の水を拭って呼吸を観察しながら布と湯たんぽで保温し即受診する
解説溺水後の子は気道に水が残り、低体温も重なるため救命救急の対応が必要である。頭をやや下げた姿勢で静かに水を排出し、口と鼻の水や泡を拭い、呼吸が止まれば心肺蘇生を行う。体を強く振る、背中を叩く行為は脊椎や内臓を傷める。低体温には布で包んだ湯たんぽを片側に当てて25℃以上を保ち、暗い箱で即受診する。ドライヤーは火傷と刺激を招き、受診を遅らせる。呼吸が戻っても数時間後に肺水腫や肺炎が起こるため、母親に任せて放置することは危険である。
課題改修中の仮置きとはいえ、深さのある容器を子のいる放飼場に置いた。水は低い重い容器で与えるという基本が仮設対応で守られず、子が落ちる危険を予測していなかった。
改善案水容器は深さ5cm程度の低く重いものに限定し、改修中もバケツなど深い容器を放飼場に持ち込まない。子がいる期間は資材の持ち込みを担当者2人で確認する。溺水時の手順を掲示し、湯たんぽと布を常備する。
Q39園内工事の重機音でパニック、連日続く事故
隣接区画で3週間の改修工事が始まり、朝から重機の音と振動が放飼場に響いている。初日、6歳の雄マメジカは工事の音のたびに跳ね回って壁に激突し、額に擦り傷ができた。2日目には隠れ家から出ず、食事量が半分に減った。工事はあと3週間続く予定で、工事責任者は「動物は慣れる」と言っている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 慣れるのを待ち、工事が終わるまで観察だけ続ける
- 工事中は個体を小さな輸送ケージに入れて事務所で預かる
- 工事責任者と交渉して作業時間や騒音を制限し、無理なら静かな区画へ捕獲箱で慎重に移す。食事量を記録し半日以上食べなければ受診する
- 音に慣れさせるため、ラジオを大音量で放飼場に置く
正解C.工事責任者と交渉して作業時間や騒音を制限し、無理なら静かな区画へ捕獲箱で慎重に移す。食事量を記録し半日以上食べなければ受診する
解説突然の大きな音や振動はマメジカにとって激突と捕捉性筋障害を招く致死的ストレスで、3週間続けば慢性ストレスから食欲低下、免疫低下、消化器疾患に進む。まず工事側と交渉して重機の作業時間を短縮し、防音壁や振動対策を求める。それが無理なら、捕獲箱に自ら入るよう誘導して静かな区画に移す。小さな輸送ケージでの長期預かりは隠れ家や歩行空間がなく、骨折や蹄の損傷の元になる。ラジオで慣れさせる発想は刺激を増やすだけである。食事量と反芻を毎日記録し、半日以上食べないなら当日中に受診する。
課題工事計画の段階で飼育担当に相談がなく、騒音と振動の影響を評価していなかった。人の往来や犬の声が届かない静かな場所という飼育条件が施設運営に共有されていなかった。
改善案施設の工事・イベント計画は飼育担当の事前承認を要件にし、騒音レベルと時間帯の基準を決める。予備の静かな放飼場を用意し、移動は捕獲箱で事前に慣らしておく。ストレス指標(食事量・反芻・隠れ家滞在時間)を記録する。
Q40見学者の子どもが柵を越えて放飼場に入った事故
日曜の14時、観覧エリアの柵を乗り越えた5歳の子どもが放飼場内に入り、4歳の雌マメジカを追いかけ始めた。個体は跳ね回って壁に2回激突し、床の隅で凍りついている。保護者が叫びながら柵の外から子どもを呼び、周囲の来園者も集まって騒いでいる。担当者は現場に到着したばかりである。
担当者が最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 子どもを大声で叱り、保護者と一緒に放飼場に入って連れ出す
- 個体を先に捕まえて隠れ家に押し込んでから子どもに対応する
- 動画で状況を記録してから対応を考える
- 周囲を静かにさせて子どもに動かないよう穏やかに伝え、静かに子どもを連れ出した後、個体を遠くから観察し激突の影響を確認する
正解D.周囲を静かにさせて子どもに動かないよう穏やかに伝え、静かに子どもを連れ出した後、個体を遠くから観察し激突の影響を確認する
解説最優先は刺激を止めることで、周囲の叫び声と追跡が続く限り個体は激突を繰り返す。まず来園者を静かにさせ、子どもに穏やかな声で動かないよう伝え、担当者が静かに近づいて子どもを連れ出す。叱る、叫ぶ、複数の大人が入る行為はパニックを悪化させる。個体を先に捕まえる行為は追い回しに相当し、捕捉性筋障害を招く。動画記録は後回しである。子どもを出した後は観覧窓を暗幕で覆い、離れた位置からふらつき・鼻血・跛行・呼吸を観察し、異常があれば即受診、なくても数日は捕捉性筋障害の兆候(起立不能・暗赤色の尿)を見る。
課題観覧柵が子どもに乗り越えられる高さと構造で、侵入を防ぐ物理的対策と監視が不足していた。休日の混雑時に飼育区画に職員が常駐しておらず、侵入時の手順も決まっていなかった。
改善案観覧柵を乗り越えられない高さにし、二重の仕切りや植栽で距離を取る。休日は観覧エリアに職員を配置し、侵入時の手順(静かにする→子どもを出す→暗幕→個体観察)を掲示する。激突後の観察記録を数日続ける。
Q41床材に混ざった釘を飲み込んだ可能性中毒・誤飲
放飼場の壁板を交換した翌日、床の落ち葉の中から釘が3本見つかったが、袋には4本分の空きがあった。5歳の雌マメジカは昨夜から餌を食べず、立ったまま背中を丸め、歩くのを嫌がる。腹を触らせず、反芻する姿も見られない。体温は正常に見え、呼吸は少し速い。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 釘を吐かせるため塩水を飲ませる
- 便に出るまで食物繊維の多い枝葉を増やして待つ
- 釘の誤飲を疑い、食欲低下と反芻停止の記録を持って当日中に受診し、X線検査を依頼する
- 磁石を餌に混ぜて釘を回収する
正解C.釘の誤飲を疑い、食欲低下と反芻停止の記録を持って当日中に受診し、X線検査を依頼する
解説反芻動物が釘などの金属を飲み込むと第二胃に沈んで壁を貫き、腹膜炎や心膜炎を起こす。食欲低下、反芻停止、背中を丸める、腹を触らせないという所見は腹痛の典型で、半日以上の食欲低下と反芻停止は当日中の受診基準にあたる。釘の記録と写真を持ち、獣医師にX線検査を依頼する。反芻動物は構造上吐かせられず、塩水は塩中毒を起こす。枝葉を増やして待つ間に釘が胃壁を貫く。磁石の投与は牛では用いられるが、マメジカでの安全性や大きさは不明で獣医師の判断に委ねる。腹が張る、横倒しになれば即受診に切り替える。
課題壁板の交換作業後に釘の本数を確認する手順がなく、残渣を毎日撤去し設置前に床を点検するという基本が工事後に適用されなかった。作業者と飼育担当の引き継ぎも不十分だった。
改善案工事や資材作業では釘・ネジの本数を作業前後で数えて記録し、終了後に金属探知機や磁石で床を点検する。作業中は個体を別区画に移し、戻す前に飼育担当が床を確認する手順にする。反芻の観察を毎日記録する。
Q42放飼場の植栽に混じったアボカドの葉中毒・誤飲
9月、放飼場の植栽を増やすため園芸担当が持ち込んだ鉢の中に、アボカドの若木が混じっていた。翌朝、3歳の雌マメジカが若木の葉を半分ほど食べており、昼には呼吸が速く、立ったままぐったりして動きが鈍い。口を開けて呼吸し、首を伸ばす姿勢をとっている。他の個体は食べていない。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- アボカドの鉢を全放飼場から撤去し、呼吸困難の個体を刺激せず即受診して食べた植物名を伝える
- 葉は自然に消化されるので、水を多めに与えて様子を見る
- 吐かせるためにオリーブ油を飲ませる
- 呼吸が速いのは暑さのせいなので、送風機で冷やして翌日まで待つ
正解A.アボカドの鉢を全放飼場から撤去し、呼吸困難の個体を刺激せず即受診して食べた植物名を伝える
解説アボカドの葉や果実に含まれるペルシンは反芻動物に心筋障害と乳腺炎、肺水腫を起こし、呼吸促迫と首を伸ばす姿勢は心不全や肺水腫の所見である。即受診の対象で、刺激を避けて暗い箱で搬送し、食べた植物名と量、時刻を獣医師に伝える。並行してアボカドの鉢を全放飼場から撤去し、他の個体が食べないようにする。反芻動物は吐かせることができず、油を飲ませれば誤嚥を起こす。暑さと決めつけて翌日まで待てば心不全が進む。水を与えるだけでは毒性は変わらない。
課題園芸担当が持ち込む植栽に対して、飼育担当が種類を確認する手順がなかった。アボカドが禁止食材であることが園芸部門に共有されておらず、放飼場内の植物リストも管理されていなかった。
改善案放飼場に入れる植物は飼育担当と獣医師が種類を確認し、有毒植物リストと照合してから設置する。園芸部門に禁止植物(アボカド・ネギ類など)を周知する。新しい植栽の導入後24時間は採食の様子を観察記録する。
Q43台風接近、停電と浸水の恐れで避難判断環境・災害
大型台風の接近で、明日夜には飼育棟のある低地に浸水警報が出る見込み。停電の可能性も高い。飼育棟には2頭のマメジカがおり、高台の予備飼育室までは車で10分。捕獲箱には2頭とも日常的に慣らしており、自分から入る。今は台風前日の午後で、風雨はまだ弱い。
担当者の判断として最も適切なものはどれか
- 浸水してから判断し、水が入ったら急いで捕まえて運ぶ
- 風雨が弱い今のうちに捕獲箱で静かに高台の予備飼育室へ移し、保温と隠れ家、餌と水を整えて観察する
- 飼育棟に残し、床に板を置いて個体が登れる高い足場を作る
- 個体を職員の自宅に連れ帰り、段ボール箱で一晩預かる
正解B.風雨が弱い今のうちに捕獲箱で静かに高台の予備飼育室へ移し、保温と隠れ家、餌と水を整えて観察する
解説マメジカの避難は追い回しや慌てた捕獲が最大のリスクで、浸水してからの緊急捕獲は捕捉性筋障害と逸走を招く。風雨が弱く個体も落ち着いている前日のうちに、慣らした捕獲箱で静かに移動し、予備飼育室に隠れ家、保温灯、湯たんぽ、餌と水を整える。移動後は起立・排尿の色・食欲を24時間観察する。高い足場は飛び降りによる骨折の元で、停電すれば保温も失われる。職員の自宅や段ボール箱は温度管理と隠れ家がなく、慣れない環境でのパニックが致命的である。
課題災害時の避難基準(いつ・誰が・どこへ)が事前に決まっておらず、担当者個人の判断に委ねられていた。予備飼育室の準備状況や移動手順も点検されていなかった。
改善案避難判断の基準(警報レベル・時刻)を災害手順書に明記し、前日のうちに移動する原則にする。予備飼育室には保温設備、隠れ家、床材を常備し年2回点検する。捕獲箱への誘導訓練を月1回行い、移動後の観察項目を定める。
Q44乾燥した冬の室内、皮膚がかさつき呼吸も荒い環境・災害
12月、暖房を強めに入れた飼育室は室温27℃だが湿度計は30%を示している。7歳の雄マメジカの背中にフケが増え、皮膚がかさつき、鼻先がひび割れて乾いた鼻汁がついている。時々乾いた咳のような音を出し、呼吸がやや荒い。水は飲んでいる。担当者は温度が適正なので問題ないと考えている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 温度は適正なので湿度は気にせず、フケはブラッシングで落とす
- 個体の体に直接霧吹きで水を吹きかけて潤す
- 暖房を切って湿度を上げる
- 加湿器と床への散水で湿度を60〜80%に戻し、鼻汁と呼吸を記録して改善しなければ数日以内に受診する
正解D.加湿器と床への散水で湿度を60〜80%に戻し、鼻汁と呼吸を記録して改善しなければ数日以内に受診する
解説マメジカの適正湿度は60〜80%で、乾燥は皮膚と呼吸器に負担をかける。温度が適正でも湿度30%ではフケ、皮膚のかさつき、鼻のひび割れ、乾いた咳といった症状が出る。加湿器と床への散水、水容器の追加で湿度を戻し、鼻汁の性状と呼吸数を記録する。数日で改善しなければ受診して皮膚疾患や呼吸器感染を除外する。暖房を切れば温度が20℃を下回り低体温と肺炎を招く。体に直接水をかけるのは驚かせて激突させ、気化熱で体温も奪う。ブラッシングは不要で保定ストレスになる。
課題温度のみを管理し、湿度の基準と記録がなかった。冬の暖房で湿度が下がることを予測せず、湿度計があっても行動基準と結びついていなかった。
改善案温湿度計を床付近に設置し、湿度60〜80%を下限上限として記録する。冬季は加湿器を常設し、床材を軽く湿らせて湿度を保つ。皮膚・鼻・呼吸の観察項目を日課に入れ、乾燥のサインが出たら湿度を先に確認する。
Q45サルモネラ陽性の個体と見学プログラム感染症・衛生
定期の糞便検査で、4歳の雄マメジカからサルモネラが検出された。個体は無症状で、放飼場は週末に小学生のバックヤード見学コースに含まれており、見学者が放飼場の柵に触れたり、通路でおやつを食べたりすることがある。担当者は検査結果を見学担当に伝えるべきか迷っている。
担当者の対応として最も適切なものはどれか
- 無症状なので見学を続け、特に対策はしない
- 見学担当と獣医師に即共有し、見学コースから外して柵と通路を消毒、作業者は専用の長靴と手袋で手洗いを徹底する
- 個体を殺処分して感染を断つ
- 見学者に手袋を配れば柵に触れても問題ないので続ける
正解B.見学担当と獣医師に即共有し、見学コースから外して柵と通路を消毒、作業者は専用の長靴と手袋で手洗いを徹底する
解説サルモネラは糞便に触れた手からの経口感染で人にうつり、子どもや高齢者では重症化する。無症状でも排菌するため、まず検査結果を見学担当と獣医師に共有し、放飼場を見学コースから外す。柵や通路を消毒し、作業者は専用の長靴と手袋で区画を分け、作業後の手洗いと飼育区画内での飲食禁止を徹底する。個体は獣医師の指示で治療と再検査を行い、陰性を確認するまで公開を控える。手袋を配っても通路での飲食や柵の汚染は防げない。殺処分は治療可能な感染症に対して不要で、動物福祉上も不適切である。
課題バックヤード見学で柵に触れたり通路で飲食したりできる運用があり、人獣共通感染症の視点が見学プログラムに入っていなかった。検査結果を部署間で共有する仕組みも曖昧だった。
改善案見学プログラムは柵に触れない・通路で飲食しないルールを明文化し、出口に手洗い場を設ける。糞便検査の結果は獣医師・飼育・見学担当で即日共有する手順にし、陽性時の公開停止基準を決める。作業者の装備は区画専用にする。
Q46乾いた糞の清掃で粉塵を吸い込む職員感染症・衛生
真夏の午後、放飼場の床の糞が乾いて粉状になっており、アルバイト職員がマスクなしで乾いたほうきで掃いている。粉塵が舞い、職員は咳き込んでいる。放飼場では先月に出産があり、まだ出産後の清掃が十分でない。換気扇は故障中で、職員は「乾いていて臭わないから大丈夫」と話す。
指導として最も適切なものはどれか
- 乾いた糞は衛生的なので問題ないと伝え、作業を続けさせる
- マスクさえすればほうきで掃いて問題ないと伝える
- 作業を止め、マスクと手袋を着用し床を水で湿らせてから回収する手順に改め、換気を修理する
- 糞は毎日ではなく週1回まとめて掃除する方が粉塵が少ないと伝える
正解C.作業を止め、マスクと手袋を着用し床を水で湿らせてから回収する手順に改め、換気を修理する
解説乾いた糞の粉塵と出産後の残留物の吸入はQ熱の感染経路で、臭いの有無は安全性と関係がない。作業を止め、マスクと手袋を着用し、床を水で湿らせてから静かに回収する手順に改める。換気扇の修理も急ぐ。マスクだけでほうきで掃けば粉塵が放飼場内と個体にも広がる。糞を週1回にまとめると寄生虫やサルモネラの再感染リスクが上がり、毎日除去の原則に反する。出産後の残留物は手袋で回収し焼却する。妊娠中や免疫の低下した職員は作業から外す。
課題アルバイト職員への衛生教育が不足し、湿らせてから清掃するという基本が伝わっていなかった。換気扇の故障が放置され、出産後の清掃も不十分で、Q熱のリスクを施設として管理できていなかった。
改善案清掃手順(マスク・手袋・散水→回収→手洗い)を掲示し、新人・アルバイトにも初日に教育する。換気設備は故障時に優先修理する仕組みを作る。出産後は残留物の回収を担当者が確認し、記録を残す。
Q47横倒しで反応が鈍い、呼吸と心拍をどう確認するか救命救急
朝7時、放飼場の隅で8歳の雌マメジカが横倒しになっているのを発見した。近づくと耳がわずかに動くが、目はほとんど動かず起き上がれない。前夜までは普通に食べていた。担当者は心臓が動いているか確認したいが、触ると驚かせてしまうのではと迷っている。獣医師には電話がつながった。
担当者が取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 声をかけず近づいて胸の上下を数え、後肢内側か胸に手を当てて心拍を確認し、結果を獣医師に伝えて指示を受ける
- 驚かせないよう触らず、離れた場所から見守って獣医師の到着を待つ
- 大声で名前を呼び、体を揺さぶって反応を確かめる
- 起き上がらせるため抱き上げて立たせ、歩けるか確認する
正解A.声をかけず近づいて胸の上下を数え、後肢内側か胸に手を当てて心拍を確認し、結果を獣医師に伝えて指示を受ける
解説横倒しで起き上がれない状態は即受診の対象で、獣医師が到着するまでの間に呼吸と心拍を把握することが救命の鍵となる。声をかけず静かに近づき、耳と目の動きで反応を見て、胸の上下を数え、後肢内側の脈か胸に手を当てて心拍を確認する。この情報があれば獣医師は到着前に準備ができる。呼吸や心拍がなければ心肺蘇生を始める。触らず見守るだけでは心停止に気づけない。大声や揺さぶりは刺激になり蘇生にもならない。抱き上げて立たせる行為は骨折や捕捉性筋障害の危険があり、反応が鈍い個体には有害である。
課題高齢個体の横倒しを発見した後、呼吸と心拍の確認方法を担当者が訓練しておらず、触ることへの迷いで時間を失う状況だった。前夜の観察で予兆が拾えていなかった可能性もある。
改善案反応・呼吸・心拍の確認手順を飼育室に掲示し、ぬいぐるみで年1回練習する。高齢個体は夜の最終見回りで呼吸数と姿勢を記録する。横倒し発見時は「確認→獣医師に伝える→指示に従う」の流れを手順書にする。
Q48心肺蘇生中の個体を車で搬送する救命救急
閉園後、6歳の雄マメジカが呼吸停止で発見され、担当者が心肺蘇生を始めた。2分後に確認すると心拍は弱く戻ったが、自発呼吸はほとんどない。獣医師は診療所で受け入れ準備をしており、車で10分の距離。職員は2人いて、暗い搬送箱と布、湯たんぽは手元にある。外気温は8℃。
搬送の方法として最も適切なものはどれか
- 蘇生を中断して箱に入れ、到着まで何もせず急いで運ぶ
- 1人が運転し、もう1人が箱の中で横向きに寝かせた個体の気道を保ち、必要なら圧迫と人工呼吸を続け、布で包んだ湯たんぽで25℃以上を保つ
- 膝の上に仰向けに抱いて、到着まで腹を温めながら運ぶ
- 走行中の振動で呼吸が戻ることがあるので、箱の蓋を開けて風を当てながら運ぶ
正解B.1人が運転し、もう1人が箱の中で横向きに寝かせた個体の気道を保ち、必要なら圧迫と人工呼吸を続け、布で包んだ湯たんぽで25℃以上を保つ
解説蘇生は搬送中も続けることが原則で、2分ごとに反応を確認し、自発呼吸がなければ30回の圧迫と2回の人工呼吸を繰り返す。運転者と処置者の2人体制で、個体は暗い箱の中で横向きに寝かせて首を伸ばし気道を確保し、布を敷いて横倒しの転がりを防ぐ。外気温8℃では低体温が急速に進むため、布で包んだ湯たんぽで25℃以上を保つ。蘇生を中断して運ぶことは心拍が再び止まる危険がある。膝の上での仰向けは気道が閉じやすく、第一胃の内容物の逆流も起こす。蓋を開けて風を当てる行為は体温を奪い刺激にもなる。
課題搬送中も蘇生を続けるという原則は知っていても、2人体制の役割分担と保温の準備を事前に決めていなかった。冬季の搬送における低体温対策が手順化されていなかった。
改善案緊急搬送は運転者と処置者の2人体制を標準とし、搬送箱に布と湯たんぽをセットして飼育室に常備する。搬送中の蘇生手順(圧迫30回・人工呼吸2回・2分ごと確認)を箱に貼る。獣医師に出発時刻と状態を電話で伝える訓練を行う。
Q49休日の夜、脚が不自然な向きで病院が見つからない救命救急
祝日の夜22時、当直職員が見回りで3歳の雌マメジカの左前脚が外側に不自然に曲がっているのを発見した。個体は隠れ家で伏せて震えている。担当獣医師の携帯はつながらず、近隣の犬猫病院に電話すると「偶蹄類は診られない」と断られた。当直職員は一人で、受診先が見つからない。
当直職員の対応として最も適切なものはどれか
- 朝まで待ち、通常の担当獣医師の出勤を待つ
- 自分で添え木を当てて包帯を巻き、朝まで保温して待つ
- 緊急連絡網で管理者と協力獣医師に連絡し、夜間救急や大学病院に偶蹄類の骨折と伝えて受け入れ先を探しつつ、刺激を避け保温した捕獲箱に誘導する
- 痛み止めとして人用の鎮痛剤を水に溶かして飲ませ、落ち着かせる
正解C.緊急連絡網で管理者と協力獣医師に連絡し、夜間救急や大学病院に偶蹄類の骨折と伝えて受け入れ先を探しつつ、刺激を避け保温した捕獲箱に誘導する
解説脚が不自然な向きなのは骨折で、即受診の対象である。断られても諦めず、施設の緊急連絡網で管理者と協力獣医師に連絡し、夜間救急病院や大学付属病院に「偶蹄類のマメジカ、体重2kg前後、脚の骨折」と伝えて受け入れ先を探す。連絡と並行して個体を刺激せず、暗く保温した捕獲箱に自ら入るよう誘導し、搬送の準備を整える。自分で添え木を当てる行為は保定ストレスと骨片の変位を招き禁忌である。人用の鎮痛剤は反芻動物に有害で用量も不明。朝まで待つと痛みとショック、二次損傷が進む。
課題夜間や休日に偶蹄類を診られる受診先が事前に確保されておらず、緊急連絡網も当直職員に周知されていなかった。当直が一人で判断と搬送の両方を担う体制だった。
改善案担当獣医師の代理、夜間救急、大学病院を含む緊急受診先リストを作り、偶蹄類の受け入れ可否を事前に確認しておく。緊急連絡網を飼育室に掲示し、当直は管理者に即連絡できる体制にする。夜間の搬送は応援要員を呼べる手順を作る。
Q50獣医師への電話、何を伝えるべきか救命救急
午後6時、5歳の雄マメジカが左脇腹を張らせて開口呼吸を始めた。担当者は獣医師に電話をかけ「マメジカが苦しそうです」と伝えたが、獣医師から矢継ぎ早に質問され、慌てて答えられない。手元には今日の給餌記録と昨日の便の写真、室温の記録がある。同僚が搬送箱の準備を始めている。
獣医師への情報提供として最も適切なものはどれか
- 搬送して直接見てもらえば分かるので、電話は短く切って急いで向かう
- 症状の動画を撮り続けて、到着後にまとめて見せる
- 偶蹄類であること、体重、今日の食事内容、便の写真、保定や移動の有無、室温、症状の始まった時刻を順に伝える
- ネットで調べた鼓脹症の治療法を伝え、薬を用意してもらう
正解C.偶蹄類であること、体重、今日の食事内容、便の写真、保定や移動の有無、室温、症状の始まった時刻を順に伝える
解説緊急時の電話では、獣医師が到着前に処置を準備できる情報を簡潔に伝えることが救命につながる。マニュアルの通り、偶蹄類であること、体重、食事内容(果物や穀物の量の変化)、便の写真、保定や移動の有無、室温、そして症状の始まった時刻と現在の呼吸状態を順に伝える。鼓脹症の場合、食事内容と発症時刻は処置の判断に直結する。電話を切って急ぐだけでは受け入れ側の準備が整わない。動画を撮り続ける間に鼓脹は進行し、情報も伝わらない。ネットの治療法を伝えることは診断の妨げになり、薬剤の選択は獣医師の判断である。
課題緊急連絡時に伝えるべき項目が整理されておらず、記録が手元にあっても慌てて活用できなかった。電話をかける人と搬送準備をする人の役割分担も事前に決まっていなかった。
改善案獣医師に伝える項目(種・体重・食事・便・保定の有無・室温・発症時刻)をカードにして電話機の横に置く。給餌記録と便の写真を日々整理し、すぐ送れるようにする。緊急時は連絡担当と搬送担当を分ける役割表を作り、訓練する。

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